
「ランニングの補強運動は、何をすればよいの?」
「スクワットやプランクを毎日続ければ速くなる?」
走る練習に補強運動を加えたいと思っても、種目や回数、取り組むタイミングで迷う方は多いでしょう。
ランニングの補強運動は、走るために必要な筋力や身体を支える能力を、走る練習とは別の方法で鍛える取り組みです。ただし、たくさん行うほどよいわけではありません。
この記事では、初心者から市民ランナーに向けて、自宅でできる基本種目、回数・セット数の目安、ランニングとの組み合わせ方を解説します。
ランニングの補強運動は、目的に合わせて週1〜2回から始める

まずは週1〜2回、1回10〜20分程度を導入の目安にしましょう。これは初心者が習慣を作るための実践例であり、すべてのランナーに最適な量を示すものではありません。
目的によって、優先する内容は変わります。
| 目的 | 優先したい内容 | 始め方の例 |
|---|---|---|
| 運動習慣を作りたい | 基本動作に慣れる | 自重の3種目を1セットずつ |
| 脚の筋力を高めたい | スクワット・片脚で行う運動・カーフレイズ | 無理なくできる負荷から段階的に増やす |
| 体幹を鍛えたい | プランク・サイドプランクなど | 呼吸を続けられる短い時間から |
| 記録向上を目指したい | 負荷をかける筋力トレーニング・段階的なジャンプ運動 | 基本動作と回復を確認して導入 |

最初から全種目を行う必要はありません。まずは「脚の種目を2つ、体幹の種目を1つ」選ぶと、取り組みやすくなります。
ランニングにおける補強運動とは?

補強運動は厳密に統一された分類名ではありません。ランニングでは、スクワット、つま先立ち、体幹トレーニング、ジャンプ運動などをまとめて呼ぶことがあります。
この記事では、主に下半身と体幹を鍛える運動を扱います。
| 種類 | 代表的な運動 | 主な狙い |
|---|---|---|
| 筋力トレーニング | スクワット、スプリットスクワット、カーフレイズ | 筋力を高める |
| 体幹トレーニング | プランク、サイドプランク | 体幹の筋力・持久力を鍛える |
| プライオメトリックトレーニング | 小さな連続ジャンプなど | 素早く力を発揮する能力を鍛える |

ストレッチやウォームアップもランナーに役立つ取り組みですが、筋力を高める補強運動とは目的が異なります。
「どこを疲れさせるか」だけでなく、「どの能力を鍛えたいか」を考えて選びましょう。
補強運動をするとランニングは速くなる?

筋力トレーニングを走る練習に加えることで、走る効率や一部のランニングパフォーマンスが改善する可能性があります。
中・長距離ランナーを対象とした2018年の系統的レビューでは、筋力トレーニングによるランニングエコノミーやタイムトライアル成績の改善傾向が報告されました。
ただし、すべての研究で同じ結果が得られたわけではありません。
ランニングエコノミーとは、一定の速度で走るために必要なエネルギーの少なさを表す指標です。
2024年のメタ分析でも、高負荷の筋力トレーニング、ジャンプを用いるプライオメトリックトレーニング、それらを組み合わせた方法で、ランニングエコノミーの改善が示されました。
効果は方法や測定速度によって異なります。
ここで注意したいのは、研究で用いられたトレーニングと、軽い自重運動を数回行うことは同じではない点です。

初心者にとって自重運動は取り組みやすい入口になります。一方、記録向上を目的とする場合は、慣れてから適切に負荷を増やすことも検討しましょう。
また、プランクの時間が伸びたからといって、そのままマラソンのタイムが縮むとは限りません。補強運動は、走る練習・休養・栄養と組み合わせて考えることが大切です。
自宅でできるランニングの補強運動6選
以下の回数・時間は、痛みのない成人が基本動作に慣れるための導入例です。研究で効果が確認されたプログラムをそのまま再現するものではありません。
1.スクワット

太ももの前側やお尻などを鍛える基本種目です。
- 足を肩幅程度に開き、つま先は自然な角度に向ける。
- 足裏全体で床を支えながら、股関節と膝を曲げる。
- 無理なく動ける深さまで下がり、立ち上がる。

膝とつま先の向きをおおむねそろえ、かかとが浮いたり、腰が大きく丸まったりしない範囲で行いましょう。膝がつま先より前に出ることだけを理由に、フォームが悪いと判断する必要はありません。
導入の目安:8〜12回×1〜2セット。
難しい場合は、動かない安定した椅子から立ち座りする方法でも始められます。
2.スプリットスクワット

足を前後に開いた姿勢で、主に前脚に負荷をかける運動です。
- 足を前後に開き、左右にも少し幅を取る。
- 前足の足裏と後ろ足の前足部で身体を支える。
- 両膝を曲げて身体を下げ、元の姿勢に戻る。

前脚の膝が大きく内側に入らないようにします。ふらつく場合は壁や安定した台に手を添え、浅い範囲から始めましょう。
導入の目安:左右各6〜10回×1〜2セット。
スクワットと両方行う必要はなく、最初はどちらかを選んでも構いません。
3.カーフレイズ(つま先立ち)

