
「インターバル走と閾値走、どちらをやればよい?」
「フルマラソンにはロング走だけで十分?」
ランニングのポイント練習は種類が多く、何を優先すればよいか迷いがちです。
選ぶときに大切なのは、目標とするレース・今の課題・回復できる練習量の3つ。きつさだけで選ぶのではなく、「今回は何を練習するのか」を決めましょう。
この記事では、市民ランナー向けに、ポイント練習の種類、目的別の選び方、週間メニューへの組み込み方を解説します。
ポイント練習とは?「狙いを持って行う主要な練習」

ポイント練習は、一般に、トレーニング計画の中で重点を置く練習を指します。学術的に統一された運動強度の名称ではありません。
速いペースで走るインターバル走だけでなく、長く走るロング走や、レースペースの確認も含まれます。
呼吸が楽でも、時間が長ければ負担は大きくなります。 特に、自分にとって長い距離を走る日は、速く走っていなくても主要な負荷として扱いましょう。

ポイント練習は「追い込む日」ではなく、「目的を決めて取り組む日」と考えましょう。
ランニングのポイント練習|主な種類と違い

以下は、練習を整理するための実用的な分類です。同じ名前でも、速さ・継続時間・休息によって狙いと負担が変わります。
| 種類 | 主な狙い | 選ぶ場面 |
|---|---|---|
| 閾値走・テンポ走 | 比較的高い有酸素運動強度を持続する能力を磨く | 一定の速さを保つ練習をしたい |
| インターバル走 | 速い区間を休息を挟んで反復する。設定により有酸素能力などに刺激を入れる | 5〜10kmなどに向けて速い走りを練習したい |
| レースペース走 | 目標種目のペース感覚と、そのペースで走る持続力を養う | レースに向けて現実的な設定を確認したい |
| ロング走 | 長時間走ることへの適応、補給・装備の確認 | ハーフ・フルの後半に備えたい |
| 坂道走 | 上りでの動作や力発揮、起伏への対応を練習する | 起伏のある大会に備えたい |
| 流し・短い反復走 | 余裕のある速い動きに触れる | ジョグ中心の練習に短い刺激を加えたい |
England Athleticsの指導資料でも、インターバル、テンポ走、坂道走、流しなどが紹介されています。ただし、紹介されたメニューをすべて同じ週に入れる必要はありません。
ペース走は、一定のペースで走る方法です。マラソンペースで走る場合も、閾値付近で走る場合もあります。
一方、閾値走は、狙う運動強度に注目した呼び方です。本記事では、いわゆる第2乳酸・換気閾値付近を狙う練習を指します。測定法によって閾値の定義は異なります。
また、インターバル形式で閾値付近の運動を行うこともあります。練習名だけでなく、「どの強度で・何分・何本・どれくらい休むか」まで確認しましょう。
ポイント練習の選び方|最初に確認したい3つのこと

① 目標とするレースを決める
5kmとフルマラソンでは、レースで走り続ける時間もペースも違います。目標種目に合わせて、練習の重点を変えましょう。
| 目標 | 優先して検討する練習 | 考え方 |
|---|---|---|
| まず走る習慣をつけたい | 無理のないジョグ・歩行との組み合わせ | 速い練習を急いで加えない |
| 5kmの記録を伸ばしたい | インターバル走・閾値走 | 速い走りと持続力を組み合わせる |
| 10kmの記録を伸ばしたい | 閾値走・インターバル走・レースペース走 | 速さを維持する練習を重視する |
| ハーフマラソン | 閾値走・レースペース走・ロング走 | ペースの維持と走行時間への準備を進める |
| フルマラソン完走 | ジョグ・無理のないロング走 | 継続と長時間の行動、補給に慣れる |
| フルマラソンの記録更新 | ロング走・マラソンペース走・閾値走 | 持続力とレースに即した練習を組み合わせる |
これは優先順位を考えるための目安です。「フルにはインターバルが不要」「5kmにはロング走が不要」と一律に決まるわけではありません。
② 今の課題を、練習記録から整理する
| 困っていること | 最初に確認すること | 練習の候補 |
|---|---|---|
| 短い距離でも目標ペースがかなりきつい | 目標が現在の走力に合っているか | 目標の見直し、短めの反復走 |
| 速く走れるが一定時間保てない | 序盤の入り、設定ペース、継続時間 | 閾値走、分割したペース走 |
| ハーフ・フルの後半に失速する | 前半の速さ、補給、気象条件、普段の走行時間 | ロング走、適量のレースペース走 |
| 上りで大きくペースが落ちる | 平地と同じペースを求めていないか | 坂道走、起伏のあるコース走 |
| 疲労で予定の練習が続かない | 強度・距離・生活負担の合計 | ポイント練習の削減、休養 |

