初心者ランナーのなかには、「マラソン練習では、どこを走ればよいのか分からない」という人も多いのではないでしょうか。
練習コースが自分に合っていないと、車や自転車との接触、転倒、道迷い、途中で帰れなくなるといったトラブルにつながる可能性があります。また、信号や坂道が多すぎるコースでは、予定していたペースや距離で練習しにくくなります。
初心者ランナーは、経験のある市民ランナーよりランニング障害の発生率が高いと報告されています。ただし、これは「特定のコースを走るとケガをする」という意味ではありません。初心者ほど、無理のない距離やペースに加えて、安全で負荷を調整しやすいコースを選ぶことが大切です。

この記事では、代表的なマラソン練習コースの特徴と、初心者がランニングコースを決めるときのポイントを解説します。
初心者は平坦で戻りやすいコースから始めよう

初心者ランナーには、次の条件を満たすコースがおすすめです。
- 車や自転車との接触リスクが少ない
- 路面が見やすく、大きな段差が少ない
- 急な上り坂や下り坂が少ない
- 体調に合わせて距離を短くできる
- 途中で走れなくなっても戻りやすい
- トイレや水分補給場所を確認できる
最初から長く複雑なコースを作る必要はありません。
まずは自宅や公園の近くに、1~3km程度の短いコースを設定し、同じ場所を複数回走る方法でも十分です。
コースに慣れてきたら、距離や目的に合わせて走る範囲を広げていきましょう。
マラソン練習コースは主に3種類
マラソン練習で利用しやすいコースは、次の3種類に分けられます。
| コース | 特徴 | 向いている練習 |
|---|---|---|
| 周回コース | 同じ場所を繰り返し走る | ジョギング、ペース走、インターバル走 |
| 往復コース | 同じ道を進み、途中で折り返す | ジョギング、ロング走 |
| 一筆書きコース | 基本的に同じ道を通らず1周する | ジョギング、景色を楽しむランニング |
この3種類について、安全性やケガの発生率を直接比較した研究は確認できませんでした。
そのため、以下では距離の測りやすさ、戻りやすさ、景色の変化など、実際の練習で使いやすいかどうかを基準に比較します。
周回コース

周回コースとは、公園や運動施設などの決められたコースを、繰り返し走る方法です。
周回コースのメリット
- 走る距離を調整しやすい
- ラップタイムを確認しやすい
- スタート地点へ戻りやすい
- 給水や荷物を同じ場所に置きやすい
- 道順を覚えやすい
例えば、1周400mのコースであれば、5周で2km、10周で4kmと簡単に距離を設定できます。「1周を〇分で走る」と決めれば、ペースの確認もしやすくなります。
また、スタート地点の近くを何度も通るため、体調が悪くなった場合や脚に痛みが出た場合にも、比較的早く練習を終了できます。

初心者ランナーや、一定の距離・ペースを設定して練習したい人に使いやすいコースです。
周回コースのデメリット
- 同じ景色が続くため飽きやすい
- 混雑していると走りにくい
- ほかのランナーにつられてペースが上がることがある
- カーブが多いコースでは同じ方向への負担が続く
周回コースは景色の変化が少ないため、人によっては単調に感じます。
毎回同じ方向に走る必要がない施設では、ときどき周回方向を変える方法もあります。ただし、施設ごとに進行方向のルールが決められている場合は、必ずルールに従ってください。
ほかのランナーが近くにいても競おうとせず、自分の練習目的に合ったペースを守りましょう。
周回コースが見つからない場合
自宅周辺に適したコースが見つからない場合は、次の言葉で検索してみましょう。
- 「ランニングコース+地域名」
- 「運動公園+地域名」
- 「陸上競技場+地域名」
- 「ランニングステーション+地域名」
ランニングステーション、通称「ランステ」は、ロッカー、更衣室、シャワーなどを利用できる施設です。施設によっては、周辺のランニングコースも案内されています。
往復コース(折り返しコース)

