
「走るだけで精いっぱいなのに、筋トレまで必要?」
「ランニングと筋トレを両立すると、疲れが抜けなくなりそう」
仕事や家事の合間に走る市民ランナーにとって、筋トレの時間をどう確保するかは悩ましい問題です。
ランニングと筋トレは両立できます。ただし、今の練習に筋トレをそのまま上乗せすると、疲労が増えて走ることが負担になる場合もあります。
まずは週1回、短い時間から。走る量や疲れ具合に合わせて調整し、慣れたら週2回を目指す方法が取り入れやすいでしょう。
この記事では、健康のために走る方から、マラソンの完走や自己ベストを目指す方まで、無理なく続けられる組み合わせ方を紹介します。
ランニングをしていても筋トレをする意味はある?

走る練習と筋トレでは得意なことが違う
ランニングは、一定の動きを繰り返しながら長く動き続ける運動です。一方、筋トレでは負荷や動作を調整し、狙った筋肉に力を発揮させる練習ができます。
走るときにも脚の筋肉は使いますが、それだけで筋力が十分に高まるとは限りません。スクワットやかかと上げなどを組み合わせると、走る練習とは違う刺激を加えられます。

市民ランナーにとっては、走るための体力に加え、階段や立ち上がりなど日常生活で使う筋力も鍛えられる点が魅力です。
ランニングの効率を高める可能性がある
同じ速さで走るときに必要なエネルギーが少ない状態を、「ランニングエコノミーがよい」と表現します。
2024年の研究レビューでは、高重量の筋トレやジャンプ系のトレーニングなどによって、中長距離ランナーのランニングエコノミーが改善する可能性が示されています。
ただし、研究対象にはトレーニング経験のあるランナーが多く含まれます。自重スクワットを少し行えば、誰でも同じように速くなるという意味ではありません。

筋トレ初心者は、まず動作に慣れることから始めましょう。記録向上のために本格的な負荷を扱いたい場合は、指導を受けながら段階的に進める方法が適しています。
けが予防に役立つ場合もある
初心者の市民ランナーを対象とした研究では、理学療法士の指導下で行った股関節・体幹の運動プログラムにより、下肢のけがが少なくなりました。
一方、同じ研究の足部・足関節を中心としたプログラムでは、同様の予防効果は確認されていません。「筋トレなら何でもけがを防げる」とは言い切れないのです。

筋トレを取り入れても、急な走行距離の増加や休養不足を埋め合わせることはできません。走る量と回復のバランスも一緒に見直しましょう。
ランニングと筋トレを両立するなら週何回?

最初は週1回でもよい
筋トレを習慣にしていない方は、週1回、10〜15分程度から始めると取り組みやすくなります。
これは記録向上に最適と証明された回数ではなく、生活に組み込み、疲労の出方を確かめるためのスタート案です。

慣れてきたら週2回に増やし、1回15〜25分ほどを目安に調整します。最初から毎日行う必要はありません。
ランニングも筋トレも同時に増やさない
筋トレを始めた週に、走行距離やスピード練習まで増やすと、どの負荷で疲れたのか分かりにくくなります。
導入時はランニングを少し短くするか、余裕のある週を選びましょう。例えば「いつものジョギングを10分短くし、その時間を筋トレに使う」という方法です。

市民ランナーの両立では、限られた時間の中で練習を配分することが大切です。
同じ日に行ってもよい?ランニングと筋トレの順番

同じ日にまとめる方法も選べる
両方を別の日にすると、運動する日が増えて休みにくくなる方もいるでしょう。その場合は、短いジョギングと筋トレを同じ日にまとめる方法もあります。
有酸素運動と筋トレを組み合わせた研究のレビューでは、筋トレ単独と比べて、最大筋力や筋肉量の増加が平均的に大きく損なわれる結果にはなっていません。
ただし、瞬発的に力を出す能力の伸びは小さくなる可能性があります。

健康維持やマラソン完走を目指す方が、同じ日に行うことを過度に心配する必要はありません。まずは続けられる日程を選びましょう。
順番はその日に大切にしたい練習で決める
| その日の目的 | 組み合わせ方の例 |
|---|---|
| ランニングの質を優先したい | ランニングを先に行い、筋トレは軽めにするか別の時間帯へ |
| 筋トレの動作や負荷に集中したい | 疲れていない状態で筋トレを行い、ランは短く軽くする |
| 健康づくりとして両方続けたい | 続けやすい順番を選び、どちらも余裕を残す |
新しい筋トレや重い負荷を扱う日は、長く走った直後に行わず、疲れていない時間を選ぶと動作を確認しやすくなります。

朝にランニング、夜に筋トレなど、数時間空けられるなら分けても構いません。ただし、そのために睡眠を削ってしまうなら、短くまとめるほうが生活に合う場合もあります。
大切なランの直前に脚を追い込まない
ロング走やスピード練習の前に、慣れない脚の筋トレを入れると、筋肉痛や重だるさが残ることがあります。
まずは、大切なランの前日を避けて配置しましょう。筋肉痛が長引く方は、さらに間隔を空ける必要があります。

