マラソンの水分補給|パフォーマンス発揮に必要な給水の知識

マナブ
マナブ

「マラソンでは、どれくらい水を飲めばいいの?」

「給水所では毎回飲んだ方がいい?」

「スポーツドリンクと水は、どちらを選べばいい?」

 マラソンの水分補給では、「脱水にならないように、できるだけたくさん飲む」と考えがちです。

 しかし、マラソンでは水分が不足するだけでなく、必要以上に飲みすぎることにも注意しなければなりません。

 適切な給水量は、すべてのランナーで同じではありません。

  • 気温や湿度
  • 走るペース
  • レース時間
  • 発汗量
  • 体格
  • 暑さへの慣れ
  • 給水所の間隔

などによって大きく変わります。

 本記事では、市民マラソン参加者が自分に合った給水方法を考えられるように、マラソン中の水分補給について科学的根拠をもとに解説します。

マラソンの水分補給で大切な2つのこと

 マラソンの給水では、次の2つを同時に考える必要があります。

  1. 水分不足によるパフォーマンス低下や体温上昇を抑える
  2. 飲みすぎによる体重増加や低ナトリウム血症を防ぐ

 「脱水を完全に防ぐ」ことだけを目標にするのではありません。

 発汗した水分をすべて補おうとして大量に飲むと、身体から排出できる量を上回り、血液中のナトリウム濃度が低下する可能性があります。

 そのため、基本的な考え方は次のようになります。

大きな脱水を避けながら、レース中に体重が増えるほど飲まない

 適切な給水量には個人差があるため、練習中に自分の発汗量や飲みやすい量を確認しておくことが重要です。

脱水するとマラソンのパフォーマンスは低下する?

 ランニング中は、体温を下げるために汗をかきます。

 発汗によって体内の水分が減少すると、血液量が低下しやすくなり、同じペースでも心拍数や体温、主観的なきつさが上昇する可能性があります。

特に、

  • 気温が高い
  • 湿度が高い
  • 日差しが強い
  • レース時間が長い
  • 発汗量が多い

という状況では、脱水の影響が大きくなりやすいでしょう。

運動前から体重の約2%を超える水分が失われると、持久系パフォーマンスが低下しやすいとする報告があります。

 体重60kgのランナーであれば、2%は約1.2kgです。

※ただし、「体重が2%減った瞬間に必ず走れなくなる」という意味ではありません。

 脱水の影響は、気象条件、走行時間、運動強度、暑熱順化、給水のしやすさなどによって異なります。また、実際のロードレースでは、ある程度の体重減少がみられても高いパフォーマンスを発揮するランナーもいます。

 したがって、2%という数値は絶対的な境界線ではなく、給水計画を考えるための目安として扱う必要があります。

水分は多く飲むほどよいわけではない

 マラソン中に注意したいのが、水分の飲みすぎです。

 汗や尿として排出される量よりも多くの水分を飲み続けると、レース中に体重が増加することがあります。

 さらに、大量の水分摂取によって血液中のナトリウム濃度が低下すると、運動関連低ナトリウム血症を起こす可能性があります。

症状としては、

  • 頭痛
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 手足のむくみ
  • 強い倦怠感
  • 意識の混乱

などがあります。

 重症になると、けいれん意識障害につながる危険性もあります。

 

低ナトリウム血症は、水だけを飲んだ場合に限って起こるものではありません。スポーツドリンクであっても、発汗量を大きく上回る量を飲み続ければ発生する可能性があります。

 スポーツドリンクに含まれるナトリウムだけで、過剰な水分摂取の影響を完全に防げるわけではありません。

マラソン中はどれくらい飲めばいい?

