ランニングの電解質(ミネラル)補給は必要?パフォーマンスとの関係・量・タイミングを解説

マナブ
マナブ

「長く走るときは、水だけでよい?」
「ミネラルを補給すれば、足つりや失速を防げる?」

 ランニング中の補給を考えるとき、糖質や水分と並んで気になるのが電解質です。

電解質は身体の働きを支える大切な成分ですが、多く摂るほど速く走れるわけではありません。

 

走(かける)
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長時間のランニングや暑い日の練習では、発汗による損失を踏まえて、水分・糖質と組み合わせて補給することが大切です。

 この記事では、初心者からハーフ・フルマラソンに挑戦する市民ランナーに向けて、電解質の役割と補給の考え方を解説します。

目次

ランニングの電解質補給は「走る時間・暑さ・汗の量」で考える

 涼しい日に短時間のジョグをする場合、毎回電解質サプリメントを使う必要は通常ありません。普段の食事と、必要に応じた水分補給が基本です。

 一方、次のような場面では、ナトリウムを含む補給を検討しやすくなります。

  • 長時間走り続ける
  • 暑い環境で走る
  • 汗を大量にかく
  • 長い練習を繰り返し、回復時間が短い

 ただし、「1時間を超えたら必ず塩タブレットが必要」という線引きはできません。 同じ時間でも、気温・湿度・走る強度・体格によって汗の量が変わるためです。

走(かける)
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距離だけで決めず、「どれくらいの時間、どんな環境で走るか」を確認しましょう。

電解質とは?ミネラルとの違いと主な役割

 電解質とは、水に溶けて電気を帯びた粒子、つまりイオンになる物質です。身体の中では、体液のバランスや神経の情報伝達、筋肉の収縮などに関わります。

 ミネラルは栄養学上の分類で、電解質と完全に同じ意味ではありません。例えば鉄も重要なミネラルですが、ランニング中の電解質補給では、主に次の成分を考えます。

成分身体での主な役割ランナーが意識したいこと
ナトリウム細胞の外側の体液バランス、神経・筋肉の働き長時間・多量発汗時の補給で優先して確認
塩化物(クロール)体液のバランスなど食塩にはナトリウムと塩化物が含まれる
カリウム細胞の内側の体液バランス、神経・筋肉の働き野菜・果物・いも類・豆類などから確保
カルシウム骨の維持、筋肉の収縮、神経の情報伝達乳製品などを取り入れ、日常的な摂取を意識
マグネシウムエネルギー代謝、神経・筋肉の働き豆類・ナッツ・全粒穀物などを食事に取り入れる

 

走(かける)
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カリウム・カルシウム・マグネシウムも身体に必要な成分です。ただし、身体に必要であることと、走る途中に追加すると速くなることは別です。

電解質を補給するとランニングのパフォーマンスは上がる?

身体の状態を保つ役割と、記録向上の効果は分けて考える

 ナトリウムは、水分の保持などに関わります。しかし、追加補給によって必ずタイムが縮まるとはいえません。

 実際に、ナトリウム補給のパフォーマンスへの効果は、研究で一致していません。

研究対象・条件比較結果
Del Cosoら(2016)経験のあるトライアスリート26人、ハーフアイアンマン大会レース前・途中の塩類補給とプラセボ補給群の総レース時間が有意に短かった
Cosgrove・Black(2013)トレーニングを積んだサイクリスト9人、約14℃で72km走行ナトリウム補給とプラセボ完走時間に有意差なし

 いずれも少人数で、ランニング単独の研究ではありません。これらの結果から、すべてのランナーに同じ効果があるとはいえません。

 

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実用上は、電解質を「速くなるために増やす成分」と考えるより、発汗や補給条件に応じて身体の状態を支えるために使う、と捉えるとよいでしょう。

電解質だけではエネルギー不足を補えない

 電解質は、糖質のような走るための燃料にはなりません。

 糖質ゼロの電解質飲料を飲んでいても、長時間走るためのエネルギーを補給したことにはならないのです。

 1〜2.5時間程度の持久性運動では、糖質30〜60g/時が一般的な目安として示されています。走る強度や胃腸の慣れに合わせて、練習で試しましょう。

走(かける)
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「ミネラルを摂ったから補給は十分」と考えず、燃料になる糖質も確認しましょう。

電解質はどれくらい補給すればよい?

