ランニングのピッチを上げる方法|180にこだわらない目標設定と練習の始め方

 

マナブ
マナブ

「ランニングのピッチを上げたいけれど、脚を速く動かすと疲れる」

「180歩/分を目指したほうがよいの?」

ピッチを変えるときに大切なのは、数字を上げること自体ではなく、無理のないリズムで走れるかを確かめることです。

 この記事では、ピッチの測り方、目標の決め方、ジョグに取り入れる練習方法を紹介します。初心者から市民ランナーまで、普段のフォームを見直したい方に向けた内容です。

ランニングのピッチを上げるには?まずは「少しだけ・短時間」から

 ピッチを上げる練習は、次の順番で進めると取り入れやすくなります。

  1. 普段のジョグで現在のピッチを測る。
  2. 現在の値から約5%高いリズムを試す。
  3. ペースは変えず、歩幅を少し小さくする。
  4. 30秒〜1分の短い区間で練習する。
  5. 呼吸、走りやすさ、脚の状態を確認する。

 研究では、普段のピッチから5〜10%増やす条件がよく使われています。ただし、この範囲がすべての人に最適という意味ではありません。

 この記事の練習例は、研究を参考にした取り入れ方の一例です。練習時間や回数、4週間という期間の効果が、そのまま研究で検証されているわけではありません。

走(かける)
走(かける)

「まずは少しだけ変えて、いつものペースで楽に走れるか確かめましょう。」

ピッチとは?ストライドとの関係を確認する

 ランニングのピッチとは、1分間に行う歩数です。左右両方の足の接地を合計し、「歩/分」や「spm」で表します。

例

右足と左足を合わせて1分間に170回接地する場合、ピッチは170歩/分です。

 この記事では、ストライドを「1歩で進む距離」として説明します。走る速度は、次の関係で考えられます。

走る速度=ピッチ×1歩で進む距離

 同じ速度でピッチを上げると、1歩で進む距離は短くなります。

 例えば、6分/kmのペースは約166.7m/分です。

ピッチ1歩で進む距離
160歩/分約1.04m
168歩/分約0.99m

 つまり、同じペースで160から168歩/分へ増やすなら、歩幅は約5cm小さくなる計算です。

走(かける)
走(かける)

脚を力いっぱい動かすより、少しコンパクトな歩幅でリズムを刻むと考えると分かりやすくなります。

ピッチを上げると何が変わる?研究で分かっていること

 Heiderscheitらの研究では、健康なレクリエーションランナー45人が、一定の速度で普段のピッチと、その±5%・±10%の条件を比較しました。

ピッチを増やすと効率が良くなる?

 ピッチを増やすと、歩幅、身体の重心の上下動、接地時の重心と踵の水平距離、ブレーキに関わる指標が小さくなりました。

 また、膝が着地で吸収する機械的エネルギーも減少しました。

 ただし、これは走行中の動きや負荷に関する結果です。ピッチを上げた人のケガが必ず減る、マラソンが速くなる、と証明した研究ではありません。

 37研究をまとめた2022年のレビューでも、ピッチの変更による動きの変化は確認されていますが、ケガやパフォーマンスへの効果を断定するには証拠が不十分とされています。

走(かける)
走(かける)

「走り方を調整する手段の一つですが、数字を上げるだけで速くなるとは限りません。」

目標は180歩/分?自分のピッチから決める

 「理想のピッチは180」と聞くことがありますが、すべてのランナーが、すべてのペースで180歩/分を目指す必要はありません。

 屋外で好みのピッチとエネルギー消費が小さくなるピッチを調べた研究では、速度によって値が変わり、個人差もありました。

 

走(かける)
走(かける)

まずは他人の数字より、自分が同じペースで走ったときの変化を確認しましょう。

約5%増やす場合の計算例

試すピッチ=現在のピッチ×1.05

現在のピッチ約5%増やした値
150歩/分158歩/分
160歩/分168歩/分
170歩/分179歩/分
180歩/分189歩/分

 小数点以下は四捨五入しています。この表は計算例であり、各数値を達成する必要があるという意味ではありません。

例

160歩/分の人が168歩/分を試しても、呼吸が大きく乱れたり、走りにくくなったりするなら、変更幅を小さくして構いません。

走(かける)
走(かける)

