身長・足の長さでピッチとストライドは変わる?ランニングフォームとの関係を解説

 「身長が高い人はストライドが長い」「足が短い人はピッチを上げた方がよい」と聞いたことはないでしょうか。

 たしかに、身長や足の長さはピッチとストライドに関係します。同じペースで走るなら、足が長いランナーほどストライドが長く、ピッチが低くなる傾向があります。

 しかし、**身長や足の長さだけから、その人に適したピッチとストライドを計算することはできません。**走るペース、筋力、フォーム、経験、疲労なども数値を変えるためです。

 この記事では、身長・足の長さとピッチ・ストライドの関係を、研究結果と実際の測定方法に分けて解説します。

結論|身長と足の長さは関係するが、適正値までは決められない

 最初に結論を整理します。

  • 身長が高く足が長い人は、同じ速度ではストライドが長く、ピッチが低くなる傾向がある
  • 身長が低く足が短い人は、同じ速度ではストライドが短く、ピッチが高くなる傾向がある
  • ただし、体格とピッチ・ストライドの関係には大きな個人差がある
  • 比較するときは、身長より先に「同じ速度で走っているか」を確認する
  • 身長から理想のピッチやストライドを決める計算式は確立されていない

 体格はランニングフォームの土台の一つですが、数値を決める唯一の要因ではありません。

ピッチとストライドとは?

ピッチは1分間の歩数

 ピッチは、1分間に左右の足が何回接地したかを表す数値です。単位には「steps/min」や「spm」が使われます。

 たとえば、1分間に右足と左足を合わせて170回接地すれば、ピッチは170spmです。ランニングウォッチでは「ケイデンス」と表示されることもあります。

ストライドは1歩で進む距離

 一般的なランニングウォッチでは、ストライドを「1歩あたりに進む距離」として表示します。本記事でも、分かりやすさを優先して1歩分の距離をストライドとして扱います。

 ただし、バイオメカニクスの論文では、同じ足が再び接地するまでの左右2歩分をstride length、片足から反対の足までの1歩分をstep lengthと呼ぶ場合があります。研究値とランニングウォッチの数値を比べるときは、定義の違いに注意してください。

走る速度はピッチとストライドの組み合わせで決まる

 1歩分のストライドを使う場合、走る速度は次の関係で表せます。

速度=ピッチ×ストライド

 たとえば、5分00秒/kmは1分間に200m進むペースです。

  • ピッチ180spmなら、ストライドは約1.11m
  • ピッチ170spmなら、ストライドは約1.18m

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

同じペースでも、細かい歩幅で回転数を増やす人と、1歩を長くして回転数を抑える人がいます。どちらか一方だけで走力が決まるわけではありません。

身長・足の長さとピッチの関係

 足が長いランナーは、同じ速度ではピッチが低くなる傾向があります。

研究

 82人のレクリエーションランナーを調べた研究では、足が長いほどピッチが低いという中程度の関連が認められました。一方、足の長さで補正したピッチと垂直平均荷重率には関連がみられませんでした。

 つまり、足が長いためにピッチが低いことだけで、衝撃が大きいとは判断できません。

研究

 417人を対象に時空間パラメーターを調べた研究でも、身長はストライドと正の相関、ピッチとは負の相関を示しました。身長が高い人ほどストライドが長く、ピッチが低い傾向が示されています。

 成長期の長距離ランナー138人を対象にした研究では、足の長さと走速度がピッチのばらつきの約半分を説明しました。足が短いことと速度が速いことは、高いピッチと関連していました。

 ただし、これらは集団全体にみられる「傾向」です。足の長さから、個人のピッチを正確に予測できるわけではありません。

身長・足の長さとストライドの関係

研究

 身長が高く足が長ければ、前後に動かせる脚の長さも大きくなるため、ストライドは長くなりやすいと考えられます。実際に、417人を調べた研究では身長とストライドに中程度の相関が報告されています。

研究

 しかし、成人男性のレクリエーションランナーを対象にした研究では、同じ速度で比較すると、身長や足の長さなどの身体計測値と、本人が自然に選んだピッチ・ストライドとの相関は低く、有意ではありませんでした。

 速度が3.15m/秒から4.12m/秒へ上がったとき、ピッチの増加は4%にとどまり、ストライドは28%増加しました。

 この結果から分かるのは、次の2点です。

  1. 体格とストライドには一定の関係がある
  2. 個人のストライドを大きく変えるのは、身長だけでなく走速度である

 「身長が同じならストライドも同じ」「足が長いほど必ず速い」とは限りません。

研究結果が一致しないのはなぜ?

