ランニングシューズのインソールを交換すると、足裏のフィット感やクッション性、走行中の安定感が変わります。
一方で、
- インソールを入れればケガを予防できる
- 扁平足には強いアーチサポートが必要
- オーダーメイドなら必ず効果が高い
- カーボンインソールなら速く走れる
とは限りません。
インソールへの反応には個人差があり、同じ製品でも快適に感じるランナーと、土踏まずの圧迫や足の痛みを感じるランナーがいます。
この記事では、ランニング用インソールの効果と限界、種類、選び方、ケガや痛みとの関係、交換時期、おすすめ商品について研究をもとに解説します。
ランニング用インソールとは?

インソールとは、シューズの内側に入れる中敷きです。
ランニングシューズにも最初からインソールが入っていますが、多くは薄いフォーム素材で作られています。
これを市販の機能性インソールやオーダーメイドインソールへ交換することで、足裏への圧力やシューズ内のフィット感を調整します。
ランニング用インソールには、主に次のような役割があります。
- 足裏のクッション性を調整する
- かかとや土踏まずを支える
- 足裏にかかる圧力を分散する
- シューズ内での足のずれを抑える
- 足部や足関節の動きを部分的に変える
- シューズのフィット感を調整する
ただし、インソールで骨格を正しい位置へ固定できるわけではありません。
研究では、インソールによる下肢の動きの変化は小さく、すべての人に同じ変化が起こるわけではないと指摘されています。
ランニングにインソールは必要?

結論として、すべてのランナーが市販のインソールへ交換する必要はありません。
標準のインソールで、
- 痛みや違和感がない
- シューズ内で足がずれない
- 土踏まずやかかとが圧迫されない
- ロング走でも快適に走れる
のであれば、そのまま使用しても問題ありません。
一方、次のような場合はインソールを試す選択肢があります。
- 標準インソールでは足裏が滑る
- かかとの収まりが悪い
- 長時間走ると足裏が疲れる
- 土踏まず周辺に不快感がある
- 足底や膝の痛みに対して専門家から提案された
- シューズだけではフィット感を調整できない
- 左右または局所的な荷重を調整する必要がある

大切なのは、インソールを「全員に必要なケガ予防用品」ではなく、快適性や荷重を調整する一つの選択肢として考えることです。
ランニング用インソールに期待できる効果

シューズ内の快適性を高める
インソールで最も実感しやすいのは、走行中の快適性です。
レクリエーショナルランナーを対象とした8週間の研究では、インソールを使用したグループは、使用しなかったグループより快適性が高くなりました。
一方、走速度とランニング障害の発生率には、統計学的に明確な差が認められませんでした。
この結果からも、装着直後に確認する項目としては、
- 速く走れそうか
- 足が矯正されているか
よりも、
- 土踏まずを強く押されていないか
- かかとが安定しているか
- 足指を動かせるか
- シューズ全体が快適か
を優先した方が実用的です。
足裏の圧力を分散する
インソールの形状や素材によって、かかとや前足部など、特定の場所へ集中していた圧力を分散できる可能性があります。
ただし、厚くて柔らかいインソールほど優れているとは限りません。
インソールが厚すぎると、シューズ内の空間が狭くなり、
- 足指の圧迫
- 甲の締め付け
- かかとの浮き
- 爪先の衝突
- シューズ内での不安定感
が生じることもあります。

インソール単体のクッション性だけでなく、シューズへ入れた状態で確認する必要があります。
足部や足関節の動きを変える
アーチサポートや内側のウェッジがあるインソールでは、ランニング中の足部・足関節の動きや負荷が変化する場合があります。
2025年のメタ解析では、扁平足者に対するアーチサポート単独では明確な変化がみられなかった一方、後足部と前足部に内側ポストを備えたインソールでは、足関節外反角度やアキレス腱負荷率などが減少しました。
ただし、研究数が少なく、対象も無症状の扁平足者に限られています。
「足の動きが変わった」ことと、「痛みやケガが必ず減る」ことは同じではありません。
インソールでランニングのケガを予防できる?

