60代・70代から始めるランニング|無理のない始め方と初心者向け練習メニュー

「60代から走り始めても遅くない?」

「70代でランニングをすると、膝や心臓に負担がかかりそう……」

 走ることに興味があっても、体力やケガへの不安から一歩を踏み出せない人は少なくありません。

 60代・70代からでも、健康状態と体力に合わせてランニングを始めることは可能です。 ただし、最初から長く走ろうとせず、ウォーキングに短いジョギングを組み合わせるところから考えましょう。

 この記事では、これから走り始めたい60代・70代の方に向けて、安全面の確認、走る速さと頻度、段階的な練習例、続けるための工夫を紹介します。

 ※持病や運動制限がある方、運動時に症状が出る方は、この記事のメニューより医療機関での個別の指示を優先してください。

目次

60代・70代からのランニングは「歩く+短く走る」から

 ランニングを始めるとき、最初に目指したいのは「何km走れるか」よりも、無理なく取り組み、次の日も普段どおり生活できることです。

 同じ70代でも、普段からよく歩く人と、長期間運動していない人では、適した運動量が異なります。若い頃に運動経験があっても、現在の体力に合わせて始めることが大切です。

 厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、個人差を踏まえて強度や量を調整し、可能なものから取り組むことが基本とされています。

 例えば、次のように入口を変えてみましょう。

現在の状態始め方の例
普段ほとんど歩かないまずは短い散歩を習慣にする
散歩はできるが、速歩きは大変歩く時間や歩調を少しずつ調整する
20〜30分程度の歩行が無理なくできる短いジョギングを挟むことを検討する
歩くと痛む・ふらつく・息切れが強い走り始める前に原因や運動方法を相談する

 この表は始め方を考えるための例です。「20分歩ければ必ず走って安全」という判定基準ではありません。

楓(かえで)
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まずは「少し動いて、気持ちよく終われる」を積み重ねましょう。

60代・70代から走るメリットは?

体力づくりの選択肢になる

 ランニングは有酸素運動の一つです。歩行と走行を組み合わせれば、体調や体力に応じて運動量を調整できます。

 CDCは、高齢者にとって定期的な身体活動が、健康や自立した生活を支えるとしています。ただし、身体活動全般の効果を「ランニングだけで得られる効果」と捉えないことも大切です。

外出する目的や楽しみを作れる

 「公園を一周する」「季節の花を見に行く」など、運動に小さな楽しみを組み合わせられます。

 

楓(かえで)
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タイムを測ることが励みになる人もいれば、景色や仲間との会話を楽しみたい人もいるでしょう。

始めたばかりなら、記録よりも「また出かけたい」と思える内容を優先して構いません。

高齢ランナーを調べた研究もある

 Ortegaらの研究では、平均年齢が約69歳のランニング習慣のある15人と、ウォーキング習慣のある15人を比較しました。ランニング群では、同じ距離を歩くためのエネルギー消費が7〜10%少ない結果でした。

 ただし、これは既に運動習慣がある人同士を比べた横断研究です。60代・70代から走り始めると同じ効果が得られることや、走ることが差の原因であることを証明した研究ではありません。

楓(かえで)
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年齢を重ねても走っている人はいます。ただし、その人の練習量をそのまま真似する必要はありません。

走り始める前に確認したいこと

持病・症状・運動制限を確認する

 心臓病、糖尿病、関節の病気などがある場合も、状態に合った身体活動を行えることがあります。通院中の方は、走ることの可否や強度について主治医に確認しましょう。

 特に、次の場合は自己判断で走り始めずに相談してください。

  • 歩行や階段で胸の痛み・圧迫感がある
  • 軽い動作でも普段と違う息切れや動悸が出る
  • めまい、失神、繰り返すふらつきがある
  • 膝・股関節・足などの痛みで歩き方が変わる
  • 病気や手術後に運動制限を受けている
  • 健診で精密検査や受診を勧められたままになっている

 

楓(かえで)
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年齢だけで一律に判断せず、現在の症状、病歴、活動状況を確認することが大切です。

昔の記録を基準にしない

 若い頃に走っていた人も、久しぶりの再開では短い時間から始めましょう。

 「昔は5km走れた」よりも、「今日は会話をしながら動けるか」「翌日に疲れや痛みが残らないか」を基準にします。

60代・70代のランニングは、どのくらいの速さがよい?