失速の原因を、すぐに「心肺が弱い」「脚が弱い」と決めつけないことが大切です。
例えばマラソン後半の失速は、走り込み不足だけでなく、前半のオーバーペースや補給不足でも起こります。結果だけでなく、その日の条件と経過を振り返りましょう。
③ 次の練習までに回復できるか確認する
練習回数が少なくても、毎回をポイント練習にする必要はありません。
導入時は、週1回の主なポイント練習から始め、ジョグの継続に支障がないか確認する方法が考えられます。これは実践上の導入案であり、研究で全員の最適回数と確定したものではありません。

週2回にする場合も、距離・速さ・頻度を同時に増やさず、一つずつ調整しましょう。自分にとって負担の大きいロング走も、1回として数えます。
目的別|ポイント練習の具体的なメニュー例

以下は、普段から痛みなくジョグを継続できている成人ランナー向けの調整例です。特定の研究で最適性や安全性が検証された処方ではありません。
速い練習の前には、軽いジョグや動きづくりで身体を慣らします。距離や本数より、同じ動きと余裕を保てることを優先してください。
一定の速さを保ちたい|閾値走・テンポ走
例:5分間×3本、間は2分程度のゆっくりしたジョグ。
「きついが、ペースを制御できる」程度から始めます。ただし、この感覚だけで正確な閾値を特定できるわけではありません。

最初から20〜30分続けるのが難しければ、分割することで負荷を調整できます。終盤に全力で粘らないと続かない場合は、速さや本数を下げましょう。
速い走りを反復したい|インターバル走
例:2分間×4本、間は2分程度のゆっくりしたジョグ。
速い区間は、現在の走力で4本を大きく失速せず反復できる強度にします。全力疾走は必要ありません。

同じ「2分×4本」でも、走る速さや休息で負荷が変わります。最後の1本だけ速くするより、最初から最後まで動きをそろえることを重視しましょう。
レースのペース感覚を確認したい|レースペース走
例:現実的なハーフマラソンペースで8分間×2本、間は3分程度のジョグ。
直近の記録や練習状況から、無理のない設定を選びます。希望するタイムから逆算したペースが、今の練習に適しているとは限りません。

特に5kmのレースペースとフルマラソンのレースペースでは負担が大きく違います。「レースペース」という名前だけで同じ距離・時間を当てはめないようにしましょう。
長く動き続けたい|ロング走
例:普段の最長が50分なら、体調と回復状況を確認しながら55〜60分を試す。
いきなり90分や30kmを目標にせず、自分が慣れている時間を基準にします。毎週必ず延長する必要もありません。

長く走る日は、速さまで同時に上げないことが基本です。長時間になる場合は、水分・補給・装備も含めて準備しましょう。
坂道に慣れたい|短い上りの反復
例:緩い上りを15秒×4本、歩いて戻り、呼吸と動きが整ってから次へ。
全力で駆け上がらず、姿勢とリズムを保てる範囲で行います。上りの距離や傾斜によって負担が変わるため、短いから軽いとは限りません。
ふくらはぎやアキレス腱に違和感がある日は、実施を見送りましょう。
ジョグに短い刺激を足したい|流し
例:ジョグ後に15秒×3本。間は歩くかゆっくり走り、十分に回復する。
徐々に加速し、肩や顔に力が入りすぎない速さで走ります。最高速度を競う練習にはしません。

短い流しは補助練習として使えますが、慣れていない速さで走れば負担になります。翌日の張りも見て、本数を調整しましょう。
ポイント練習は週何回?1週間への組み込み方

| 曜日 | 内容 |
|---|---|
| 火曜日 | 楽なジョグ |
| 金曜日 | 短めの閾値走、または軽い反復走 |
| 日曜日 | 楽なジョグ。金曜日の疲労が残る場合は短縮 |
日曜日を自分にとって長いロング走にする週は、金曜日の速い練習をジョグへ変更する方法があります。
| 曜日 | 内容 |
|---|---|
| 月曜日 | 休養 |
| 火曜日 | 閾値走、またはインターバル走 |
| 水曜日 | 楽なジョグ |
| 木曜日 | 楽なジョグ |
| 金曜日 | 休養 |
| 土曜日 | 楽なジョグ |
| 日曜日 | 無理のないロング走 |
レースペース走を入れる場合は、火曜日の練習と入れ替えるなどして調整します。

閾値走・インターバル走・ロング走を、すべて毎週そろえる必要はありません。 負担の大きい日の間には、休養や楽な日を置きます。何日空ければ十分かは、練習内容と回復状況によって変わります。
研究を確認|ポイント練習を増やすほど速くなる?