インソールによるケガ予防効果は、一貫していません。
2017年のメタ解析では、足部装具は下肢障害全体と疲労骨折を減らす可能性が示されました。一方、単純な衝撃吸収インソールには明確な予防効果が認められませんでした。
さらに、対象者の多くは軍人や訓練生であり、一般の市民ランナーへそのまま当てはめることはできません。
ランニング障害には、
- 走行距離や強度の急増
- 回復不足
- 過去のケガ
- 筋力や組織の耐久性
- 睡眠や栄養
- 路面やシューズ
- ランニングフォーム
など、複数の要因が関係します。
インソールだけで、これらすべてを解決することはできません。
インソールとランニング中の痛みの関係

足底・かかとの痛み
足底やかかとの痛みに対して、インソールが痛みを軽減する場合があります。
足底踵部痛を対象とした19試験・1,660人のメタ解析では、7~12週間の中期で、インソールは偽インソールより痛みをわずかに軽減しました。ただし、その変化が臨床的に十分大きいかは不明とされています。
また、オーダーメイドと既製品の間に明確な差は認められませんでした。
インソールだけに頼るのではなく、
- ランニング量の調整
- 足関節や足趾の機能確認
- ふくらはぎや足部の筋力トレーニング
- 必要に応じたストレッチ
- シューズの見直し
などと組み合わせます。
膝蓋大腿部痛
膝のお皿周辺が痛む膝蓋大腿部痛では、既製品のインソールが短期的な痛みの軽減に役立つ場合があります。
ただし、すべての人に処方するのではなく、試し履きや一時的な調整によって症状が改善する人に使用することが推奨されています。
2024年のベストプラクティスガイドでも、運動療法や教育を基本としたうえで、反応がよい人に既製品のインソールを追加する方法が示されています。
シンスプリント
シンスプリントとも呼ばれる内側脛骨ストレス症候群では、過回内に対応したインソールが発症予防や症状改善に役立つ可能性があります。
一方、単純な衝撃吸収インソールだけでは、発症予防効果は確認されていません。
運動療法にアーチサポートインソールを加えることで、短期的な痛みや機能が改善した研究もありますが、インソール単独で治療するものではありません。
インソールで速く走れる?

一般的な機能性インソールを入れるだけで、ランニングエコノミーやレースタイムが明確に改善するとはいえません。
前述したランナー対象の研究でも、快適性は改善しましたが、走速度の差は統計学的に有意ではありませんでした。
また、シューズ内部へ追加するカーボンファイバーインソールについても、現時点では明確な代謝的・パフォーマンス上の利益は確認されていません。
カーボンプレートをミッドソールに組み込み、高反発フォームやロッカー形状と一体設計したランニングシューズと、後から追加するカーボンインソールは別のものです。
インソールを入れた結果として、痛みや不快感が減り、普段どおり練習できるようになれば、間接的にパフォーマンスを支える可能性はあります。
ランニング用インソールの種類
| 種類 | 主な特徴 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| クッションタイプ | 柔らかい素材で足当たりを調整 | 足裏の硬さや突き上げが気になる人 | 厚すぎると靴が狭くなる |
| アーチサポートタイプ | 土踏まずやかかとの形状を支える | 足部の安定感を調整したい人 | アーチの圧迫に注意 |
| ヒールカップタイプ | かかとを包む立体形状 | シューズ内でかかとが動く人 | かかとの高さが変わる |
| ウェッジ・ポストタイプ | 内外側の高さで荷重を調整 | 専門家による評価を受けた人 | 自己判断で強く補正しない |
| カーボン・硬質タイプ | 剛性を高める | 特定の目的で硬さを求める人 | 速くなるとは限らない |
| オーダーメイド | 足型や症状に合わせて作製 | 既製品で調整しにくい人 | 高価格で再調整が必要な場合もある |
既製品とオーダーメイドはどちらがよい?

既製品の特徴
既製品は、サイズやアーチの高さを選び、必要に応じて先端をカットして使用します。
メリットは、
- 比較的安価
- すぐに試せる
- 製品を交換しやすい
- 左右差が少なければ対応しやすい
ことです。

初めてインソールを試す場合や、目的が快適性・フィット感の調整であれば、既製品から試しやすいでしょう。
オーダーメイドの特徴
オーダーメイドインソールは、足型、足裏圧、動作、症状などを評価して作製します。
メリットは、
- 足の左右差へ対応できる
- 局所的な除圧やウェッジ調整ができる
- 作製後に微調整できる場合がある
- 変形や特定の症状に合わせやすい
ことです。
ただし、「足型を取ったから効果が高い」とは限りません。
既製品とオーダーメイドを比較したレビューでは、足部痛に対する臨床効果について、オーダーメイドが一貫して優れているとは確認されていません。
まず既製品を試し、
- 強い左右差がある
- 特定部位の除圧が必要
- 既製品では痛みや圧迫を調整できない
- 医療的な評価が必要
- 複数回の調整が必要
という場合にオーダーメイドを検討する方法が現実的です。
ランニング用インソールの選び方

使用目的を明確にする
最初に、何を変えたいのかを決めます。
- 足裏の柔らかさを変えたい
- 土踏まずを支えたい
- かかとの収まりをよくしたい
- シューズ内の滑りを減らしたい
- 痛みに対して専門家から勧められた