 持久系スポーツでは、1時間あたり400〜800mL程度が給水量の目安として示されることがあります。

 しかし、これはすべてのランナーが守るべき固定量ではありません。

 必要な水分量は、状況によって大きく変わります。

給水量が多くなりやすい状況

  • 気温や湿度が高い
  • 発汗量が多い
  • 身体が大きい
  • 速いペースで走る
  • 暑さに慣れていない
  • レース時間が長い

給水量が少なくなりやすい状況

  • 気温が低い
  • 発汗量が少ない
  • ゆっくりしたペースで走る
  • レース時間が短い
  • スタート前に十分な水分を摂れている

 小柄で発汗量の少ないランナーが、涼しい日に1時間800mLを飲むと、飲みすぎになる可能性があります。

 反対に、暑い日に大量の汗をかくランナーでは、400mLでは不足するかもしれません。

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

そのため、一般的な数値はスタート地点として利用し、実際には自分の発汗量や喉の渇き、胃腸の状態に合わせて調整します。

発汗量を測って給水量を考える

 自分に合った給水量を決めるには、練習前後の体重を測る方法が実践しやすいでしょう。

発汗量の計算方法

発汗量=運動前体重-運動後体重+運動中の飲水量-尿量

 体重1kgの減少は、約1Lの水分減少として概算できます。

計算例

1時間のランニングで、

  • 運動前体重:60.0kg
  • 運動後体重:59.4kg
  • 飲水量:400mL
  • 運動中の排尿:なし

だった場合、

0.6kg+0.4L=約1.0Lとなります。

 このランニング条件では、発汗量は1時間あたり約1.0Lと推定できます。ただし、発汗量は常に一定ではありません。

同じランナーでも、

  • 気温
  • 湿度
  • 日差し
  • 走行ペース
  • 服装

によって変化します。

隼人(はやと)
隼人(はやと)

涼しい日のイージーランだけでなく、暑い日やレースペースに近い練習でも確認しておくと、より現実的な給水計画を立てやすくなります。

失った水分をすべて補給する必要はない

 発汗量が1時間あたり1Lだったからといって、必ず1時間に1L飲まなければならないわけではありません。

走りながら大量に飲むと、

  • 胃が揺れる
  • 腹部膨満感が出る
  • 吐き気が起こる
  • トイレが近くなる
  • 走りにくくなる

といった問題が起こる可能性があります。

 レース中に多少体重が減少すること自体は珍しくありません。

 重要なのは、大幅な水分不足を避けつつ、体重が増えるほど過剰に飲まないことです。発汗量、喉の渇き、胃腸の許容量を考慮しながら、継続できる給水量を練習で確認してください。

喉が渇いてから飲むのでは遅い?

「喉が渇く前に飲まなければならない」と説明されることがあります。

一方で、マラソン中の水分摂取では、喉の渇きに応じて飲む方法も有効な選択肢です。

特に、

  • 比較的涼しい環境
  • 給水所が十分にある大会
  • 完走を目標に走る
  • 発汗量が極端に多くない

というランナーでは、喉の渇きを目安にすることで、飲みすぎを防ぎやすくなります。

ただし、暑い環境で長時間走る場合や、発汗量が非常に多い場合は、喉の渇きだけでは必要量に追いつかないこともあります。

 そのため、

  • 喉の渇き
  • 発汗量
  • 天候
  • レース時間
  • 給水所の間隔

を組み合わせて考えることが大切です。

隼人(はやと)
隼人(はやと)

「喉が渇く前に大量に飲む」「喉が渇いても飲まない」という両極端な方法は避けましょう。

レース前の水分補給

 レース直前に大量の水を飲んでも、身体の中にすべて蓄えられるわけではありません。必要以上に飲めば、尿として排出されたり、スタート後に胃の不快感が出たりします。

 レース前は、数時間かけて少しずつ水分を摂ることが基本です。

 一般的には、スタート約4時間前までに体重1kgあたり5〜7mL程度を摂る方法が示されています。体重60kgであれば、約300〜420mLです。

 その後も尿の色が濃い、尿量が少ない、喉が渇いている場合は、スタート2時間ほど前までに追加の水分を少量ずつ摂ります。

 ただし、数値を厳密に守る必要はありません。

 朝食や普段の飲み物にも水分は含まれています。起床後からスタートまでに、食事と飲み物を組み合わせて自然に水分を補給します。

スタート直前に一気飲みする方法は避けましょう。

マラソン中の給水方法

 マラソン中は、一度に大量に飲むよりも、給水所ごとに少量ずつ飲む方が胃腸への負担を抑えやすくなります。

給水所で毎回飲むべき?

