ランニングの後にサウナへ入ると、「疲れが取れる」「暑さに強くなる」「マラソンが速くなる」と聞いたことがあるかもしれません。
実際、ランナーの暑さへの適応や運動能力の指標が改善した研究はあります。
ただし、サウナに入ればレース記録が必ず伸びる、疲労が早く回復する、とは言えません。
この記事では、ランニングとサウナの効果を研究結果から整理し、安全に楽しむための実践方法を紹介します。
ランニング後のサウナに期待できる効果を先に整理

| 期待すること | 現時点の見方 |
|---|---|
| 暑さへの適応 | 運動後に繰り返し入ることで、暑い環境での心拍数や体温反応が改善した研究がある |
| 持久力・走力 | 小規模研究では改善例があるが、研究全体では記録向上の効果はまだ不確か |
| 疲労回復 | 心地よさを感じる人はいるが、翌日の走力や筋機能が速く回復するとは確認されていない |
| 減量 | サウナ後の体重減少の多くは水分の減少。体脂肪が減ったことを意味しない |
とくに区別したいのは、「暑さへの身体の反応が変わること」と「大会で速く走れること」は別の結果だという点です。
2025年のシステマティックレビュー・メタ解析では、運動後のサウナや温浴を組み合わせた10研究・199人を検討し、持久系パフォーマンスへの効果は不確かで、結果の確実性は低い〜非常に低いと評価しました。
ランニングとサウナの効果①:暑さへの適応が期待できる

暑い中で走ると、体温を逃がすために皮膚への血流や発汗が増え、心臓にも負担がかかります。運動後のサウナを一定期間繰り返すことは、暑さへの適応を促す方法の一つとして研究されています。
中距離ランナー20人を対象とした研究では、通常の練習に加え、運動後のサウナを約28分、週約3回、3週間行った群は、練習のみの群と比べて、暑い環境での一定負荷のランニング中に測った心拍数や体温が低くなりました。
ただし、この研究で使われたサウナは約101〜108℃の乾式であり、一般の施設で同じ温度・時間を再現する必要はありません。
別の研究では、女性・男性の訓練されたランナーの双方で暑熱環境下の反応に改善が見られました。個人差があり、暑さへの適応を目的にしても、熱による負担を増やしすぎないことが大切です。
ランニングとサウナの効果②:持久力は高まる?

よく紹介されるのは、男性長距離ランナー6人を対象にした2007年の研究です。約3週間、ランニング後にサウナへ入った期間は、通常練習だけの期間と比べて、一定速度で限界まで走れる時間が32%延び、血漿量も増加しました。
ただし、「限界まで走れる時間が32%延びた」は「5kmやフルマラソンの記録が32%良くなる」ではありません。この研究の対象者は6人で、実際の大会記録を比較したものでもありません。
2021年の20人を対象とした研究でも、最大酸素摂取量や一定の血中乳酸濃度に達する速度などに改善が見られました。一方、前述の2025年のメタ解析では、複数研究をまとめたレースや運動テストに相当する持久系成績への効果は不確かと結論づけています。
サウナは練習に追加する選択肢であり、練習量・強度の調整、食事、睡眠を優先したうえで考えましょう。
ランニングとサウナの効果③:疲労回復は早くなる?

サウナを「気持ちよい」「リラックスできる」と感じることと、筋肉や走力が速く回復することは同じではありません。
2025年のシステマティックレビューでは、運動後のサウナや温浴を扱った14研究・計194人を調べました。翌日以降を含む運動能力の回復への効果は研究によって異なり、確かな結論は出ていません。熱への曝露がトレーニング全体の負担を増やす可能性も指摘されています。
「温めると筋肉痛に効く」という研究はありますが、温熱パックなどを含む研究結果をサウナそのものの回復効果として読み替えることはできません。
ロング走やポイント練習で消耗した日は、サウナよりも、まず水分・食事・休息を確保してください。
ランニング後、サウナに入るならいつ・何分?