目的が曖昧なまま「高機能だから」という理由だけで選ぶと、必要以上に厚く、硬い製品を選ぶ可能性があります。
シューズとの相性を確認する
インソールは単体ではなく、シューズと組み合わせて機能します。
次の点を確認してください。
- 標準インソールを取り外せるか
- 新しいインソールを入れても足指に余裕があるか
- 甲が圧迫されないか
- かかとが履き口から浮かないか
- シューズの屈曲位置と合っているか
- 左右へ傾くような違和感がないか

標準インソールの上に重ねると、シューズ内が狭くなりやすいため、基本的には標準インソールを取り外して交換します。
アーチの高さだけで決めない
ロー・ミドル・ハイなど、アーチタイプを選べる製品があります。
ただし、足の見た目や濡れた足跡だけで判断すると、実際の走行中の動きや好みと一致しない場合があります。
立位で土踏まずが低く見えるランナーでも、強いアーチサポートが快適とは限りません。
可能であれば店頭で試し、
- アーチの頂点が合っている
- 土踏まずを突き上げない
- 立ったときだけでなく歩いても快適
- シューズ内で安定している
ことを確認します。
柔らかさとサポート力を分けて考える
「柔らかい=サポート力が高い」わけではありません。
柔らかい素材は足当たりを変えやすい一方、荷重すると大きくつぶれることがあります。硬いシェルは形状を保ちやすい一方、合わなければ圧迫感が強くなります。
厚さ、形状、剛性をまとめて確認しましょう。
快適性を比較する
候補が複数ある場合は、片足ずつ異なるインソールを入れて比較する方法があります。
- どちらが自然に立てるか
- どちらが足裏を強く押すか
- どちらが歩きやすいか
- どちらがシューズに収まるか
を比較すると、わずかな違いを判断しやすくなります。
ランニング用インソールの使い方

カット可能な製品では、取り外した標準インソールを重ねて外周を写します。
一度に大きく切らず、少しずつ調整してください。切りすぎると、シューズ内でインソールが前後へ動く原因になります。
最初からロング走やレースで使用するのは避けましょう。
目安としては、
- 日常生活やウォーキングで30~60分試す
- 20~30分の軽いジョギングで確認する
- 問題がなければ使用時間を延ばす
- テンポ走やロング走で確認する
- 十分に慣れてからレースで使用する
という順番が安全です。

硬いアーチサポートでは、1~2週間程度の慣らし期間が必要な場合もあります。
新しいシューズと新しいインソールを同時に使うと、違和感の原因が分からなくなります。
まずシューズを標準インソールで試し、その後にインソールだけを交換すると比較しやすくなります。
次のような症状が出た場合は、使用を中止または再調整してください。
- 土踏まずに強い痛みがある
- 足指がしびれる
- 水ぶくれや擦れができる
- かかとが浮く
- 以前なかった膝・足首・アキレス腱の痛みが出る
- 左右のバランスが大きく変わったように感じる
「慣れれば治る」と考えて、痛みを我慢する必要はありません。
インソールの交換時期

インソールの寿命は、素材、走行距離、体重、発汗量、使用頻度によって異なります。
メーカーの目安では、
- 一般的なインソール:半年~1年前後
- Superfeet:最大約500マイル(約800km)または12か月
- BMZ通常タイプ:毎日使用した場合は約3か月
- BMZカーボン仕様:約1年
など、製品ごとに差があります。ただし、期間だけでなく状態を確認することが重要です。
交換を検討するサイン
- 表面に穴や破れがある
- かかとや前足部が大きくつぶれている
- 左右で厚さが異なる
- アーチ部分が変形している
- シューズ内で滑るようになった
- 以前より足裏の疲労が強い
- 新品と比べて明らかに弾力が低下した
- 臭いや汚れが洗浄しても取れない