 すべての給水所で必ず飲む必要はありません。

 給水所の間隔が短い大会で毎回コップ1杯を飲むと、発汗量の少ないランナーでは飲みすぎになる可能性があります。

 一方で、給水所の間隔が長い大会や暑い日の大会では、早めの給水が必要になる場合があります。

 大会前に次の点を確認してください。

  • 給水所の位置
  • 給水所の間隔
  • 水とスポーツドリンクの配置
  • 提供される商品の種類
  • コース上の気温や日陰
  • ボトルやソフトフラスクの持ち込み可否

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

給水所に着いてから考えるのではなく、どこで何を飲むかを事前に決めておくとスムーズです。

コップから飲むコツ

 紙コップは上部を軽くつぶして注ぎ口を作ると、走りながらでも飲みやすくなります。

 ただし、無理に走りながら飲む必要はありません。

 給水が苦手な場合は、数秒歩いて確実に飲んだ方が、むせたり大量にこぼしたりするのを防ぎやすいでしょう。

水とスポーツドリンクはどちらがいい?

水とスポーツドリンクには、それぞれ役割があります。

水が使いやすい場面

  • レース時間が比較的短い
  • 涼しく発汗量が少ない
  • エネルギージェルと一緒に飲む
  • スポーツドリンクの甘さで胃が不快になる

スポーツドリンクが使いやすい場面

  • 長時間走る
  • 気温が高い
  • 発汗量が多い
  • 糖質とナトリウムも補給したい
  • 固形物を食べにくい

 スポーツドリンクは、水分だけでなく糖質やナトリウムを同時に補給できることが利点です。

ただし、スポーツドリンクとエネルギージェルを同時に多量に摂ると、糖質濃度が高くなり、胃腸症状につながる場合があります。

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

使用するジェルやドリンクの糖質量を確認し、練習中に組み合わせを試しておきましょう。

ナトリウム補給は必要?

 汗には水分だけでなくナトリウムも含まれています。

そのため、

  • 長時間のレース
  • 暑い日のレース
  • 発汗量が多い
  • 汗をかいたウェアに白い跡が残る
  • 汗が目に入ると強くしみる

というランナーでは、ナトリウムを含む飲料や補給食が役立つ可能性があります。

 持久系競技では、1時間あたり300〜600mg程度のナトリウムが目安として紹介されることがあります。

ただし、汗に含まれるナトリウム濃度には大きな個人差があります。一律に同じ量を摂る必要はありません。

 また、塩分を摂れば水分をいくら飲んでも安全になるわけではありません。低ナトリウム血症を防ぐうえで最も重要なのは、発汗量を大きく上回る水分を飲まないことです。

隼人(はやと)
隼人(はやと)

塩タブレットを利用する場合も、スポーツドリンク、ジェル、食事に含まれるナトリウム量を含めて考えます。

レース後の水分補給

 ゴール後は、失った水分を一気に取り戻そうとせず、食事と一緒に数時間かけて補給します。

 短時間で水だけを大量に飲むと、尿として排出されやすくなります。

 一般的には、運動後に減少した体重1kgあたり1.25〜1.5L程度を、その後数時間かけて補う方法が示されています。

 ゴール後に体重が1kg減っていた場合は、1.25〜1.5L程度を目安に、食事や飲み物から分けて補給します。

 水分保持を助けるために、

  • スポーツドリンク
  • 経口補水液
  • 味噌汁やスープ
  • 通常の食事
  • 塩分を含む軽食

などを組み合わせる方法があります。

※ただし、経口補水液は日常的なスポーツドリンクよりもナトリウム濃度が高い製品があります。大量に飲むのではなく、脱水状態や体調に応じて使用してください。

気温が高い日の給水

 暑い日は発汗量が増えるだけでなく、体温も上昇しやすくなります。

 給水だけですべての暑熱対策ができるわけではありません。

  • 暑さに徐々に慣れる
  • 通気性のよいウェアを選ぶ
  • 帽子や日陰を利用する
  • 水を身体にかける
  • ペースを落とす
  • スタート前に身体を冷やす

