
「なかなかランニングフォームが安定しない……」
「後半になると身体がブレて疲れてしまう……」
このような悩みを持つランナーは多いのではないでしょうか。
ランニングフォームを考えるうえで、見落とせないのが「腕振り」です。
腕振りには、主に次の役割があります。
脚の動きによって起こる身体のねじれを抑える
腕と脚の動きを合わせる
上半身と下半身の動きをつなげる
余計なエネルギー消費を抑える
研究では、腕振りを制限して走ると、肩や骨盤の回旋が大きくなり、通常の腕振りよりエネルギー消費が増えることが報告されています
一方で、「肘は必ず90度」「腕は真っすぐ前後に振る」など、すべてのランナーに共通するひとつの正解があるわけではありません。
この記事では、
ランニングにおける腕振りの役割について、初心者ランナーにも分かりやすく解説します。
1.自然に腕を振るためのポイント
2.腕振りで注意したい動き
3.腕振りを確認するためのドリル
4.体幹トレーニングや動画の活用方法

「もっと楽に走りたい」「フォームを安定させたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
ランニングにおける腕振りの役割
身体の過剰なねじれを抑える

ランニングでは、左右の脚を交互に前後へ動かします。
右脚が前へ出ると左腕が前へ出て、左脚が前へ出ると右腕が前へ出るのが基本的な動きです。脚を大きく動かすと、その反作用によって骨盤や上半身にも回転する力が加わります。
腕振りには、脚の動きによって起こる回転と反対方向に動き、身体全体の過剰なねじれを抑える役割があります。
腕を自然に振ることで、肩や骨盤が必要以上に回ることを防ぎ、全身の動きをまとめやすくなります。ただし!!体幹や骨盤の回旋を完全になくす必要はありません。
ランニングには自然な回旋運動が必要です。大切なのは、身体を固めることではなく、必要以上のねじれや揺れを抑えることです。

腕振りには、脚の動きによって起こる身体のねじれとバランスを取る役割があります!
余計なエネルギー消費を抑える

腕振りを制限すると、通常の腕振りよりもエネルギー消費が増えることが報告されています。
Arellanoらの研究では、通常の腕振りと比べて、
- 手を背中で組む
- 腕を胸の前で組む
- 手を頭の上に置く
といった状態で走ると、肩や骨盤の回旋が大きくなり、エネルギー消費も増加しましたと報告されています。

つまり、自然な腕振りには、身体の回転を調整し、余計なエネルギー消費を抑える役割があると考えられます。
※ただし、この研究から、
腕振りを修正すれば、必ずランニングエコノミーが改善する
とまではいえません。
研究で確認されているのは、あくまで「自然な腕振りを意図的に制限すると、エネルギー消費が増えた」という結果です。
腕と脚の動きを合わせる

ランニングでは、腕と反対側の脚が一緒に動きます。
この対角線上の動きによって、脚を前後へ動かしたときに起こる身体の回転が調整されます。
そのため、腕と脚の動きは互いに関係しています。
ただし!!「腕を速く振れば、必ず脚の回転も速くなる」という単純な関係が研究で証明されているわけではありません。

腕振りは、脚の動きとリズムを合わせるための手がかりになります。
腕振りが直接生み出す推進力は小さい

腕を力強く振ると、身体が前へ進むように感じることがあります。
しかし、研究では、腕振りが前方への大きな推進力を直接生み出しているわけではないことが示されています。
腕振りの主な役割は以下がポイントです
- 脚の動きによって起こる回転を調整する
- 肩や骨盤の過剰な回旋を抑える
- 上半身と下半身の動きを協調させる
そのため、「腕を強く後ろへ引けば、推進力が大きくなる」とは断定できません。
腕を無理に大きく振るよりも、脚の動きと合った自然な腕振りを意識しましょう。

腕振りは、身体を直接前へ押し出すというより、全身の動きをまとめる役割が中心です!
疲労時にフォームを確認する手がかりになる

長時間走って疲れてくると、ランニングフォームが変化します。
研究では、疲労によって以下の変化が報告されています。
- 体幹や骨盤の動きが変わる
- 上半身の傾きが変わる
- 接地時間が長くなる
- 滞空時間が短くなる
ただし!!「腕振りを整えれば、疲労によるフォームの崩れを防げる」ことを直接証明した研究は確認できていません。

