マラソン前のカーボローディングーーー「実際にどのような食事を摂ればいいの?」・「本当に意味あるの?」、色々分からないことも多いですよね。
簡潔にいうとマラソン前のカーボローディングは本番でパフォーマンスを発揮するために、レース数日前から食事で糖質を蓄えることを言います。
マラソンでパフォーマンスを発揮しきるための「カーボローディングのやり方」➝「カーボローディングそのものや気を付けるべきこと」➝「カーボローディングの仕組み」というように徐々に深い内容になっています。
「結論だけ知りたい」という方から、「仕組みまで詳しく知りたい」という方まで対応した幅広い内容になっています。
ぜひ、参考にしてみて下さい。
カーボローディングのやり方
カーボローディングはマラソン前に高糖質の食べ物を食べるだけでいいというわけではありません。やり方を間違えてしまうと、マラソン本番でパフォーマンスを発揮しきれずに終わってしまいます。
まずは、実践的なカーボローディングの流れについて解説します。

マラソン7~4日前:ランニングを行う➝糖質を補給する
カーボローディングは糖質補給を行う前に糖質を消費しなければいけません。
糖質を消費すると身体は次に備えてより多くの糖質を蓄えようと適応しようとします。そのため、糖質を摂取する前に糖質を一度消費しておくことが必要です。
ゆっくりペースのランニングは脂質メインの消費であるため、ある程度速いペースのランニングが必要です。ここでは本番を想定したマラソンペースを行うことをオススメします。糖質を消費するためにダッシュや高強度の筋トレをしてしまうと、筋疲労が本番まで残ってしまう可能性があるためです。
マラソンペースも30kmなどの長距離を行うと疲労が残ってしまうため、10km程度の距離で十分です。普段トレーニングを積んでいない人は10kmより短くて大丈夫です。
糖質を消費しつつ、疲労を残さない程度のスピード・時間で走りましょう。
食事に関しては白ごはん・うどん・食パン・おにぎり・バナナなどの糖質中心にして、卵・鶏肉・白身魚といったタンパク質もしっかり摂取するように意識しましょう。
マラソン3~1日前:ゆっくりランニング+高糖質の補給をする
マラソン3日前~前日では、速いペースのランニングは本番で疲労が残ってしまうかもしれません。そのため、この段階ではゆっくりペースのランニングで疲労が残らないようにしながら糖質を補給していきます。
食事に関しては糖質をしっかり補給すること以外に気を付けなければいけないことがあります。
【控えめにしたいもの】
揚げ物
脂身の多い肉
ラーメンやカレー
大量の生野菜
きのこ、海藻、豆類
辛い料理
アルコール
食べ慣れていない食品

脂質や食物繊維が多いと胃に残りやすく、マラソン本番で腹痛や便意につながることがあります。
マラソン3〜2日前のおすすめメニュー

一度に大量に食べず、3食+補食に分けると胃腸への負担を抑えやすくなります。
マラソン当日:朝食は軽く
マラソン当日の朝はスタートの3〜4時間前を目安に、軽く消化しやすい糖質を中心にします。
【朝食の例】
おにぎり2個+バナナ+スポーツドリンク
食パン2枚+はちみつ+バナナ

スタート直前に空腹を感じる場合は、少量のゼリー飲料やスポーツドリンクで補います。
カーボローディングとは?
そもそもカーボローディングとは、体内に蓄えることができるグリコーゲンの量を通常よりも増やす食事法です。
マラソンではなぜ事前に糖質を補給する必要があるのかをまずは整理していきます。

