
「レース前は、いつから走行距離を減らせばいい?」
「練習量を減らすと、体力が落ちそうで不安……」
大会が近づくと、直前まで練習を続けるべきか、思い切って休むべきか迷うランナーは少なくありません。
しかし、レース前に必要なのは、さらに強いトレーニングを積み重ねることではありません。
それまでに高めた能力を維持しながら、蓄積した疲労を減らし、レース当日に力を発揮できる状態へ整えることが重要です。
この調整をテーパリングといいます。
テーパリングの基本は、単に練習を休むことではありません。
- 練習量を段階的に減らす
- 練習頻度を極端に減らさない
- レースで必要な速さの刺激を残す
- 筋肉痛や強い疲労が残る練習を避ける
- 睡眠、食事、水分補給を整える
という方法で、疲労と走力のバランスを調整します。
本記事では、市民ランナーを対象に、フルマラソン、ハーフマラソン、10km、1500m、800mのテーパリング方法を解説します。
自己ベスト更新を目指す場合の考え方や、具体的な練習例も紹介します。
テーパリングとは?
テーパリングとは、重要な大会の前にトレーニング量を計画的に減らし、練習で蓄積した疲労を軽減する方法です。
トレーニングを行うと、持久力や筋力が向上する一方で、
- 筋肉の疲労
- 筋グリコーゲンの減少
- 関節や腱への負担
- 睡眠不足
- 精神的な疲労
も蓄積します。

疲労が強く残っていると、トレーニングで高めた能力をレースで十分に発揮できません。そこで大会前に練習量を減らし、体力をできるだけ維持しながら疲労を抜いていきます。
テーパリングは、レース前にまったく走らなくなることではありません。
急にランニングを中止すると、
- 身体の動きが重く感じる
- レースペースの感覚が分かりにくくなる
- 普段の生活リズムが変わる
- 「走っていない」という不安が強くなる
場合があります。

そのため、走行距離や練習時間は減らしつつ、短いランニングや流し、レースペースの刺激は適度に残します。
テーパリングで期待できる効果
テーパリングの目的は、短期間で新しい体力を獲得することではありません。
それまでのトレーニングで高めた能力を維持しながら、疲労を減らすことが目的です。
適切なテーパリングによって、
- 脚の疲労感を軽減する
- 筋肉や腱への負担を減らす
- 筋グリコーゲンを回復させる
- 睡眠や体調を整える
- レースペースの感覚を維持する
- 精神的な余裕を作る
ことが期待できます。

持久系競技を対象としたメタ解析では、トレーニング強度と頻度を一定程度維持しながら、トレーニング量を段階的に減らす方法が、パフォーマンス改善につながる可能性が示されています。
テーパリングの基本原則
練習量を減らす
テーパリングで最も明確に減らすのは、練習量です。
具体的には、
- 週間走行距離
- 1回のランニング時間
- ロング走の距離
- ペース走の合計距離
- インターバル走の本数
- 筋力トレーニングのセット数
- ジャンプトレーニングの回数
を減らします。
持久系競技の研究では、テーパリング期間中にトレーニング量をおよそ40〜60%減らす方法が有効と報告されています。
ただし、最初から一気に60%減らすのではありません。大会が近づくにつれて、段階的に練習量を減らします。
練習強度をすべて落とさない
テーパリングでは、すべての練習をゆっくりしたジョギングへ変える必要はありません。
短い距離で、
- レースペース
- テンポ走
- 短いインターバル
- 流し
- 加速走
などを残します。
ただし、普段と同じ距離や本数を行うのではありません。速さは残し、量を減らすことが基本です。
例えば、普段1000mを6本行っている場合は、同程度のペースで2〜4本に減らします。
普段マラソンペースで12km走っている場合は、3〜6km程度に短縮します。
練習頻度を極端に減らさない
普段週5回走っている人が、急に週1回だけにすると、身体のリズムが変わる可能性があります。
研究でも、テーパリング中はトレーニング頻度を大きく減らしすぎない方法が推奨されています。
| 普段のランニング頻度 | テーパリング中の目安 |
|---|---|
| 週6〜7回 | 週4〜6回 |
| 週5回 | 週4〜5回 |
| 週4回 | 週3〜4回 |
| 週3回 | 週2〜3回 |

