
「走っていると肩甲骨の間が痛くなる」
「ランニング後に背中が張る」
「深呼吸すると背中が痛い」
背中に痛みが出ると、フォームが悪いのか、走り続けてもよいのか迷いますよね。
ランニング中・後の背中の痛みには、筋肉や関節の負担が関わることがあります。ただし、痛む場所だけでは原因を特定できません。胸の痛みや息苦しさを伴う場合は、筋肉痛と決めつけずに対応する必要があります。
この記事では、主に肩甲骨周辺から背中の中央にかけての痛みについて、練習の見直し方、セルフケア、受診の目安を解説します。
ランニングで背中が痛いときは、まず症状を確認する

痛みを我慢して予定の距離を走り切るより、いったん走るのをやめて状態を確認しましょう。
特に、次の症状を伴う場合は練習を中止し、119などで救急対応を求めてください。
- 胸の圧迫感や痛み、強い息苦しさ
- 冷や汗や失神、意識が遠のく感じを伴う痛み
- 突然始まった非常に強い胸・背中の痛み
- 新たな両脚の脱力・しびれに、排尿・排便の異常を伴う

背中の痛みが心臓や肺などの問題と関係することもあります。「走っていたから筋肉痛」と判断せず、緊急症状があるときは自分で運転して受診しないでください。
ランニング中・後に背中が痛む原因として考えられること

1.背中や肩甲骨周辺の筋肉・関節への負担
上背部の痛みには、筋肉や関節の問題が関係することがあります。
例
最近ロング走を始めた、速いペースで走る時間を増やした、慣れない筋トレを行った場合には、その前後で症状が変わったかを確認します。
ただし、押すと痛い、体をひねると痛いといった特徴だけで「筋肉が原因」と確定できるわけではありません。
2.肩に力が入る走り方や、姿勢を固定する意識
肩をすくめる、手を強く握る、胸を張り続けるなどの走り方で、背中が張ると感じる人もいます。
見直すなら、「背筋を伸ばして固める」より、肩や手の力を少し抜いて楽に動けるかを試してみましょう。

これは症状を和らげるための調整案です。猫背や前傾姿勢だけを背中の痛みの原因と断定することはできません。
3.練習内容や荷物の変化
痛みが出る前に、次のような変化がなかったか振り返ります。
- 走る距離・時間を増やした
- 坂道やインターバル走を追加した
- 重いリュックを背負って走った
- スマートフォンやボトルを片手に持っていた
リュックなら荷物を減らす、揺れを抑えるなど、条件を一つずつ変えて症状を確認する方法があります。
ただし、変化があったからといって、それが原因と決まるわけではありません。
4.胸椎や肋骨周辺などの問題
背中の中央や肋骨に近い部分の痛みでは、筋肉以外の組織が関わる場合もあります。スポーツ選手の体幹痛に関するレビューでは、胸椎・肋骨・胸壁の筋肉など、複数の原因が整理されています。

深呼吸や咳で痛む、同じ一点が強く痛む、休んでも続く場合は、自己判断で強く伸ばしたり揉んだりせずに医療機関へ相談してください。息苦しさを伴う場合は、より急いだ対応が必要です。
痛む場所・タイミングを記録しておく

受診や練習の見直しには、症状の記録が役立ちます。
| 確認すること | 記録例 |
|---|---|
| 場所 | 右の肩甲骨の内側、背中の中央など |
| 出るタイミング | 走り始め、30分後、翌朝など |
| 関係する動作 | 腕振り、ひねり、深呼吸、咳など |
| 経過 | 歩くと軽くなる、安静でも続くなど |
| 最近の変化 | ロング走追加、荷物変更、筋トレ開始など |
右側・左側の違いだけで、筋肉や内臓の問題を見分けることはできません。場所とあわせて、経過やほかの症状を確認しましょう。
背中が痛くてもランニングを続けてよい?

背中の痛み全般に使える「何点までなら走ってよい」という基準はありません。
実践上は、次のように考えます。
| 状態 | 対応の目安 |
|---|---|
| 走るほど痛む、痛みでフォームが変わる | ランニングを中止する |
| 歩行や日常動作でも痛む | 走る練習は控え、必要に応じて受診する |
| 軽い張りがあり、休むと落ち着く | まず歩行などで経過を確認する |
| 胸痛・息苦しさ・失神などを伴う | 救急対応を優先する |
同じ痛みを走るたびに繰り返す場合は、軽くても相談する理由になります。「ウォームアップすると消える」だけでは安全とは判断できません。
痛みが出た直後の対処法