往復コースとは、同じ道を進み、決めた地点で折り返してスタート地点まで戻るコースです。
往復コースのメリット
- 走る距離を設定しやすい
- 帰り道に迷いにくい
- 体調に合わせて折り返し地点を変更できる
- 行きと帰りで同じ道の状態を確認できる
- 河川敷や海沿いでは景色を楽しみやすい
5kmを走る場合は2.5km地点、10kmを走る場合は5km地点で折り返すなど、距離を設定しやすいことが特徴です。
予定より身体が重いときは早めに折り返し、調子がよいときは少し先まで進むなど、その日のコンディションに合わせて調整できます。
往復コースのデメリット
- 折り返し地点で体調を崩すと戻るのが大変
- 帰り道も自力で走る必要がある
- 強い向かい風があると行きと帰りの負荷が変わる
- 折り返すときに後方のランナーや自転車と接触する可能性がある
往復コースでは、行きで走った距離と同じ距離を戻る必要があります。
「調子がよいから」と遠くまで進みすぎると、帰りに疲労が強くなっても距離を短くできません。初心者は余力を残した状態で折り返しましょう。
折り返す際は急に方向転換せず、いったん周囲を確認してから折り返してください。すぐ後ろに他のランナーや自転車が迫っていることもあります。
長い距離を走る場合は、スマートフォン、少額の現金、交通系ICカードなどを携帯しておくと安心です。
一筆書きコース

一筆書きコースとは、町や地域を大きく1周するなど、基本的に同じ道を通らずスタート地点へ戻るコースです。
一筆書きコースのメリット
- 景色の変化を楽しめる
- 同じ道を繰り返さないため飽きにくい
- 坂道やカーブなど、さまざまな環境を経験できる
- コースを考える楽しさがある
自然環境で行う運動は、屋内運動や市街地での運動と比較して、楽しさや気分に良い影響を与える可能性が報告されています。ただし、研究によって結果には差があり、自然の多いコースを走れば必ず運動を継続できるという意味ではありません。

公園、川、海、木々の多い道など、自分が走っていて心地よいと感じる場所を取り入れてみましょう。
一筆書きコースのデメリット
- 正確な距離を設定しにくい
- 道に迷う可能性がある
- 信号や交差点が多くなりやすい
- 坂道や路面によってペースが変わりやすい
- 途中で走れなくなると戻るのが大変
一筆書きコースは条件が途中で変わりやすいため、一定のペースを保つペース走や閾値走には使いにくい場合があります。
初めて走るコースでは、事前に地図アプリで距離、交差点、坂道、トイレなどを確認しておきましょう。
練習内容に合わせたコースの選び方
すべての練習を同じコースで行う必要はありません。
| 練習内容 | 適したコース |
|---|---|
| ゆっくりしたジョギング | 安全で景色を楽しめるコース |
| ペース走・閾値走 | 平坦で信号が少なく、距離を測りやすいコース |
| インターバル走 | 距離表示がある周回コースや陸上競技場 |
| ロング走 | トイレ、給水場所、帰宅手段を確保できるコース |
| 坂道練習 | 見通しがよく、交通量の少ない短い坂道 |
| 回復目的のランニング | 平坦で短く、いつでも終了できるコース |
初心者は、まず安全な周回コースや短い往復コースから始めると、距離や体調を管理しやすくなります。
マラソン練習コースを決める10のポイント

1.車や自転車との接触リスクが少ない道を選ぶ
コースを決めるときは、距離や景色よりも安全性を優先します。
次のような場所は注意が必要です。
- 歩道のない交通量の多い道
- 道幅が狭い道
- 見通しの悪い交差点
- 店舗や駐車場から車が頻繁に出入りする場所
- 自転車と歩行者が混在する狭い道
- 工事中で通路が変更されている場所
公園、河川敷、運動施設など、車と走行場所が分けられているコースは、一般道路より走りやすい場合があります。

ただし!!公園や河川敷でも自転車が高速で通過することがあります。急な方向転換や横移動をせず、周囲を確認しながら走りましょう。
2.路面が見やすく、大きな段差が少ない道を選ぶ
「硬い舗装路は危険で、柔らかい路面なら安全」と単純に判断することはできません。
研究では、アスファルトと芝生で足底にかかる圧力が異なることが報告されています。一方で、芝生は表面が不均一だと、足を取られたり捻ったりする可能性があります。
路面の種類だけで、ランニング障害を予防できるかどうかは明確になっていません。
初心者は、路面の硬さよりも次の点を確認しましょう。
- 段差や穴が見える
- 濡れて滑りやすくなっていない
- 木の根や石が少ない
- 横方向に大きく傾いていない
- 夜でも足元を確認できる