走るペースによって糖質・脂質のエネルギー源の割合は異なってきます。
フルマラソンでは大体クロスオーバーポイントのペースで走ることが多いと言われています。フルマラソンで消費されるエネルギーは約3000kcal(体格などによって個人差あり)と言われており、糖質を十分に蓄えておかないとエネルギー不足になってしまいます。
フルマラソンでエネルギー不足にならないために糖質を事前に十分に蓄えておく食事法をカーボローディングというわけです。しかし、カーボローディングでもフルマラソン完走にはエネルギーが不足するため、マラソン中の補給が必要不可欠です。
カーボローディングはマラソン中に必要な補給を最小限にし、トラブルを事前に防ぐという意味でも大切です。
また、ハーフマラソンはフルマラソンよりも距離が短くなりますが、走るペースは速くなりエネルギー源の割合は糖質に偏ってきます。距離が短いからといって、糖質エネルギーを蓄えなくても大丈夫というわけにはいきません。
ハーフマラソン程度の距離でも最後までパフォーマンスを発揮するには、カーボローディングが必要不可欠です。
ゆっくり走ったら糖質はいらない?
ではゆっくり走ったら脂質エネルギーがメインだから糖質を蓄えるカーボローディングは必要ないのか?と疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、「ゆっくり走る=脂質だけで走れる」というわけではないため、カーボローディングが完全に不要とは言えません。
確かにゆっくり走るペースでは脂質の利用割合が高くなります。しかし、フルマラソン中は脂質と糖質を同時に使っています。脂質だけを使うということは出来ません。
また、次の場面では糖質への依存が高まります。
【糖質への依存が高まる場面】
・坂道や向かい風
・スタート直後
・終盤のフォーム維持
・体温調節や脳、神経の働き(集中力の維持など)
普段、脂質は大量に蓄えられていますがエネルギーを取り出す速度が糖質より遅いため、糖質が減ると「脂肪は残っているのにペースを保てない」状態になりやすいです。
いわゆる30kmの壁(30km以降の失速)には、筋グリコーゲンや肝グリコーゲンの低下も関係します。
ゆっくりしたペースでは、速いランナーほど厳密なカーボローディングは必要ない可能性があります。ただし、走行時間は長くなるため、むしろ途中で糖質が不足する時間も長くなります。
そのため現実的には、強力なカーボローディングは不要でもレース前に糖質を十分に確保することは有効と考えるのがよいです。
レース中の補給・当日朝の補給で十分なのでは?
カーボローディングをしなくても、「レース途中で補給」・「当日の朝にたくさん食べる」と言う方法もありますが、胃腸トラブルに繋がるリスクがありオススメできません。当日のトラブルを事前に防ぐためにもカーボローディングを行っておくことをオススメします。
カーボローディングのメリット・デメリット
カーボローディングのメリット
ハーフマラソンやフルマラソンといった長い距離で自己ベストを狙うペースになると、通常のグリコーゲン量ではエネルギー源が十分ではありません。
カーボローディングを行う事で、体内のグリコーゲン量は通常よりも約1.5~2.5倍になると言われています。通常よりもガソリンの量が多いため、普段よりも速いペースを長く維持しやすくなり記録の向上にもつながります 。
マラソンの後半でエネルギー切れによりランニングフォームを維持することが難しくなると、ケガや故障に繋がる恐れがあります。ランニングフォームが乱れた状態で無理に走り続けると、身体の特定箇所に負担が集中し痛めてしまうかもしれません。
カーボローディングで最後までランニングフォームを崩すことなく走ることは怪我の防止や再発予防にもなります。
カーボローディングのデメリット
カーボローディングはグリコーゲン量を通常よりも多く増やすため体重が増加します。グリコーゲン1gに付き水分が約3g一緒に蓄えられます。そのため、カーボローディング後は一時的に体重が1~2kg程度増加します。一時的にでも体重が増加するため、人によっては身体が重たく感じるでしょう。
筋グリコーゲンと肝グリコーゲンの違い
糖質の補給で得られるグリコーゲンは大きく”筋肉”と”肝臓”で蓄えられます。
食事で摂った糖質は、小腸で吸収され、グルコースとして血中を通して最初に肝臓に向かいます。肝臓で吸収された糖質は「肝グリコーゲン」として蓄えられます。肝グリコーゲンは主に血糖値の維持に利用され、貯蔵されるグリコーゲンは約400~500kcal分と言われています。この肝グリコーゲンは一晩で約40%ほど消費するとも言われています。
肝臓を通った後のグルコースは身体中の主に筋肉に吸収されて「筋グリコーゲン」として蓄えられます。筋グリコーゲンは筋肉を動かす時に使用され、筋トレやマラソンなど運動強度が高いほど筋グリコーゲンを消費するようになります。
カーボローディングはこの”肝グリコーゲン”・”筋グリコーゲン”を通常以上に増やし、パフォーマンスを維持することに繋がります。
カーボローディングで気を付けること

