フルマラソンの「サブ3」は、42.195kmを3時間未満で走ることです。

「4分15秒/kmでどこまで走れればよい?」
「月間300kmは必要?」
「30km走を毎週行うべき?」
と、練習の組み方に迷う人も多いでしょう。
サブ3に向けて大切なのは、目標ペースで走る力と、その力を後半まで保つ持久力を育て、疲労を残さずスタートラインに立つことです。
この記事では、継続して走っている市民ランナーに向けて、練習の役割と具体的なメニューを紹介します。掲載メニューは研究知見を参考に組み立てた実践例であり、そのまま行えばサブ3を達成できると検証されたプログラムではありません。
サブ3に必要なペースは約4分15秒/km

3時間ちょうどの平均ペースは約4分15.96秒/kmです。4分15秒/kmを維持すると、計算上は2時間59分19.7秒になります。
| 距離 | 4分15秒/kmでの通過時間 |
|---|---|
| 5km | 21分15秒 |
| 10km | 42分30秒 |
| ハーフ | 約1時間29分40秒 |
| 30km | 2時間7分30秒 |
| 40km | 2時間50分 |
| フィニッシュ | 約2時間59分20秒 |
ただし、この設定の余裕は約40秒です。給水での減速やコース取りによって、余裕が小さくなることもあります。
だからといって、序盤を必要以上に速く走って貯金を作るのは避けたいところです。直近の走力に余裕がある場合は4分14〜15秒/kmなどを検討し、公式距離表示と区間タイムで確認しましょう。GPSの瞬間ペースだけに合わせて加減速しないことも大切です。

大会によってグロスタイムとネットタイムの扱いが異なります。号砲からの3時間切りを目指すなら、スタートラインまでの時間も考慮します。
12週間メニューを始める前に確認したいこと

以下の例は、すでに週5日前後・週50〜60km程度を数週間以上安定して走り、20〜24km程度のイージーロング走から無理なく回復できる人を想定しています。これは参加資格や安全性を保証する基準ではなく、メニューの負荷を説明するための前提です。
現在の走行距離が大きく下回る場合は、先にジョグを継続できる土台を作りましょう。12週間で初心者からサブ3に到達するための計画ではありません。

ハーフの記録は参考になりますが、ハーフを1時間30分で走れても、それを2回続けられるとは限りません。短い距離の記録に加えて、長く走った後の失速、補給のしやすさ、翌日以降の回復を確認してください。
サブ3に向けた練習は4種類に分けて考える

以下のペースは、サブ3に近い走力がある人の例です。目標タイムだけで決めず、現在の走力と当日の暑さ・起伏・疲労に合わせます。
| 練習 | 主な目的 | ペース・強度の例 |
|---|---|---|
| イージーラン・ジョグ | 有酸素トレーニングの積み重ね | 5分00〜5分50秒/kmなど。文章で会話できる強度 |
| マラソンペース走(M) | 目標ペースの感覚と持続力を養う | 4分14〜4分16秒/km前後 |
| 閾値走(T) | やや高い強度を安定して持続する練習 | 4分00〜4分10秒/km前後が例。短い言葉は話せるが楽ではない |
| ロング走 | 長時間走ることと補給に慣れる | 基本は会話できる強度。距離と速さを同時に追わない |
ジョグ|毎回速く走らず、継続できる負荷にする
ジョグで余力を残すことで、重要な練習の質と継続性を確保します。疲れている日は表より遅くても問題ありません。

「サブ3を目指すならジョグも速くなければならない」と考えず、呼吸と脚の状態を確認しましょう。
マラソンペース走|まずは短い距離で安定させる
導入例は、ジョグで準備した後に6〜8kmのM走を行い、最後に軽くジョグをする形です。
慣れてきたら10〜12km、さらに余裕があれば14〜16kmへ延ばします。最初から20〜30kmを目標ペースで押し切る必要はありません。

4分15秒/kmが数kmで全力に近くなるなら、設定が現状に合っていない可能性があります。まず短縮・減速し、目標時期も見直します。
閾値走|全力ではなく、最後までそろえられる強度で
メニュー例は次のとおりです。
- 6分×3本、つなぎは90秒〜2分のゆっくりしたジョグ
- 8分×3本、つなぎは2分のゆっくりしたジョグ
- 慣れている人は15〜20分の連続走
速い区間の前後には、10〜15分程度のウォームアップとクールダウンを入れます。最後の1本だけ大きく失速するなら、速すぎるか本数が多すぎる可能性があります。
インターバル走を取り入れる場合は、閾値走の代わりに行い、強い練習を追加しないようにします。例えば1km×4〜5本を現在の5〜10kmレース相当の努力感で、間に2〜3分のジョグを入れる方法があります。経験が少なければ、まず閾値走からで十分です。
ロング走|距離を踏むだけでなく、補給も試す
20〜24kmから始め、適応に合わせて26〜30km程度へ延ばす例が考えられます。ただし、30kmは必須条件ではありません。

普段より長く走るだけでも負荷は高くなります。基本は余裕のあるペースとし、終了後に数日間まともに走れなくなる設定は見直しましょう。
サブ3には月間何km必要?