といった方法も組み合わせます。

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

暑い日に平常時と同じペースを維持しようとすると、給水していても体温や心拍数が大きく上昇することがあります。給水だけでなく、走行ペースの調整も重要です。

寒い日のレースでも給水は必要

 寒い日は喉の渇きを感じにくく、汗をかいていることにも気づきにくくなります。厚着をして走ると、気温が低くても大量に汗をかく場合があります。

 一方で、暑い日と同じ給水量をそのまま飲むと、飲みすぎになる可能性があります。

 寒い日は給水を完全に省くのではなく、発汗量と喉の渇きに合わせて量を減らします。

市民ランナーの給水計画例

 次の計画は一例です。全員に適した量ではありません。

レース前

  • 朝食と一緒に水分を摂る
  • スタート数時間前から少量ずつ飲む
  • スタート直前の一気飲みは避ける
  • 尿の色や喉の渇きを確認する

レース中

  • 気温と発汗量に合わせて給水する
  • 給水所ごとに少量ずつ飲む
  • 水とスポーツドリンクを使い分ける
  • 発汗量を上回るほど飲まない
  • 練習で試していない方法を本番で行わない

レース後

  • 運動前後の体重差を確認する
  • 食事と一緒に水分とナトリウムを補給する
  • 数時間かけてゆっくり戻す
  • 体重が増えている場合は追加の大量飲水を避ける

マラソン中に注意したい症状

 次のような症状がある場合は、無理に走り続けないでください。

  • 強いめまい
  • 意識がぼんやりする
  • まっすぐ走れない
  • 繰り返す嘔吐
  • 強い頭痛
  • 手足のむくみ
  • けいれん
  • 異常な寒気
  • 呼びかけへの反応がおかしい

 脱水、熱中症、低ナトリウム血症などは、症状だけで正確に区別することが難しい場合があります。

 「脱水だと思って水を大量に飲む」と、低ナトリウム血症を悪化させる可能性もあります。

 重い症状がある場合は自己判断で走り続けず、大会スタッフや救護所に相談してください。

 心臓病、腎臓病、高血圧などで水分や塩分の制限を受けている場合は、一般的な給水方法をそのまま使用せず、医師へ相談する必要があります。

よくある質問

マラソンでは給水所ごとに飲んだ方がいい?

 必ずしも毎回飲む必要はありません。

 給水所の間隔、気温、発汗量、レース時間に合わせて判断します。給水所の数が多い大会では、毎回大量に飲むと過剰摂取になる可能性があります。

1時間に何mL飲めばいい?

 400〜800mL程度が一般的な目安として示されることがありますが、固定量ではありません。

 練習前後の体重変化から発汗量を確認し、気温や胃腸の許容量に合わせて調整してください。

スポーツドリンクだけ飲めば低ナトリウム血症を防げる?

 防げるとは限りません。スポーツドリンクにも水分が含まれるため、発汗量を大きく上回って飲めば低ナトリウム血症が起こる可能性があります。

レース中に体重が減ってはいけない?

 多少の体重減少は珍しくありません。失った水分を完全に補おうとして飲みすぎるよりも、大きな脱水と体重増加の両方を避けることが重要です。

練習では給水しなくても大丈夫だった

 練習よりレースの方が、走行時間、気温、緊張、ペースが大きくなる場合があります。

 短時間の練習で問題がなかったからといって、フルマラソンでも給水が不要とは限りません。ロング走やレースペース走で試してください。

まとめ

 マラソンの水分補給では、脱水を防ぐことだけでなく、飲みすぎを避けることも重要です。

 給水量は、全ランナー共通ではありません。

  • 発汗量を練習前後の体重から確認する
  • 気温やレース時間に合わせて調整する
  • 喉の渇きも判断材料にする
  • 発汗量を大きく上回る量を飲まない
  • 水とスポーツドリンクを使い分ける
  • 長時間・大量発汗時はナトリウム補給も検討する
  • 本番前にロング走で給水計画を試す

という流れで準備しましょう。

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

マラソンの給水で重要なのは、「何mL飲めば正解か」という数字を探すことではありません自分の発汗量、走行ペース、天候、胃腸の状態に合わせて、無理なく続けられる給水方法を見つけることが大切です。

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