疲労が強い場合は、予定どおりの頻度を守るよりも休養を優先します。
新しい練習を追加しない
レース直前は、新しい能力を獲得する期間ではありません。
大会前になって、
- 過去最長のロング走
- 初めてのインターバル走
- 新しい筋力トレーニング
- 慣れていない坂道ダッシュ
- 大量のジャンプトレーニング
を追加すると、筋肉痛や痛みが残る可能性があります。

練習不足を大会直前に取り戻すことはできません。
種目別テーパリングの目安
レース距離によって、必要なテーパリング期間や残したい刺激は異なります。
フルマラソンでは、長距離走と高い走行距離による疲労を抜くことが優先されます。
一方、800mや1500mでは、走行量を減らしながら、速い動きやレースペースを維持することが重要です。
| 種目 | 開始時期の目安 | 練習量の減少目安 | 残したい刺激 | 最後の負荷が高い練習 |
|---|---|---|---|---|
| フルマラソン | 2〜3週間前 | 40〜60%程度 | マラソンペース、流し | 7〜10日前まで |
| ハーフマラソン | 10日〜2週間前 | 30〜50%程度 | ハーフペース、閾値付近 | 5〜8日前まで |
| 10km | 7〜14日前 | 30〜50%程度 | 10kmペース、短いインターバル | 4〜7日前まで |
| 1500m | 7〜10日前 | 30〜50%程度 | レースペース、短い高速走 | 4〜6日前まで |
| 800m | 5〜10日前 | 30〜50%程度 | スプリント、800mペース | 4〜6日前まで |
これらは、研究で示されている一般的なテーパリングの原則と、各種目の競技特性を組み合わせた実践的な目安です。

すべてのランナーに共通する厳密な正解ではありません。普段の走行距離、練習頻度、疲労状態、競技経験に合わせて調整してください。
フルマラソンのテーパリング
フルマラソンでは、大会の2〜3週間前からテーパリングを始める方法が一般的です。
フルマラソンの練習では、
- 25〜35km程度のロング走
- 長時間のペース走
- 高い週間走行距離
によって大きな疲労が蓄積します。

そのため、ハーフマラソンや10kmよりも、長い期間をかけて疲労を抜く必要があります。
- 週間走行距離
- ロング走の距離
- マラソンペース走の距離
- インターバル走の本数
- 下半身筋力トレーニングの量
- 短いイージーラン
- 短時間のマラソンペース走
- 流し
- 普段に近いランニング頻度
フルマラソンでは、速さよりも走行距離を優先して減らします。
普段マラソンペースで10〜15km走っている場合は、テーパリング中に3〜6km程度まで短縮します。
最後の長いロング走は、大会の2〜3週間前までに行います。
大会2週間前の週末は、12〜20km程度まで短縮します。
大会1週間前に20〜30kmを走っても、本番までに新しい持久力が大きく高まるとは考えにくいでしょう。
一方、筋肉痛や疲労はレース当日まで残る可能性があります。
大会3週間前
- 最後の長いロング走
- 週間走行距離はピーク時の75〜85%程度
- スピード練習は本数を少し減らす
大会2週間前
- 週間走行距離はピーク時の55〜70%程度
- ロング走は12〜20km程度
- 短いマラソンペース走を行う
レース週
- 週間走行距離はピーク時の30〜50%程度
- 20〜40分のイージーランが中心
- 流しや短いマラソンペースで動きを確認する
レース週の走行距離には、本番の42.195kmを含めません。
| 時期 | 走行距離の目安 |
|---|---|
| 通常のピーク週 | 50km |
| 大会3週間前 | 38〜43km |
| 大会2週間前 | 28〜35km |
| レース週 | 15〜25km+大会 |
ハーフマラソンのテーパリング
ハーフマラソンでは、大会の10日〜2週間前から練習量を減らす方法が取り入れやすいでしょう。
フルマラソンほど長いロング走は必要ありませんが、ハーフマラソンでは比較的高い強度を長時間維持します。
そのため、疲労を抜くだけでなく、
- ハーフマラソンペース
- 乳酸閾値付近のペース
- リズムよく速く走る感覚
を残すことが重要です。
- ロング走の距離
- テンポ走の時間
- ハーフマラソンペース走の距離
- インターバル走の本数
- 筋力トレーニングのセット数
- 短いハーフマラソンペース走
- 短めのテンポ走
- 流し
- イージーラン

