
「ゆっくり走っているつもりなのに、すぐに息が上がる」「後半になると脚が重くなる」
ランニングを続けるなかで、このように感じることはありませんか。
疲れにくい走り方を身につけるには、フォームだけでなく、自分に合ったペースや練習量にも目を向けることが大切です。
また、「かかとから着地しない」「ピッチを180にする」といった方法が、すべてのランナーに適しているわけではありません。
この記事では、初心者から市民ランナーに向けて、疲れにくい走り方のコツを研究に基づいて解説します。研究で分かっていることと、実際に試すときの目安を区別しながら、自分に合う走り方を探していきましょう。
ランニングで疲れにくい走り方とは?

ランニングの効率を表す指標に「ランニングエコノミー」があります。一定の速度で走るために必要な酸素やエネルギーが少ないほど、ランニングエコノミーがよいと評価されます。
ただし、エネルギー消費の少なさ、息苦しさ、脚の疲れ、ケガのリスクは同じものではありません。 この記事では、それぞれを混同せずに考えます。

たとえば、走る速度を下げて楽になることと、同じ速度のまま走りの効率が改善することは別です。
最初はペースを調整して無理なく走れる状態をつくり、そのうえで必要なフォームの工夫を試すと整理しやすくなります。
2024年のシステマティックレビュー・メタ解析では、51研究、計1,115人を対象に走り方とランニングエコノミーの関係が検討されました。上下動の小ささやピッチの高さには一定の関連がみられた一方、接地時間など関連が明確でない指標もありました。
これは主に観察研究をまとめた結果です。効率のよい人にみられる特徴をまねすれば、自分も必ず効率がよくなるとは限りません。
ランニングで疲れにくい走り方の7つのコツ

1.会話に余裕のあるペースから始める
楽に走りたい日の最初の確認項目は、フォームよりもペースです。「周りのランナーと同じ速さ」「以前走れたペース」に合わせず、今日の自分に余裕があるかを確認しましょう。
強度の目安になるのが、運動中に楽に話せるかを確認する「トークテスト」です。健康な成人16人を対象とした研究では、話しにくくなる段階と換気閾値との対応が示されました。
換気閾値は、運動強度に対する呼吸の増え方が変化する境目の一つです。
実践では、次のように使います。
- 短い文章を無理なく話せるペースで走る。
- 会話が途切れるほど息が上がったら、速度を落とす。
- ゆっくり走っても苦しければ、ウォーキングを挟む。
研究のトークテストには文章を読むなどの手順があり、日常会話による確認は簡易的な目安です。安全性を保証する検査ではありません。
また、記録向上を目的とする強度の高い練習まで、すべて会話できる強度にする必要はありません。
2.足を前へ投げ出すような大股を見直す
歩幅を大きくしようとして、足を遠くへ伸ばしていませんか。
同じ速度でピッチを少し増やすと、1歩の距離は短くなります。
健康な市民ランナー45人を対象とした研究では、普段よりピッチを5%・10%増やす条件などを比較し、ピッチ増加に伴って歩幅や制動インパルスなどが減少しました。
※制動インパルスとは、接地中に身体の進行を減速させる力を時間で積み上げた量です。
足を遠くへ伸ばす癖が気になる場合は、速度を上げず、足運びを少し細かくする方法が選択肢になります。
ただし、「身体の真下へ必ず着地する」と厳密に合わせる必要はありません。接地位置と、足裏のどの部分から接地するかも別の問題です。
3.ピッチは180に固定せず、必要なら少しだけ調整する
ピッチとは、1分間の歩数です。ランニングウォッチなどでは「spm」と表示されます。
前項の研究を、全員にピッチ増加を勧める根拠として使うことはできません。
2022年のレビューでは、ピッチ変更による動作や関節負荷の変化は報告されていますが、パフォーマンスや障害への効果を確定するには根拠が不十分でした。
変更直後に、きつさやぎこちなさが増える結果も含まれています。

関節の負担が小さくなることと、エネルギー消費が少なくなることは分けて判断しましょう。
試す場合の一例は、普段のピッチから約5%だけ増やす方法です。160spmなら168spmが計算上の目安になります。これは全員の推奨値ではなく、変化を小さくするための例です。
短い区間で試し、息苦しさや脚の張りが増す場合は戻してください。現在の走りに問題がない人が、数値だけを理由に変更する必要はありません。
4.姿勢を固めず、自然に腕を振る
背筋を伸ばそうとして胸を張りすぎたり、体幹を意識して腹部を固めたりすると、かえって走りにくく感じることがあります。
まずは、視線を足元へ落とし続けず、安全を確認できる前方へ向けます。肩や手の力みを短く確認し、肘の角度や前傾角度を一定に固定しようとしないことから試しましょう。これらは姿勢を調整するための実践上の手がかりであり、特定の角度による省エネ効果を保証するものではありません。
腕振りを止めれば省エネになるとも限りません。13人を対象にした実験では、自然な腕振りで走る場合より、腕を後ろで組むなどして動きを制限した場合に代謝コストが増加しました。