 身長とピッチ・ストライドに関連がある研究と、関連が弱い研究があります。これは必ずしも矛盾ではありません。

走る速度が違う

 ピッチとストライドは、速度によって変わります。異なるペースのランナーをそのまま比べると、体格より速度の影響を強く受ける場合があります。

 研究でも、ストライド、ピッチ、接地時間などは速度に依存することが示されています。比較するときは、同じペースまたは同じ速度にそろえる必要があります。

対象者の年齢や走力が違う

 成長期のランナーは身長と足の長さが変化している途中です。成人ランナーの結果を、そのまま子どもや中高生へ当てはめることはできません。

 初心者、経験者、短距離選手、長距離選手でも、自然に選ぶピッチとストライドは異なります。

足の長さの測り方が違う

 研究では、上前腸骨棘から内くるぶしまでを測る方法、大転子付近から床までを測る方法、身長と座高から推定する方法などが使われます。衣服の股下寸法や自宅で測った値と、研究の脚長は同じとは限りません。

身長以外の要因も影響する

 ピッチとストライドには、次の要因も関係します。

  • 走るペース
  • 筋力や腱の弾性
  • 股関節・膝関節・足関節の動き
  • 接地位置や空中時間
  • ランニング経験や普段の練習
  • 上り坂、下り坂、路面
  • 疲労
  • シューズ

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

身長や足の長さは変えられませんが、走り方や身体機能はトレーニングによって変化します。

身長が高い人と低い人の違い

 同じ速度で走る場合の一般的な傾向を整理します。

体格ピッチストライド
身長が高い・足が長い低くなりやすい長くなりやすい
身長が低い・足が短い高くなりやすい短くなりやすい

 これは優劣ではありません。身長が低い人が、背の高い人と同じストライドを目指す必要はなく、身長が高い人が一律に180spmへ合わせる必要もありません。

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

体格に合わない数値を無理にまねると、自然なリズムを崩す可能性があります。

足の長さより身長を見ればよい?

 身長だけでは、脚と胴体の比率が分かりません。同じ身長でも、足の長さには個人差があります。そのため、ピッチ・ストライドとの関係を詳しく考えるなら、身長に加えて足の長さも確認した方がよいでしょう。

 ただし、自宅で足の長さを測っても、そこから適正ピッチを算出できるわけではありません。

隼人(はやと)
隼人(はやと)

足の長さは、ほかのランナーと数値が違う理由を理解するための参考情報として使います。

自分のピッチとストライドを確認する方法

1.一定のペースで走る

 平坦なコースまたはトレッドミルで、普段のイージーペースを数分間維持します。信号、急な坂、強い追い風や向かい風がある区間は避けましょう。

2.ピッチを測る

 ランニングウォッチを使うか、30秒間の左右合計歩数を数えて2倍します。手動で測る場合は、複数回測って平均を取ると誤差を減らせます。

3.ストライドを計算する

 ウォッチに表示されない場合は、速度とピッチから概算できます。

1歩のストライド(m)=1分間に進む距離(m)÷ピッチ(spm)

 6分00秒/kmなら、1分間に約166.7m進みます。ピッチが170spmなら、ストライドは約0.98mです。

4.違う日にも測る

 1回の数値だけで判断せず、同じコース・同じペースで数回確認します。イージーラン、テンポ走、レースペースは分けて記録してください。

比較するときは「同じ身長」より「同じ速度」を優先する

 ピッチとストライドを比較するときは、次の順番で条件をそろえます。

  1. 走る速度
  2. 路面と傾斜
  3. 疲労の程度
  4. シューズ
  5. 身長と足の長さ

 たとえば、ピッチ165spmで6分00秒/kmを走る人と、180spmで4分00秒/kmを走る人を比べても、体格の影響は判断できません。

 まず自分の同じペースで経時的に比べることが、最も実用的です。

「理想のピッチは180」は身長に関係なく当てはまる?

 すべてのランナーに180spmが適しているわけではありません。

 ピッチは、速度、足の長さ、走力、路面などによって変わります。とくに足が長いランナーは、同じ速度ではピッチが低くなる傾向があります。数値だけを見て、無理に180spmへ合わせる必要はありません。

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

フォームを調整する目的でピッチを変える場合も、現在のピッチを基準に小さく試し、走りやすさ、接地位置、痛み、心拍数などを確認します。身長別の一律な目標値を設定するより、自分の反応を見ることが大切です。

ストライドが身長より短いと問題?