ふくらはぎを鍛える運動です。
- 壁や安定した台に軽く手を添える。
- 両足のかかとをゆっくり上げる。
- 身体を左右に揺らさず、ゆっくり下ろす。

最初は平らな床で、両脚から始めましょう。慣れてから片脚に変更したり、負荷を加えたりします。膝を伸ばす方法と軽く曲げる方法では、ふくらはぎの筋肉への負荷のかかり方が変わります。
導入の目安:10〜15回×1〜2セット。
アキレス腱や足首に痛みが出る場合は中止し、回数で押し切らないようにしてください。
4.ヒップリフト

仰向けの姿勢で、お尻などを鍛える運動です。
- 仰向けで両膝を立て、足を腰幅程度に開く。
- 足裏で床を押し、お尻を持ち上げる。
- 腰を反らしすぎず、ゆっくり下ろす。

高さを競う必要はありません。肩から膝がおおむね一直線になる範囲を目安にし、腰に負担が集中しないようにします。
導入の目安:8〜12回×1〜2セット。
もも裏がつりそうになる場合は、いったん休み、足の位置や動かす範囲を調整しましょう。
5.フロントプランク

体幹を一定の姿勢で支える運動です。
- 肘を肩の下に置き、前腕で床を支える。
- 膝、またはつま先を床につけて身体を持ち上げる。
- 腰を反らしたり、お尻を高く上げたりせずに保つ。

呼吸を止めずに行いましょう。姿勢が崩れる場合は膝をつくか、保持時間を短くします。
導入の目安:10〜20秒×1〜2セット。
長時間耐えることより、狙った姿勢を無理なく保てることを優先してください。
6.サイドプランク

身体を横向きで支え、体幹の側面などを鍛えます。
- 横向きになり、肘を肩の下に置く。
- 初心者は両膝を曲げ、前腕と膝で床を支える。
- お尻を持ち上げ、身体が前後に倒れないように保つ。
慣れてから脚を伸ばす方法へ進みます。肩に痛みが出る場合は中止しましょう。
導入の目安:左右各10〜20秒×1〜2セット。
補強運動は何回・何セット行えばよい?

回数は、種目と負荷によって変わります。まずは、終えたときに「同じフォームであと2〜3回できそう」と感じる程度を目安にしてください。
| 項目 | 初心者の導入例 |
|---|---|
| 頻度 | 週1〜2回 |
| 種目数 | 1回3〜4種目 |
| 動く種目 | 6〜15回程度×1〜2セット |
| 保持する種目 | 10〜20秒程度×1〜2セット |
| セット間の休憩 | 60〜90秒程度。呼吸や姿勢が整わなければ延ばす |
慣れたら、回数・セット数・負荷のうち1つずつ増やします。全部を一度に増やすと、翌日のランニングへの影響が分かりにくくなります。

軽い負荷で何十回もできるようになった場合、筋力を高めたいなら少し負荷を増やす選択肢があります。初心者がいきなり最大重量を試す必要はありません。
ランニング前・後・休養日のどこに入れる?

予定表だけで決めず、補強運動の強さと、次のランニングで求める内容を合わせて考えましょう。
ランニング前:疲れを残さない軽い内容にする
走る前に行うなら、少ない回数で動きを確認する程度から始めます。息が上がったり、脚が震えたりするまで追い込む必要はありません。
特にインターバル走やテンポ走の前は、慣れない高負荷の補強運動を入れず、走る練習に集中できる状態を作りましょう。
ランニング後:短いジョグと組み合わせる
時間を確保しにくい方には、短いジョグの後に補強運動をまとめる方法があります。ただし、走った後にフォームが崩れるほど疲れている場合は、量を減らすか別の時間に回してください。
長い距離を走った日には、予定どおりの補強運動を無理に追加しないことも大切です。
走らない日:補強運動も練習負荷として数える
走らない日に行う方法もあります。ただし、強い筋力トレーニングをした日は、身体にとって完全な休養日にはなりません。
翌日に大切なポイント練習やロング走があるなら、慣れない種目や多いセット数を避け、疲労の残り方を確認しましょう。
1週間への組み込み例

以下は、週3回走る方が補強運動を始める場合の一例です。
| 曜日 | ランニング | 補強運動 |
|---|---|---|
| 月 | 休み | なし |
| 火 | 楽なジョグ | スクワット・カーフレイズ・プランク |
| 水 | 休み | なし |
| 木 | 楽なジョグ | ヒップリフト・カーフレイズ・サイドプランク |
| 金 | 休み | なし |
| 土 | 休み、または軽い散歩 | なし |
| 日 | 少し長めの楽なランニング | なし |
各種目1セットから始め、翌日の生活や次のランニングに支障がなければ調整します。

ポイント練習を行う方は、その練習の質を保てるように配置を変えてください。筋肉痛や脚の重さが強く残るなら、補強運動の量を減らすことを先に検討しましょう。
初心者向け|4週間の始め方

