
「昨日は少し走っただけなのに、どうしてこんなに筋肉痛になるの?」
「走り方が悪いのかな?」
「痛みがあるけど、今日も走って大丈夫?」
ランニングを始めた翌日、太ももやふくらはぎが痛くて、階段を下りるのもつらいーーそんな経験はありませんか?
筋肉痛が続くと、せっかく始めたランニングに不安を感じたり、次の練習をためらったりすることもあると思います。
特にランニング初心者や、久しぶりに走った人は、身体がまだ運動の負荷に慣れていないため、太もも・ふくらはぎ・お尻などに筋肉痛が起こりやすくなります。また、走る距離やスピード、坂道の有無、接地方法などによっても、負担がかかりやすい部位は変わります。
ただし、筋肉痛が出たからといって、必ずしも走り方が悪いわけではありません。反対に、「お尻やハムストリングスが筋肉痛だから、正しく使えている」とも言い切れません。
大切なのは、筋肉痛が起きた原因を一つに決めつけず、トレーニング量や走り方、回復状況を整理することです。
本記事では、ランニングで筋肉痛になりやすい部位と走り方の関係、筋肉痛を強くしないための予防方法、筋肉痛が生じたときの対処法について、研究報告をもとに分かりやすく解説します。

筋肉痛と上手に付き合いながら、無理なく長くランニングを続けるための参考にしてみてください。
この記事の結論
ランニング初心者さんや久しぶりに走ったランナーさんは、ランニングの距離やスピードにもよりますが、基本的に筋肉痛を完全に避けることは難しいです。そのため、筋肉痛を軽くするという考え方が望ましいです。
ランニングによる筋肉痛を軽くするうえで、特に大切なのは次の3点です。
- 距離・スピード・坂道の量を急激に増やさない
- 筋肉痛が強い日は無理に追い込まず、回復時間を確保する
- 睡眠と食事を整え、必要に応じて軽い運動やマッサージを取り入れる

ウォーミングアップやストレッチには身体を動かしやすくする役割がありますが、筋肉痛を確実に防げるわけではありません。
また、筋肉痛は筋肉が強くなるために必ず必要な現象ではなく、筋肉痛が強いほどトレーニング効果が高いわけでもありません。
ランニング後に起こる筋肉痛とは?

ランニングの翌日から数日後に現れる筋肉の痛みやこわばりは、一般的に「遅発性筋肉痛(DOMS)」と呼ばれます。
遅発性筋肉痛は、運動直後ではなく、運動から12〜24時間程度経過してから現れ、24〜72時間程度で強くなることがあります。多くの場合は数日から1週間程度で徐々に軽くなります。
特に筋肉痛が起こりやすいのは、次のような場合です。
- ランニングを始めたばかり
- 久しぶりに走った
- 走行距離を急に増やした
- いつもより速いペースで走った
- 坂道や階段を多く走った
- 下り坂を長く走った
- フォームや接地方法を大きく変えた
- 新しいシューズに変更した
以前は筋肉に乳酸が蓄積することで筋肉痛が生じると説明されることがありました。しかし、翌日以降に起こる遅発性筋肉痛の主な原因は乳酸ではありません。

不慣れな運動による筋線維や周辺組織への微細な損傷と、それに伴う炎症反応などが関係すると考えられています。
ランニングで筋肉痛になりやすい部位と走り方

ふくらはぎの筋肉

ふくらはぎの下腿三頭筋は、着地後に身体を支え、足首を伸ばして身体を前へ進める役割を担います。
次のようなランニングでは、ふくらはぎへの負担が増えやすくなります。
- 前足部で接地するフォアフット走法
- 上り坂のランニング
- ダッシュやスピード練習
- 足首で強く地面を蹴る走り方
- 裸足系・薄底シューズへの急な変更
- 走行距離やペースの急激な増加
フォアフット接地は、膝への負荷を軽減する場合がある一方で、足関節やアキレス腱、ふくらはぎへの負荷を増やすことがあります。
そのため、フォアフット走法に変えれば故障を予防できるとは限りません。接地方法を変更するときは、短い距離から段階的に慣らす必要があります。

ふくらはぎの筋肉痛が続く場合は、足首だけで地面を強く蹴っていないか、坂道やスピード練習を増やし過ぎていないかを確認しましょう。
太もも前の筋肉(大腿四頭筋)