腕振りは「フォームを治す方法」というよりも、疲れてきたときに全身の動きを確認するための手がかりとして考えましょう。
疲れてきたときは、
- 肩に力が入っていないか
- 手を強く握っていないか
- 腕と脚のリズムが乱れていないか
- 上半身が大きく左右に揺れていないか
を確認してみてください。
これらは研究で効果が確立された修正方法ではなく、フォームを見直すための実践的なチェックポイントです。

疲れたときは腕を強く振るのではなく、まず力みやリズムを確認しましょう!
腕振りに「ひとつの正解」はない

ランニングの腕振りには、すべてのランナーに共通するひとつの正解があるわけではありません。
上半身や骨盤の動きには大きな個人差があることが報告されています。
また、腕の振り幅や肘の角度は、走るスピードや本人の身体の特徴によって変わります。
そのため、
- 肘は必ず90度
- 腕は必ず真っすぐ前後に振る
- 左右をまったく同じ動きにする
と考える必要はありません。
大切なのは、見た目をひとつの形に合わせることではなく、
- 肩や腕に余計な力が入っていない
- 腕と脚が自然に動いている
- 身体が必要以上に揺れていない
- 痛みなく走れている
ことです。

理想の腕振りは、人によって少しずつ違います。
形だけでなく、楽に走れているかを確認しましょう!
ランニングにおける腕振りの5つのポイント
1.肘は自然に曲げる

ランニングでは、肘を曲げた腕振りが一般的です。
研究では、ランナーが自然に走ったときの肘の角度が、平均で約90度だったことが報告されています。ただし、肘を約90度に曲げることが、すべてのランナーにとって最も効率的とは確認されていません。
肘を伸ばして走った場合と曲げて走った場合でも、酸素消費量に明確な差は認められませんでした。

肘が約90度はひとつの目安として考えます。
数字にこだわりすぎず、楽に振れる角度を探しましょう。
- 肘を90度に固定しない
- 肩や腕に力が入らない角度にする
- 走る速度に合わせて自然に変化させる
2.肘は無理に後ろへ引かない

「肘を後ろへ引く」という指導は、腕を前後へ動かす感覚をつかむためによく使われます。
ただし!!以下のことを直接示した研究は確認できていません。
- 肘を後ろへ引くと走りが速くなる
- 肘を引くと推進力が高まる
- 肘を引くとランニングエコノミーが改善する

肘を後ろへ動かす場合も、肩に力が入らない範囲で軽く動かしましょう。
- 肘を強く引かない
- 胸を張りすぎない
- 腰を反らさない
- 腕だけを大きく動かさない

「大きく引く」よりも、「自然に後ろへ動く」程度で十分です。
3.肩や手の力みを確認する

肩や手の力を抜くことは、ランニング指導でよく使われるポイントです。
ただし!!ことを直接示した研究は確認できていません。
- 拳を軽く握るとエネルギー消費が減る
- 手を開くとランニングフォームが改善する
- 肩を一度すくめて落とすと走りが効率的になる

これらはフォームを直す方法ではなく、力みに気づくための実践的な確認方法として考えましょう。
- 肩が耳に近づいていないか
- 拳を強く握っていないか
- 首やあごに力が入っていないか
- 前腕が必要以上に疲れていないか

肩や腕に力を感じる場合は、手を軽く開いたり、息を吐いたりして力みを確認してみましょう。
4.腕を真っすぐ振ることにこだわらない

ランニング中の腕は、完全な直線ではなく、自然に少し斜め方向へ動きます。
研究では、通常の腕振りでも、腕が身体の前をわずかに横切る動きが確認されています。
そのため、「腕が身体の中心線を少し越えたら悪いフォーム」と判断する必要はありません。
また、「腕を真っすぐ前後へ振ること」に明確な利点があるとも確認されていません。

ただし、腕振りとともに上半身が大きくねじれたり、左右に揺れたりする場合は、全身のフォームを確認してみましょう。
腕の軌道だけを見るのではなく、腕を振ったときに身体全体がスムーズに動いているかを確認する。
5.走る速さに合わせて自然に変化させる

走る速さが変わると、肩や骨盤を含む上半身の動きも変化します。
ただし、
- ゆっくり走るときは必ず小さく振る
- 速く走るときは必ず大きく振る
- 腕を速く振れば脚の回転が速くなる
といった決まりが、研究で確立されているわけではありません。

腕振りを意図的に操作しすぎず、走るスピードや脚の動きに合わせて自然に変化させましょう。
- 腕だけを無理に速くしない
- 腕だけを大きく振らない
- 腕と脚のタイミングを確認する
- 肩や手に力が入ったら一度力を抜く
腕振りの左右差は問題?