普段ハーフマラソンペースで8〜12km走っている場合は、3〜6km程度に短縮します。
普段20〜30分のテンポ走を行っている場合は、10〜15分程度に減らします。
最後の長めのランニングは、大会の10〜14日前までに行います。
普段15〜22km程度のロング走を行っている人は、レース1週間前には8〜12km程度まで減らします。
大会2週間前
- 週間走行距離は通常の60〜75%程度
- 12〜18km程度のロング走
- 短いハーフマラソンペース走
レース週
- 週間走行距離は通常の40〜60%程度
- 20〜40分のイージーラン
- 3〜5日前に短いレースペース走
- 前日または前々日に流し
10kmレースのテーパリング
10kmレースでは、大会の7〜14日前から練習量を減らします。
10kmでは、フルマラソンよりも速いペースを維持する能力が必要です。
そのため、ジョギングだけにするのではなく、
- 10kmペース
- 5kmペース付近
- 短いインターバル
- 流し
などを少量残します。
- 週間走行距離
- インターバル走の本数
- テンポ走の時間
- ロング走の距離
- 1回の練習時間
- 10kmレースペース
- 短いインターバル走
- 流し
- 普段に近いランニング頻度
普段1000mを5〜6本行っている場合は、レース前に2〜4本程度まで減らします。

ペースを大きく落とすのではなく、本数を減らして余裕を残します。
最後の本格的なインターバル走やテンポ走は、大会の4〜7日前までに行います。
レース4日前に行う場合は、距離や本数を大きく減らします。
日曜日にレースがある場合の一例です。
| 曜日 | 練習例 |
|---|---|
| 月曜日 | 休養またはイージーラン |
| 火曜日 | 1000m×2〜3本 |
| 水曜日 | イージーラン |
| 木曜日 | 休養または短いジョギング |
| 金曜日 | 20〜30分のジョギング+流し |
| 土曜日 | 休養または10〜20分の軽いランニング |
| 日曜日 | 10kmレース |
火曜日のインターバル走は、追い込むためではなく、10kmペースの感覚を確認するために行います。
1500m走のテーパリング
1500m走では、レースの7〜10日前から練習量を減らす方法が実践しやすいでしょう。
1500mでは、
- 有酸素能力
- 高いスピードの維持
- 無酸素性能力
- レースペースへの慣れ
- ラストスパート
が必要です。

そのため、テーパリング中も速い動きを完全になくしてはいけません。
- 週間走行距離
- インターバルの合計距離
- 反復回数
- 長いテンポ走
- 筋力トレーニングの量
- 1500mレースペース
- 800〜1500mペースの短い反復走
- 60〜150m程度の流し
- 十分な休息を入れた高速走
普段400mを8〜10本行っている場合は、テーパリング中に3〜5本程度まで減らします。

1本ごとのスピードは維持し、本数を減らします。
最後の負荷が高い1500mペース練習は、レースの4〜6日前までに行います。
練習例は次のとおりです。
- 400m×3〜4本
- 300m×3〜5本
- 600m+400m+200m
- 1000m+200m
すべてを全力で走るのではなく、フォームとレースペースを確認します。

各本の間には普段より長めの休息を取り、疲労を蓄積させないようにします。
| 曜日 | 練習例 |
|---|---|
| 月曜日 | イージーラン |
| 火曜日 | 400m×3〜4本 |
| 水曜日 | 短いイージーラン |
| 木曜日 | 休養またはジョギング |
| 金曜日 | 流し4〜6本 |
| 土曜日 | 休養または短いジョギング |
| 日曜日 | 1500m走 |
800m走のテーパリング
800m走では、レースの5〜10日前から練習量を減らす方法が目安になります。
800mは、今回紹介する種目の中で、スピードと無酸素性能力への依存が最も大きい種目です。
そのため、走行距離を減らしても、
- スプリント動作
- 高いピッチ
- 800mレースペース
- 素早い力発揮
は維持する必要があります。
完全にゆっくりしたジョギングだけにすると、レース当日に速い動きが重く感じる場合があります。
- 総走行距離
- 反復走の本数
- 1回の練習の合計距離
- 筋力トレーニングのセット数
- 長い乳酸系トレーニング
- 800mレースペース
- 150〜300m程度の高速走
- 短いスプリント
- 流し
- 十分な休息を入れた速い動き
普段300mを6本行っている場合は、テーパリング中に2〜4本程度まで減らします。