180歩/分ですでに快適に走れている人が、さらに189へ上げる必要もありません。

自分のピッチを測る方法

ランニングウォッチで確認する

 ウォッチの「ケイデンス」「ピッチ」などの項目を確認します。

 ウォームアップ後、平坦な道で一定のペースを保った区間を見ましょう。歩行、信号待ち、坂道を含む全体平均だけでは、ジョグ中のリズムを判断しにくくなります。

 

走(かける)
走(かける)

機種によって表示方法が異なるため、左右合計の歩数か、片脚側の回数かも確認してください。

手動で数える

 ウォッチがなくても、片足の接地回数から計算できます。

  • 片足の接地を30秒間数えた場合:回数×4。
  • 片足の接地を60秒間数えた場合:回数×2。

例

右足が30秒間で42回接地したなら、左右合計のピッチは約168歩/分です。

 

走(かける)
走(かける)

道路の安全を優先し、数えることに集中しすぎない場所で行いましょう。測定は別の日にも繰り返すと、普段の値を把握しやすくなります。

ランニングのピッチを上げる5つの方法

1.メトロノームでリズムをつかむ

 メトロノームは、目標のテンポを知るための道具として使えます。

 現在160歩/分なら、まずは168BPM程度に設定し、1回の音に対して左右どちらかの足を1歩接地させます。

 最初から走り続ける必要はありません。30秒ほど合わせたら、通常のジョグへ戻しましょう。

 Willyらの研究では、普段より7.5%高いピッチを目指し、屋外で機器のフィードバックを用いた8回の練習を行うことで、走り方の変化が30日後にも維持されました。

 ただし、対象は着地の負荷が高いランナーであり、すべての人に同じ結果が出るとは限りません。

 

走(かける)
走(かける)

音に合わせる練習に慣れてきたら、音を止めた短い区間でも同じリズムを試します。周囲の音が聞こえる音量と環境で行ってください。

2.ペースを保ち、歩幅を少し小さくする

 ピッチを上げようとしてスピードまで上がると、単に速く走ったときのピッチを測ることになります。

 フォームの変化を確認する練習では、同じペースを保つことがポイントです。

 「脚を速く回す」よりも、次の感覚を試してみましょう。

  • 前へ大きく足を伸ばす動きを少し控える。
  • 歩幅をほんの少し小さくする。
  • 力まず、軽いリズムで足を運ぶ。

走(かける)
走(かける)

足を必ず身体の真下に置こうとしたり、接地直前に足を強く引き戻したりする必要はありません。

3.短い区間をジョグに混ぜる

 普段のジョグの中に、短い練習を挟みます。

取り入れ方の例

  1. 楽なジョグを5〜10分。
  2. 同じペースで、ピッチを少し上げて30秒。
  3. 普段のリズムで1〜2分ジョグ。
  4. 2〜3を4回程度繰り返す。

 

走(かける)
走(かける)

目的は追い込むことではなく、違うリズムを試すことです。

30秒でも忙しく感じるなら、もっと短くするか、変更幅を小さくしましょう。

4.意識することを一つに絞る

 腕振り、接地、前傾、膝の高さを同時に変えようとすると、走り方が分からなくなることがあります。

 練習中の合図は、「少し小さな歩幅で軽く」など一つに絞ります。

 

走(かける)
走(かける)

腕は自然に動かし、肩や手に力が入っていないかを確認しましょう。腕を速く振ることだけでピッチを上げようとする必要はありません。

5.数値と走った感覚をセットで記録する

 ピッチが上がっても、同じペースで以前より苦しくなっているなら、今の変更が合っているとは限りません。

 記録する項目は、次の4つで十分です。

項目確認すること
ペース比較する区間でおおむね同じか
ピッチどの程度変えたか
走りやすさ呼吸、力み、リズムの自然さ
脚の状態走行中・走行後・翌日に変化がないか

走(かける)
走(かける)