腕振りには、多少の左右差がみられることがあります。しかし、左右差があるだけで、悪いフォームとは判断できません。
研究では、腕振りの左右差が、脚や体幹の左右差を補うように現れる可能性も示されています。
ただし、これは少人数を対象とした研究であり、どの程度の左右差から問題になるかは分かっていません。
- 片方の腕だけ大きく身体の前を横切る
- 片方の肩が大きく上がる
- 上半身が一方向へ大きく傾く
- 走ると肩や背中に痛みが出る
- 疲れると左右差が急に大きくなる

左右差を無理にそろえようとすると、かえって走りにくくなることがあります。
腕だけでなく、体幹や骨盤、脚の動きも一緒に確認することが大切です。
腕振りで注意したい5つのポイント

肘の約90度は目安であり、走っている間ずっと固定する必要はありません。
肘の角度を保とうとしすぎると、肩や腕に力が入ることがあります。
腕を大きく強く振れば、必ず速く走れるわけではありません。
腕振りが直接生み出す前方への推進力は小さいことが報告されています。
自然な腕振りでは、多少の斜め方向の動きがみられます。
腕の軌道を真っすぐにしようとしすぎると、かえって動きが硬くなる可能性があります。
腕振りの左右差は、脚や体幹の動きと関係している場合があります。
腕だけを無理にそろえるのではなく、全身の動きを確認しましょう。
ランニングフォームは、
- 腕
- 体幹
- 骨盤
- 股関節
- 脚
- 足の接地
など、全身の動きによって作られます。
腕振りだけですべての問題を解決することはできません。
腕振りを確認するための実践ドリル5選
以下は、腕振りの感覚や左右差を確認するための実践的なドリルです。
これらのドリルによって、腕振りやランニングパフォーマンスが改善することを直接示した研究は確認できていません。しかし、ランニングの腕振りのトレーニングとして紹介されているものをお伝えしていきます。
1.その場で腕振り

立った状態で肘を自然に曲げ、腕を動かします。
- 肩がすくんでいないか
- 手を強く握っていないか
- 上半身が大きく左右に揺れていないか
- 左右の腕に極端な違いがないか

最初はゆっくり行い、力みがなければ少しずつテンポを上げます。
2.座って腕振り

椅子や床に座った状態で腕を振ります。
座ることで脚の動きが少なくなるため、肩や腕の動きを確認しやすくなります。
- 肩が上がっていないか
- 腕を強く後ろへ引いていないか
- 身体が左右に大きく揺れていないか
- 腕を動かしても呼吸を続けられるか

これは動きを確認するための方法であり、座って腕を振ることで走力が向上すると証明されているわけではありません。
3.腕振りを意識したウォーキング

歩きながら、腕と反対側の脚が一緒に動いているかを確認します。
- 右脚と左腕が一緒に前へ出ているか
- 肩甲骨を無理に寄せていないか
- 腕だけを大きく振っていないか
- 身体全体が自然に動いているか
4.ゆっくりジョギング

会話ができる程度のペースで走りながら、腕振りを確認します。
一度に多くのことを直そうとせず、ひとつだけ確認しましょう。
例えば、
- 肩の力み
- 手の握り
- 腕と脚のタイミング
- 上半身の左右の揺れ
などです。

意識しすぎて身体が硬くなった場合は、一度フォームのことを忘れて自然に走りましょう。
5.ゆっくり加速する走り

ゆっくりしたペースから始め、少しずつ走る速度を上げます。
速度の変化に合わせて、腕の動きが自然に変わっているかを確認します。
- 腕だけで加速しようとしていないか
- 肩や手に力が入っていないか
- 腕と脚のタイミングが大きく乱れていないか
- フォームが崩れる前に終了できているか
腕振りを支える体幹トレーニング
腕振りを改善するために、腕の筋力だけを鍛える必要はありません。
ランニングでは、腕や脚を動かしながら、体幹や骨盤の位置を保つことが求められます。
体幹トレーニングによって、5000m走の成績や走行中のエネルギー消費が改善した研究はあります。
ただし!!「プランクやサイドプランクによって、腕振りそのものが改善する」ことを直接示した研究は確認できていません。

体幹トレーニングは、全身の安定性を支える補助トレーニングとして取り入れましょう。

- うつ伏せになり、肘を肩の下につく
- つま先を立て、身体を持ち上げる
- 頭からかかとまでをできるだけ一直線に保つ
- 腰を反らしたり、お尻を高く上げたりしない
- 呼吸を止めずに姿勢を保つ

