マラソンのピーキングはどうする?レース前の練習量・調整方法と3週間の実践例

マナブ
マナブ

「大会が近づいてきたけれど、いつまで走り込めばよい?」

「練習量を減らすと走力が落ちそうで不安」

 マラソンの直前は、これまで積み上げた練習の成果を発揮するための調整が大切です。その考え方が「ピーキング」です。

 基本は、レースに向けて走る量を減らし、疲労を抜きながら走りの感覚を保つこと。直前まで追い込むほど、よい状態でスタートできるとは限りません。

 この記事では、市民ランナーがフルマラソンに向けて行うピーキングについて、研究結果と具体的な調整例を紹介します。

マラソンのピーキングとは?テーパリングとの違い

 ピーキングとは、目標とする大会に合わせて、パフォーマンスを発揮できる状態へ整えることです。練習の調整に加え、睡眠、食事、移動や準備による負担も含めて考えます。

 その中で、レース前に練習負荷を減らす方法を「テーパリング」と呼びます。

用語意味
ピーキング大会に向けてコンディションを整える全体の取り組み
テーパリング練習量などを減らし、疲労を軽減する調整方法

 練習を続けてきた身体には、トレーニングへの適応と疲労が同時に存在します。テーパリングは、獲得した能力をできるだけ保ちながら、蓄積した疲労を減らすために行います。

隼人(はやと)
隼人(はやと)

大会前は「さらに鍛える」だけでなく、「積み上げた力を出せる状態にする」ことが大切です。

マラソンのピーキングは何日前から始める?

 フルマラソンでは、まずレースの2〜3週間前から練習量を減らす計画を検討するとよいでしょう。

 ただし、これは全員に共通する最適解ではありません。

 競技者のメタ解析では約2週間、市民マラソンランナーの観察研究では3週間かけて段階的に減らす調整を支持する結果があります。対象や研究方法が異なるため、「必ず3週間が最もよい」とは言い切れません。

 調整を始める時期は、次の点も踏まえて決めます。

  • 普段の週間走行距離・時間
  • ロング走やポイント練習の疲れが残る日数
  • 最近の睡眠、脚の重さ、体調
  • 過去の大会でうまくいった調整方法

隼人(はやと)
隼人(はやと)

走行距離が多く疲労も強い人と、週2〜3回の練習で疲労が少ない人では、必要な減らし方が異なります。初めて取り組む場合は、調整期間中の練習と体調を記録し、次の大会にも活かしましょう。

研究を確認|マラソン前はどのくらい練習量を減らす?

持久系競技者を対象とした研究

 2023年のシステマティックレビュー・メタ解析では、14研究を統合し、テーパリング後にタイムトライアル成績の改善が示されました。

PICO内容
P:対象主にランニングやサイクリングの持久系競技者
I:介入大会・測定前のテーパリング
C:比較主にテーパリング前。一部は対照群との比較
O:結果タイムトライアルや疲労困憊までの運動時間など

 練習量を41〜60%減らし、強度や頻度を維持する調整が有効な選択肢として示されています。ただし、男性が多く、競技や走力も異なります。市民ランナー全員に同じ割合を当てはめる根拠ではありません。

市民マラソンランナーを対象とした研究

 2021年の研究では、15万8,000人以上の市民マラソンランナーの練習記録とレース結果を分析しています。

PECO※内容
P:対象市民マラソンランナー
E:曝露レース前に週間走行距離を段階的に減らすパターン
C:比較短期間の調整や、途中で走行距離が増えるパターンなど
O:結果マラソンの成績との関連

 3週間かけて一貫して走行距離を減らすパターンは、最小限の調整より良好な成績と関連していました。

 ※観察研究のため、介入を表すIではなく、曝露を表すEで整理しています。

 これは因果関係を証明する研究ではなく、同じ調整をすれば誰でも同じように速くなるという意味ではありません。

隼人(はやと)
隼人(はやと)

研究は練習量を減らす調整を支持していますが、最適な減らし方には個人差があります。

マラソンのピーキングで調整したい3つのこと

① 距離・時間を減らす

 まず調整しやすいのは、1回の練習で走る距離や時間です。

 たとえば、普段のジョグを短くする、ロング走を短縮する、ポイント練習の反復本数を減らす、といった方法があります。

隼人(はやと)
隼人(はやと)

「走行距離を半分にした分、ペースを大幅に上げる」という変更では、負担が十分に下がらない可能性があります。距離だけでなく、練習後と翌日の疲れも確認しましょう。

② 慣れた強度を短く残す

 研究でいう「強度を維持する」は、毎回きつく走るという意味ではありません。慣れたペースの練習を、距離や本数を減らして行うと考えると分かりやすくなります。

 実践上の例として、普段マラソンペースで8km走っている人が3〜4kmに短縮する方法があります。これは研究で最適と証明された距離ではなく、考え方を示す例です。

隼人(はやと)
隼人(はやと)

速い練習に慣れていない人が、大会直前からインターバル走や全力疾走を始める必要はありません。

③ 頻度は普段の習慣と回復に合わせる

 普段週5回走っている人なら、1回ごとを短くしてリズムを保つ方法があります。

 一方、普段週3回の人が、調整期間だけ週5回に増やす必要はありません。

隼人(はやと)
隼人(はやと)