「月間300km走れば達成できる」「200kmでは無理」といった一律の線引きはできません。
市民ランナーを対象とした研究では、週間走行距離や最長走の距離とマラソンの記録との関連が報告されています。ただし観察研究であり、距離を増やせば誰でも同じように速くなるとは言えません。
本記事では、週55〜75km前後で組み立てる例を示します。月換算では約240〜330kmですが、これは達成条件ではありません。

増やすときは距離・頻度・スピードを一度に上げず、同じ負荷を繰り返したときの身体の反応を確認します。「毎週10%以内なら必ず安全」とも考えないようにしましょう。
1週間のトレーニングメニュー例

週5回、合計約64kmの例です。
| 曜日 | メニュー | 距離 |
|---|---|---|
| 月 | 休養 | ― |
| 火 | 閾値走6分×3本。前後とつなぎのジョグ込み | 合計10km |
| 水 | イージーラン | 10km |
| 木 | 休養、または慣れている軽い補強 | ― |
| 金 | イージーラン | 12km |
| 土 | ゆっくりしたジョグ | 8km |
| 日 | イージーロング走。補給を試す | 24km |
| 合計 | 64km |
ロング走も負荷の高い練習として数え、火曜と日曜以外は余裕を持たせます。

マラソンペース走を行う週は、火曜の閾値走をM走に置き換える方法があります。日曜のロング走の一部をMペースにする週は、火曜を軽くし、金曜にも速い練習を追加しないようにします。
レースまで12週間のトレーニング例

以下は、前述の土台がある人向けの一例です。週の残りはイージーランと休養で構成します。週間距離にはウォームアップ・クールダウン・つなぎのジョグを含みます。
Tは閾値走、Mはマラソンペース走です。Tのつなぎは90秒〜2分のゆっくりしたジョグを目安にします。
| 週 | 週間距離の例 | 平日の主な練習 | 週末の主な練習 |
|---|---|---|---|
| 1 | 55〜60km | T:6分×3本 | 20〜22kmイージー |
| 2 | 60〜65km | M:8km | 24kmイージー |
| 3 | 60〜68km | T:8分×3本 | 26kmイージー |
| 4 | 50〜55km | ジョグ中心 | 18〜20kmイージー |
| 5 | 65〜70km | M:10〜12km | 26kmイージー |
| 6 | 65〜72km | T:8分×3本 | 28kmイージー |
| 7 | 65〜75km | ジョグ中心 | 合計24〜26kmのうち後半8〜10kmをM |
| 8 | 50〜60km | 余裕があればM:6〜8km | 20〜22kmイージー |
| 9 | 65〜75km | M:10〜12km | 28〜30kmイージー |
| 10 | 50〜60km | T:6分×2本 | 合計18〜22kmのうちMを6〜8km |
| 11 | 35〜45km | M:5〜6km | 12〜14kmイージー |
| 12 | レース前15〜25km+本番 | 短いジョグ。週前半にMを2〜3km程度 | フルマラソン |
第9週の最長走は、本番の約3週間前を想定しています。第10週は回復状況に応じてTかMの一方を省きます。
第7週のM区間は、前半を余裕を持って走れた場合だけ実施します。疲労が強ければ、全区間イージーに変更してください。
表の上限を毎週目指す必要はありません。距離への適応が不十分なら、同じ週を繰り返すか短縮します。休んだ分を翌週にまとめて走らないことも大切です。
レース前2〜3週間は、走り込むより疲労を抜く

持久系競技のメタ分析では、練習強度や頻度を大きく変えず、練習量を減らすテーパリングの有効性が示されています。41〜60%程度の量の削減や、21日以内の期間が有効な選択肢として報告されています。
ただし、これはすべてのサブ3志望者に同じ割合を当てはめる指示ではありません。