ピッチの変更で、努力感やエネルギー消費が増える場合も報告されています。

数値だけで改善と判断しないことが大切です。

初心者向け|4週間の取り入れ方の例

 次の表は、普段のジョグに短い練習を組み込むための例です。週ごとに必ず進める必要はありません。

期間取り組み方確認すること
1週目普段のピッチを測定。余裕があれば30秒×3〜4回試す同じペースでリズムを変えられるか
2週目30秒〜1分×4回。間は通常のジョグ1〜2分呼吸や脚の状態が悪化しないか
3週目快適なら1〜2分×3〜4回へ。音なしの区間も試す意識しすぎず走れるか
4週目快適なら3〜5分の区間で確認。合わなければ短時間へ戻す普段のリズムと比べて続けやすいか

 まずは週1〜2回のジョグの一部で試す程度にします。ピッチ練習のために走行距離まで増やす必要はありません。

 

走(かける)
走(かける)

翌日に違和感が残る場合は、進めずに練習量や変更幅を戻します。

ピッチを上げる練習でよくある失敗

最初から180歩/分に合わせる

 現在150歩/分なら、180は20%の増加です。少しの変更とはいえません。

 まず自分の値を測り、小さな変更から確かめましょう。

ピッチと一緒にペースも上げる

 息が上がる原因が、フォーム変更なのか速度上昇なのか分からなくなります。

 メトロノームの音だけでなく、走るペースも確認してください。

つま先接地へ同時に変える

 ピッチを上げるために、踵を地面につけない走り方へ変える必要はありません。

 複数の変更を同時に行うと、何が走りやすさや違和感に影響したのか判断しにくくなります。まずはリズムの変更に絞りましょう。

毎回のランをピッチ練習にする

 楽に走るはずのジョグでも、数字を追うと緊張や疲労が増えることがあります。

 通常のジョグへ戻す区間を設け、練習を入れない日もつくりましょう。

痛みを「慣れるまでの反応」と決めつける

 痛みが出る、痛みが増える、走り方が崩れる場合は、ピッチを上げる練習を中止します。

 痛みが続く、腫れがある、歩行にも影響する場合は、自己流のフォーム変更を繰り返さず、医療機関などへ相談してください。

よくある質問

ピッチが低いと、フォームが悪いのでしょうか?

数値だけでは判断できません。まずは走る速度などの条件をそろえて比較します。
低いという理由だけで変えるのではなく、足を前へ伸ばしすぎていないか、現在のリズムで快適に走れているかも確認しましょう。

ピッチを上げるとマラソンは速くなりますか?

必ず速くなるとはいえません。一定速度でピッチを増やす練習は、まず走り方の調整です。
研究でも、記録向上を断定できる証拠は十分ではありません。走力を高めるには、ジョグや目的に合った練習、回復なども合わせて考える必要があります。

流しや坂道走も必要ですか?

必須ではありません。速く走る練習と、同じペースでピッチを少し変える練習は、分けて考えると目的が明確になります。
まずは平坦な道の楽なジョグでリズムを試しましょう。

ピッチを変えるのに何週間かかりますか?

誰でも同じ期間で定着するわけではありません。
屋外での8回の練習によって変化が維持された研究はありますが、その結果から「全員が4週間で習得できる」とは判断できません。

すでに180歩/分以上でも、さらに上げるべきですか?

快適に走れているなら、数字を増やすことを目標にせず、練習の目的や走った感覚を優先しましょう。

まとめ|ピッチは「高いほどよい」ではなく、走りやすさで判断する

 ランニングのピッチを上げる方法としては、現在の値を測り、同じペースで少しだけ歩幅を小さくする練習が取り入れやすい方法です。

 最初は約5%の増加を、30秒〜1分の短い区間で試してみましょう。合わない場合は、変更幅や練習時間を小さくして構いません。

走(かける)
走(かける)

目標は180歩/分という数字ではなく、無理なく続けられるリズムです。呼吸、力み、脚の状態を確認しながら、自分に合う走り方を探していきましょう。

参考文献