ハーフマラソンのサブ80とは、21.0975kmを1時間20分未満で走ることです。必要な平均ペースは約3分47.5秒/km。目標ペースで短い距離を走れるだけでなく、後半まで余裕を残して走り続ける力が求められます。
大切なのは、毎回速く走ることではありません。ジョグを土台に、閾値走・目標ペース走・ロング走を組み合わせ、疲労に応じて調整することです。
この記事では、すでに継続して走っている市民ランナーに向けて、練習ペース、1週間の組み方、12週間のメニュー例を紹介します。
※以下は研究の知見と一般的なトレーニング原則を参考にした実践例です。このメニュー自体のサブ80達成効果が検証されているわけではなく、達成を保証するものでもありません。
サブ80に必要なペースは?3分47秒/kmを一つの目安にする

80分ちょうどの平均ペースは約3分47.5秒/kmです。3分48秒/kmでは約1時間20分10秒となり、サブ80に届きません。
平均3分47秒/kmで走った場合の通過タイムは、次のとおりです。
| 距離 | 通過タイム |
|---|---|
| 5km | 18分55秒 |
| 10km | 37分50秒 |
| 15km | 56分45秒 |
| 20km | 1時間15分40秒 |
| フィニッシュ | 約1時間19分49秒 |
ただし、この設定の余裕は約11秒です。GPSの距離表示だけを頼りにすると、実際のコース距離との違いで目標を逃すことがあります。大会の距離表示と経過時間も確認しましょう。

グロスタイムでの達成を目指す場合は、号砲からスタートラインまでの時間も含まれます。ネットタイムとの違いを事前に確認しておくことが大切です。
サブ80向けメニューを始める前に確認したいこと

この記事の12週間プランは、次のようなランナーを想定しています。
- 週5日前後、週50〜60km程度のランニングを数週間以上継続できている
- 16〜18km程度のゆっくりしたロング走に慣れている
- 閾値走やインターバル走の経験がある
- 現在の走力が目標に近く、走り方を変えるような痛みがない
これらは、サブ80に必須の条件や科学的な合格基準ではありません。以下の負荷をそのまま取り入れるための前提です。
週30km程度から急に週60kmへ増やす使い方は避けましょう。まずは今の走行量で無理なく続けられる週を増やし、ジョグの時間や頻度を段階的に整えます。

10kmの記録も参考になりますが、それだけではハーフ後半の持久力を判断できません。「速い練習の余裕」「長く走った後の状態」「翌日以降の回復」を合わせて確認してください。
サブ80を目指す練習は、5つの役割で考える

1.ジョグ|練習を継続するための土台
ジョグは、会話を続けられる余裕のある強度で行います。目安として4分45秒〜5分40秒/kmを示しますが、疲れている日はさらに遅くて構いません。

ジョグまで目標ペースに近づけると、重要な練習の前に疲労がたまりやすくなります。ペースよりも呼吸と身体の感覚を優先しましょう。
2.閾値走|きついが制御できる強度を保つ
閾値走は、呼吸が弾んでもペースとフォームを保てる強度で走る練習です。全力のタイムトライアルにはしません。
例は、連続20分、または8分×3本で間に2分のゆっくりしたジョグを入れる方法です。
サブ80に近い走力なら3分40秒〜3分47秒/kmが候補になります。ただし、これは個人の閾値を測定した値ではありません。現在の走力では厳しい場合、3分50秒〜4分00秒/kmなどに下げて、制御できる強度を優先します。
3.目標ペース走|3分47秒/kmのリズムを身につける
目標ペース走では、3分47秒/km前後での呼吸や脚の動き、後半の余裕を確認します。
まずは2km×3本などの分割走から始め、余裕が出てから連続6〜10kmへ進めます。分割走では間に2〜3分のジョグを入れます。

毎週、ハーフの距離を目標ペースで走る必要はありません。短い距離から安定させ、練習後の疲労まで含めて評価しましょう。
4.インターバル走|目標ペースより速い動きに慣れる
実践例は、1,000m×4〜5本、つなぎは2〜3分のジョグです。サブ80に近い走力の人なら3分30秒〜3分38秒/km程度が候補になります。
ただし、目標記録だけを基準に設定しないことが大切です。現在の3〜5km程度のレースペースや、その日の状態に合わせて調整します。