健康な成人が楽しむ場合の控えめな始め方を示します。これは効果が証明された最適な処方ではなく、体調を確認するための実践例です。
- 走り終えたらクールダウンし、呼吸・動悸・ほてりが落ち着くまで休む。
- 水分をとり、長く走った日や大量に汗をかいた日は食事や塩分の補給も考える。
- 初回は短時間(例えば5分程度)から試し、つらさを感じる前に出る。高温や長時間、複数セットにこだわらない。
- 出た後は涼しい場所で座って休み、必要な水分を補う。冷水浴を無理に組み合わせない。
ランニング直後にそのまま入る必要はありません。 研究では運動後に入る方法が使われていますが、研究用の条件を一般のランナーが再現してよいという意味ではありません。体調や施設の温度・湿度を優先してください。
水分補給は「汗をかいた分」を意識する
ランニングで汗をかいたうえにサウナでさらに汗をかくと、脱水のリスクが上がります。走る前後、可能ならサウナ前後の体重差を参考に、飲みやすい量を少しずつ補いましょう。
暑い日や長時間走った日は、飲料だけでなく食事からの水分・塩分補給も役立ちます。のどの渇き、尿が少ない・濃い、立ちくらみは、補給や休養を見直すサインです。
体重を減らす目的で水分を控えたり、短時間に大量の水を無理に飲んだりしないでください。
サウナを控えたいランニング後の状態

- 暑い環境で走った後、長距離走やレースの後で、まだ強いほてり・動悸・疲労がある
- めまい、頭痛、吐き気、ふらつき、いつもより少ない尿など脱水や熱疲労が疑われる
- 発熱など体調不良がある、飲酒している
- 心臓・血圧・腎臓などの持病がある、妊娠中である、服薬による影響が心配など、入浴について個別の判断が必要
持病や服薬がある人は、サウナの利用を事前に主治医へ相談してください。意識がはっきりしない、胸が痛い、呼吸が苦しい、倒れたときはサウナを中止し、周囲に助けを求めて救急対応を優先します。
よくある疑問
サウナで汗をかけば体脂肪は落ちる?
サウナに入れば、夏のレースに備えられる?
レース前日や当日も入った方がよい?
サウナが苦手なら、使わなくてもよい?
まとめ
ランニング後のサウナを繰り返すと、暑さへの身体の反応や一部の運動能力指標が改善する可能性があります。一方、持久系レースの記録向上と疲労回復を保証する根拠はありません。
楽しむなら、ランニングで失った水分とその日の体調を確認し、短時間から無理なく試しましょう。
参考文献
- Solomon TPJ, Laye MJ. The effect of post-exercise heat exposure (passive heat acclimation) on endurance exercise performance: a systematic review and meta-analysis. BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation. 2025;17:4.
- Kirby NV, et al. Intermittent post-exercise sauna bathing improves markers of exercise capacity in hot and temperate conditions in trained middle-distance runners. European Journal of Applied Physiology. 2021;121:621–635.
- Kirby NV, et al. Sex differences in adaptation to intermittent post-exercise sauna bathing in trained middle-distance runners. Sports Medicine – Open. 2021;7:51.
- Scoon GSM, et al. Effect of post-exercise sauna bathing on the endurance performance of competitive male runners. Journal of Science and Medicine in Sport. 2007;10:259–262.
- Ahokas EK, et al. Effects of Post-Exercise Heat Exposure on Acute Recovery and Training-Induced Performance Adaptations: A Systematic Review. Sports Medicine – Open. 2025;11:106.
- Wang Y, et al. Heat and cold therapy reduce pain in patients with delayed onset muscle soreness: A systematic review and meta-analysis. Physical Therapy in Sport. 2021;48:177–187.
- NHS. Dehydration. 2026年9月閲覧。
風を切るランニング 