1.走るのをやめ、楽な姿勢で確認する
痛みを抑えるために無理に胸を張ったり、背中を大きく反らしたりする必要はありません。まず症状が落ち着くか、胸痛や息苦しさがないかを確認します。
2.痛みを強める動作を一時的に減らす
速いランニング、重い荷物、痛む方向への大きなひねりなどを控えます。
筋肉・関節由来の問題と判断され、緊急症状がなければ、負担の調整と穏やかな運動が選択肢になります。寝たきりにするのではなく、楽に行える生活動作から続けましょう。
3.強い刺激で「ほぐそう」としない
痛い場所をボールで強く押す、背骨の上をフォームローラーで何度も転がす、痛みを我慢してストレッチする方法は避けます。
冷却・温熱を使う場合は皮膚を保護し、心地よい範囲にとどめてください。痛み止めで症状を隠して走り切る使い方も控えましょう。
痛みが落ち着いてから試したい背中の運動

以下は背中を穏やかに動かすための例で、原因不明の痛みを治す処方ではありません。強い痛み、外傷後の痛み、呼吸に伴う痛みがある場合は、先に医療機関へ相談してください。
胸椎の運動として、座位での体幹回旋や四つ這いで背中を丸める・戻す運動が紹介されています。回数は、ここでは少量から試すための目安です。

- 椅子に座り、両足を床につけます。
- 両腕を胸の前で軽く交差します。
- 骨盤をなるべく正面に向けたまま、胸をゆっくり左右へ向けます。
左右3〜5回程度から始め、痛まない範囲で行います。

- 手を肩の下、膝を股関節の下につきます。
- ゆっくり背中を丸めます。
- 楽な位置へ戻します。
5回程度から始めます。強く反らす必要はありません。

椅子に座るか立った姿勢で、肩を小さく上げてゆっくり下ろします。大きく動かすことより、楽に動けることを優先しましょう。
運動中に痛みが出る・増える場合は中止します。終わった後や翌日に悪化する場合も、その運動は控えて相談してください。
ランニングへ戻すときの3ステップ

原因に応じた復帰が必要ですが、緊急性のある問題がなく、症状が落ち着いている場合の実践例は次のとおりです。
| 段階 | 内容 | 確認すること |
|---|---|---|
| ①歩行 | 楽な速さで10〜20分程度 | 痛みが出ない・増えない |
| ②短いジョグ | 平坦な道で歩行とジョグを交互に行う | 走行中・終了後・翌朝の反応 |
| ③通常練習へ | 楽なペースで時間を少しずつ延ばす | 症状が戻らないか |
これは一律の復帰基準ではありません。最初から以前の距離に戻さず、速い練習や坂道は後から追加します。症状が再発したら一段階戻し、繰り返す場合は評価を受けましょう。
背中の痛みを予防するために見直したいこと

距離、ペース、坂道、筋トレを同時に増やすと、症状が出たときに負担を調整しにくくなります。一つずつ変更し、体の反応を確認しましょう。
「肩甲骨を寄せ続ける」「体幹を一切ひねらない」といった意識で窮屈になるなら、力を抜いて自然に動ける範囲へ戻します。痛みを避けるために無理なフォームを続けないことが大切です。
リュックの重さや揺れ、長時間の同じ姿勢など、症状を強める条件があれば調整します。
一つの姿勢を「正解」として固定するより、座る・立つ・歩くなど、こまめに姿勢を変えてみましょう。
早めに医療機関へ相談したい症状

救急症状がなくても、次の場合は医療機関へ相談してください。
- 痛みが続く、または走るたびに繰り返す
- 日常生活や睡眠に支障がある
- 安静でも痛む、夜間に悪化する
- 発熱や原因不明の体重減少がある
- 転倒・衝突の後に痛みが始まった
- 骨粗しょう症があり、突然痛みが出た
- 深呼吸や咳で痛みが増す

肩甲骨の間など上背部の痛みは、改善しない場合に受診して確認することが勧められています。悪化している場合は、数週間待つ必要はありません。
よくある質問

ランニング後の背中の痛みは筋肉痛ですか?
背中が痛いのは体幹が弱いからですか?
ストレッチをすれば治りますか?
ランニングは背中に悪い運動ですか?
まとめ
ランニングで背中が痛むときは、筋肉や関節の負担に加え、練習内容や荷物の変化も確認しましょう。ただし、原因をフォームだけに決めつけることはできません。
まず症状を確認し、痛みを強める練習を控えることが基本です。痛みが落ち着いたら、歩行・短いジョグから段階的に戻します。

胸の痛みや強い息苦しさを伴う場合は救急対応を、改善しない・繰り返す場合は医療機関への相談を優先してください。
参考文献・参考情報
- NHS. Back pain.
- NHS. Heart attack.
- NHS. Pulmonary embolism.
- Norfolk & Waveney Community Musculoskeletal Services. Upper Back..
- Gundersen A, et al. Trunk Injuries in Athletes. Curr Sports Med Rep. 2021;20(3):150–156.
- Cambridge University Hospitals. Thoracic spine exercises.
- Prevalence and incidence of low back pain among runners: a systematic review. BMC Musculoskelet Disord. 2020.
※ランニング中の上背部痛に特化した研究は限られています。練習調整や復帰の例は、一般的な上背部痛の情報を参考にした実践案で、効果や安全性を一律に保証するものではありません。
風を切るランニング 