まずは飲料のナトリウム濃度を確認する

 AIS(オーストラリアスポーツ研究所)は、一般的な参考値として、飲料1Lあたりナトリウム500〜700mgを示しています。

 ただし、これは全員に最適な量を保証する値ではありません。運動中のナトリウム補給について、必要量や最適な計画は十分に確立されていないとしています。

 重要なのは、飲料の「濃度」と、1時間に実際に摂る「量」を区別することです。

 例えば、ナトリウム600mg/Lの飲料なら、次の計算になります。

1時間に飲んだ量飲料から摂るナトリウム
300mL180mg
500mL300mg
700mL420mg

 これは計算例であり、表の量を飲み切る指示ではありません。

 

走(かける)
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必要な飲水量は、のどの渇き、発汗量、環境、胃腸の状態などで調整します。

ジェルや補給食にもナトリウムが含まれる場合があります。飲料だけでなく、使う補給品全体の合計を確認しましょう。

「ナトリウム」と「食塩相当量」を混同しない

 日本の商品表示では、「食塩相当量」が使われることもあります。

食塩相当量(g)=ナトリウム(mg)×2.54÷1,000

例

ナトリウム300mgは、食塩相当量で約0.76gです。ナトリウム300mgと食塩300mgは同じではありません。

 また、成分表示が次のどの単位なのかも確認してください。

  • 100mLあたり
  • 1本あたり
  • 1粒あたり
  • 粉末1袋あたり

走(かける)
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「何粒飲むか」を決める前に、1粒に何がどれだけ含まれているかを見ることが大切です。

走る時間・条件別|電解質補給の考え方

 次の表は、補給を考え始めるための実用的な整理です。時間による厳密な境界を示したものではありません。

ランニングの条件補給の考え方
涼しい日の30〜60分程度のジョグ普段の食事と水分補給が基本。電解質サプリを毎回使う必要は通常ない
1〜2時間程度のランニング暑さや発汗量に応じて、ナトリウム入り飲料などを検討
2時間以上のロング走・フルマラソン水分・糖質・ナトリウムをまとめて計画し、練習で試す
暑くて汗が多い日短時間でも補給を見直す。時間短縮や涼しい時間帯への変更も行う
ウルトラマラソンなど非常に長い運動飲料・補給食・食事を含めて個別に計画する

 汗で失うナトリウム量は、汗の量と汗のナトリウム濃度の両方で変わります。

 服に残る白い跡は参考になりますが、それだけで必要な補給量を計算することはできません。

自分の発汗量を調べる方法

 補給計画の参考に、似た条件の練習で発汗量を概算してみましょう。

発汗量(L)≒走る前の体重(kg)−走った後の体重(kg)+飲水量(L)−尿量(L)

 例えば、1時間のランニングで次のような変化があったとします。

  • 走る前:60.0kg
  • 走った後:59.5kg
  • 途中の飲水量:0.4L
  • 排尿:なし

 発汗量の概算は、「60.0−59.5+0.4=0.9L/時」となります。

 計測時は同じ体重計を使い、身体の汗を拭き、できるだけ同じ乾いた服装条件で測ります。濡れた衣服は誤差につながります。

 この方法で分かるのは汗の「量」で、ナトリウム濃度ではありません。また、長時間の運動では呼吸や燃料消費なども体重変化に影響するため、あくまで概算です。

 

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なお、測定した汗を、運動中に必ず100%補う必要はありません。測定結果を飲み切るノルマにせず、飲み過ぎを避けるための参考にも使いましょう。

水分・糖質・電解質をどう組み合わせる?

 それぞれの役割を分けて考えると、補給品を選びやすくなります。

補給するもの主な目的
水分発汗などで失う水分を補う
糖質長時間走るための燃料を補う
電解質、特にナトリウム発汗による損失や体液バランスを踏まえて補う

組み合わせの例は、次のとおりです。

  • 糖質とナトリウムを含むスポーツドリンク
  • 電解質飲料+ジェル
  • 水+糖質とナトリウムを含む補給食

 例えば、糖質6g/100mL、ナトリウム600mg/Lの飲料を1時間に500mL飲むと、糖質30g・ナトリウム300mgを摂る計算になります。

 別途ジェルを使えば、飲水量を無理に増やさず糖質を追加できます。

 必要な糖質量を飲料だけで満たそうとして、過剰に飲まないことが大切です。 水分と糖質の必要量が合わない場合は、飲料とジェルなどを組み合わせて調整します。

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粉末飲料は指定された水量で作り、大会当日に初めて濃度や製品を変更することは避けましょう。

電解質で足つりは予防できる?

足つりを、すべて電解質不足のせいと考えることはできません。

 

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運動中の筋けいれんには、筋疲労、慣れていない強度や距離、過去の足つりなど、複数の要因が関わります。

 多量の発汗による損失が関与する人もいますが、「塩やマグネシウムを摂れば必ず防げる」という根拠はありません。

 足つりを繰り返す場合は、補給に加えて次の点も見直しましょう。

  • 序盤から目標以上のペースで走っていないか
  • 練習とレースの距離・強度に大きな差がないか
  • 疲労が残った状態で走っていないか
  • 糖質補給が不足していないか

 局所的な足つりが起きたら、まずペースを落とすか止まり、痛みの範囲で筋肉をゆっくり伸ばします。補給品だけで対処して走り続けようとしないことが大切です。

走(かける)
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足つり対策は、補給だけでなく、ペース・練習・疲労もセットで見直しましょう。

電解質補給でよくある失敗

1.塩を摂っていれば、水をいくら飲んでもよいと思う

 ナトリウムを摂っていても、過剰な飲水による運動関連低ナトリウム血症は防ぎ切れません。スポーツドリンクでも、飲み過ぎれば起こり得ます。

 