この研究は「強く腕を振るほどよい」「肘は90度が最適」と示したものではありません。無理に固定せず、自分の走りに伴う自然な腕振りを使うことを考えましょう。
5.上へ跳ぼうとせず、上下動を無理に消さない
ランニングには、身体が上下に動く局面があります。2024年のメタ解析では、上下動が小さいことと、酸素・エネルギーコストの低さに中程度の関連がみられました。
ただし、上下動をゼロにすることが目標ではありません。数値を下げようとして腰を落としたまま走る方法を、一律に勧めることもできません。
実践では、上へ高く跳ぶ意識を加えず、前へ楽に進めるかを確かめます。ウォッチの数値を見比べる際も、異なる速度で走った結果をそのまま優劣の判断に使わないようにしましょう。
6.呼吸を止めず、鼻だけ・決まったリズムにこだわらない
「鼻から吸って口から吐く」「2歩で吸って2歩で吐く」などの呼吸法を聞いたことがあるかもしれません。
ランニング中の呼吸戦略を整理したレビューでは、鼻呼吸や歩数と呼吸の同調などが検討されています。
ただし、適した方法は運動強度や慣れなどによって変わり、万人に共通する最適な呼吸法が確立しているわけではありません。
楽なジョギングで鼻呼吸が自然にできるなら、そのままでも構いません。一方、苦しいのに口を閉じ続けたり、決めた回数に合わせて呼吸を我慢したりする必要はありません。
息苦しさが強くなったときは、まずペースを落とします。呼吸法だけで高すぎる運動強度を補おうとしないことが大切です。
7.フォームの意識は一度に一つ、短時間にする
足の位置、骨盤、膝、腕、呼吸を同時に直そうとすると、何が自分に合うのか分かりにくくなります。
トレッドミルでの実験では、身体の動きや呼吸へ注意を向ける条件より、周囲へ注意を向ける条件の方がランニングエコノミーがよい結果が報告されています。
ただし、これは特定の課題における結果で、フォーム練習全般を否定するものではありません。
実践では「肩の力を抜く」など、一度に一つだけ短く確認し、その後は自然な走りへ戻します。合わなければ変更をやめて構いません。
痛みや体調の変化まで無視する必要はありません。身体の安全確認と、動きを細かく操作し続けることは分けて考えましょう。
かかと着地をやめれば疲れにくくなる?

かかと着地という理由だけで、走り方を変える必要はありません。
53研究を含む2020年のレビューでは、普段からかかとで接地する人と、それ以外の接地をする人との間で、ランニングエコノミーの明確な差は示されませんでした。
かかと着地の人が急に接地方法を変えると、直後の効率が悪くなる結果も報告されています。ただし、これらの根拠には限界があります。
接地方法を変えると、負担のかかる場所も変わります。前足部寄りの接地では、膝側の負担指標が減る一方、足関節や足関節を底屈させる筋群の負担が増える傾向が示されています。

見直すときは、「どこから着くか」だけで決めず、走る速度、歩幅、痛み、疲れ方も合わせて確認してください。痛みを改善するためにフォーム変更を検討する場合は、個別の評価を受けるとよいでしょう。
疲れにくく走るためには、練習・食事・回復も整える

無理なく続けられるランニングを土台にする
フォームの数値を変え続けることだけが、効率をよくする方法ではありません。
約6か月のランニングを検討した2024年の研究では、ウェアラブルから走り方や速度の助言を受けた群と、受けなかった群の両方でランニングエコノミーが改善しました。
改善量の群間差は統計学的に有意ではありませんでした。
※ただし、最初の40人のうち前後の測定を完了したのは22人で、脱落が多い点には注意が必要です。
この結果だけでフォーム指導が不要とはいえませんが、特定の機器の助言に従えば必ず上乗せ効果が得られるともいえません。

