「鼻がつまって、走ると息苦しい」「走り始めると鼻が通るのに、終わるとまたつまる」。鼻づまりがあると、いつものランニングも快適に続けにくくなります。
鼻づまりが軽く、発熱や強いだるさ、胸の症状がなければ、軽い運動を試せる場合があります。ただし、走ることで鼻づまりが治るとは限りません。
この記事では、市民ランナーに向けて、鼻づまりとランニングの関係、練習を調整する目安、走る前後にできる対策を解説します。
ランニングで鼻づまりが起こる主な理由

鼻づまりの原因は一つではありません。まずは「いつ、どこで、どんな症状と一緒に起こるか」を確認しましょう。
| 起こり方・伴う症状 | 考えられる背景 | ランニングで見直すこと |
|---|---|---|
| 花粉の季節や特定の場所で悪化し、くしゃみ・目のかゆみもある | アレルギー性鼻炎 | 花粉情報、コース、屋内練習への変更 |
| 寒い日や気温差の大きい日に出る | 温度・湿度の変化による鼻への刺激 | 時間帯、環境、運動の始め方 |
| 走っている最中や直後に鼻水・鼻づまりが出る | 運動がきっかけとなる鼻症状 | 強度、走る場所、症状が続く時間 |
| のどの痛み、発熱、だるさなどもある | 風邪などの呼吸器感染症 | 練習より体調の回復を優先 |
| 同じ側がいつもつまる、普段からつまっている | 鼻の構造や持続する炎症など | 耳鼻咽喉科で原因を確認 |
この表だけで原因を診断することはできません。
アレルギー性鼻炎では花粉などが、非アレルギー性鼻炎では気温・湿度の変化や煙、運動などが症状のきっかけになります。

「ランニング中だけだから問題ない」と決めつけず、毎回繰り返すときは原因を確認することが大切です。
走ると鼻づまりが軽くなるのはなぜ?

運動中は、鼻の粘膜の血流や腫れが変化し、一時的に鼻が通りやすくなる場合があります。
2012年の研究では、アレルギー性鼻炎のある13人がランニング運動を行った後、鼻炎の症状スコアが低下しました。
2024年の研究でも、アレルギー性鼻炎のある18〜24歳の15人を対象に、室内での有酸素運動中・運動後に鼻症状の軽減と鼻の吸気流量の増加がみられています。
ただし、どちらも小規模な研究です。一時的に鼻が通ることと、鼻炎そのものが治ることは別です。

花粉の多い屋外や、刺激の強い環境では悪化する人もいます。鼻を通すためにペースを上げたり、体調が悪い日に走り続けたりする必要はありません。
鼻づまりがあるときにランニングしてもよい?

判断するときは、鼻の症状だけでなく、全身の体調と胸の症状も確認します。
| 状態 | 練習の考え方 |
|---|---|
| 軽い鼻づまりだけで、普段どおりに生活できる | 歩行や短時間の軽いジョグで様子を見る |
| 鼻づまりで眠れていない、いつもより疲れている | 休養、または時間・強度を下げる |
| 発熱、悪寒、強いだるさ、体調不良に伴う全身の筋肉痛がある | ランニングを休む |
| 胸痛、ゼーゼーする呼吸、普段と違う息切れ、めまいがある | 運動を中止し、医療機関へ相談する |
これは一般的な調整の目安で、走っても安全だと保証する基準ではありません。
IOCの呼吸器感染症に関するコンセンサスでは、運動再開時に体調を評価し、過度な疲労、息苦しさ、胸の不快感、めまい、動悸などが出たら運動を中止するよう示しています。
「首から上の症状なら走ってよい」と一律に判断しないことが大切です。 発症したばかりで原因が分からない場合や、症状が強くなっている場合は休養を優先しましょう。
風邪などが疑われる日は、集団練習への参加も控えます。
鼻がつまっているときは口呼吸でもよい?

