
「マラソンは何歳くらいが一番速いの?」
「40代からランニングを始めても自己ベストを更新できる?」
「年齢とともに、どのくらい記録は落ちていくの?」
ランニングを続けていると、気になるのが年齢とパフォーマンスの関係です。
一般的にVO₂maxなどの身体能力は、加齢による影響を受けます。
しかし、フルマラソンやハーフマラソンでは、単純に「若ければ若いほど速い」とは限りません。
世界トップレベルのランナーでは、ハーフマラソンは20代半ば〜後半、フルマラソンは20代後半〜30歳前後に高いパフォーマンスを発揮する傾向があります。
一方、大規模な市民マラソンを調べた研究では、30代が最も速かったという報告もあります。
重要なのは、「生理学的な能力のピーク」と「自己ベストを出す年齢」は必ずしも同じではないということです。
本記事では、ハーフ・フルマラソンのピーク年齢や40代以降のパフォーマンスについて、研究をもとに解説します。
マラソンのピーク年齢は何歳?

最初に、研究から分かっている大まかな傾向を整理します。
| 対象 | ピーク年齢の目安 |
|---|---|
| 世界トップレベル・ハーフ | 20代半ば〜後半 |
| 世界トップレベル・フル | 20代後半〜30歳前後 |
| 市民ランナー・フル | 30代が最速となる研究もある |
| 40代 | 高いパフォーマンスを維持するランナーも多い |
| 50代以降 | 加齢による低下が徐々に明確になる |

ただし、これは「30歳を過ぎたら記録を伸ばせない」という意味ではありません。
マラソンの記録には、
- 年齢
- ランニング歴
- トレーニング量
- VO₂max
- 乳酸閾値
- ランニングエコノミー
- 長時間走り続ける能力
- ペース配分
- 糖質・水分補給
- レース経験
など、さまざまな要素が関係します。

そのため、集団として観察されたピーク年齢と、一人ひとりが自己ベストを出す年齢は分けて考える必要があります。
ハーフマラソンのピークは20代半ば〜後半

ハーフマラソンでは、世界トップレベルのランナーは20代半ば〜後半に高いパフォーマンスを発揮する傾向があります。
1997〜2020年のハーフマラソンとフルマラソンについて、世界ランキング上位選手を調査した研究では、ハーフマラソン選手の年齢は、
- 男性:25.6±3.6歳
- 女性:27.5±4.4歳
でした。
また、5kmからフルマラソンまでの年齢別世界記録を解析した研究では、男性のハーフマラソンにおけるピーク年齢は27歳と推定されています。

これらの研究から、世界トップレベルのハーフマラソンでは、20代半ば〜後半がピークの一つの目安と考えられます。
ただし、「27歳を過ぎると急に走力が低下する」という意味ではありません。
あくまでも世界ランキングや世界記録などを集団として解析した結果であり、個人のピーク年齢には大きな違いがあります。
フルマラソンのピークは20代後半〜30歳前後

フルマラソンでは、ハーフマラソンよりも少し高い年齢でトップパフォーマンスを発揮する傾向があります。
先ほどの世界ランキングを調べた研究では、フルマラソン選手の年齢は、
- 男性:28.0±3.9歳
- 女性:28.4±4.1歳
でした。
男性では、
ハーフ:25.6歳
↓
フル:28.0歳
となっており、フルマラソン選手の方が約2.4歳高くなっています。
別のエリートマラソンランナーを対象とした研究でも、ピークパフォーマンス時の年齢は、
- 男性:28.9±3.8歳
- 女性:29.8±4.2歳
と報告されています。

研究によって多少の違いはありますが、世界トップレベルのフルマラソンでは、20代後半〜30歳前後がピークの一つの目安と考えられます。
フルマラソンはハーフよりピークが遅い?

研究結果を見ると、距離が長くなるほどピーク年齢が高くなる傾向があります。
フルマラソンでは42.195kmを走り続けるため、
- 有酸素能力
- ランニングエコノミー
- 長時間ペースを維持する能力
- 疲労への耐性
- ペース配分
- 糖質・水分補給
- レース経験
など、さまざまな要素がパフォーマンスに関係します。
特にマラソンでは、単純にVO₂maxが高いだけではなく、持っている能力を42.195kmにわたってどれだけ維持できるかが重要になります。
長期間のトレーニングやレース経験によって改善できる要素もあるため、フルマラソンではハーフマラソンよりピーク年齢が高くなる可能性があります。
ただし、これはあくまで考えられる理由です。