スピードは維持しますが、長めの休息を取り、フォームが崩れる前に終了します。
最後の強い800mペース練習は、レースの4〜6日前までに行います。
練習例は次のとおりです。
- 300m×2〜3本
- 200m×3〜4本
- 400m+200m
- 500m+短いスプリント
レース2〜3日前には、
- 60mの加速走
- 100〜150mの流し
- 200mを1〜2本
- 短いスタート練習
などで、速い動きだけを確認します。

乳酸が大きく蓄積するまで追い込む必要はありません。
| 曜日 | 練習例 |
|---|---|
| 月曜日 | イージーランまたは休養 |
| 火曜日 | 300m×2〜3本 |
| 水曜日 | 短いジョギング |
| 木曜日 | 休養 |
| 金曜日 | 100〜150mの流しを数本 |
| 土曜日 | 休養または短いウォームアップ |
| 日曜日 | 800m走 |
記録更新を目指す場合のテーパリング
自己ベスト更新を目指す場合も、テーパリングの基本は変わりません。
重要なのは、
- 練習量を減らす
- レースで必要な速さを残す
- 疲労を抜く
- レースペースの感覚を整える
ことです。
記録を狙うランナーほど、
「直前まで練習しないと走力が落ちる」
「最後にもう一度強い練習を行いたい」
と考えやすくなります。
しかし、レース直前に大きなトレーニング効果を得ることは難しく、強い練習による疲労だけが本番まで残る可能性があります。

自己ベストを狙うテーパリングでは、単に休むのではなく、総練習量を減らしながらレース特異的な刺激を残すことが重要です。
記録更新を狙うランナーにとって、最後のポイント練習は不安を減らす役割もあります。

ただし、直前のポイント練習は、能力をさらに高めるための練習ではありません。
確認するのは、
- レースペースが無理なく出せるか
- フォームに違和感がないか
- シューズやウェアに問題がないか
- 呼吸やピッチが普段どおりか
- 疲労が抜けてきているか
という点です。
予定していたタイムに届かない場合でも、追加で本数を増やしたり、翌日にやり直したりする必要はありません。
気温、風、睡眠、仕事の疲れなどによって、練習の感覚は変わります。

1回の練習だけでレースの調子を判断しないようにしましょう。
フルマラソンで記録更新を狙う場合
フルマラソンでは、疲労回復を最優先しながら、目標マラソンペースの感覚を維持します。
- 短いマラソンペース走
- 短時間のイージーラン
- 80〜100m程度の流し
- レース用シューズでの短いランニング
- 20〜30km以上のロング走
- 長いマラソンペース走
- 限界に近いインターバル走
- 高重量の下半身筋力トレーニング
- 強い筋肉痛が残る下り坂走
レース1週間前のマラソンペース走は、合計3〜6km程度でも十分です。
例としては、
- 2km×2〜3本
- 3〜5km連続
- イージーラン中に1kmを数本
などがあります。

目標ペースより速く走って、自信をつけようとする必要はありません。
ハーフマラソンで記録更新を狙う場合
ハーフマラソンでは、
- ハーフマラソンペース
- 乳酸閾値付近のペース
- 10kmペースに近い短い刺激
を残します。
レース5〜8日前の練習例は次のとおりです。
- ハーフマラソンペースで2〜3km×2本
- 10〜15分程度のテンポ走
- 1000m×3本
- 2000m×2本
普段より距離や本数を減らし、余裕を残して終了します。

最後の1本だけ速く走る、予定より距離を延ばすといった調整は必要ありません。
10kmで記録更新を狙う場合
10kmでは、目標ペースに近い刺激を残すことが重要です。
レース4〜7日前の練習例は次のとおりです。
- 1000m×2〜4本
- 800m×3〜4本
- 2000m×2本
- 10kmペースで3〜5km

