
「重りを付けて走れば、普通に走るより効率よく鍛えられるのでは?」
「アンクルウェイトやダンベルを使えば、消費カロリーを増やせる?」
ランニングの負荷を高めるために、足首や手首へウェイトを付けたり、ダンベルを持ったり、加重ベストを着たりする方法があります。
確かに、重りを付けると同じ速度でも心拍数や酸素消費量、エネルギー消費量が増え、運動をきつくできます。
しかし、運動がきつくなることと、ランニングのトレーニング効果が高くなることは同じではありません。
特に足首や手に重りを付ける方法は、通常のランニングとは異なる負荷を身体へ加え、脚や腕の動きを変える可能性があります。市民ランナーが持久力や記録の向上を目指すのであれば、ペース走、坂道走、インターバル走、筋力トレーニングなどの方が目的に合わせて負荷を調整しやすいでしょう。
本記事では、足首・手首のウェイト、ダンベル、加重ベストを付けて走ることで得られる効果と、一般的なランニング練習としてはおすすめしにくい理由を解説します。
結論|重りを付ければ負荷は上がるが、通常のランニングにはおすすめしない

重りを付けて走ると、主に次の変化が起こります。
- 心拍数や酸素消費量が増える
- エネルギー消費量が増える
- 同じ速度でも主観的にきつくなる
- 重りを付けた状態で動くことへの適応が期待できる
一方で、市民ランナーが普段のジョギングやマラソン練習で行う方法としては、積極的におすすめできません。
- 重りの位置によって腕振りや脚の振り出しが変わる
- 足首など身体の中心から遠い場所ほど負担が大きくなりやすい
- 筋力トレーニングとしては負荷を管理しにくい
- 疲労によって普段のランニング練習の質が低下する可能性がある
- 5km・10km・ハーフ・フルマラソンの記録向上に有効だとする根拠が乏しい
- ペース、坂、走行時間を変えれば、重りがなくても運動強度を調整できる

重りを付けたランニングが必要になるのは、装備を背負って走るトレイルランニングや、専門家の管理下で行う加重スプリントなど、競技特性や明確な目的がある場合に限られます。
ランニングで使われる重りの種類
| 種類 | 取り付ける場所 | 主な特徴 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|
| アンクルウェイト | 足首 | 少ない重さでも脚の振り出しに影響しやすい | おすすめしない |
| リストウェイト | 手首 | 腕振りへ負荷がかかる | おすすめしない |
| ダンベル | 手で持つ | 握力や肩周囲の緊張が増えやすい | おすすめしない |
| 加重ベスト | 体幹 | 四肢のウェイトより重心に近いが、全身への荷重が増える | 特定の目的に限る |

同じ1kgでも、身体の中心に近い場所と足首に付けた場合では影響が異なります。足首のように身体の中心から遠い位置へ重りを付けると、脚を前後へ振るたびに大きな力が必要です。そのため、アンクルウェイトは加重ベストより軽くても、ランニング動作へ影響しやすくなります。
重りを付けて走ることで得られる効果

同じ速度でも運動強度が上がる
重りを付けると、身体と重りを一緒に移動させる必要があります。そのため、同じ速度で走っても、重りを付けない場合より酸素消費量や心拍数が増えることがあります。
足首・手首へ重りを付けたトレッドミル走を調べた研究では、追加する重量が増えるにつれて、エネルギー消費量と心拍数が増加しました。増加の程度は、手首より足首へ重りを付けた場合の方が大きい結果でした。[1]
ただし、この研究は8人の若い男性を対象にした短時間の測定です。「運動中の負荷が上がった」ことは示していますが、長期間続けることでマラソンのタイムが向上することまで証明した研究ではありません。
エネルギー消費量が増える
重りを付けて走ると、エネルギー消費量は増える可能性があります。
手と足へ市販のウェイトを付けて30分間走った研究では、重りを付けない条件と比べてエネルギー消費量が約5~8%増加しました。一方、研究者は広告で示されるような大幅な増加ではないと指摘しています。[2]
体脂肪を減らすうえで大切なのは、1回の運動で消費するエネルギーだけではありません。
- 無理なく継続できる運動量
- 1週間全体の活動量
- 食事から摂取する総エネルギー
- 睡眠や回復
なども関係します。

重りによって疲労や不快感が増し、走る時間や頻度が減れば、1回あたりの消費エネルギーが少し増えても、長期的に有利とは限りません。
重りを持って走る競技への適応が期待できる
トレイルランニングやウルトラマラソンでは、水分、食料、防寒具、必携装備などを背負って走る場合があります。
本番で荷物を携行するのであれば、実際に使用するベストやバックパックへ装備を入れて走り、揺れ、擦れ、重さ、補給の取り出しやすさを確認する練習には競技特異性があります。
ただし、一般的な加重ベストを重くして走るのではなく、本番で使う装備と実際に近い重量を試す方が実践的です。すべての練習を加重する必要もありません。
加重スプリントでは短距離能力が向上する可能性がある
加重ベストを使用したスプリントトレーニングを調べたシステマティックレビューでは、3~7週間の介入で一部のスプリント指標が改善した研究が報告されています。[8]
ただし、対象は主に短距離のスプリントであり、5kmからフルマラソンまでの持久系ランニングとは目的が異なります。さらに、その後のメタ解析では、加重ベストを使ったスプリントが通常のスプリントより明確に優れるとは確認できませんでした。[9]

