
「走った日は疲れているはずなのに眠れない」
「朝ランを続けたいけれど、日中に眠くなる」
そんな悩みはありませんか。
ランナーの睡眠を整えるには、寝る前の工夫に加え、練習の時間・強度や日中の生活を見直すことが大切です。まずは十分な睡眠時間を確保し、そのうえで眠りやすい習慣をつくりましょう。
睡眠の質を高める前に、必要な睡眠時間を確保する

睡眠の「質」を高めれば、短い睡眠で十分になるわけではありません。
厚生労働省は成人について、6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保することと、朝に休まった感覚があることを重視しています。
一方、アスリートの専門家合意では、健康な成人の一般的な目安として7〜9時間を示し、競技者の必要量は練習負荷などに応じて個別に考えるべきとしています。
「6時間なら誰でも十分」「ランナーは必ず9時間必要」という意味ではありません。睡眠時間に加えて、翌朝の休養感と日中の眠気を見て調整しましょう。
例
23時に寝て6時に起きる生活から、朝ランのために起床だけ5時へ早めると、睡眠の機会が1時間減ります。早起きするなら、夜の予定も前倒しすることが必要です。
ランナーにおすすめしたい睡眠の質を高める8つの工夫

1.起床時刻をそろえ、朝に自然光を浴びる
起床時刻を大きくずらさず、起きたらカーテンを開け、日中も自然光を取り入れましょう。朝の光は体内時計を整える助けになります。
朝ランができない日も、朝食後に外へ出るなど、生活の中で光を浴びる機会をつくれます。日の出前に走る人は、明るくなってから自然光を取り入れることも意識しましょう。

睡眠不足の日は、予定どおり走ることに固執せず、練習を短くする・休む選択も含めて考えます。
2.夜のポイント練習は、できるだけ早い時間に終える
夜しか走れない人は、練習の終了時刻と負荷をセットで見直しましょう。
2025年の研究では、身体活動のある14,689人のウェアラブルデータを分析し、就寝に近い時間の負荷が大きい運動ほど、寝つきの遅れや短い睡眠などと関連していました。
研究者は、睡眠改善を目指す場合、運動を就寝の少なくとも4時間前に終えるか、その時間帯では負荷を軽くすることを提案しています。

これは観察研究であり、「4時間以内の運動は必ず睡眠を悪くする」と断定するものではありません。睡眠に悩む人が調整を始める目安として使いましょう。
| 練習内容 | 睡眠を整えるための調整例 |
|---|---|
| インターバル走・きついテンポ走 | 可能なら早い時間や休日へ移す |
| 長時間のランニング | 低強度でも終了が遅くならないようにする |
| 就寝に近い時間のランニング | 会話できる短めのジョグへ変更する |
| 夜ラン後に寝つきが悪い日が続く | 終了時刻を早める、距離・強度を下げる |
「ゆっくり走れば何時間走っても大丈夫」とは限りません。強度だけでなく、運動時間も確認してください。
3.夕方以降のカフェインを見直す
カフェインはコーヒーだけでなく、お茶、エナジードリンク、一部のジェルやサプリにも含まれます。
400mgのカフェインを使った小規模な比較試験では、就寝6時間前の摂取でも睡眠に悪影響が認められました。
ただし、これは多めの量を使った結果です。少量でも同じ影響が出る、6時間空ければ全員問題ない、とはいえません。
まずは夕方以降の摂取を減らし、夜ラン前のカフェイン入り製品も確認しましょう。23時に寝る人なら、17時以降を見直す出発点にできます。

寝つきが改善しなければ、さらに早い時間から控えるなど、自分の反応を見て調整します。
4.入浴は寝る1〜2時間前を目安にする
入浴についての系統的レビューでは、就寝1〜2時間前の温かい入浴・シャワーが、寝つきの改善などと関連していました。
入浴後に体の熱が逃げる過程が、眠りに入りやすくなる仕組みの一つと考えられます。眠るために熱いお湯や長風呂を我慢する必要はありません。心地よい温度で、無理のない長さにしましょう。

夜ラン後に入浴・食事が後ろへずれ、就寝まで遅くなるなら、まずランニングの時間を短くすることから考えます。
5.寝る前のスマホと練習分析を切り上げる
寝る前に走行データを見始めると、動画やSNSまで確認して、就寝が遅くなることがあります。公的な睡眠ガイドでも、就寝前や寝床でのデジタル機器の使用を見直すことが勧められています。
実践例として、就寝30〜60分前にデータ確認を終え、照明を落として静かに過ごす時間をつくりましょう。この時間は全員に必要な厳密な基準ではなく、生活を変えるための目安です。
翌日のメニューと持ち物を先に決め、寝床では練習の反省を続けない工夫も役立ちます。
6.寝室を暗く、静かで、心地よい温度にする
光・音・温度も睡眠に関わります。
寝室では、外の明かり、通知音、寝具の暑さ・寒さを確認しましょう。
遮光カーテンやアイマスク、空調、寝具の調整など、気になる原因に合わせて工夫します。室温を一つの数字に固定するより、暑さや寒さで目が覚めない状態を目指してください。

