マラソンの心拍数はどれくらいが目安?練習とレースに活かす見方を解説

マナブ
マナブ

「マラソン中の心拍数は、どれくらいならよいの?」
「ゆっくり走っているのに、心拍数が高くなる」
「後半に心拍数が上がったら、ペースを落とすべき?」

 ランニングウォッチで心拍数を確認できても、その数字をどう判断すればよいか迷うことがあります。

 マラソンの心拍数に、全員共通の正解はありません。 同じ150拍/分でも、最大心拍数や走力、体調によって負担は異なります。また、42.195kmを走る間は、心拍数とペースの関係も変化します。

 大切なのは、心拍数・ペース・体感の3つを合わせて見ることです。この記事では、フルマラソンを中心に、心拍数の目安の考え方と、練習・レースでの使い方を解説します。

マラソンの心拍数は「何拍」だけで判断しない

 心拍数は、1分間に心臓が拍動する回数です。ランニングでは、体にかかっている負担を知る手がかりになります。

 ただし、他のランナーと数字だけを比較しても、自分に適した強度はわかりません。

 例えば、心拍数150拍/分は、最大心拍数が180拍/分の人では約83%、200拍/分の人では75%です。同じ数字でも、最大心拍数に対する割合が違います。

 さらに、心拍数は走る速さだけで決まるわけではありません。暑さや長時間の運動、測定条件などの影響も受けます。

走(かける)
走(かける)

まずは「他人より高いか」よりも、「自分の普段の走りと比べてどうか」を確認しましょう。

最大心拍数の計算式は出発点になる

 最大心拍数の簡易的な推定式として、「220-年齢」が知られています。米国心臓協会(AHA)も紹介していますが、年齢別の数値は平均的な目安です。

例

40歳なら、推定最大心拍数は180拍/分です。ただし、実際の最大心拍数が必ず180になるわけではありません。

 推定値をもとにウォッチのゾーンを設定している場合、「ゾーンが高すぎる」という表示には、設定のずれが関係している可能性もあります。計算式の数字を、自分の絶対的な上限と考えないことが大切です。

走(かける)
走(かける)

最大心拍数を知るために、慣れていない人が一人で限界まで走る必要はありません。より詳しく強度を設定したい場合は、専門家の管理下での運動負荷試験などを検討しましょう。

最大心拍数に対する割合と、心拍予備能は別の計算

 心拍ゾーンの設定では、次の2つを混同しないようにしましょう。

設定方法計算方法
最大心拍数に対する割合最大心拍数×運動強度
心拍予備能を使う方法(最大心拍数-安静時心拍数)×運動強度+安静時心拍数

 最大心拍数180、安静時心拍数60の場合、70%という同じ表記でも、前者は126拍/分、後者は144拍/分です。

 ウォッチやトレーニング記事の「70%」「ゾーン2」を参考にするときは、どの方法で計算しているかも確認してください。

フルマラソン本番の心拍数に一律の目安はある?

 「フルマラソンは最大心拍数の○%で走ればよい」と、一律には決められません。完走までにかかる時間、トレーニング歴、当日の条件などで、持続できる強度が変わるためです。

 AHAが示す中強度50~70%、高強度70~85%という数値は、一般的な身体活動の目安です。フルマラソンの目標心拍数や、安全を保証する範囲を示したものではありません。

 また、男性市民ランナー10人を対象とした研究では、マラソン中の心拍数の割合と酸素摂取量の割合が、同じようには推移しませんでした。

 対象者が少ない研究ですが、長時間のレースで心拍数だけから運動強度を判断する難しさを示しています。

 本番の目安を考えるときは、次の情報を組み合わせましょう。

  • ロング走やマラソンペース走での心拍数
  • 同じペースで走ったときの呼吸ときつさ
  • 過去のレースで、後半まで維持できたペース
  • 当日の気温やコース条件

走(かける)
走(かける)

特に初マラソンでは、予定の心拍数に合わせようとしてペースを上げるより、前半に余裕を残す判断が重要です。

マラソン中に心拍数が高くなる主な理由

走り始めからペースが速い

 スタート直後は周囲の流れに乗り、予定より速く走ってしまうことがあります。

 このとき、ウォッチの数字だけを見て「まだ余裕がある」と判断しないようにしましょう。予定ペースを超えていないか、序盤から呼吸が苦しくないかも確認します。

走(かける)
走(かける)

前半で感じる余裕を、すぐにペースアップへ使わないことが、後半の走りにつながります。

長時間走ることで心拍数とペースの関係が変わる

 一定のペースで走っていても、時間の経過とともに心拍数が徐々に上がることがあります。こうした変化は「心拍ドリフト」と呼ばれます。

 暑さや体温調節、脱水などが関わることがありますが、ウォッチの数字だけで原因を特定することはできません。

 8万人以上のマラソンデータを分析した研究でも、レースが進むにつれて心拍数と走速度の関係が変化し、その程度や起こる時点には大きな個人差がありました。

 

走(かける)
走(かける)

そのため、後半に心拍数が上がったときは、「上がったから失敗」と決めつける必要はありません。一方で、「よくあることだから大丈夫」とも判断せず、呼吸や体調、ペースの変化を合わせて見ましょう。

手首の心拍計に誤差が出ている

 急に数値が跳ね上がったのに、呼吸やきつさがほとんど変わらない場合は、測定誤差の可能性もあります。

 手首の光学式心拍計は、装着状態や活動内容などによって不正確になる場合があります。また、走るピッチに近い数字を表示することもあり、Garminもこの現象を案内しています。

 まずはメーカーの案内に沿って、装着位置やフィット感を確認しましょう。心拍数を細かく管理したい場合は、対応する胸ストラップ式心拍計も選択肢です。

走(かける)
走(かける)