実践では、ジョグやロング走を短くし、短いM走などで走る感覚を保ちます。「強度を保つ」とは、最後まできつい練習を続けることではありません。速い区間の距離や本数も減らして、疲労を残さないようにします。
補給・給水もサブ3のための練習に含める

3時間前後のレースでは、走力に加えて補給計画も重要です。
運動中の糖質摂取は、長時間運動では30〜60g/時、2.5時間を超える場合には最大90g/時までの高い摂取量が有益となる可能性が示されています。 ただし、胃腸の耐性や糖質の種類によって適した量は変わります。
ロング走では、まず無理なく摂れる量を確認し、必要に応じて60〜90g/時の範囲を試します。初めての高用量を本番で試すのは避けましょう。
例
糖質30gのジェルを30分ごとに摂る計画は、平均60g/時です。スポーツドリンクの糖質も合計し、製品の表示と給水地点に合わせて調整します。

飲水量は気温・発汗量・給水機会によって変わります。渇きを我慢して走り続けることも、決めた量を無理に飲み切ることも避け、練習で自分に合う方法を確認します。
練習の効果は、1回のタイムだけで判断しない

練習後には、次の点を記録しましょう。
- 同じペースで走ったときの呼吸と主観的なきつさ
- 後半にペースやフォームが崩れたか
- 補給後に胃腸の不快感が出たか
- 翌日以降、通常のジョグへ戻れたか
- 睡眠や食欲に変化がないか
M走で余裕が増えても、それだけで42.195kmを走り切れるとは限りません。長く走る練習と回復状況を合わせて判断します。
サブ3を目指す人によくある失敗

| よくある失敗 | 見直し方 |
|---|---|
| 毎日のジョグが速すぎる | 会話できる強度に戻す |
| 閾値走・インターバル・M走を毎週すべて行う | 速い練習は入れ替え、ロング走も高負荷として数える |
| 30km走を毎週全力で行う | イージー中心にし、短い週も設ける |
| 月間距離を達成するために痛みを我慢する | 距離より継続と回復を優先する |
| 休んだ練習を翌日に詰め込む | その練習は省略し、計画へ戻る |
| 体重を急いで減らそうと食事を削る | 練習を支えるエネルギーを確保する |
| 本番だけ新しい補給食を使う | ロング走で事前に試す |
練習を軽くする・中止する目安

普段のジョグが明らかにきつい、睡眠不足が続く、脚の重さが抜けないときは、速い練習を短いジョグや休養へ変更します。
走り方が変わるほどの痛みや、走るほど強まる痛みがある場合は中止しましょう。胸痛、失神しそうな感覚、普段と異なる強い息苦しさがある場合は、練習を続けず医療機関への相談・受診を優先してください。
よくある質問

週3〜4回でもサブ3は達成できますか?
30kmを4分15秒/kmで走れないとサブ3は無理ですか?
1kmのインターバルは何分で走ればよいですか?
筋トレも必要ですか?
12週間で間に合わないと感じたらどうしますか?
サブ3に向けては、ジョグを土台にし、目的のある速い練習とロング走を組み合わせてください。メニューを消化できたかだけでなく、回復して次の練習へつなげられるかを確認することが、計画を自分に合わせる手掛かりになります。
まとめ
フルマラソンでサブ3を達成するには、平均約4分15秒/kmで走り続ける力が必要です。ただし、毎日の練習を目標ペースで走る必要はありません。
押さえておきたいポイントは、次の5つです。
- ジョグを土台にする:余裕のある強度で、継続して走れる身体を作る
- 速い練習の目的を分ける:閾値走とマラソンペース走を、現在の走力に合わせて取り入れる
- ロング走で持久力と補給を確認する:距離と速さを同時に追わず、段階的に進める
- 疲労に合わせてメニューを調整する:月間距離や30km走の達成だけを判断基準にしない
- レース前は練習量を減らす:走る感覚を保ちながら、疲労を抜いて本番に備える
紹介した週間メニューや12週間の計画は、あくまで一例です。現在の走行距離、練習歴、生活の負担に合わせて調整してください。
**大切なのは、練習を消化することだけでなく、回復して次の練習につなげること。**無理なく積み重ねられる計画で、サブ3を目指しましょう。
参考文献
- Fokkema T, et al. Training for a (half-)marathon: Training volume and longest endurance run related to performance and running injuries. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2020;30:1692–1704.
- Wang Z, et al. Effects of tapering on performance in endurance athletes: A systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2023;18(5):e0282838.
- Burke LM, et al. Carbohydrates for training and competition. Journal of Sports Sciences. 2011;29 Suppl 1:S17–27.
風を切るランニング 