ポイント練習の選び方では、速い練習だけでなく、練習全体の強度配分も重要です。ここでは、人を対象とした介入研究をPICOで確認します。
Muñozら(2014)は、ランナー30人を対象に、10週間のトレーニングを比較しました。
| PICO | 内容 |
|---|---|
| P:対象 | レクリエーショナルランナー30人 |
| I:介入 | 低強度を多くし、高強度も組み合わせる配分 |
| C:比較 | 中間強度の割合を多くする配分 |
| O:結果 | 10kmタイムの変化 |
10kmタイムの改善率は、低強度を多くした群で約5.0%、比較群で約3.6%でした。ただし、群全体の比較では改善の差は統計学的に有意ではありませんでした。
この研究だけで「特定の配分が全員に最適」とは言えません。また、どのポイント練習を選ぶべきかを直接比較した研究でもありません。
Esteve-Lanaoら(2007)は、サブエリートの長距離ランナー12人を約5か月間追跡しました。
| PICO | 内容 |
|---|---|
| P:対象 | サブエリートの長距離ランナー12人 |
| I:介入 | 練習時間の約81%を低強度にする配分 |
| C:比較 | 低強度を約67%とし、中間強度を多くする配分 |
| O:結果 | 約10.4kmのクロスカントリー走の成績 |
高強度の割合は両群でほぼ同じでしたが、タイムの改善は低強度の多い群で有意に大きい結果でした。ただし、少人数の競技ランナーの結果であり、初心者やフルマラソンへそのまま当てはめることはできません。
実践への示唆は、ポイント練習を増やす前に、楽な練習と回復の余地を確保することです。
なお、研究の強度割合は「練習時間」で算出されることがあります。「週5回のうち1回がポイント練習だから高強度20%」とは限りません。

ポイント練習の効果は、その前後のジョグや休養も含めて考えましょう。
ポイント練習の選び方でよくある失敗

| 失敗 | 見直し方 |
|---|---|
| SNSで見た上級者のメニューをそのまま実施 | 自分の現在の走力と普段の練習量に合わせて縮小する |
| 目標タイムだけで設定ペースを決める | 直近の記録や余裕度から現実的に設定する |
| ジョグまで毎回速くする | 楽な日は会話できる余裕を確保する |
| 本数・距離・速さを同時に増やす | 一度に変える項目を絞る |
| ロング走を軽い練習として扱う | 自分にとっての走行時間と翌日の疲労で判断する |
| できなかった練習を翌日に詰め込む | 次の予定との間隔を見て、削減や中止を選ぶ |

練習後は、設定をこなせたかだけでなく、「翌日のジョグに無理がないか」「同じ内容を以前より余裕を持ってできたか」も記録しましょう。
練習を軽くする・中止する目安

普段より楽なジョグが明らかにきつい、睡眠不足が続いている、脚の重さや痛みが残る場合は、ジョグへの変更や休養を検討します。
走るほど強くなる痛みや、フォームを変えないと走れない痛みがある場合は中止し、改善しなければ医療機関などへ相談してください。England Athleticsも、練習量・速さ・頻度の急増を避け、休養を確保するよう案内しています。

胸痛、失神・失神しそうな感覚、普段と違う強い息苦しさがある場合は運動を中止し、速やかに医療的な評価を受けましょう。強い症状や続く症状では救急対応が必要です。
よくある質問

初心者でもポイント練習は必要ですか?
閾値走とインターバル走は、どちらがよいですか?
ポイント練習は毎回変えるべきですか?
フルマラソンには30km走が必須ですか?
心拍数だけで強度を管理できますか?
まとめ|ポイント練習は「目的」と「続けられる負荷」で選ぼう
ランニングのポイント練習は、目標レース、今の課題、回復できる量に合わせて選びます。
- 一定の速さを維持したい:閾値走・テンポ走
- 速い区間を反復したい:インターバル走
- レースのペースを確認したい:レースペース走
- 長時間走る準備をしたい:ロング走
- 起伏や速い動きに慣れたい:坂道走・流し

まずは主な狙いを一つ決め、余裕を持って実施できる量から始めましょう。ポイント練習の成功は、その日追い込めたことだけでなく、その後も練習を継続できることにあります。
参考文献・資料
- England Athletics. Runner frequently asked questions.
- Muñoz I, et al. Does polarized training improve performance in recreational runners? Int J Sports Physiol Perform. 2014;9(2):265–272.
- Esteve-Lanao J, et al. Impact of training intensity distribution on performance in endurance athletes. J Strength Cond Res. 2007;21(3):943–949.
風を切るランニング 