最初は会話が続く範囲を目安にする

 初心者に「1kmを何分」と一律のペースを決めることはできません。まずは、息が上がりすぎず、会話が続く程度を目安にしましょう。

 CDCのトークテストでは、中強度の活動は「会話はできるが歌うのは難しい」、高強度は「息継ぎなしには数語しか話せない」状態が目安です。運動の負担は、その人の体力によって変わります。

 

楓(かえで)
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ゆっくり走っていても会話が難しいなら、歩行に切り替えて構いません。

心拍数だけで運動を決めない

 年齢から計算した心拍数の目安に合わせるために、無理にペースを上げる必要はありません。

 

楓(かえで)
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始めたばかりの時期は、呼吸、会話のしやすさ、足取り、運動後の疲れも一緒に確認しましょう。心拍数について医療機関から指示がある場合は、その範囲を優先します。

初心者向け|60代・70代からの4段階の始め方

 以下は、症状や運動制限がなく、20〜30分程度の歩行を無理なく行える人を想定した導入例です。研究で全員への安全性や効果が確認された統一メニューではありません。

 まずは週2回程度、走る日の間に少なくとも1日空ける形を例にします。各段階は1〜2週間以上続け、余裕がなければ同じ段階を繰り返してください。歩行が難しい場合は、それより手前の散歩から始めましょう。

段階主な内容の例ジョギングの合計
① 歩くことに慣れる楽な歩行10〜20分。難しければ分割するなし
② ごく短く走る20秒ジョギング+100秒歩行を5回1分40秒
③ 走る区間を少し延ばす30秒ジョギング+90秒歩行を5回2分30秒
④ 余裕があれば1分ずつ走る1分ジョギング+2分歩行を5回5分

 ②〜④では、表の内容の前後に5〜10分程度ずつの楽な歩行を入れます。長く感じる場合は反復回数を減らし、全体を短くしてください。

次の段階へ進む目安

  • 運動中に会話ができる
  • 痛みやふらつきがない
  • 終了後に強い疲労が残らない
  • 翌日の歩行や家事に支障がない
  • 同じ内容を複数回、余裕を持って行えている

 これは練習調整の目安であり、安全性を保証するチェックではありません。

 厚生労働省のガイドでも、翌日の日常生活に支障が出る疲れは、運動強度や量が過剰である可能性を示すとされています。

楓(かえで)
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4週間で走れるようになることより、無理なく続けられる量を見つけることが先です。

1週間にどう組み込む?ランニングと休養の例

 短いジョギングを始めた段階なら、次のような組み合わせが考えられます。

曜日内容の例
月歩行+短いジョギング
火休養、または疲れがなければ短い散歩
水軽い筋力運動・支えのあるバランス運動
木歩行+短いジョギング
金休養
土散歩+軽い筋力運動
日休養、または短い散歩・軽いバランス運動

 

楓(かえで)
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毎週このとおりに行う必要はありません。散歩や筋力運動でも疲れが強ければ休みましょう。

 増やす場合は、走る時間・回数・速さを一度に変えず、一つだけを少し調整します。例えば、まずは同じ速さのまま、一部の走る区間を少し延ばす方法があります。

ランニングに筋力運動・バランス運動も組み合わせる

 

楓(かえで)
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高齢期の運動では、走ることに加えて、筋力やバランスに働きかける活動も大切です。厚生労働省は、高齢者に多要素の運動を週3日以上、筋力トレーニングを週2〜3日行うことを勧めています。

 導入時は、次のような簡単な運動から検討できます。

運動始め方の例
椅子からの立ち座り安定した椅子で、必要なら手を使って数回
両脚のかかと上げ固定された台などを支えに、ゆっくり数回
支えのある足踏み足元を確認し、姿勢が崩れない範囲で行う
足を前後に少しずらした立位すぐにつかまれる場所で、短時間から行う

 回数は「何回でもできるまで」頑張るより、動作が安定している範囲にとどめます。

楓(かえで)
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バランス運動は、転倒しそうな姿勢を一人で試さないでください。