初心者は、まず走り終えた後や翌日の状態も確認しながら、続けられる量を探しましょう。距離・速さ・回数を同時に増やすと、負担の変化を判断しにくくなります。
筋力トレーニングを段階的に取り入れる
2024年のメタ解析では、高負荷の筋力トレーニング、プライオメトリックトレーニング、それらを組み合わせた方法に、ランニングエコノミー改善の可能性が示されています。効果は方法や測定速度などによって異なりました。
ただし、研究の高負荷トレーニングを、未経験者がいきなりまねる必要はありません。まずはスクワットやカーフレイズなどの基本動作を、痛みなく安定して行う練習から始めます。これは導入の例であり、自重運動だけで研究と同じ効果が得られるという意味ではありません。
高重量やジャンプ系の種目へ進む場合は、経験や身体の状態に合わせて段階を踏みましょう。
長時間走る日は糖質補給も考える
長時間のランニングで後半に脚が重くなる場合は、フォームとともに補給計画も確認します。
持久運動の栄養に関する文献では、1〜2.5時間程度の運動中の糖質摂取として、1時間当たり30〜60gが目安として示されています。
ただし、実際の必要量や摂りやすい量は強度、運動時間、事前の食事、胃腸の耐容性などで変わります。

この目安を、短時間の軽いジョギングにも一律に当てはめる必要はありません。長く走る日は、試したことのある飲料や補給食を使い、普段の練習から摂り方を確認しましょう。
睡眠不足や暑さをフォームの問題にしない
睡眠については、アスリート全員に同じ時間を当てはめるより、個人の必要量を考えることが推奨されています。
日中の眠気や起床時の回復感も確認し、練習のために睡眠を削り続けないようにします。
暑い環境では、暑熱対策や水分管理も必要です。気温や湿度が高い日に普段と同じペースを維持しようとせず、涼しい時間帯を選ぶ、時間を短くするなど、条件に合わせて調整してください。
初心者向け|疲れにくい走り方を試す練習例

以下は、前述の考え方を実践しやすい形にした例です。この組み合わせ自体の効果を検証した研究メニューではありません。 痛みや体調不良のない人を想定しています。
| 段階 | 内容の例 | 確認すること |
|---|---|---|
| 準備 | 5分ほど歩き、徐々に速歩へ | 体調に問題がないか |
| 前半 | 会話に余裕のあるジョギングを5分 | 最初から速くなっていないか |
| 短い確認 | 30秒ほど、一つの工夫だけを試す | 肩の力みなど、気になる点だけを見る |
| 比較 | 普段の走りへ戻して2〜3分 | 変更前後で楽さや痛みがどう違うか |
| 後半 | 余裕があればジョギングを5分 | 疲れるまで延長しない |
| 終了 | 歩いて終える | 痛みや強い不調がないか |
続けて走るのが難しい場合は、ジョギング1〜2分とウォーキング1〜2分を交互に行う方法でも構いません。時間や回数は短く調整できます。
次回も同じ工夫を試すかどうかは、その場の走りやすさだけでなく、当日夜や翌日の張り・痛みも確認して決めましょう。
自分に合う走り方かを確認する方法

フォームを試すときは、一度に複数の条件を変えないことがポイントです。同じようなコース・ペース・気象条件で、次の項目を記録すると比較しやすくなります。
| 確認項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 条件 | ペース、時間、コース、暑さ、前日の練習 |
| 変更点 | 肩の力を抜くなど、一つだけ |
| 呼吸 | 会話のしやすさ、息苦しさ |
| 脚 | 張りや痛みの場所、左右差 |
| 全体のきつさ | 自分の言葉や同じ尺度での評価 |
| 翌日の状態 | 普段より疲れや痛みが残っていないか |
これは自分の反応を整理する方法であり、ランニングエコノミーを直接測定する方法ではありません。心拍数や主観的な楽さだけで、酸素・エネルギーコストの改善を確定することはできません。
ランニングで疲れにくい走り方のよくある質問
「ゆっくり」の基準をペースの数字だけで決めず、会話の余裕を確認してください。ウォーキングを挟み、運動時間も短くして構いません。休養を取っても普段と違う強い疲れが続く場合は、フォームだけの問題と考えずに相談しましょう。
一律にはいえません。ピッチを変えると歩幅や負荷のかかり方は変わりますが、省エネになるとは限りません。数値を追うより、変更の目的と自分の反応を確認してください。
まずペースを落とし、必要なら歩くか終了してください。苦しい状態で走り続けるために、フォーム修正を使う必要はありません。
特に、胸の痛み、めまい、失神しそうな感覚、普段と違う強い息苦しさや動悸があるときは運動を中止します。胸痛が続く、胸痛に息苦しさや冷汗を伴うなどの場合は、速やかに救急要請をしてください。日本では119です。
次のランニングで試すこと
次に走るときは、会話に余裕のあるペースから始めてみてください。フォームが気になる場合も、「肩を楽にする」など一つだけ短く試し、自然な走りへ戻して違いを確認します。
180spmや特定の着地方法へ合わせることを目標にせず、自分にとって走りやすく、痛みや過度な疲れを残さない方法を探していきましょう。
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風を切るランニング 