ランニング中に鼻だけで呼吸できないときは、口も使って呼吸して構いません。
運動中は必要な換気量が増えるため、鼻呼吸から鼻と口を使う呼吸に移る人がいます。運動時の呼吸経路を測定した研究でも、この変化が確認されています。

鼻づまりがあるのに「鼻呼吸だけ」にこだわり、苦しいまま走る必要はありません。呼吸しやすいペースまで落としましょう。
ただし、口で呼吸しても息苦しい、胸が苦しい、咳やゼーゼーする呼吸が出る場合は、鼻づまりだけの問題と考えないでください。 運動誘発性気管支収縮など、鼻以外の原因を確認する必要があります。
ランニング前にできる鼻づまり対策

1.花粉や刺激を避ける環境に変える
花粉で症状が出る人は、当日の飛散情報を確認し、屋外での練習時間を短くする、トレッドミルへ変更するなどの調整を考えましょう。

煙や排気ガス、強い香りで症状が出るなら、それらを避けられる場所を選びます。屋内でも、ほこりや強い空調で症状が出る場合は環境を見直してください。
2.鼻はやさしくかみ、必要なら生理食塩水を使う
鼻水が多いときは、強くかまず、片側ずつやさしくかみます。
市販の生理食塩水スプレーや鼻洗浄は、鼻の乾燥や粘液、花粉などへの対策として使われます。無理に洗い流そうとせず、製品の説明に従ってください。

鼻洗浄液を作る場合は、蒸留水・滅菌水、または煮沸して冷ました水を使います。水道水をそのまま鼻洗浄に使わないでください。 専用の塩剤などで指定の濃度に調整し、器具も洗浄・乾燥させます。
3.歩行から始めて呼吸を確認する
いきなり予定のペースに上げず、歩行から軽いジョグへ移ります。
その日の調整例として、最初の5〜10分はゆっくり動き、鼻症状と呼吸のしやすさを確認するとよいでしょう。この時間は治療として検証された設定ではなく、体調を確認するための実践例です。
鼻づまりが気になる日の練習はどう変える?

鼻症状がある日は、予定どおりのメニューを消化することより、無理なく続けられる負荷を選びます。
| 予定していた練習 | 調整例 |
|---|---|
| インターバル走・テンポ走 | 軽いジョグに変更、または延期 |
| 長時間のロング走 | 短時間に変更し、すぐ帰れるコースを選ぶ |
| 花粉の多い場所での屋外練習 | 屋内練習へ変更 |
| 軽いジョグ | 最初に歩行を入れ、悪化したら終了 |
軽い鼻づまりだけの日なら、例えば「歩行5分→会話できる程度のジョグ10〜15分→歩行5分」といった短い内容から様子を見ます。

これは鼻づまりを治すメニューではありません。普段より息苦しい、同じペースが明らかにきつい、症状が強くなる場合は終了してください。直後だけでなく、その日の夜や翌朝の体調も確認します。
ランニング後に鼻づまりが出るときの対策

花粉を持ち込まない
花粉が原因と考えられる場合は、帰宅後に着替え、シャワーで髪や体についた花粉を落とします。花粉症への生活対策としても勧められています。
症状が出る条件を記録する
「走り終わると毎回つまる」場合は、次の項目を簡単に記録しましょう。
- 気温、花粉情報、走った場所
- 練習の時間と強度
- 鼻づまりが出た時点と続いた時間
- くしゃみ、目のかゆみ、咳の有無

運動そのものがきっかけなのか、走る環境の影響なのかを考える材料になります。繰り返すときは記録を耳鼻咽喉科での相談に役立ててください。
鼻づまりの薬を使うときの注意点

鼻づまりの薬は、原因に合わせて選びます。ランニング前に使う場合も、医師や薬剤師に相談しましょう。
血管収縮タイプの点鼻薬を使い続けない
血管を収縮させて鼻を通すタイプの点鼻薬は、長く使いすぎると、かえって鼻づまりを悪化させることがあります。
「走るたびに必要」「使用回数が増えている」という場合は、自己判断で使い続けず相談してください。使用回数・期間は各製品の添付文書に従います。
この注意は、すべての点鼻薬に同じように当てはまるものではありません。ステロイド点鼻薬や生理食塩水スプレーとは種類が異なります。
抗ヒスタミン薬の眠気に注意する
抗ヒスタミン薬には眠気が出るものがあります。眠気が少ないとされる薬でも、眠くなる可能性はあります。