シューズ・服装・コースで確認したいポイント

シューズはフィット感と安定感を確認する

 履いたときだけでなく、歩いたり軽く動いたりしたときに、かかとが浮かないか、つま先が当たらないか、横にぐらつかないかを確認します。

 速く走るための機能を優先する必要はありません。自分が扱いやすく、違和感なく動けることを重視しましょう。

コースは平坦で見通しのよい場所から

 最初は、段差や坂が少なく、途中で歩いたり帰宅したりしやすい短いコースが便利です。

 柔らかい土でも、でこぼこしていれば足を取られることがあります。路面の硬さだけでなく、凹凸、滑りやすさ、明るさ、交通量を確認してください。

暑さや体調に合わせて予定を変える

 暑さや湿度が厳しい日は、時間帯の変更や室内での活動も選択肢です。悪天候の日に無理に外へ出る必要はありません。

 水分を取れるように準備し、発熱、だるさ、睡眠不足で体調が悪い日は休みましょう。飲水量の制限を受けている場合は、その指示に従ってください。

60代・70代のランニングでよくある失敗

最初から毎日走る

 習慣を作りたい気持ちがあっても、走る日を急に増やすと、疲れや痛みの変化を確認しにくくなります。まずは間隔を空けて、翌日までの反応を見ましょう。

距離を達成するために無理をする

 「今日は3km」と決めると、途中で苦しくなってもやめにくいことがあります。導入時は「10分動いたら終わる」など、短い時間で区切る方法も便利です。

歩くことを失敗だと思う

 歩行は運動量を調整する方法です。予定より早く歩き始めても問題ありません。

他の人のペースに合わせる

 同年代の人でも、運動歴や体力は違います。仲間と走るときは、途中で歩けること、自分のペースで終えられることを先に共有しておきましょう。

痛みを「慣れるまで」と我慢する

 膝や足の痛み、腫れ、歩き方の変化があるときは、予定を優先しないでください。走る量を戻す前に、症状を確認することが大切です。

ランニングを中止したいサイン・相談したい症状

 厚生労働省は、運動中の胸痛、動悸、めまい・ふらつき、冷や汗、いつもと違う強い疲れ、関節や筋肉の強い痛みなどを中止の目安として挙げています。

状態対応の考え方
発熱、強いだるさ、体調不良その日は休む
足や膝の痛みが強まる、歩き方が変わる走るのを中止する
痛みや腫れが続く、繰り返す医療機関へ相談する
胸の痛み・圧迫感、普段と違う強い息苦しさ、めまい直ちに運動を中止し、医療的な対応を求める

胸の症状が続く、強い呼吸困難がある、失神した場合などは、119番などで救急の助けを求めてください。

楓(かえで)
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一度休んで症状が治まっても、運動のたびに同じ症状が出る場合は、再開前に相談しましょう。

続けるために記録したいのは「距離」より身体の反応

 初めのうちは、次の項目を簡単に残すだけでも、無理のない量を探しやすくなります。

  • 歩いた時間・走った時間
  • 会話ができたか
  • 運動中と運動後の痛み
  • 翌日の疲れや生活への影響
  • 楽しく終えられたか

 「先週より長く走れた」だけでなく、「同じ内容が楽になった」「翌日に疲れが残りにくかった」ことも、自分の変化を知る材料になります。

よくある質問

70代でランニングを始めるのは遅いですか?

年齢だけで遅いとはいえません。健康状態と現在の体力に合った入口を選ぶことが大切です。まず歩く習慣を作り、必要に応じて専門家に相談しながら短いジョギングを検討しましょう。

ウォーキングだけでもよいですか?

はい。ウォーキングも有酸素運動の選択肢です。健康づくりのために、全員が走る必要はありません。CDCも速歩きを高齢者の有酸素活動の例として挙げています。

毎日40分走ったほうがよいですか?

毎日40分走る必要はありません。厚生労働省の高齢者向けの目安である「1日40分」は、歩行などを含む身体活動についての推奨です。初心者が最初から達成すべきランニング時間ではありません。

膝に痛みがあっても、ゆっくりなら走れますか?

「ゆっくりなら安全」とは判断できません。歩行時にも痛む、腫れがある、走るたびに悪化する場合は、自己判断で続けず相談してください。

大会出場を目標にしてもよいですか?

目標の一つにできます。ただし、まずは日常の運動を無理なく続けられることを優先しましょう。参加する場合は、距離だけでなく、制限時間、コース、気候、途中でやめられる場所も確認します。

まとめ|60代・70代からのランニングは、今の自分に合う一歩から

 60代・70代から走り始めるときは、歩行に短いジョギングを挟み、身体の反応を確かめながら進めましょう。

  • 持病や気になる症状がある場合は、始める前に相談する
  • 最初は会話が続く程度で、短い時間から取り組む
  • 走る日には間隔を空け、翌日の状態も確認する
  • 筋力運動や安全なバランス運動も組み合わせる
  • 痛みや普段と違う症状があれば、予定より身体を優先する

楓(かえで)
楓(かえで)

最初の目標は、速さや距離よりも、自分に合う量を見つけ、また運動したいと思える形を作ることです。

参考文献