1本目から全力で走り、後半に大きく失速するなら設定が速すぎます。最後まで動きを保てる速さを選び、閾値走と毎週両方を詰め込まず、入れ替えて使います。
5.ロング走|長く動き続ける力を養う
この記事では、16〜22km程度を会話できる強度で走る例を示します。走り慣れていない距離へ一気に延ばさず、まずは今の距離を余裕をもって終えることを優先します。
ハーフマラソン参加者を対象とした観察研究では、走行量や最長走行距離が大きいことと、速い完走タイム・後半の失速の少なさに関連がありました。
ただし、「距離を増やせば必ず速くなる」「21km超が必須」と証明した研究ではありません。

ロング走を速くした週は、それも負荷の高い練習として数えます。距離とペースを同時に増やさないようにしましょう。
練習ペースの目安一覧

以下は、サブ80に近い走力がある人向けの候補です。暑さ、風、坂道、疲労によって調整してください。
| 練習 | ペース・強度の目安 | メニュー例 |
|---|---|---|
| ジョグ | 4分45秒〜5分40秒/km、会話できる | 40〜60分 |
| ロング走 | 会話できる強度。ジョグと同程度か遅くてもよい | 16〜22km |
| 閾値走 | 3分40秒〜3分47秒/kmが候補。現在の走力を優先 | 20分、または8分×3本 |
| 目標ペース走 | 3分47秒/km前後 | 2km×3本、連続6〜10km |
| インターバル走 | 3分30秒〜3分38秒/kmが候補。現在の走力を優先 | 1,000m×4〜5本 |
| 流し | 全力にせず、力まず滑らかに加速 | 15〜20秒×4〜6本 |
流しは、1本ごとに歩きやジョグを挟み、呼吸と動きが落ち着いてから次へ進みます。
速い練習の前には10〜20分程度のジョグと動きづくり、必要に応じて数本の流しを行い、終了後は軽いジョグで整えます。
1週間のトレーニングメニュー例|週5日・約60km

基本は「平日に速い練習を1回、週末にロング走を1回」です。目標ペースを含むロング走を行う週は、そこがもう一つの負荷の高い練習になります。
| 曜日 | 内容 | その日の総距離 |
|---|---|---|
| 月 | 休養 | 0km |
| 火 | 閾値走20分。前後のジョグを含む | 約11km |
| 水 | ゆっくりジョグ | 10km |
| 木 | ジョグ+流し15〜20秒×4本 | 約10km |
| 金 | 休養 | 0km |
| 土 | ゆっくりジョグ | 9km |
| 日 | 会話できる強度のロング走 | 20km |
| 合計 | 週5日 | 約60km |
火曜をインターバル走へ入れ替える週も作れます。日曜に目標ペース走を組み込む場合は、火曜の本数や時間を減らし、日曜の総距離も短めにします。
週4日なら、ジョグを1日減らして全体量を調整します。減らした距離を残りの日へ無理に詰め込む必要はありません。
サブ80を目指す12週間のメニュー例

以下は、すでに週50〜60km程度を継続できている人向けです。週の総距離にはウォームアップ、つなぎ、クールダウンを含みます。
表の「平日の主練習」と「週末の主練習」以外は、ジョグまたは休養にします。目標ペースの区間は週末の総距離に含み、追加ではありません。
| 週 | 週の総距離の例 | 平日の主練習 | 週末の主練習 |
|---|---|---|---|
| 1 | 50〜55km | 閾値走8分×2本、間2分ジョグ | ゆっくり16km |
| 2 | 50〜60km | 閾値走8分×3本、間2分ジョグ | ゆっくり18km |
| 3 | 55〜60km | 1,000m×4本、間2〜3分ジョグ | 総距離16kmの中に目標ペース2km×3本、間3分ジョグ |
| 4 | 45〜50km | 閾値走15分 | ゆっくり14〜16km |
| 5 | 55〜60km | 閾値走20分 | ゆっくり20km |
| 6 | 55〜65km | 1,000m×4本、間2〜3分ジョグ | 総距離16〜18kmの中に目標ペース3km×2本、間3分ジョグ |
| 7 | 60〜65km | 閾値走8分×3本、間2分ジョグ | ゆっくり20〜22km |
| 8 | 45〜50km | 閾値走15分 | ゆっくり16km |
| 9 | 55〜65km | 1,000m×4本、間2〜3分ジョグ | 総距離16〜18kmの中に目標ペース連続8km |
| 10 | 55〜60km | 閾値走8分×2本、間2分ジョグ | 総距離16〜18kmの中に目標ペース連続10km |
| 11 | 40〜45km | 閾値走15分 | レース7日前に総距離10〜12km、その中で目標ペース3km |
| 12 | レース前の練習20〜25km+本番 | レース4〜5日前に目標ペース1km×3本、間2分ジョグ | ハーフマラソン本番 |
第10週の主練習はレース約2週間前を想定しています。第12週の総距離は、本番を含めると約41〜46kmとなるため、レース前の練習量と分けて考えます。
設定をこなしても、その後数日間のジョグが極端につらくなるなら負荷が大きすぎます。
次の段階へ進むのは、練習中の動きが安定し、翌日以降の疲労が普段の範囲に収まっているときです。余裕がなければ前週の内容を繰り返すか、距離・本数を減らしてください。
連続8kmが難しい場合は、2km×3本などの短い分割走へ戻します。それでも序盤から限界に近いなら、現在の走力に合ったペースへ落とします。
休息を長くして無理に3分47秒/kmを達成しても、ハーフをそのペースで走れる証明にはなりません。目標の時期や記録を見直すことも、練習計画の一部です。
レース前の1〜2週間は、量を減らして疲労を整える