初めて使う薬は、レース当日に試さず、通常の生活で反応を確認しましょう。眠気やふらつきがある場合は、ランニングを控えて相談してください。
耳鼻咽喉科へ相談したい鼻づまり

次のような場合は、練習の工夫だけで対応し続けず、原因を確認しましょう。
- 鼻づまりが長く続く、または悪化している
- 同じ側の鼻づまりが続く
- 嗅覚の低下や顔の痛み・圧迫感が続く
- 鼻血を繰り返す
- 鼻づまりで睡眠や日常生活に支障がある
- 市販薬を使っても改善しない
持続する鼻づまりには、鼻の構造や副鼻腔の炎症などが関係する場合があります。

強い呼吸困難や胸痛、失神などがある場合は、運動を中止し、速やかに医療機関へ相談してください。
よくある質問

治るとは言い切れません。運動中・運動後に症状が軽くなる小規模研究はありますが、継続的なランニングで原因が解消されることを示すものではありません。繰り返す場合は原因に合わせた対策が必要です。
鼻づまりだけで必ず酸素不足になるとは限りません。運動中は口も使って呼吸できます。ただし、強い息苦しさや胸の症状があるときは、単なる鼻づまりと判断せず相談してください。
鼻の入り口を広げることで、鼻の通りや呼吸の感覚が改善する人はいます。運動中に口を使い始める時点が遅くなった小規模研究もありますが、鼻炎の治療やマラソン記録の向上が保証されるものではありません。
発熱や強いだるさ、胸の症状がある場合は出走を控えます。普段からある軽い鼻症状でも、眠れているか、呼吸は普段どおりかを確認し、必要なら目標ペースを下げましょう。新しい薬や対策を当日に初めて試すことは避けます。
まとめ
ランニングと鼻づまりの関係には個人差があり、運動で一時的に鼻が通る人も、花粉や気温差などで悪化する人もいます。
軽い鼻症状だけなら低負荷から様子を見て、全身の体調不良や胸の症状があれば休む。 この考え方を基本に、走る環境と練習内容を調整しましょう。

鼻づまりを繰り返す場合は、走り方だけで解決しようとせず、耳鼻咽喉科で原因を確認することが、快適に走り続けるための一歩になります。
参考文献・資料
- NHS. Allergic rhinitis.
- NHS. Non-allergic rhinitis.
- Tongtako W, et al. The effect of acute exhaustive and moderate intensity exercises on nasal cytokine secretion and clinical symptoms in allergic rhinitis patients. Asian Pac J Allergy Immunol. 2012;30(3):185–192.
- Kerdkaew K, Tongtako W. Acute Effects of Exercise at Different Temperatures on Clinical Symptoms and Nasal Blood Flow in Patient with Allergic Rhinitis: A Randomized Crossover Trial. Int J Exerc Sci. 2024;17(3):779–793.
- Schwellnus M, et al. IOC consensus statement on acute respiratory illness in athletes part 1: acute respiratory infections. Br J Sports Med. 2022. doi:10.1136/bjsports-2022-105759.
- Oronasal distribution of respiratory airflow.
- Schwellnus M, et al. IOC consensus statement on acute respiratory illness in athletes part 2: non-infective acute respiratory illness. 2022. doi:10.1136/bjsports-2022-105567.
- FDA. Is Rinsing Your Sinuses With Neti Pots Safe?
- CDC. How to Safely Rinse Sinuses.
- NHS. Hay fever.
- NHS. Decongestants.
- NHS. Antihistamines.
- AAO-HNS. ENT Health. Deviated Septum.
- AAO-HNS. ENT Health. What You Should Know About Sinus Disease and Disorders.
- Nasal dilator strips delay the onset of oral route breathing during exercise.
※一般的な情報をまとめた記事であり、個別の診断や治療方針を示すものではありません。
風を切るランニング 