舗装路、土、芝生のどれを選ぶ場合でも、安定して着地できるかどうかが重要です。
3.信号が少ない道を選ぶ
信号が少ないコースは、一定のリズムやペースを維持しやすいことがメリットです。
特にペース走や閾値走など、決められたペースを連続して維持したい練習では、信号の少ない公園、河川敷、周回コースなどが適しています。
ただし、信号待ちがあっただけで、ジョギング全体の効果がなくなるわけではありません。
ゆっくり走る日や初心者の練習では、無理に信号のない道を探すより、安全に止まりながら走ることを優先しましょう。赤信号を避けるために無理に横断することは絶対にやめてください。
4.初心者は高低差の小さい道から始める
上り坂と下り坂では、平地とは異なる身体的な負荷がかかります。
上り坂では身体を持ち上げるための仕事量とエネルギー消費が増え、下り坂では着地時に身体を支えるための筋活動や衝撃吸収が大きくなります。
坂道自体が悪いわけではありませんが、初心者は坂の傾斜に合わせてペースを調整しにくい場合があります。

まずは平坦なコースで、無理のないペースと距離を身につけましょう。走ることに慣れてから、短い坂道を少しずつ取り入れていきます。
5.人通りが少なすぎない道を選ぶ
ケガや体調不良で動けなくなった場合を考えると、ある程度人通りがある場所のほうが助けを求めやすくなります。
一方で、人が多すぎる商店街や観光地では、歩行者との接触リスクが高くなります。
次の条件を目安にしましょう。
- 一人きりになりにくい
- 混雑しすぎていない
- 携帯電話の電波が入る
- コンビニや公共施設が近くにある
- 夜間でも周囲から見える

早朝や夜間に走る場合は、昼間とは人通りや交通量が変わるため、実際に走る時間帯の状況を確認してください。
6.トイレ・給水場所を確認する
ランニング中に腹痛や尿意が起こることがあります。
特に長い距離を走る場合は、コース上に利用できるトイレがあるか確認しておきましょう。
また、暑い時期や長時間走る場合は、公園の水道、自動販売機、コンビニなど、水分を確保できる場所も確認します。
ただし、「長距離走では必ず途中で栄養補給をしないと筋肉量が減る」とまでは言い切れません。途中補給が必要かどうかは、運動時間、強度、気温、事前の食事などによって変わります。
7.暑い時期は日陰と暑さ指数を確認する
夏場は、距離や景色だけでなく、日陰の有無や走る時間帯も重要です。
暑さ指数(WBGT)は、気温だけでなく、湿度や日射などを取り入れて熱中症リスクを示す指標です。環境省の指針では、WBGT28以上では持久走など体温が上がりやすい運動を避け、WBGT31以上では運動を原則中止するとされています。
暑い時期は次の点を確認しましょう。
- 木陰や建物の影がある
- 給水できる場所がある
- 途中で練習を終了できる
- 涼しい時間帯に走れる
- 環境省の暑さ指数を確認する

気温が高い日は、日陰の多い短い周回コースに変更したり、屋内のトレッドミルを利用したりする選択肢もあります。
8.夜間は明るさと自分の見えやすさを確認する
夜間は、ランナーから道が見えるかだけでなく、車や自転車からランナーが見えるかも重要です。
警察庁は、薄暮や夜間には明るく目立つ色の衣服、反射材、LEDライトなどを活用するよう案内しています。
反射材は胴体だけでなく、腕、手首、脚、足首など動く部分に付けることで、運転者が人の動きを認識しやすくなる可能性があります。
夜に走る場合は、次の条件を確認しましょう。
- 街灯がある
- 足元の段差を確認できる
- 反射材やライトを装着している
- 人通りが少なすぎない
- イヤホンの音量を上げすぎない

音楽を聴く場合も、車、自転車、周囲の人の音を確認できる音量にします。
9.途中で走れなくなった場合の帰宅方法を考える
コースは「予定どおり完走できること」を前提に作らないことが大切です。
脚の痛み、腹痛、脱水、急な天候変化などにより、途中で走れなくなる可能性があります。
特にロング走や一筆書きコースでは、次のものを携帯しておくと安心です。
- スマートフォン
- 少額の現金
- 交通系ICカード
- 本人確認ができるもの
- 家族などの緊急連絡先
- 必要に応じて飲み物や補給食

一人で走る場合は、家族にコースや帰宅予定時刻を伝える、位置情報を共有するなどの方法もあります。ランナー向け安全指針でも、携帯電話の携行や、走る場所を家族・友人へ知らせることが推奨されています。
10.交通量と大気の状態も確認する
幹線道路沿いは、車との接触リスクだけでなく、大気汚染への曝露も考慮する必要があります。
WHOは、空気の状態が完全でなくても定期的な身体活動による利益は大きいとしています。一方で、可能であれば運動する時間帯や場所を調整し、大気汚染への曝露を減らすことを勧めています。
都市部で走る場合は、次の方法を検討しましょう。
- 交通量の多い幹線道路を避ける
- 通勤時間帯を避ける
- 公園や河川敷を利用する
- 大気汚染が強い日は運動強度を下げる
- 必要に応じて屋内運動へ変更する