大腿四頭筋は、膝を支えながら着地時の衝撃を受け止める重要な筋肉です。
特に負担が増えやすいのは、次のような場面です。
- 下り坂を長く走った
- 階段を下りる運動を行った
- 着地時に強くブレーキをかけている
- 身体より大きく前に足を着いている
- 走行距離を急激に増やした
下り坂では、身体が前へ進み過ぎないように大腿四頭筋がブレーキをかけます。筋肉が引き伸ばされながら力を発揮するため、平地よりも筋肉痛が起こりやすくなります。

太もも前が筋肉痛になっただけで、必ずしもフォームが悪いとは判断できません。
しかし、毎回強い筋肉痛が出る場合は、歩幅を広げ過ぎていないか、着地位置が身体から離れ過ぎていないかを動画で確認してみましょう。
太もも裏の筋肉(ハムストリングス)

ハムストリングスは、脚を後ろへ動かす股関節伸展や、走行中の膝の動きを調整する働きを持っています。
次のようなトレーニングでは負担が増えやすくなります。
- ダッシュや流し
- インターバル走
- 上り坂のランニング
- 大きな歩幅でのランニング
- 急なペースアップ
ハムストリングスの筋肉痛は、速いペースや慣れていない運動を行った後に生じることがあります。
ハムストリングスは前に進むための重要なアクセル筋です。ただし!!「ハムストリングスが筋肉痛だから、うまく使えている」とは限りません。強い張りや走行中の鋭い痛みがある場合は、単なる筋肉痛ではなく肉離れなどの可能性もあります。
お尻の筋肉(殿筋群)

大殿筋は股関節を伸ばして身体を前へ進め、中殿筋などは片脚で着地したときに骨盤を安定させます。
お尻の筋肉痛が起こりやすいのは、次のような場合です。
- 上り坂を走った
- ダッシュやスピード練習を行った
- 歩幅を大きくした
- 長い距離を走った
- スクワットやランジを始めた
お尻の筋肉痛は、殿筋群に普段より強い負荷がかかった結果として生じます。ただし、筋肉痛があること自体は、殿筋群を正しく使えている証拠にはなりません。

筋肉痛が毎回片側だけに強く出る場合は、走路の傾き、脚の左右差、過去のケガなどが影響している可能性もあります。
ランニングコースや走り方などを見直したり、補強運動を取り入れてみましょう。
腹筋・体幹周囲の筋肉

腹筋群や体幹の筋肉は、走っている間の姿勢を保ち、上半身と下半身の動きをつなぐ役割を担います。ランニング初心者や、長い距離を走った後には、腹部や脇腹周辺に筋肉痛が出ることがあります。
また、坂道、トレイルランニング、強い腕振りを伴うスピード練習では、体幹の筋肉への負担が増えることがあります。

体幹の筋肉痛だけでフォームの良し悪しを判断することはできません。呼吸時の鋭い痛みや腹部の強い痛みがある場合は、筋肉痛以外の原因も考える必要があります。
背中・腰周囲の筋肉

背中や腰周囲の筋肉も、ランニング中の姿勢を支えています。
長時間のランニングや慣れていない坂道、上半身に力が入り過ぎた走り方などによって、背中に疲労感や筋肉痛が出ることがあります。
ただし、腰の痛みをすべて筋肉痛として扱うのは危険です。
次のような場合は、ランニングを中止して専門家に相談しましょう。
- 走っている最中に鋭い痛みが出た
- 脚にしびれや力の入りにくさがある
- 前屈や反らす動作で強く痛む
- 痛みが日ごとに悪化している
- 1週間以上たっても改善しない

反り腰に見えるフォームと腰の痛みが必ずしも直接関係するとは限らないため、見た目だけで原因を決めつけないことも大切です。
ランニングによる筋肉痛を予防する方法

筋肉痛を完全に防ぐ方法はありません。
しかし、トレーニング内容を段階的に調整することで、日常生活や次の練習に支障が出るほどの筋肉痛は避けやすくなります。
距離やスピードを急に増やさない
筋肉痛を強くしないために最も重要なのは、身体が慣れていない負荷を急激に加えないことです。
特に注意したいのは、次のような変更を同時に行うことです。
- 走行距離を増やす
- ペースを上げる
- 坂道を取り入れる
- スピード練習を始める
- シューズを変更する
- 接地方法を変更する
一度に複数の条件を変えると、どの負荷によって痛みが出たのか分からなくなります。
まずは距離、ペース、コースのいずれか一つだけを少しずつ変更しましょう。