最初の4週間は、種目を増やすより、続けられる量を見つける期間と考えましょう。
| 期間 | 取り組み方 | 確認すること |
|---|---|---|
| 1週目 | 週1回、3種目を各1セット | 痛みなく動けるか |
| 2週目 | 問題なければ週2回へ | 翌日の歩行やランニングに支障がないか |
| 3週目 | 一部の種目を2セットへ | セット後半もフォームを保てるか |
| 4週目 | 量を維持し、楽すぎる種目だけ調整 | 次の練習までに回復しているか |
途中で強い疲労が出たら、前の週の量へ戻して構いません。4週間で効果が必ず出るという計画ではなく、導入の例です。

走る距離を増やす週は、補強運動の負荷を据え置くと、全体の負担を調整しやすくなります。
記録向上を目指すなら、負荷のある運動やジャンプも段階的に検討する

基本種目に慣れ、次のランニングまでに回復できている場合は、少しずつ負荷を高める段階へ進めます。
例
スクワットに軽いダンベルを加える、両脚カーフレイズを片脚に変更する、といった方法があります。
ただし、片脚にすることが常に最良とは限りません。バランスを取ることが難しく、狙った筋肉へ十分な負荷をかけられない場合は、両脚で負荷を加える方法も選べます。
ジャンプ運動は、筋力トレーニングに慣れてから、低い両脚ジャンプを少ない回数で試す方法があります。導入例は5〜10回×1〜2セットです。着地が乱れる、痛みが出る、疲れて動作が崩れる場合は中止してください。

高い台から飛び降りる運動や強い片脚ジャンプを最初から行う必要はありません。高負荷の運動を導入する際は、フォームと負荷設定を指導できる専門家の助言が役立ちます。
ランニングの補強運動はケガ予防になる?
特定のプログラムでは予防効果が報告されていますが、「補強運動をすればケガをしない」とは言えません。
2024年の無作為化比較試験では、初心者ランナーが理学療法士の指導下で股関節・体幹を中心とした運動を行うことで、対照群より下肢のケガの発生リスクが低くなりました。
ただし、これは決められたプログラムを指導下で実施した結果です。この記事の6種目や、自己流の補強運動で同じ効果が得られると確認されたわけではありません。

補強運動を追加しても、走行距離やスピードを急に増やせば、全体の負担は大きくなります。補強運動だけに頼らず、走る量・強度・休養も合わせて調整しましょう。
ランニングの補強運動でよくある失敗

筋肉痛の強さだけで、トレーニング効果は判断できません。階段の上り下りや次のランニングに支障が出る場合は、負荷やセット数を減らしましょう。
体幹を鍛えることも一つの選択肢ですが、ランニングの補強をプランクだけで完結させる必要はありません。下半身の種目も目的に合わせて組み合わせてください。
動作に慣れる段階ではよい方法ですが、筋力向上が目的なら負荷の調整も必要です。回数だけでなく、「どれくらい余裕があるか」を確認しましょう。
距離、速い練習、補強運動を一度に増やすと、疲労が強くなる原因を把握しにくくなります。変更する項目を絞り、数回の反応を見てから次の調整に進んでください。
痛みがあるときの注意点

関節や腱の痛み、腫れ、体重をかけにくい状態がある場合は、通常の筋肉痛と決めつけて続けないようにしましょう。
運動中に痛みが増える、翌日も明らかに悪化している、日常生活にも支障が出る場合は、該当する運動を中止し、医療機関などに相談してください。
すでにケガの治療中であれば、一般的な補強メニューより、担当者と確認した負荷や再開手順を優先します。
よくある質問

補強運動は毎日した方がよいですか?
自重の補強運動だけでもよいですか?
補強運動をすると脚が太くなりますか?
効果はどれくらいで分かりますか?
数回でタイムの変化を判断せず、まずは動作、負荷への余裕、次の練習への疲労を記録するとよいでしょう。
時間がない場合、どの種目を選べばよいですか?
まとめ
ランニングの補強運動は、走る練習に筋力トレーニングなどを加える方法です。研究では走る効率の改善が報告されていますが、効果は種目・負荷・継続期間によって変わります。
初心者は、自宅でできる3種目を週1〜2回、各1セットから始めましょう。慣れてから負荷を調整し、筋肉痛の強さよりも、フォームと次のランニングへの影響を確認してください。

補強運動を続けるためには、頑張れる最大量より、走る練習と両立できる量を見つけることが大切です。
参考文献
- Blagrove RC, Howatson G, Hayes PR. Effects of Strength Training on the Physiological Determinants of Middle- and Long-Distance Running Performance: A Systematic Review. Sports Med. 2018;48(5):1117–1149.
- Llanos-Lagos C, Ramirez-Campillo R, Moran J, Sáez de Villarreal E. Effect of Strength Training Programs in Middle- and Long-Distance Runners’ Economy at Different Running Speeds: A Systematic Review with Meta-analysis. Sports Med. 2024;54(4):895–932.
- Leppänen M, et al. Hip and core exercise programme prevents running-related overuse injuries in adult novice recreational runners: a three-arm randomised controlled trial (Run RCT). Br J Sports Med. 2024;58(13):722–732.
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