ペースは10kmレースペース前後を目安にし、本数を減らします。
レース2〜3日前は、
- 20〜30分のイージーラン
- 80〜100mの流しを4〜6本
- 200mを数本
程度にとどめます。
1500m・800mで記録更新を狙う場合
1500mや800mでは、走行距離を減らしても、レースペースとスピードを維持する必要があります。
ただし、速い練習を行うことと、強く追い込むことは同じではありません。
- 反復回数を減らす
- 各本の休息を長くする
- 動きが良いうちに終了する
- 乳酸性疲労を残さない
- 翌日に強い脚の張りを残さない
ことを意識します。

レース2〜3日前は、60〜200m程度の短い刺激で十分です。
普段の走行距離に合わせて調整する
テーパリング期間は、レース距離だけでなく、普段の練習量によっても変わります。
次のような人は、比較的長めのテーパリングが適しています。
- 週80〜120km以上走っている
- 週2回以上ポイント練習を行っている
- ロング走と筋力トレーニングを組み合わせている
- 仕事をしながら早朝や夜に練習している
- 疲労が抜けるまで数日かかる

フルマラソンでは、2〜3週間かけて段階的に走行距離を減らす方法が取り入れやすいでしょう。
普段週2〜3回しか走っていない人が、大幅に頻度を減らすと、練習間隔が空きすぎることがあります。
この場合は、
- 1回の距離を短くする
- ポイント練習の本数を減らす
- ロング走を短縮する
ことを優先し、ランニング頻度は大きく変えすぎない方が実践しやすいでしょう。
テーパリング中の筋力トレーニング
普段から筋力トレーニングを行っているランナーは、レース前に完全に中止する必要はありません。
ただし、
- 重量
- セット数
- 反復回数
- ジャンプ回数
を減らします。
特に注意したいのは、
- 高重量スクワット
- 高重量デッドリフト
- 限界まで行うブルガリアンスクワット
- 大量のジャンプトレーニング
- 慣れていない筋トレ種目
です。
フルマラソン、ハーフマラソン、10kmでは、重い下半身筋力トレーニングをレース7〜10日前までに終了する方法が実践しやすいでしょう。
800mや1500mでは、短いジャンプや高速動作を刺激として残す場合があります。
それでも、普段より量を大きく減らし、筋肉痛や張りを残さないことが重要です。
テーパリング中の食事
走行距離が減ると、体重が増えることを心配して食事量を大きく減らす人がいます。
しかし、レース前にエネルギーや糖質の摂取量を極端に減らすと、筋グリコーゲンを十分に回復できない可能性があります。
テーパリング中は、
- 主食を極端に減らさない
- 毎食たんぱく質を取る
- 水分を継続的に取る
- レース直前に食物繊維や脂質を増やしすぎない
- 普段食べていない食品を試さない
ことが基本です。
フルマラソンやハーフマラソンでは、レース前の1〜2日間に普段より糖質の割合を高める方法があります。

ご飯、パン、麺類、餅、果物など、普段から食べ慣れている食品を利用しましょう。前日の夜だけ大量に食べるのではなく、数回の食事や間食に分けて摂取します。
睡眠はレース前日だけで考えない
レース前日は、緊張や移動によって十分に眠れない場合があります。そのため、前日だけ長く眠ろうとするのではなく、レース1〜2週間前から睡眠時間を確保します。
注意したいのは、
- 仕事で夜更かしする
- 早朝練習で睡眠時間を削る
- 休日に長時間寝て生活リズムを変える
- レース前だけ急に就寝時間を早める
ことです。

起床時刻や就寝時刻を少しずつ大会当日に近づけると、早朝スタートにも対応しやすくなります。
テーパリング中に身体が重く感じる理由
走行距離を減らすと、
- 脚が重い
- 身体が動かない
- 調子が落ちた
- 息が上がりやすい
と感じる場合があります。
これは、必ずしも体力が低下したことを意味しません。
練習リズムの変化や疲労からの回復過程によって、一時的に身体の感覚が変わることがあります。

1回のジョギングで動きが悪かっただけで、追加のスピード練習やロング走を行わないようにしましょう。
ただし、
- 痛みが強くなっている
- 歩いても痛い
- 腫れがある
- 安静時にも痛む
- 発熱や体調不良がある
場合は、単なるテーパリング中の違和感と決めつけず、練習を中止してください。
テーパリング中に確認したい体調
記録更新を狙う場合は、予定どおり練習を行うことよりも、レース当日に良い状態を作ることを優先します。
毎日、次の項目を確認します。
- 起床時の疲労感
- 脚の張りや筋肉痛
- 睡眠時間と睡眠の質
- 安静時心拍数
- イージーランの主観的なきつさ
- 痛みや違和感
- 食欲
- 集中力や気分
疲労が強い場合は、
- イージーランを短くする
- ポイント練習の本数を減らす
- 休養日に変更する
- 筋力トレーニングを中止する
といった調整を行います。