疲れが強い場合は休養日を増やす判断も必要です。「頻度を維持する」という研究結果を、体調より優先しないようにしましょう。

フルマラソン3週間前からのピーキング例

 以下は、普段週4〜5回、週50km前後を無理なく走り、マラソンペース走にも慣れている人を想定した実践例です。

 研究で直接検証されたメニューではありません。 距離を埋めることより、疲労を減らすことを優先してください。

時期週間走行距離の例練習の考え方
通常の練習週約50km比較の基準となる、無理なく継続できていた量
21〜15日前35〜40kmジョグと長めの練習を短縮する
14〜8日前25〜30km慣れたマラソンペースを短く確認する
7〜1日前15〜20km短いジョグ中心。疲れを残さない
レース当日42.195km上記の週間距離には含めない

 この表は、通常週から段階的に減らす一例です。研究の「41〜60%減」を毎週繰り返す意味ではありません。また、直前に無理して増やした最大距離を基準にしないようにします。

レース1週間前の具体例

 日曜日に大会がある場合の例です。

曜日メニュー例
月休養
火ゆっくり5km
水合計6kmの中で、慣れたマラソンペースを2km程度
木休養
金ゆっくり4km
土休養、または普段から前日に走る人はごく短いジョグ
日フルマラソン

 水曜日の距離にはウォームアップとクールダウンを含みます。目標ペースが現状より速すぎる場合は、そのペースに無理に合わせません。

 週3回以下の人や初マラソンの人は、回数や距離をこの表に合わせず、自分の普段の練習を短くするところから考えましょう。

最後のロング走・ポイント練習はいつまで?

 「最後の30km走は必ず○日前」という一律のルールはありません。

 3週間の調整を採用するなら、疲労が大きく残る最後のロング走を、調整開始前に済ませる組み立てが考えられます。ただし、30km走そのものが全員に必要という意味ではありません。

 普段20kmまでしか走っていない人が、直前に初めて30kmへ伸ばすことは避けましょう。過去に回復まで何日かかったかも判断材料になります。

隼人(はやと)
隼人(はやと)

ポイント練習も、レースが近づくほど距離や本数を減らします。直前にタイムトライアルを行い、走力を証明しようとする必要はありません。

練習以外で整えたいこと

ピーキング期間は、走っていない時間の過ごし方も見直します。

  • 睡眠: 練習を減らして空いた時間を、夜更かしで埋めない
  • 食事: 距離が減ったことを理由に、急な減量や極端な食事制限を始めない
  • 補給: レースで使う食品は、これまでに試したものを基本にする
  • 移動・準備: 受付や会場までの動線を確認し、前日に長時間歩き回る予定を詰め込まない
  • 筋トレ: 新しい種目や、強い筋肉痛が残る追い込みを追加しない

 これらは実践上の工夫であり、上記のテーパリング研究から、各項目の最適量やタイミングまで決められるわけではありません。

マラソンのピーキングでよくある失敗

よくある失敗見直し方
練習不足が不安で、直前に距離を追加する残り日数で積み増すより、疲れを残さない計画を優先する
脚が軽くなったので予定以上に走る調子がよくても決めた距離で終える
距離を減らした分、全力の練習を増やす慣れた強度を短く残す程度にする
走らない日に重い筋トレを入れるランニング以外の負担も合わせて減らす
他人のメニューをそのまま使う普段の練習量と回復の速さを基準にする
ウォッチの数値だけで予定を変える睡眠、痛み、体調、実際の走りやすさも確認する

痛みや体調不良があるときは、計画より回復を優先

 痛みで走り方が変わる、走るほど痛みが増す、発熱や強い倦怠感がある場合は、予定をこなすために走り続けないようにします。

 胸痛、失神、普段と異なる強い息苦しさがある場合は運動を中止し、速やかに医療機関へ相談してください。

 ピーキングは、けがや病気を抱えたまま走れる状態にする方法ではありません。症状があるときは、練習の調整と出走の判断を分けて考える必要があります。

マラソンのピーキングでよくある質問

練習量を減らすと、走力が落ちませんか?

レース前に計画的に練習量を減らすテーパリングでは、パフォーマンス改善が報告されています。
ただし、長期間まったく運動しない場合と同じではありません。慣れた運動を短く残しながら調整するのが基本です。

レース前日は走った方がよいですか?

全員が走る必要はありません。普段から短いジョグで整えている人は同じ方法を選べますが、慣れていなければ休養でも構いません。疲労や移動の負担も含めて判断します。

調整中なのに脚が重いときは、刺激を入れるべきですか?

脚の重さだけでは原因は分かりません。睡眠、直近の練習、痛みや体調不良の有無を確認し、予定を短くする・休むことも検討します。重さを解消しようと、強い練習を追加するのは控えましょう。

直前の練習を休んでしまいました。取り戻すべきですか?

休んだ分を後日にまとめて追加する必要はありません。特に疲労や体調不良で休んだ場合は、回復の確認を優先します。

ピーキングをすれば自己ベストが出ますか?

保証はできません。レース結果には、それまでの練習、ペース配分、気象条件、コース、補給なども関わります。ピーキングは、積み上げた力を発揮するための準備の一つです。

まとめ|マラソンのピーキングは「量を減らし、疲労を残さない」

マラソンのピーキングでは、レース直前まで追い込み続けるより、計画的に練習量を減らして状態を整えることが大切です。

フルマラソンでは2〜3週間前からの調整を出発点にし、慣れたペースの刺激を短く残しながら、自分の疲労や回復に合わせて調整しましょう。

大会前に目指したいのは、練習で力を使い切ることではなく、スタートラインでその力を発揮できる状態です。

参考文献