ただし、大気汚染を心配して運動そのものをやめる必要はありません。地域の状況に合わせて、より走りやすい時間と場所を選びましょう。
好きな景色や場所を取り入れよう
安全性を確保したうえで、自分が好きな場所をコースに取り入れることも大切です。
自然が好きな人は、海、川、公園、木々の多い道などを走ってみましょう。
市街地を走る場合は、好きな建物、駅、公園、カフェなどを目印にする方法もあります。
ただし、景色に集中しすぎて周囲への注意が低下しないようにしてください。写真を撮る場合は、安全な場所に止まってから撮影しましょう。
初めてのコースは昼間に下見する
地図アプリだけでは、実際の道幅、交通量、段差、工事の有無までは分からない場合があります。
初めてのコースは、可能であれば明るい時間帯に歩くか、短いジョギングで下見しましょう。
下見では次の点を確認します。
- 交差点の見通し
- 歩道の幅
- 路面の段差や傾き
- 自転車の通行量
- トイレや自動販売機
- 夜間の街灯
- 坂道の長さと傾斜
- 途中で帰宅できる駅やバス停
最初から予定距離をすべて走らず、実際の状況を確認してからコースを延ばしていくと安心です。
ランニングコースに関するよくある質問
短い周回コース、または途中で折り返せる往復コースがおすすめです。
体調に合わせて距離を短くでき、スタート地点へ戻りやすいコースを選びましょう。
信号で短時間止まっただけで、ジョギング全体の練習効果がなくなるとは言えません。
ただし、一定ペースを連続して保つペース走や閾値走では、信号の少ないコースのほうが練習を管理しやすくなります。
同じコースでも問題ありません。
距離やペースを比較しやすいことは、同じコースを走るメリットです。一方で、飽きやすい場合は、周回方向や距離を変えたり、別の安全なコースを用意したりしましょう。
芝生ではアスファルトより足底圧が小さくなる部位があると報告されていますが、芝生は凹凸や穴が見えにくいことがあります。
現時点では、芝生を走ればケガを防げるとは言い切れません。路面の種類だけでなく、平坦さ、見やすさ、走り慣れているかを確認しましょう。
反射材、LEDライト、スマートフォン、本人確認ができるものなどを携帯しましょう。
明るい服を着用し、街灯と適度な人通りがある道を選んでください。
まとめ
初心者ランナーがマラソン練習コースを決めるときは、まず安全性と戻りやすさを優先しましょう。
初心者には、平坦で路面が見やすく、信号や交通量が少ない短い周回コースまたは往復コースがおすすめです。
走ることに慣れてきたら、景色を楽しめる一筆書きコースや坂道のあるコースなど、目的に合わせて選択肢を増やしていきます。
また、コースの形だけでなく、次の点も確認することが大切です。
- 路面や交差点の安全性
- 信号や坂道の数
- トイレや給水場所
- 暑さ指数と日陰
- 夜間の街灯と反射材
- 途中で走れなくなった場合の帰宅方法
- 交通量と大気の状態

最初から完璧なコースを作る必要はありません。
短い距離から実際に走り、安全性や走りやすさを確認しながら、自分に合ったマラソン練習コースへ調整していきましょう。
参考文献
- Videbæk S, et al. Incidence of Running-Related Injuries Per 1000 h of Running in Different Types of Runners: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2015.
- Vernillo G, et al. Biomechanics and Physiology of Uphill and Downhill Running. Sports Medicine. 2017.
- Tessutti V, et al. In-shoe plantar pressure distribution during running on natural grass and asphalt in recreational runners. Journal of Science and Medicine in Sport. 2010.
- Lahart I, et al. The Effects of Green Exercise on Physical and Mental Wellbeing: A Systematic Review. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2019.
- Black AA, et al. Using retro-reflective cloth to enhance drivers’ judgment of pedestrian walking direction at night-time. Journal of Safety Research. 2021.
- 環境省「暑さ指数(WBGT)について」
- 警察庁「反射材・ライト~薄暮・夜間はつけた光が命を守る~」
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