加重ベストを付けて走れば、市民ランナーのマラソン記録が向上すると考えることはできません。

重りを付けたランニングをおすすめしない理由

「きつい運動」と「効果的な練習」は同じではない
重りを付ければ、走る速度を変えなくても心拍数や主観的運動強度は上がります。しかし、ランニングトレーニングでは、ただきつくするのではなく、目的に合った刺激を加えることが重要です。
例えば、
持久力を高めたい場合は走行時間や週間走行量
乳酸閾値付近の能力を高めたい場合はテンポ走
最大酸素摂取量を刺激したい場合はインターバル走
のように、負荷を設定できます。

重りを付ける方法は、心肺への負荷だけでなく、腕振り、脚の振り出し、接地時の負荷を同時に変えてしまいます。目的としない部分まで負荷が増えるため、練習を管理しにくくなります。
足首の重りは少量でも影響が大きい
アンクルウェイトでは、脚を前後へ振るたびに重りを加速・減速させます。
足部へ重量を加えた研究では、片足につき100g増えるごとに、酸素消費量が約1%増加しました。[4]
また、下肢へ同じ重量を加える場合でも、太ももよりすね、すねより足部と、身体の中心から遠い位置ほどランニングの代謝コストが大きくなることが示されています。[5]
代謝コストが大きくなること自体を、効率のよいトレーニングと捉えるべきではありません。

アンクルウェイトは、少ない重量でも通常のランニングとは異なる脚の振り出しを求めるため、普段のランニングに追加する方法としてはおすすめできません。
腕振りが変わる可能性がある
リストウェイトやダンベルを使用すると、腕を前後へ振るたびに肩や肘周囲へ追加の負荷がかかります。
手と足へ重りを付けた研究では、手へ重りを持った条件で腕の角速度と振り幅が小さくなりました。[2]
また、片手2.27kgの重りを持って走った研究では酸素消費量が増えましたが、それより軽い重量では明確な増加が確認されませんでした。[3]
つまり、軽いダンベルでは運動強度を十分に上げられない場合があり、重くすると腕振りや上半身の緊張へ影響しやすくなります。

腕や肩を鍛えたいのであれば、ランニング中にダンベルを持つより、ローイング、プッシュアップ、ショルダープレスなどをランニングとは別に行う方が、フォームと負荷を管理しやすいでしょう。
ランニングフォームが変化する可能性がある
加重ベストはアンクルウェイトより身体の中心に近いため、四肢へ付けるウェイトと比べると動作への影響は小さいと考えられます。
それでも、体重の5%または10%に相当する加重ベストを装着したトレイルランナーの研究では、接地時間、滞空時間、上下動などの変化が確認されました。[6]
重りを外せば、直ちに悪いフォームが定着するとは限りません。しかし、普段のレースとは異なる動作で走る時間が増えるため、通常のランニングフォームを練習するという点では特異性が低下します。
早く疲れて練習の質が下がる
体重の5%・10%に相当する加重ベストを付けたトレイルランナーの研究では、重りが増えるほど疲労困憊までの時間が短くなりました。[7]
同じペースを維持できなくなれば、テンポ走やインターバル走で予定していた速度・時間を達成できない可能性があります。
また、加重ランニングによる疲労が残ると、翌日のジョギング、ロング走、ポイント練習へ影響することも考えられます。

1回の練習だけをきつくするのではなく、1週間全体のトレーニングを継続できるかを考えることが大切です。
接地時や関節への負荷が増える可能性がある
身体に重量を追加すれば、支え、減速し、再び加速させる必要のある総重量が増えます。下肢へ重りを付けた研究では、小さな重量でも関節モーメントや関節パワーが変化し、特に振り出しへの影響が大きいことが報告されています。[10]
ただし、「重りを付けて走ると必ずけがをする」と断定できる十分な前向き研究はありません。
現時点でいえるのは、身体へ加わる負荷や動作が変わる一方、市民ランナーの持久系パフォーマンスを高める明確な上乗せ効果は示されていないということです。

得られる利益が不明確であるため、あえて普段のランニングへ追加する必要性は低いでしょう。
筋力トレーニングとして効率がよいとは限らない
ランニング中に扱える重りは、フォームを保つために比較的軽くする必要があります。
軽すぎれば筋力向上のための十分な刺激を加えにくく、重くすれば走り方が変わり、長時間の反復によって疲労が増えます。
ランナーが筋力を高めたい場合は、ランニングへ重りを追加するのではなく、次のような筋力トレーニングを別に行う方が負荷を管理しやすくなります。
- スクワットまたはハーフスクワット
- デッドリフト
- ルーマニアンデッドリフト
- ブルガリアンスクワット
- ステップアップ
- カーフレイズ