年齢と競技成績を調べた観察研究だけでは、経験そのものがピーク年齢を遅らせる原因だと証明することはできません。
市民ランナーでは30代が最も速いという研究もある

ここまで紹介した研究は、主に世界トップレベルのランナーを対象としています。
一方、一般の大会参加者まで対象を広げると、ピーク年齢はさらに高くなる傾向があります。
ベルリンマラソンでは男性34歳・女性32歳
2008〜2018年のベルリンマラソンに参加した387,222人を解析した研究では、最も速かった年齢は、
- 女性:32歳
- 男性:34歳
でした。
さらに5歳刻みで比較すると、
- 女性:30〜34歳
- 男性:35〜39歳
が最も速い年齢カテゴリーでした。
ニューヨークシティマラソンでも30代が速い
2006〜2016年のニューヨークシティマラソンに参加した451,637人を解析した研究では、ピーク年齢は、
- 女性:29.7歳
- 男性:34.8歳
でした。
5歳刻みでは、
- 女性:30〜34歳
- 男性:35〜39歳
が最も速いグループでした。

大規模な市民マラソンの結果を見ると、30代はすでにピークを過ぎた年代ではなく、高いマラソンパフォーマンスを発揮している年代であることが分かります。
エリートと市民ランナーではピーク年齢が違う

これまで紹介した結果を簡単に比較してみましょう。
| 対象 | 男性 | 女性 |
| 世界トップレベル・ハーフ | 25.6±3.6歳 | 27.5±4.4歳 |
| 世界トップレベル・フル | 28.0±3.9歳 | 28.4±4.1歳 |
| ベルリンマラソン | 34歳 | 32歳 |
| NYCマラソン | 34.8歳 | 29.7歳 |
世界トップレベルでは20代後半が中心なのに対し、市民ランナーを含む大規模大会では30代にピークが観察されています。
※ただし、この表には注意が必要です。
同じ方法でピーク年齢を測定した研究同士ではないため、数値を単純に比較することはできません。

「市民ランナーの身体能力はエリートより遅くピークを迎える」と解釈するのではなく、対象集団や競技歴などによって、最も速い年齢が異なって観察されると考えた方がよいでしょう。
なぜ市民ランナーのピークはエリートより遅い?

市民ランナーでは30代に高いパフォーマンスが観察されます。
しかし、「30代になって身体能力が最も高くなる」という意味ではありません。
市民ランナーでは、トレーニング歴や競技経験などが関係している可能性があります。
ランニングを始める年齢が違う
エリートランナーの多くは、若い頃から専門的なトレーニングを長期間積んでいます。
一方、市民ランナーでは20〜30代、あるいはそれ以降にランニングを始めるケースも珍しくありません。
例えば30歳から本格的に走り始めた場合、
30歳:ランニング開始
↓
32歳:継続して走れるようになる
↓
34歳:ロング走やペース走に慣れる
↓
36歳:自己ベスト
ということも考えられます。
36歳で自己ベストを出したからといって、「身体能力そのものが36歳でピークになった」とは限りません。
トレーニングによる改善が加齢による低下を上回ることがある
市民ランナーでは、
- 走る頻度を増やす
- 走行距離を徐々に増やす
- ロング走を取り入れる
- テンポ走やインターバル走を取り入れる
- 筋力トレーニングを行う
- ランニングエコノミーを改善する
など、トレーニングによって改善できる余地があります。

つまり、年齢によって一部の生理機能が少しずつ低下していたとしても、トレーニングによるプラスがそれを上回れば自己ベストを更新することは可能です。
ペース配分や補給などの経験も重要
特にフルマラソンでは、身体能力だけで記録が決まるわけではありません。
前半を速く走りすぎれば、後半に大きく失速する可能性があります。
また、糖質や水分の補給が不十分であれば、本来の走力を十分に発揮できないこともあります。
経験を積むことで、
ペース配分
+
補給方法
+
シューズ・装備
+
レース前の調整
+
42.195kmを走る経験
などが少しずつ最適化されていきます。
こうした要素も、市民ランナーが30代以降に自己ベストを更新できる理由として考えられます。
40代になるとマラソンは遅くなる?

「40歳を超えると一気にタイムが落ちる」と考える必要はありません。
マラソンとハーフマラソンの405,515件の記録を解析したLeykらの研究では、トレーニングを行っているランナーについて、20〜49歳では平均的なマラソン・ハーフマラソン記録に大きな加齢変化がみられず、明確な低下は50歳以前には確認されなかったと報告されています。
さらに50〜69歳でも、パフォーマンスの低下は**10年間あたり約2.6〜4.4%**でした。
ただし、これは「40代でも20代と身体能力がまったく同じ」という意味ではありません。

加齢による生理学的変化は徐々に起こります。しかし、ランニングを継続している人では、持久系パフォーマンスを比較的長く維持できる可能性があります。
40代でも自己ベストを更新できる?

十分に可能性があります。
特に、
- ランニングを始めてまだ数年
- トレーニング量を増やせる
- ロング走を十分に行っていない
- ペース配分を改善できる
- 補給方法を改善できる
- 筋力トレーニングを行っていない
といったランナーでは、年齢による低下以上に改善できる余地が残っている可能性があります。

重要なのは、「集団としてのピーク年齢」と「自分自身の伸びしろ」を混同しないことです。
例えば40歳のランナーが、20歳の頃より高いVO₂maxを獲得できるとは限りません。
しかし20歳の頃に本格的なランニングをしていなかったのであれば、40代でトレーニングを積み、人生で最も速いマラソンを走ることは十分考えられます。
50代・60代ではどのくらいパフォーマンスが低下する?