夜ラン後、体がほてったままで眠りにくい人は、涼しく落ち着いて過ごせる時間を設けます。
7.遅い夕食は量を調整し、寝酒を避ける
就寝直前の重い食事や、眠るための飲酒は見直したい習慣です。寝酒はかえって睡眠を悪化させることがあります。
一方、夜ラン後に睡眠を気にして食事を抜くと、必要な補給ができません。帰宅が遅い人は、練習前に食事の一部を取り、練習後は消化しやすいものを無理なく食べるなど、分けて取る方法も考えられます。
例
練習前におにぎりなど、練習後にご飯と卵・豆腐などを組み合わせます。これは睡眠改善効果を検証した献立ではなく、遅い時間の大量摂取を避けながら補給するための実践案です。
量や食品は練習量と胃腸の調子に合わせてください。
8.昼寝は午後の早い時間に短く取る
昼寝は、眠気や集中力を補う選択肢です。アスリート向けの専門家合意でも、夜間睡眠を補う方法として扱われています。
市民ランナーが始めるなら、午後の早い時間に20〜30分程度を目安にすると取り入れやすいでしょう。公的資料でも、15時前までの20〜30分の昼寝が紹介されています。

長い昼寝や夕方の昼寝で夜に眠りにくくなる人は、短くする・早めるなど調整します。起きた直後にぼんやりする場合は、そのまますぐにポイント練習へ入らず、十分に目が覚めてから動きましょう。昼寝のために夜の睡眠を削ることは避けます。
朝ラン派・夜ラン派の生活への組み込み例

次の時刻は、生活を組み立てるための例です。必要な睡眠時間や通勤・家事に合わせて変更してください。
| 時間帯 | 朝ラン派の例 | 夜ラン派の例 |
|---|---|---|
| 朝 | 6時起床、短めのジョグ | 6時30分起床、朝の光を取り入れる |
| 午後の早い時間 | 必要なら短い昼寝 | 必要なら短い昼寝 |
| 夕方〜夜 | 翌朝の持ち物を準備 | 19時〜19時30分に軽いジョグ |
| 就寝1〜2時間前 | 無理のない入浴 | 入浴を済ませる |
| 就寝前 | データ確認を終え、静かに過ごす | データ確認を終え、静かに過ごす |
| 就寝 | 22時30分を目安 | 23時を目安 |
表の夜ランは軽いジョグの例です。

負荷の大きいポイント練習で眠りにくくなる人は、さらに早い時間へ移すか、休日に行う方法を検討しましょう。
睡眠の変化は1〜2週間の記録で確認する

一晩の結果だけでは、どの工夫が合うか判断しにくいものです。まず1〜2週間、次の項目を簡単に記録してみましょう。
- 就寝・起床時刻と、おおよその睡眠時間
- ランニングの終了時刻、時間、きつさ
- カフェインを取った時刻
- 朝に休まった感覚があるか
- 日中の眠気が強いか

最初は「夜ランを早く終える」「夕方のコーヒーを控える」など、変更を一つか二つに絞ると振り返りやすくなります。1〜2週間は試行の目安であり、改善を保証する期間ではありません。
ランナーが睡眠を整えるときによくある失敗

| よくある失敗 | 見直すポイント |
|---|---|
| 朝ランのために起床だけ早める | 夜の予定も前倒しし、睡眠時間を確保する |
| 眠るために夜遅くまで追い込む | 練習の終了時刻・強度・長さを調整する |
| 練習後のご褒美を寝酒にする | お酒を睡眠の手段にしない |
| 寝る直前までデータやSNSを見る | 確認する終了時刻を決める |
| 眠れないのに無理に寝床に居続ける | 焦らず、暗めの場所で静かに過ごし、眠気が戻ってから寝床へ戻る |

眠れない状態が続く場合は、生活習慣だけで解決しようとせず相談してください。
よくある質問

睡眠の質がよければ、5時間睡眠でも大丈夫?
夜ランはやめた方がよい?
寝る前のストレッチは必要?
レース前日に眠れなかったら、結果は必ず悪くなる?
睡眠の悩みが続くときは相談する
十分に眠る時間をつくっても休養感がない、強い眠気がある、眠れずに日常生活へ支障が出る場合は、医療機関への相談が勧められます。
大きないびきや睡眠中の呼吸停止を指摘された場合も、睡眠の問題について相談してください。
まとめ
ランナーが睡眠を整える第一歩は、必要な睡眠時間を確保することです。そのうえで、朝の光、夜の練習負荷、カフェイン、入浴、寝る前の過ごし方を見直しましょう。

まずは気になる習慣を一つ選び、翌朝の休養感と日中の眠気を記録しながら調整してみてください。
参考文献
- 厚生労働省.健康づくりのための睡眠ガイド2023(令和6年2月). / 成人版リーフレット
- Walsh NP, et al. Sleep and the athlete: narrative review and 2021 expert consensus recommendations. Br J Sports Med. 2021;55:356–368.
- Leota J, et al. Dose-response relationship between evening exercise and sleep. Nature Communications. 2025.
- Drake C, et al. Caffeine effects on sleep taken 0, 3, or 6 hours before going to bed. J Clin Sleep Med. 2013;9(11):1195–1200.
- Haghayegh S, et al. Before-bedtime passive body heating by warm shower or bath to improve sleep: A systematic review and meta-analysis. Sleep Med Rev. 2019;46:124–135.
- 厚生労働省委託事業.睡眠に関する保健指導関連資料.
風を切るランニング 