甘いものだけをとことん食べてもいいわけではない
カーボローディングは糖質を通常以上に補給しグリコーゲンとして蓄えるーーーしかし、だからといって甘いものだけを補給してはマラソン当日にパフォーマンスを上手く発揮できないかもしれません。
実は、グリコーゲンを糖質エネルギーとして消費するには「タンパク質が必要」です。グリコーゲンをエネルギーに変換する過程で酵素が必要であり、その酵素の材料の一部がBCAA(アミノ酸の一部)です。タンパク質はアミノ酸の総称であり、BCAAはタンパク質の一部です。
また、ビタミンB1は酵素を助ける補酵素であり、酵素が糖質をエネルギーとして使用することを助けてくれます。ビタミンB1が不足してしまうとグリコーゲンはあるのに、エネルギーとして使用するのが難しいという状態になってしまいます。
そのため、蓄えたグリコーゲンをエネルギーとして使用するために、栄養素の乏しい甘いものだけでカーボローディングするのはオススメできません。
一度はサブレースなどで試しておく
カーボローディングを行うためのランニング・食事の感覚を身に付けるために、事前に試しておくことをオススメします。具体的には10kmなどのサブレース、もしくはロング走などの長距離走を行う前に試してみましょう。一度経験しておくことで、疲労を残さないランニングの感覚・身体に合う食事が分かるようになります。
ぶっつけ本番で試して、本番で疲労が残った…食事が合わなくて胃腸トラブルを起こした…ということが無いようにしましょう!
カーボローディングの仕組み

ここからは上級者向けです。
カーボローディングは身体でどのようなメカニズムで生じているのかを整理していきます。
速いペースのランニングをすると筋肉内・肝臓内のグリコーゲンが消費されます。筋肉からすると、「糖質が足りなくなった…」という状態です。
運動後に糖質を補給すると筋肉は「また次も使うだろう」と判断し、以前より多くグリコーゲンを蓄えようと適応が起こります。これをグリコーゲンスーパーコンペンセーション(超回復)と言います。
筋肉の細胞膜にはGLUT4(グルットフォー)があります。これは血液中のブドウ糖を筋肉へ運ぶ「入口」です。
ランニングをすると「GLUT4の発現量増加」「インスリン感受性(インスリンが効きやすくなる)」が起こり、同じ血糖値でもより多くの糖を筋肉へ取り込めるようになります。
筋肉へ入ったブドウ糖は、そのままでは保管できないためグリコーゲンへと変換する必要があります。
【糖をグリコーゲンに変換する過程】
ブドウ糖
↓
グルコース6リン酸
↓
UDP-グルコース
↓
グリコーゲン
ブドウ糖をグリコーゲンへと変換する最終工程で働くのが、グリコーゲンシンターゼです。ランニング後はこのグリコーゲンシンターゼが高まります。結果として、同じ量の糖を摂っても、より効率よくグリコーゲンへと変換できるようになります。
グリコーゲンは筋細胞内に、グリコーゲン顆粒として存在ます。
ランニング後は筋細胞内のグリコーゲン顆粒が増える・大きくなるという変化がおこります。その結果、より多くのグリコーゲンを筋細胞内に貯蔵することができます。
まとめ
本記事では「カーボローディングのやり方」から「カーボローディングとは?・気を付けるべきこと」・「カーボローディングの仕組み」について解説してきました。
カーボローディングはランニングによって糖質エネルギーを消費した後に糖質を中心に補給することでグリコーゲンをより多く筋細胞内に蓄えることでした。
マラソンでは糖質エネルギーがパフォーマンスを維持するための1つの鍵です。事前にグリコーゲンを蓄えておくことで、最後までパフォーマンスを維持し記録更新・無事に完走することに繋がります。
カーボローディングで糖質を補給するからといって甘いものだけで糖質を補給することはオススメしません。その他の栄養不足で蓄えたグリコーゲンをエネルギーとしてうまく活動できず、エネルギーがあるのに消費が難しいということになってしまいます。

カーボローディングは普段のトレーニング量が少ない初心者でも効果があると言われています。
今日が一番若い日です。最大限のパフォーマンスを発揮できるチャンスがあるのが次のマラソンです。マラソン本番前にはカーボローディングを取り入れて完走・記録更新出来るようにしましょう!!
風を切るランニング 