同じ運動を繰り返すと、その運動に対する筋肉痛が軽くなる「反復効果」が起こることも知られています。最初から追い込まず、身体を徐々に慣らすことが大切です。
ウォーミングアップを行う
ランニング前は、10〜20分程度のウォーキングや軽いジョギングから始め、徐々にペースを上げましょう。
必要に応じて、次のような動的ウォーミングアップを取り入れます。
- 脚を前後に振る
- 股関節を回す
- 軽いランジ
- もも上げ
- スキップ
ウォーミングアップは、体温を上げて関節や筋肉を動かしやすくし、その後の運動に備えるために有効です。

ただし、ウォーミングアップを行えば筋線維の損傷や筋肉痛を確実に防げる、という十分な根拠はありません。
筋肉痛予防だけを目的にするのではなく、安全に身体を動かし始める準備として行いましょう。
下り坂やスピード練習は少量から始める
下り坂では大腿四頭筋に強い伸張性負荷がかかり、スピード練習ではふくらはぎやハムストリングスへの負担が増えます。
これらのトレーニングは、平地のゆっくりしたランニングよりも筋肉痛が強く出やすいため、最初は短い距離や少ない本数から始めましょう。

特にレース直前に、慣れていない坂道練習や筋力トレーニングを新しく始めるのは避けた方が安全です。
筋力トレーニングを継続する
スクワット、カーフレイズ、ヒップリフト、ランジなどを段階的に行うことで、ランニングに必要な筋力を高めることができます。
ただし、筋力トレーニング自体も、開始直後や負荷を増やした後には筋肉痛を起こします。

ランニングと筋力トレーニングの両方を同時に増やさず、週全体の負荷を調整しましょう。
ストレッチだけで筋肉痛を防ごうとしない
ランニング後に軽くストレッチをすると、気持ちよく感じたり、身体を動かしやすく感じたりすることがあります。

しかし、運動前後のストレッチによって遅発性筋肉痛が大幅に軽減されるとは確認されていません。
ストレッチには柔軟性を保つ役割がありますが、筋肉痛を防ぐための必須条件ではありません。
痛みを我慢して強く伸ばすと、かえって症状が悪化する可能性があります。気持ちよく伸びる範囲で行いましょう。
運動後のアイシングを習慣化しない
冷却は、運動後の痛みを一時的に軽くする可能性があります。
一方で、通常のランニング後に毎回筋肉を冷やしても、筋肉痛や組織の回復を確実に早めるとは限りません。また、筋力トレーニング後に冷水浴を繰り返すことで、筋肉の適応が弱まる可能性を示した研究もあります。

腫れや強い熱感がある場合に短時間冷やすことはありますが、通常の筋肉痛に対して毎回アイシングを行う必要はありません。
ランニング後の筋肉痛を和らげる対処法
筋肉痛をすぐに治す方法はありません。
基本的には、時間の経過とともに筋肉が回復するのを待つことになります。そのうえで、痛みを軽くしたり、回復しやすい環境を整えたりする方法を取り入れましょう。
痛みが強いトレーニングを休む
筋肉痛が強い状態で、同じ部位に高い負荷を加えると、ランニングフォームが崩れたり、別の部位に負担が集中したりする可能性があります。
階段の上り下りや歩行でも強く痛む場合は、スピード練習、坂道、ロング走などを休みましょう。

完全に動かない必要はありませんが、痛みが増えない範囲に調整することが大切です。
軽い運動を行う
ウォーキング、軽いジョギング、ゆっくりした自転車などを行うと、一時的に身体が動かしやすくなることがあります。
ただし、軽い運動によって筋肉の修復そのものが大幅に早まるとは限りません。