走行距離を記録している場合は、シューズと同じようにインソールの使用開始日も記録しておくと管理しやすくなります。
ランニング用インソールのお手入れ方法

使用後はシューズから取り出し、風通しのよい場所で陰干しします。
汚れが気になる場合は、製品表示を確認したうえで、中性洗剤とぬるま湯を使って手洗いします。
一般に避けたいのは、
- 洗濯機
- 乾燥機
- ドライヤー
- 直射日光
- ストーブやヒーターの近く
です。
熱によってフォームや硬質パーツが変形する可能性があります。
ランニングにおすすめのインソール
以下は、特定製品の医学的効果を保証するものではありません。価格は2026年8月23日時点の公式サイト表示を参考にしています。
| 商品 | 特徴 | 価格の目安 | おすすめの人 |
|---|---|---|---|
| ザムスト Footcraft STANDARD | LOW・MIDDLE・HIGHから選択 | 5,280円 | 初めて機能性インソールを試す人 |
| ザムスト Footcraft CUSHION+ | アーチタイプを選べるクッション重視モデル | 5,610円 | 足当たりとサポートを両方調整したい人 |
| ソルボジャパン ランニング | ランニング向けの衝撃吸収タイプ | 3,300円 | クッション性を重視する人 |
| BMZ カルパワースマートスポーツ | 立方骨周辺を支える独自構造 | 7,480円 | 一般的な土踏まず支持が合いにくい人 |
| Superfeet Active Support | アーチの高さや形状を選択できる硬めのサポート | 8,800円前後 | かかと周辺の安定感を重視する人 |
LOW・MIDDLE・HIGHの3種類からアーチタイプを選べる既製品です。
厚すぎない標準的なモデルのため、初めて機能性インソールを試す人に向いています。
店頭でアーチタイプを確認できる場合は、足の見た目だけで決めず、歩行時の快適性を比較しましょう。
アーチサポートに加えて、クッション性を重視したモデルです。
STANDARDと同様に、LOW・MIDDLE・HIGHの3タイプから選択できます。
インソールの厚みによってシューズ内が狭くならないか、特に甲とかかとのフィット感を確認してください。
衝撃吸収素材を使用したランニング向けインソールです。
比較的試しやすい価格で、アーチを硬く支える感覚より、足裏のクッション性を重視したい人に選択肢となります。
ただし、衝撃吸収インソール単独によるケガ予防効果は確立していません。快適性を調整する商品として考えましょう。
一般的な土踏まずの中央を持ち上げる構造とは異なり、立方骨や踵骨前部周辺を支える設計が特徴です。
土踏まずを直接押される感覚が苦手な人に合う可能性がありますが、独特の形状であるため、可能であれば試し履きをおすすめします。
かかとを包む形状と比較的しっかりしたサポートが特徴です。ローアーチなど、複数の形状から選べます。
サポートが強い製品はシューズとの相性が出やすいため、アーチ位置、かかとの高さ、足指の余裕を確認してください。
インソールを専門家へ相談した方がよい状態

次のような場合は、商品を自己判断で交換し続けるより、整形外科、スポーツクリニック、理学療法士、義肢装具士などへ相談してください。
- 安静時にも痛みがある
- 腫れ、熱感、発赤がある
- 片脚で跳べないほど痛い
- 骨の一点に強い圧痛がある
- しびれや感覚低下がある
- 夜間痛がある
- 痛みが徐々に強くなっている
- インソールを交換しても改善しない
- 左右差や足部変形が大きい
- 疲労骨折が疑われる
インソールは診断の代わりにはなりません。
よくある質問
扁平足という見た目だけでは判断できません。
痛みがなく、走行に問題がない場合は、必ずしもインソールでアーチを持ち上げる必要はありません。
扁平足と症状の関係、走行中の動き、シューズとの相性を含めて判断します。
オーダーメイドや専門家による調整では、左右で異なる形状にすることがあります。
一方、市販品を自己判断で左右別々にすると、脚長感や荷重が大きく変わる可能性があります。左右差が強い場合は専門家へ相談しましょう。
標準インソールを取り外せるシューズで、十分な内部空間があれば交換できる場合があります。
ただし、近年のレースシューズは、フォーム、プレート、ロッカー形状を含めて設計されています。インソールを交換すると、重量、かかとの位置、安定感、屈曲感が変わる可能性があります。
必ず練習で確認し、本番で初めて使用しないでください。
使用できますが、シューズによって内部形状や容量が異なります。
同じインソールでも、あるシューズでは快適で、別のシューズではかかとが浮くことがあります。それぞれの組み合わせでフィット感を確認してください。
まとめ
ランニング用インソールには、快適性の向上、足裏圧の分散、シューズ内のフィット感調整などが期待できます。
一方で、インソールを入れれば必ずケガを予防できる、痛みが治る、速く走れるとはいえません。
選ぶときは、
- 使用目的を明確にする
- シューズとの相性を確認する
- アーチの高さだけで決めない
- 装着直後の快適性を重視する
- 短いジョギングから慣らす
- 新しい痛みが出たら使用を中止する
- 痛みが続く場合は専門家へ相談する
ことが重要です。
走行に問題がないランナーは、標準インソールのままでも構いません。

インソールは身体を強制的に「正しい形」にする道具ではなく、足とシューズの間を調整する選択肢の一つとして活用しましょう。
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- Neal BS, et al. Best practice guide for patellofemoral pain.
風を切るランニング 