「何時間空ければ必ず回復する」と決めるより、歩行や階段、軽いジョギングでの脚の状態を見て調整することが実用的です。
自宅で始める市民ランナー向け筋トレメニュー

以下は、筋トレに慣れていない方向けの導入例です。研究で使われた高重量トレーニングや、けが予防プログラムそのものではありません。
最初は各種目1セットから始め、余裕があれば2セットに増やします。セットの間は息が整うまで休み、目安として1分ほど確保しましょう。
| 種目 | 最初の目安 | 動作のポイント |
|---|---|---|
| スクワット | 8〜12回 | 椅子に座るようにお尻を下ろし、足裏全体で支える |
| ヒップリフト | 10〜15回 | あお向けで膝を立て、腰を反りすぎずにお尻を持ち上げる |
| カーフレイズ | 10〜15回 | 壁などに手を添え、両脚でかかとを上げ下げする |
| 膝つきサイドプランク | 左右10〜20秒 | 肘と膝で支え、体を無理なく一直線に保つ |
限界まで追い込まなくてよい
最初は「あと2〜3回はできそう」と感じる程度で終えましょう。筋トレの回数をこなすために、動作を崩したり、勢いをつけたりする必要はありません。
筋肉痛の強さも、効果の大きさを示す点数にはなりません。翌日の生活やランニングへの影響を見ながら調整してください。
慣れてきたら少しずつ負荷を上げる
同じ動作を楽にこなせるようになったら、回数、セット数、重さのいずれか一つを少し増やします。
例えば、スクワットを1セットから2セットにする、軽いダンベルを持つ、といった方法です。一度にすべてを増やす必要はありません。

自重では十分な刺激を得にくくなった方や、記録向上を狙って高重量の筋トレに進みたい方は、設備のある場所で指導を受けることも検討しましょう。
ランニングと筋トレを両立する1週間の例

次の表は、ランニング週3回・筋トレ週2回の生活に合わせた一例です。すべての人に最適な日程というわけではありません。
| 曜日 | 内容 |
|---|---|
| 月曜日 | 休養 |
| 火曜日 | 会話できる楽なジョギング20〜40分+筋トレ10〜20分 |
| 水曜日 | 休養、または軽い散歩 |
| 木曜日 | 会話できる楽なジョギング20〜40分+筋トレ10〜20分 |
| 金曜日 | 休養 |
| 土曜日 | 休養、または軽い散歩 |
| 日曜日 | 体力に合った少し長めのランニング |
走る時間は普段の習慣に合わせて短くして構いません。初心者なら、ジョギングに歩きを混ぜる方法もあります。
筋トレを始めたばかりなら、まず火曜日だけ行い、疲れの出方を確認してから木曜日にも追加しましょう。

日曜日にレースや大切なロング走がある週は、木曜日の筋トレを減らすか省略します。週2回を守ることより、優先したいランに無理なく取り組めることを大切にしてください。
両立がうまくいかないときの見直し方

毎回のランで脚が重い
筋トレを始めてから走りにくい状態が続くなら、まずセット数や種目数を減らしましょう。
下半身の筋トレを半分にする、週2回を週1回に戻す、ランニングを短くするなど、調整方法は複数あります。
筋肉痛があるのに予定どおり走ろうとしている
軽い張りがある程度と、歩き方や走り方が変わるほどの痛みでは対応が違います。
動作が崩れるほどの筋肉痛がある日は、休養や散歩への変更を考えましょう。関節や腱の局所的な痛み、腫れ、悪化する痛みは、筋肉痛として片づけず、運動を中止して医療機関などに相談してください。
忙しくて続かない
時間が取れない週は、スクワットとカーフレイズを1セットずつ行うだけでも、習慣を保つきっかけになります。
ただし、短い運動だけで十分な記録向上が得られると考える必要はありません。まず続ける形を作り、余裕のある時期に内容を整えましょう。
疲れている夜に睡眠を削ってまで行うより、その日は休み、次の機会につなげるほうが長く続けやすくなります。
ランニングと筋トレの両立でよくある質問

走ると筋肉が落ちて、筋トレが無駄になりませんか?
ただし、走る量が多く、食事や回復が追いつかない状態には注意が必要です。運動量だけでなく、食事と休養も含めて考えましょう。
筋トレをすると体が重くなりませんか?
体重だけで判断せず、走ったときの感覚、扱える負荷、疲労の残り方も確認しましょう。
レース直前も筋トレを続けたほうがよいですか?
普段から筋肉痛が長引く方は、さらに早めに量を減らす必要があります。直前に筋力を伸ばそうとするより、それまでの練習を生かせる状態を整えましょう。
まとめ
ランニングと筋トレを両立するには、走る量、筋トレの量、回復に使える時間を一緒に考えることが大切です。
まずは週1回、10〜15分から始め、慣れたら週2回へ。筋トレを追加する分だけランを短くするなど、生活の中で無理なく配分しましょう。

市民ランナーにとって、筋トレは必ず毎回やり切らなければならない宿題ではありません。走る楽しさや目標を支えるために、自分に合った量を探していきましょう。
参考文献
- Llanos-Lagos C, et al. Effect of Strength Training Programs in Middle- and Long-Distance Runners’ Economy at Different Running Speeds: A Systematic Review with Meta-analysis. Sports Med. 2024;54:895–932.
- Leppänen M, et al. Hip and core exercise programme prevents running-related overuse injuries in adult novice recreational runners: a three-arm randomised controlled trial (Run RCT). Br J Sports Med. 2024;58:722–732.
- Schumann M, et al. Compatibility of Concurrent Aerobic and Strength Training for Skeletal Muscle Size and Function: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2022;52:601–612.
風を切るランニング 