「血流を促して疲労物質を流す」というより、身体を軽く動かすことで、こわばりや痛みを一時的に和らげる方法と考えましょう。
走り始めて痛みが強くなる場合や、フォームが崩れる場合は中止してください。
マッサージやフォームローラーを利用する
マッサージは、運動後の筋肉痛を軽減する方法の一つとして比較的研究されています。
複数の回復方法を比較した研究では、マッサージが遅発性筋肉痛の軽減に役立つ可能性が示されています。
ただし!!強く押せば早く治るわけではありません。痛みを我慢するほどの強いマッサージは避け、心地よく感じる範囲で行いましょう。
入浴で身体をリラックスさせる
入浴によって筋肉が修復されたり、疲労物質が直接除去されたりするとは断定できません。
一方で、温かいお湯につかることで身体が温まり、筋肉のこわばりが軽く感じられたり、リラックスしやすくなったりすることがあります。
脱水を避けるため、長時間の入浴や極端に熱いお湯は避け、水分補給も行いましょう。
十分な睡眠をとる
睡眠は、身体の回復とコンディション管理に欠かせません。
「22時から深夜2時に眠れば成長ホルモンが多く分泌される」と一律に考える必要はありません。成長ホルモンの分泌は、時計の時刻だけでなく、入眠後の深い睡眠とも関係します。
大切なのは特定の時間帯に眠ることよりも、自分の生活に合わせて十分な睡眠時間を確保し、規則的に眠ることです。

成人ランナーは、まず7時間以上を一つの目安とし、疲労やトレーニング量に応じて必要な睡眠時間を確保しましょう。
炭水化物とたんぱく質を摂取する
運動後の回復には、たんぱく質だけでなく、ランニングで消費したエネルギーを補う炭水化物も必要です。
運動後は、次のような組み合わせで食事をとりましょう。
- ご飯と魚
- パンと卵・牛乳
- おにぎりとヨーグルト
- うどんと鶏肉
- 果物と乳製品
たんぱく質は筋たんぱく質の修復に必要ですが、たんぱく質だけを大量に摂取すれば筋肉痛がすぐに治るわけではありません。

1日を通して、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルを含む食事をとることが基本です。
「クエン酸やビタミンCを摂れば筋肉痛が早く治る」と一律に断定できる十分な根拠はありません。特定の成分だけに頼らず、食事全体を整えましょう。
湿布は痛みを和らげる目的で使用する
鎮痛成分が含まれる湿布や塗り薬は、筋肉痛による痛みを一時的に軽減する場合があります。
ただし、湿布によって筋線維の修復が早まるとは限りません。温湿布も「疲労物質を除去して治す」ものではありません。

薬を使用するときは、用法・用量を守り、薬剤師や医師に確認してください。痛みを湿布で隠して高強度のランニングを続けることは避けましょう。
筋肉痛があるときにランニングしてもよい?
軽い筋肉痛で、歩行や階段動作に問題がなく、軽いジョギングで痛みが強くならない場合は、ペースと距離を落として走れることがあります。
一方、次のような場合は休養を優先してください。
- 歩くだけでも痛い
- 階段を下りるのがつらい
- 関節の動きが制限されている
- 走ると痛みが強くなる
- 痛みをかばってフォームが崩れる
- 左右どちらか一方に強い痛みがある

筋肉痛が強い日は、同じ部位を追い込むのではなく、休養や負担の少ない運動に変更しましょう。
筋肉痛とケガを見分けるポイント

遅発性筋肉痛は、運動の翌日以降に現れ、筋肉を押したり動かしたりすると広い範囲に痛みが出ることが一般的です。
一方、次の症状がある場合は、筋肉痛ではなくケガの可能性があります。
- 走っている最中に突然痛くなった
- 一点だけに鋭い痛みがある
- 腫れや内出血がある
- 体重をかけられない
- 関節そのものが痛い
- しびれや筋力低下がある
- 痛みが1週間以上改善しない
- 時間の経過とともに悪化している

激しい運動後に強い筋肉痛、著しい脱力、赤褐色の尿などが現れた場合は、横紋筋融解症などの可能性があるため、早急に医療機関を受診してください。
まとめ
ランニングによる筋肉痛は、初心者だけでなく、走行距離やペース、コースを変更した経験者にも起こります。
ふくらはぎの筋肉痛はフォアフット接地や上り坂、太もも前の筋肉痛は下り坂、ハムストリングスやお尻の筋肉痛はスピード練習や上り坂などで起こりやすくなります。
ただし、筋肉痛が出た部位だけで、走り方の良し悪しを判断することはできません。
筋肉痛を強くしないために最も大切なのは、身体が慣れていない負荷を急激に増やさないことです。筋肉痛が生じた場合は、無理に追い込まず、睡眠と食事を整え、痛みが増えない範囲で軽い運動やマッサージを取り入れましょう。

筋肉痛と上手に付き合いながら、無理なく長くランニングを続けていきましょう。
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風を切るランニング 