レース直前に不足分を取り戻そうとして、長距離走や全力走を追加するのは避けましょう。
持久系競技の研究をまとめたメタ解析では、練習強度や頻度を維持しつつ、練習量を減らすテーパリングがパフォーマンス改善に有効と報告されています。
ただし、対象競技や選手の条件はさまざまで、全員に同じ減らし方が最適とは限りません。
この記事では、最後の1〜2週間で距離を減らし、短い目標ペース走で感覚を保つ方法を提案します。「強度を残す」とは、追い込む時間や本数まで維持する意味ではありません。

睡眠を削る早朝練習、慣れない補強運動、新しいシューズの長時間使用なども避け、普段どおりの生活に近づけます。
サブ80を狙えるか確認するポイント

レース2〜3週間前には、一つの練習タイムだけで判断せず、次の点を確認しましょう。
- 目標ペースの8〜10kmで、前半から無理に押し続けていない
- 終盤もフォームとペースを大きく崩さずに走れる
- ゆっくりした18〜22km走を、余裕を残して終えられる
- 重要な練習後、通常のジョグへ無理なく戻れる
これらは実践上の確認項目であり、達成を予測する検証済みの判定基準ではありません。10kmの目標ペース走ができても、本番ではさらに11km以上走る必要があります。

直前に21.1kmの全力走を行って確かめるより、複数の練習と回復状態から判断しましょう。
レース当日は、序盤を急がず一定のペースを目指す

最初の1kmで大きく貯金を作ろうとすると、後半の失速につながりかねません。スタート直後は動きと呼吸を整え、徐々に予定のペースへ合わせます。
目安は、5km18分55秒、10km37分50秒、15km56分45秒です。ただし、上りや向かい風で瞬間ペースを無理に合わせる必要はありません。
15km以降は、余裕があれば少しずつペースを上げます。余裕がない場合は、まずフォームとリズムを保つことに集中します。

給水や補給は練習で試した方法を使い、当日に初めてのジェルや飲料を取り入れないようにしましょう。暑さが強い日は、予定タイムより体調と負担を優先して判断します。
サブ80の練習でよくある失敗

| よくある失敗 | 見直し方 |
|---|---|
| ジョグまで速くなる | 会話できる強度へ戻し、主練習の余裕を確保する |
| 閾値走が毎回タイムトライアルになる | 終盤まで制御できるペースへ落とす |
| 速い練習とロング走を詰め込む | 週の負荷を数え、主練習を入れ替える |
| 月間距離の数字だけを追う | 週ごとの疲労・睡眠・練習の安定を確認する |
| 休んだ練習を翌日にまとめる | 飛ばした分は取り戻さず、次の予定から再開する |
| 直前に不安で走り込む | 練習量を減らし、短い刺激で感覚を保つ |

疲労が強い日は、速い練習をジョグや休養へ変更します。局所的な痛みが強くなる、かばって走る、安静時にも痛む場合は練習を中止し、必要に応じて専門家に相談してください。
よくある質問

月間走行距離は何km必要ですか?
週3〜4日の練習でも達成できますか?
1,000mを3分30秒で走れればサブ80できますか?
30km走は必要ですか?
サブ90から12週間でサブ80に届きますか?
筋トレはどのように組み込みますか?
参考文献
- Fokkema T, et al. Training for a (half-)marathon: Training volume and longest endurance run related to performance and running injuries. Scand J Med Sci Sports. 2020;30(9):1692–1704.
- Wang Z, et al. Effects of tapering on performance in endurance athletes: A systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2023;18(5):e0282838.
※文献1は観察研究、文献2は持久系競技全般を含む研究の統合です。この記事の練習ペース・週間距離・12週間メニューを直接検証した研究ではありません。
風を切るランニング 