年齢が高くなるほど、加齢による影響は徐々に大きくなります。
ベルリンマラソンの大規模研究では、ピーク時の走速度に対して約90%の水準だった年齢カテゴリーは、
- 女性:60〜64歳
- 男性:55〜59歳
でした。
つまり、ピーク年齢を過ぎるとすぐに大幅な低下が起こるわけではありません。ただし、高齢になるほどVO₂maxや筋力などの低下が大きくなるため、記録を維持する難易度は徐々に高くなります。
年齢とともにVO₂maxはどう変化する?

年齢による持久系パフォーマンス低下の大きな要因の一つが、VO₂max(最大酸素摂取量)の低下です。
VO₂maxは、
心臓から送り出せる血液量
×
筋肉が血液から酸素を利用する能力
などによって決まります。
加齢に伴って最大心拍数や最大心拍出量などが低下するため、VO₂maxも徐々に低下します。
さらに年齢が高くなると、
- 筋量
- 筋力
- 腱・筋の機能
- 回復能力
などにも変化が起こります。
ただし、その低下速度は全員同じではありません。

運動習慣やトレーニング量の維持によって、低下の程度には大きな個人差があります。
年齢によるパフォーマンス低下を抑えるためにできること

年齢そのものを変えることはできません。
しかし、年齢を重ねてもランニング能力を維持するためにできることはあります。
ランニングを継続する
最も基本になるのは、継続して走ることです。
加齢だけではなく、トレーニング量の減少もパフォーマンス低下に関係します。
無理に若い頃と同じ練習量を維持する必要はありませんが、体調に合わせて継続できる運動量を確保しましょう。
適切な強度のトレーニングを取り入れる
すべてのランニングをゆっくり走るだけではなく、能力や目的に応じて、
- テンポ走
- インターバル走
- 坂道走
- 流し
などを取り入れる方法があります。

ただし、年齢が高くなるほど「高強度を増やせばよい」という意味ではありません。トレーニング刺激と回復のバランスが重要です。
筋力トレーニングを取り入れる
加齢に伴って筋量や筋力も低下しやすくなります。
スクワットやカーフレイズなどの筋力トレーニングをランニングと組み合わせることで、筋力の維持・向上を目指します。
回復を軽視しない
年齢を重ねるほど、トレーニングそのものだけでなく回復も重要になります。
- 睡眠
- 栄養
- 休養日
- 練習間隔
- 疲労の確認
まで含めてトレーニングと考えましょう。
「年齢」だけで自分の限界を決める必要はない

世界トップレベルのランナーでは、ハーフマラソンは20代半ば〜後半、フルマラソンは20代後半〜30歳前後に高いパフォーマンスがみられます。
しかし、市民ランナーでは事情が異なります。
30代や40代になってから、
- ランニングを始める
- トレーニング量を増やす
- 練習方法を改善する
- ペース配分を覚える
- 補給方法を改善する
ことで自己ベストを更新することは十分考えられます。
つまり、
「身体能力のピークを過ぎた」
=
「もう自己ベストを更新できない」
ではありません。

自分の年齢だけを見るのではなく、これまで何年間トレーニングしてきたのか、現在どの部分に改善できる余地があるのかを考えることが大切です。
まとめ|マラソンのピーク年齢には大きな個人差がある
研究から見ると、世界トップレベルでは、
ハーフマラソン:20代半ば〜後半
フルマラソン:20代後半〜30歳前後
が高いパフォーマンスを発揮する年齢の一つの目安です。
一方、大規模な市民マラソンでは、30代が最も速いという結果も報告されています。さらに、トレーニングを継続しているランナーでは、40代まで高いパフォーマンスを維持している人もいます。
年齢とともに生理学的能力は少しずつ変化しますが、マラソン記録にはトレーニング歴、ランニングエコノミー、ペース配分、補給、経験なども関係します。
そのため、「○歳だからもう遅い」と年齢だけで判断する必要はありません。
特にランニング歴の短い市民ランナーでは、年齢による変化以上に、まだトレーニングによって改善できる余地が残っている可能性があります。
参考文献
- Nikolaidis PT, et al. Age of peak performance in elite-level male and female athletes competing in the Olympic and World Championship running events.
- Allen SV, Hopkins WG. Age of peak competitive performance of elite athletes: a systematic review. Sports Medicine. 2015;45:1431–1441.
- Knechtle B, et al. The age of peak marathon performance in cross-sectional and longitudinal data analysis.
- Nikolaidis PT, et al. Performance trends in master marathoners and the age of peak marathon performance.
- Leyk D, Erley O, Ridder D, et al. Age-related changes in marathon and half-marathon performances. International Journal of Sports Medicine. 2007;28(6):513–517.
- Knechtle B, et al. Five decades of sub 3-hour marathon running – The development of performance, dominance and age.
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