腰に痛みが出る場合は、膝を床につけて負荷を下げましょう。
- 横向きになり、肘を肩の下につく
- 膝または足で身体を支える
- 腰を持ち上げる
- 頭から足までをできるだけ一直線に保つ
- 身体が前後へ倒れないようにする

難しい場合は、膝を曲げて床につけた姿勢から始めましょう。
- 四つ這いになる
- 右腕を前へ、左脚を後ろへ伸ばす
- 身体が左右に傾かないように保つ
- ゆっくり元へ戻す
- 反対側も同じように行う

腕と反対側の脚を動かすため、ランニングと似た対角線上の動きを確認できます。
- 仰向けになり、両腕を天井方向へ伸ばす
- 股関節と膝を曲げて脚を持ち上げる
- 腰を反りすぎないようにする
- 右腕と左脚をゆっくり床へ近づける
- 元へ戻し、反対側も行う

腕と脚を動かしながら、体幹の位置を保つ練習になります。
腕振りを動画で確認する方法
自分の腕振りは、走りながら見ることができません。スマートフォンなどで撮影すると、自分の動きを客観的に確認できます。
視覚的なフィードバックを使った走り方の練習によって、ランニング動作が変化した研究はあります。
ただし!!その研究は主に接地時の衝撃を対象としており、腕振りを直接調べたものではありません。

動画撮影は腕振りを改善すると証明された方法ではなく、自分の動きを確認する手段として活用しましょう。
- 肩がすくんでいないか
- 腕を強く後ろへ引いていないか
- 腕振りとともに腰が大きく反っていないか
- 上半身が前後に大きく揺れていないか
- 腕振りに合わせて上半身が大きくねじれていないか
- 肩の高さに大きな左右差がないか
- 頭や体幹が左右に大きく揺れていないか
- 腕振りに大きな左右差がないか
- 肩が必要以上に上がっていないか
- 骨盤や体幹が大きく左右に傾いていないか

一度にすべてを修正せず、気になる項目をひとつだけ確認しましょう。
腕振りを直しすぎないことも大切
腕振りを意識しすぎると、肩や腕に力が入り、かえって走りが硬くなることがあります。
フォームを確認するときは、次の順番がおすすめです。
- まず自然に走る
- 気になる部分をひとつ確認する
- 短時間だけ意識する
- 再び自然に走る
- 走りやすさが変わったか確認する

見た目がきれいでも、身体に力が入って走りにくくなっていては意味がありません。
修正したあとは、以下を確認しましょう。
- 楽に走れるか
- 呼吸しやすいか
- 肩や腕が疲れにくいか
- 痛みがないか
- 腕と脚が自然に動いているか
腕振りを確認するときの合言葉
腕振りを確認するときは、細かな角度をいくつも意識するより、短い言葉をひとつ使う方が分かりやすくなります。
- 肩の力を抜く
- 手を強く握らない
- 腕だけで走らない
- 腕と脚を一緒に動かす
- 大きさより自然さを大切にする

これらは研究で効果が確立された指示ではなく、力みや動きを確認するための実践的な言葉です。
腕振りは「力強さ」よりも、自然に全身と連動していることが大切です!
まとめ
本記事では、ランニングにおける腕振りの役割・コツ・実践的な確認方法について解説しました。
- 脚の動きによって起こる身体の回転とバランスを取る
- 肩や骨盤の過剰な回旋を抑える
- 腕と反対側の脚が対角線上に協調して動く
- 自然な腕振りを制限したときのエネルギー消費増加を抑える
- 肘は約90度を目安に自然に曲げる
- 肘を無理に後ろへ引かない
- 肩や手の力みを確認する
- 腕を真っすぐ振ることにこだわらない
- 走る速さに合わせて自然に変化させる
- その場で腕振り
- 座って腕振り
- 腕振りを意識したウォーキング
- ゆっくりジョギング
- ゆっくり加速する走り
これらのドリルが腕振りや走力を直接改善することを示した研究は確認できていません。また、腕振りには、すべてのランナーに共通するひとつの正解があるわけではありません。
腕振りが前方への大きな推進力を直接生み出しているわけではなく、腕振りの主な役割は、脚の動きによって起こる身体の回転を調整し、全身の動きをまとめることです。
肘の角度や腕の軌道だけにこだわらず、
- 自然に走れているか
- 肩や腕に力が入っていないか
- 身体が必要以上に揺れていないか
- 痛みなく走れているか
を確認しましょう。

大きく力強く振ることよりも、腕と脚が自然に動いていることが大切です。
自分に合った腕振りを見つけて、楽に安定して走れるフォームを目指しましょう!
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