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「全給水所で必ず飲み切る」と固定せず、のどの渇きや練習で確認した飲水量を参考に調整しましょう。

2.足つりや失速のたびに、塩タブレットを追加する

 失速には、糖質不足、オーバーペース、暑さ、疲労なども関わります。

 

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症状だけで電解質不足を判断して、補給を重ねるのは避けましょう。

3.ミネラルウォーターなら十分な電解質が摂れると思う

 ミネラルウォーターの成分量は、製品ごとに異なります。

 「ミネラル」という名前だけで、運動時のナトリウム補給に十分とは判断できません。栄養成分表示で確認してください。

4.走らない日まで一律に塩分を増やす

 運動中の補給と、日常の食事全体の塩分量は分けて考えます。

 ランナーであることだけを理由に、毎日電解質サプリを追加する必要はありません。2025年のレビューでも、十分な水分状態にある人が、日常的な水分保持のためにナトリウムを追加する必要性は支持されていません。

ランニング前後の電解質補給と注意点

走る前は、普段の食事と水分を整える

 走る前は、通常の食事と水分を整えることから始めましょう。

 大量の塩や濃い電解質飲料を、独自の判断でまとめて摂る必要はありません。

走った後は、水分と食事を組み合わせる

 走った後は、水分と通常の食事を組み合わせる方法が基本です。

例

ご飯・魚や豆腐・野菜・汁物などを組み合わせれば、糖質やたんぱく質も同時に摂れます。汁物や調味料を普段以上に増やす必要はありません。

 

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短時間の練習後まで、電解質飲料だけにこだわる必要はなく、回復までの時間や食事の機会も含めて考えましょう。

制限を受けている人は、担当医の指示を優先する

 高血圧、腎臓・心臓の病気などで塩分・水分・カリウムの制限を受けている人は、この記事の補給例をそのまま当てはめず、担当医の指示を優先してください。

強い症状を「電解質不足」と決めつけない

 走行中や走った後に、次のような症状がある場合は、走るのをやめて大会救護や医療機関に相談してください。

  • 強い頭痛
  • 繰り返す嘔吐
  • 受け答えがおかしい
  • ふらついて動けない

 意識の異常がある場合は、救急要請が必要です。

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脱水や電解質不足と自己判断して、水分や塩を追加し続けないようにしましょう。

よくある質問

毎回、スポーツドリンクを飲んだほうがよい?

涼しい日の短いジョグでは必須ではありません。走る時間・発汗量・糖質補給の必要性で使い分けましょう。

水だけでは水分補給にならない?

水でも水分補給はできます。
長時間・多量発汗時には、食事や補給品からのナトリウム摂取も含めて計画する、という考え方です。

塩タブレットと電解質飲料はどちらがよい?

どちらも、摂れるナトリウム量と飲みやすさ・胃腸の相性を確認して選びます。
タブレットだけでは水分や燃料を補えないため、飲料や糖質補給との組み合わせを考えましょう。

マグネシウムはランニング前に摂るべき?

全員に必要とはいえません。
まずは普段の食事で確保し、追加補給を足つり予防の決め手と考えないことが大切です。

Springer Nature Link

PMC

まとめ|電解質は、水分・糖質と一緒に考える

 電解質は、神経・筋肉・体液バランスに関わる大切な成分です。ただし、追加補給による記録向上は保証されません。

 

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涼しい日の短いジョグは普段の食事と水分補給を基本に、長時間・暑い環境・多量発汗時には、ナトリウム補給を検討しましょう。

 「走る条件を確認する→成分表示を見る→練習で試す→体調と胃腸の反応で調整する」

この手順が、自分に合う補給を見つける出発点になります。

参考文献・資料

  1. McDermott BP, et al.(2017)National Athletic Trainers’ Association Position Statement: Fluid Replacement for the Physically Active. J Athl Train. 52(9):877–895.
  2. Australian Institute of Sport. Electrolyte supplement
  3. Del Coso J, et al.(2016)Effects of oral salt supplementation on physical performance during a half-ironman: A randomized controlled trial. Scand J Med Sci Sports. 26(2):156–164.
  4. Cosgrove SD, Black KE.(2013)Sodium supplementation has no effect on endurance performance during a cycling time-trial in cool conditions. J Int Soc Sports Nutr. 10:30.
  5. Hew-Butler T, et al.(2015)Statement of the 3rd International Exercise-Associated Hyponatremia Consensus Development Conference. Br J Sports Med. 49:1432–1446.
  6. Miller KC, et al.(2022)An Evidence-Based Review of the Pathophysiology, Treatment, and Prevention of Exercise-Associated Muscle Cramps. J Athl Train. 57(1):5–15.
  7. Australian Institute of Sport. Sports drinks: How and when do I use it?
  8. NIH Office of Dietary Supplements. Magnesium、Potassium、Calcium
  9. McCubbin AJ.(2025)Sodium intake for athletes before, during and after exercise: review and recommendations. Performance Nutrition.