ランニングと筋力トレーニングを分けることで、走る練習ではペースやフォームへ集中し、筋力トレーニングでは重量、回数、セット数を段階的に調整できます。
種類別|重りを付けて走ってもよい?
おすすめしません。
足首は身体の中心から遠く、少量の重りでも脚を振るための代謝コストや関節への力学的要求が増えます。アンクルウェイトを使用するのであれば、走りながらではなく、目的を決めた筋力トレーニングで使用する方がよいでしょう。
おすすめしません。
腕振りへの負荷は増えますが、ランニングパフォーマンスへ必要な上半身の筋力を効率よく高められるとは限りません。腕振りが小さくなったり、肩周囲へ余計な力が入ったりする可能性があります。
おすすめしません。
リストウェイトと同様に腕振りへ影響するほか、握り続けることで前腕や肩へ力が入りやすくなります。転倒した際に手を使いにくいという実用上の問題もあります。
ダンベルはランニング中に持つのではなく、筋力トレーニング器具として使用してください。
一般的な市民ランナーのジョギングやマラソン練習には、基本的に必要ありません。
四肢へ付ける重りより負荷を体幹周囲へ分散できますが、接地時間や上下動、疲労までの時間へ影響します。
例外として、次のような明確な目的がある場合には検討できます。
- 荷物を背負うトレイルレースの準備
- 障害物レースなど、荷重した走行が競技に含まれる
- 短距離選手が指導者の管理下で加重スプリントを行う
マラソンのために使用する場合でも、「重りを付ければ走力が効率よく上がる」と考えて取り入れる方法ではありません。
重りを付けずにランニングの負荷を高める方法

持久力を高めたい場合は、まず無理のない範囲で走行時間や週間走行量を調整します。
一度に大きく増やさず、疲労、痛み、睡眠、翌日の体調を確認しながら段階的に増やしてください。
同じコースでもペースを上げれば、心肺への負荷は高くなります。
テンポ走、インターバル走、レペティションなど、目的に合わせて速度と休息を設定する方が、重りを付けるより負荷を管理しやすくなります。
上り坂では、平地より遅い速度でも心肺や下肢へ高い負荷を加えられます。
重りを付ける必要がなく、坂の傾斜、距離、本数によって強度を調整できます。ただし、急な下り坂を繰り返すと筋肉や関節への負荷が増えるため、上りを中心に活用しましょう。
筋力を高めたい場合は、ランニングと筋力トレーニングを分けて行います。
筋力トレーニングではフォームを確認しながら重量や回数を調整できるため、重りを持って走るより目的が明確です。
短時間で素早く力を発揮する能力を高めたい場合は、Aマーチ、Aスキップ、ポゴジャンプ、ホップなどを段階的に取り入れる方法があります。
ジャンプ系トレーニングは負荷が高いため、少ない回数から始め、接地や姿勢が乱れる前に終了してください。
よくある質問
同じ速度・時間で比べると、エネルギー消費量は増える可能性があります。
ただし、研究で確認された増加は必ずしも大きくありません。重りによって走行時間や継続頻度が減る可能性もあるため、ダイエット目的で積極的に取り入れる必要はありません。
重りを動かすために筋肉への要求は増えますが、スクワットなどの筋力トレーニングと同じ効果が得られるとは限りません。
筋力向上が目的であれば、ランニングとは別に筋力トレーニングを行う方が、負荷を段階的に増やしやすいでしょう。
重りを外した直後に身体が軽く感じることはありますが、それだけで持久系ランニングの記録が向上するとはいえません。
加重ベストを使ったスプリントには一部の研究がありますが、通常のスプリントより優れているかは明確ではなく、その結果をマラソンへ当てはめることもできません。
ランニングより衝撃は小さくなりますが、重りを付ければ代謝コストや身体への荷重は増えます。
健康目的で歩く場合も、まずは歩行速度、時間、坂道によって強度を調整する方法が基本です。高齢者、骨や関節に不安がある人、運動習慣が少ない人は、自己判断で重いベストを使用しないでください。
まとめ
重りを付けて走ると、同じ速度でも心拍数、酸素消費量、エネルギー消費量、主観的なきつさが増える可能性があります。
しかし、運動がきつくなることと、走力向上に適したトレーニングであることは同じではありません。
特にアンクルウェイト、リストウェイト、ダンベルは、脚の振り出しや腕振りへ影響します。加重ベストは身体の中心に近い位置へ負荷を加えられますが、疲労やランニング動作を変化させる可能性があり、一般的なジョギングやマラソン練習には必要ありません。
市民ランナーが負荷を高めたい場合は、目的に応じて、
- 走行時間や週間走行量を調整する
- ペース走やインターバル走を行う
- 坂道を利用する
- 筋力トレーニングを別に行う
- ドリルやプライオメトリクスを段階的に取り入れる
方法が実践しやすいでしょう。

装備を背負う競技への準備や専門的な加重スプリントなど、明確な目的がない限り、普段のランニングへ重りを追加することはおすすめしません。
参考文献
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