 ストライドを身長と単純に比べて、良し悪しを決めることはできません。

 ストライドはペースを落とせば短くなり、ペースを上げれば長くなります。また、長いストライドでも身体より前へ足を伸ばしすぎている場合と、後方への推進によって自然に距離が伸びている場合では意味が異なります。

 確認したいのは数値の長短だけではなく、次の点です。

  • 同じペースで以前より走りにくくなっていないか
  • 接地時に強いブレーキ感がないか
  • ピッチやストライドを変えて痛みが出ていないか
  • ペースを上げたときに自然にストライドが伸びているか

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

身長に対してストライドが短いことだけを理由に、前方へ大きく踏み出すのは避けましょう。

身長・足の長さをフォーム改善にどう生かす?

 身長と足の長さは「目標値を決めるもの」ではなく、「個人差を理解するもの」として使います。

他人の数値をそのまま目標にしない

 自分より足が短いランナーの高いピッチや、自分より身長が高いランナーの長いストライドを、そのまま再現する必要はありません。

同じペースの自分と比較する

 フォーム変更の前後は、同じペースでピッチ、ストライド、心拍数、主観的運動強度を比較します。速度が違うデータを比べないことが重要です。

数値より走りの反応を優先する

 ピッチやストライドを変えた結果、呼吸が苦しくなる、脚が過度に疲れる、痛みが出る場合は、その変更が自分に合っていない可能性があります。

よくある質問

身長が高いとランニングは有利ですか?

 身長が高いとストライドが長くなりやすい一方、体重や脚の慣性なども変わります。長距離走の能力は、最大酸素摂取量、乳酸閾値、ランニングエコノミー、持久力、トレーニングなど多くの要因で決まるため、身長だけで有利・不利とは判断できません。

足が短い人はピッチ走法にした方がよいですか?

 足が短い人は、同じ速度では自然にピッチが高くなる傾向があります。しかし、意識的に「ピッチ走法」へ変える必要があるとは限りません。まず普段のピッチを同じペースで測定し、走りに問題があるときだけ調整を検討します。

足が長い人はストライドを広げた方がよいですか?

 足が長くても、前方へ足を伸ばせばよいわけではありません。意図的に歩幅を広げると、身体より前で接地してブレーキが強くなる場合があります。ペースアップに伴って、後方への推進から自然にストライドが伸びることを目指します。

身長から適正ストライドを計算できますか?

 身長とストライドには関連がありますが、個人の適正値を決められる計算式は確立されていません。速度をそろえて、自分の自然なストライドと走りやすさを確認する方が実用的です。

まとめ

 身長や足の長さは、ランニングのピッチとストライドに関係します。同じ速度なら、身長が高く足が長い人はストライドが長く、ピッチが低くなる傾向があります。

 ただし、この関係はあくまで集団の傾向です。ピッチとストライドは、走る速度、身体機能、経験、疲労、路面などにも左右されます。

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

大切なのは、身長から理想値を探すことではありません。同じ条件で自分の数値を測り、無理なく走れるピッチとストライドの組み合わせを見つけることです。

参考文献

  1. Cavanagh PR, Kram R. Stride length in distance running: velocity, body dimensions, and added mass effects. Med Sci Sports Exerc. 1989;21(4):467-479. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2674599/
  2. Schulze S, et al. Treadmill based reference running data for healthy subjects is dependent on speed and morphological parameters. Hum Mov Sci. 2017;55:269-275. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28886463/
  3. Tenforde AS, Borgstrom HE, Outerleys J, Davis IS. Is Cadence Related to Leg Length and Load Rate? J Orthop Sports Phys Ther. 2019;49(4):280-283. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30862272/
  4. van Oeveren BT, et al. Inter-individual differences in stride frequencies during running obtained from wearable data. J Sports Sci. 2019;37(17):1996-2006. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31079578/
  5. Taylor-Haas JA, et al. Cadence in youth long-distance runners is predicted by leg length and running speed. Gait Posture. 2022;98:266-270. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36209689/
  6. Schubert AG, Kempf J, Heiderscheit BC. Influence of stride frequency and length on running mechanics: a systematic review. Sports Health. 2014;6(3):210-217. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24790690/