予定した練習をすべて実施することよりも、疲労を残さずレースへ向かうことが重要です。
テーパリングでよくある失敗
「休むと不安」という理由でピーク時と同じ走行距離を続けると、疲労が抜けない可能性があります。
最後の1〜2週間で走り込んでも、持久力を大きく高めることは難しいでしょう。
走行距離を減らすことと、すべてのランニングを中止することは異なります。
短いジョギングや流しを残し、身体のリズムを保ちます。
調子を確認するために、レースペースで長く走りたくなるかもしれません。
しかし、レース直前は、ペースを確認できる最小限の距離にします。
体調不良や仕事で練習できなかった分を、大会直前にまとめて行うことはできません。
失った練習を取り戻すより、残っている疲労を減らすことを優先します。
設定より速く走れても、その疲労が本番に影響しては意味がありません。
直前の練習は、速さを証明する場ではありません。
走行距離が減ったからといって、糖質や総摂取エネルギーを極端に減らすと、回復や筋グリコーゲンの蓄積を妨げる可能性があります。
テーパリング期間は、新しい方法を試す期間ではありません。
シューズ、ウェア、ジェル、カフェイン、朝食などは、練習で使用したものを選びましょう。
テーパリングに関するよくある質問
レース前日は走るべき?
一方、「移動時間が長い」・「立っている時間が長い」・「走ると疲れやすい」・「痛みや違和感がある」場合は休養を選びます。
どちらが必ず優れているわけではありません。
レース1週間前に10km走ってもよい?
ただし、レースペース以上で追い込んだり、普段より長く走ったりする必要はありません。
走行距離を減らすと体重が増えない?
筋グリコーゲンは水分とともに筋肉へ蓄えられるため、体重の増加が必ずしも脂肪の増加を意味するわけではありません。
レース直前に体重を減らす目的で、食事や水分を制限しないでください。
レース前に走らないと体力は落ちる?
テーパリングでは完全に運動を中止するのではなく、短いランニングや速い動きを残します。
体力低下を必要以上に心配する必要はありません。
痛みがある場合も軽く走った方がよい?
テーパリングの原則よりも、痛みを悪化させないことを優先します。
まとめ
テーパリングでは、単に休むのではなく、練習量を段階的に減らしながら、レースで必要な動きを維持します。
種目ごとの開始時期は、次のように整理できます。
- フルマラソン:2〜3週間前
- ハーフマラソン:10日〜2週間前
- 10km:7〜14日前
- 1500m:7〜10日前
- 800m:5〜10日前
基本となるのは、
- 総走行距離を減らす
- レースペースの刺激を残す
- インターバルの本数を減らす
- 練習頻度を極端に減らさない
- 最後のポイント練習で追い込まない
- 筋力トレーニングの量を減らす
- 疲労状態に応じて予定を変更する
- 睡眠、糖質摂取、水分補給を整える
ことです。
フルマラソンでは、ロング走と高い走行距離による疲労を抜くことを優先します。
ハーフマラソンや10kmでは、疲労を抜きながらレースペースの感覚を維持します。
1500mや800mでは、走行距離や反復回数を減らしつつ、速い動きとレースペースを残します。
記録更新を目指す場合も、直前まで練習を積み上げる必要はありません。
これまで積み重ねたトレーニングの効果を維持しながら、疲労を減らし、目標ペースで走れる状態をレース当日に合わせることが重要です。

大会直前は鍛える期間ではありません。それまでに作った能力を、最も良い状態で発揮するための仕上げ期間と考えましょう。
参考文献
- Bosquet L, Montpetit J, Arvisais D, Mujika I. Effects of tapering on performance: a meta-analysis. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2007;39(8):1358-1365.
- Mujika I, Padilla S. Scientific bases for precompetition tapering strategies. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2003;35(7):1182-1187.
- Mujika I. Tapering and Peaking for Optimal Performance. Human Kinetics; 2009.

風を切るランニング 