ただし、胸の痛みや強い息苦しさなどを伴うときは、誤測定だと決めつけて走り続けないでください。

練習で心拍数を活かす3つの方法

1.イージーランで頑張りすぎを防ぐ

 イージーランでは、速さを追うより、余裕のある強度を保つことを優先します。

 目安の一つになるのが、会話できる余裕です。CDCも、運動強度を判断する簡便な方法としてトークテストを紹介しています。

 まずは文章で会話できる程度の楽なペースで走り、そのときの心拍数を記録しましょう。複数回の記録から、自分が楽に走れる範囲をつかんでいきます。

 

走(かける)
走(かける)

「この数字まで上げなければ」と追い込む必要はありません。暑い日や体調がすぐれない日は、普段のペースにこだわらず調整してください。

2.ロング走で前半と後半を比べる

 ロング走では、平均心拍数だけでなく、時間による変化も振り返りましょう。

確認すること振り返りの視点
ペース前半から速く走りすぎていなかったか
心拍数どのあたりから変化したか
呼吸・きつさ心拍数の変化と体感が一致していたか
天候・コース暑さや坂の影響はなかったか
補給・給水予定どおりに実施できたか

 例えば「前半は余裕があったが、後半はペースを落としてもきつかった」という記録は、次回の設定を見直す材料になります。

 

走(かける)
走(かける)

心拍数の上昇だけで、持久力不足や脱水と断定しないことも大切です。

3.マラソンペース走で目標の妥当性を確かめる

 目標ペースで走ったときの心拍数と体感を確認しておくと、本番の判断に役立ちます。

 ただし、短い距離を目標ペースで走れたことが、そのまま42.195kmを維持できる証明になるわけではありません。

走(かける)
走(かける)

短時間で呼吸が大きく乱れる、想定より早くきつくなる場合は、目標ペースや練習内容を見直す材料にしましょう。余裕を持って走れた場合も、走行時間や天候が違えば、本番の負担は変わります。

レース当日は心拍数をどう使う?

序盤:予定ペースと呼吸の余裕を確認する

 序盤は、心拍数を狙った数字まで上げる必要はありません。

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

まず予定より速く走っていないかを確認し、呼吸に余裕を残しましょう。心拍数が普段の同程度の走りより高く、体感もきつい場合は、ペースを控える判断が役立ちます。

中盤:同じペースでの負担の変化を見る

 中盤では、「ペースは同じなのに呼吸が苦しくなっていないか」を確認します。

 心拍数も上がり、体感もきつくなっているなら、目標タイムだけにこだわらず、ペース調整や予定していた給水・補給を見直しましょう。給水で必ず心拍数が下がるわけではありません。

隼人(はやと)
隼人(はやと)

暑い日は、涼しい日の練習データをそのまま当てはめないことも大切です。

終盤:心拍数に加えて、脚と全身の状態を見る

 終盤は、心拍数が極端に高くなくても、脚の疲労などでペースを維持できないことがあります。

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

「心拍数に余裕があるから、まだ押せる」とは限りません。脚の動き、フォーム、呼吸、全身のきつさを合わせて、走り続けるか、ペースを落とすかを判断しましょう。

心拍数だけで走り続けてよいか判断しない

 心拍数が設定範囲内でも、安全が保証されるわけではありません。

 胸の痛み・圧迫感、普段と違う強い息苦しさ、失神しそうな感覚などがある場合は、走るのをやめ、周囲や大会スタッフに助けを求めてください。重い症状や続く症状では、救急要請が必要です。

 心臓の病気がある人や、心拍数に影響する薬を使用している人は、一般的な計算式をそのまま使わず、主治医と運動強度を相談しましょう。

マラソンの心拍数でよくある質問

心拍数170で走っていても大丈夫ですか?

170拍/分という数字だけでは判断できません。最大心拍数、年齢、運動歴、体調、測定の正確さなどによって意味が変わります。
普段から大きく外れる数値が繰り返される場合や、動悸・胸の違和感などがある場合は、医療機関に相談してください。

ゆっくり走っているのに心拍数が高いのはなぜですか?

自分にとっての運動強度が高い場合に加え、暑さや長時間の運動、測定誤差などが関係する可能性があります。
まず呼吸ときつさを確認し、必要なら歩きを入れて調整しましょう。続く場合は、装着状態や心拍ゾーンの設定も確認します。

サブ4を目指すなら、何拍で走ればよいですか?

サブ4という目標だけから、適切な心拍数は決められません。
同じ目標タイムでも、最大心拍数やトレーニング歴は異なります。目標ペースでの練習記録と、過去のレースで維持できた強度をもとに判断しましょう。

心拍数を低くすれば、後半の失速を防げますか?

心拍数を低く抑えるだけでは、失速を防げるとは限りません。ペース配分や脚の持久力、補給、天候への対応なども必要です。
心拍数は、前半の頑張りすぎや途中からの負担の変化に気づくための指標として使いましょう。

まとめ|マラソンの心拍数はペース・体感と合わせて見る

 マラソンで心拍数を活かすには、他人と比べるより、自分の練習記録と比べることが大切です。

 最大心拍数の計算式やウォッチのゾーンは参考になりますが、実際の負担をすべて説明できるわけではありません。特に長時間走るレースでは、心拍数とペースの関係が変わります。

 

走(かける)
走(かける)

まずは普段のイージーランで、**「この呼吸・このきつさで走ると、心拍数はどれくらいか」**を記録してみましょう。その積み重ねが、本番で自分に合ったペースを選ぶ助けになります。

参考文献・情報源