
「仕事でストレスが溜まっていると、いつものペースでもきつく感じる」
「十分に練習しているのに、なぜかランニングの調子が上がらない」
「精神的なストレスも、ランニングのパフォーマンスに影響するの?」
ランニングのパフォーマンスを左右する要因として、筋肉の疲労や心肺機能、トレーニング量などが挙げられます。
しかし、見落としやすいのが仕事や人間関係、日常生活などによる精神的なストレスです。
実際に、精神的な疲労を与えた状態で持久運動を行うと、運動をきつく感じやすくなり、継続時間が短くなることを報告した研究があります。
一方で、精神的なストレスがあるからといって、必ずランニングパフォーマンスが低下するわけではありません。
この記事では、精神的なストレスがランニングに与える影響について、研究結果を交えながら以下の内容を解説します。
- ストレスによってランニングパフォーマンスが低下する仕組み
- 精神的疲労と持久力の関係を調べた研究
- ストレスと心拍数・HRV・睡眠の関係
- ストレスが溜まっているときのトレーニング調整方法
- ランニングでストレスを解消する際の注意点
ストレスが溜まるとランニングパフォーマンスは低下する?

結論からいうと、精神的なストレスや疲労は、ランニングパフォーマンスを低下させる要因の一つになる可能性があります。
ただし、精神的なストレスと身体的な疲労は、同じものではありません。
例えば、次のような状況を考えてみましょう。
普段は1km5分のペースで60分間のイージーランを行っているランナーがいるとします。
ある日は仕事も順調で、十分な睡眠が取れています。
一方、別の日は仕事で強いストレスを感じ、睡眠時間も短くなっています。
この2つの条件では、同じペースで走っていても、後者の方がきつく感じる可能性があります。

ここで重要なのは、筋肉や心肺機能そのものが急激に低下していなくても、運動をどれほどきつく感じるかが変化する可能性があることです。
精神的なストレスと精神的疲労の違い
ストレスと精神的疲労は関連していますが、厳密には異なる概念です。
| 項目 | 精神的ストレス | 精神的疲労 |
|---|---|---|
| 主な要因 | 仕事、人間関係、生活上の負担など | 長時間の集中、認知課題など |
| 主な特徴 | 心理的な緊張や負担 | 集中力の低下、疲労感 |
| 持続時間 | 短時間から長期間 | 一時的な場合もある |
| 運動への影響 | 睡眠や回復などを介する可能性 | RPEや持久力に影響する可能性 |
後ほど紹介する研究では、主に認知課題によって生じる精神的疲労が調べられています。
そのため、研究結果をそのまま仕事や人間関係による慢性的なストレスに当てはめることはできません。
ストレスがランニングに影響する5つの仕組み

精神的なストレスは、さまざまな経路でランニングに影響する可能性があります。
① 同じペースでもきつく感じやすくなる
特に注目したいのが、主観的運動強度(RPE)の変化です。
RPEとは、運動をどれくらいきつく感じるかを表す指標です。
例えば、Borgの6〜20スケールでは、数字が大きくなるほど運動をきつく感じていることを意味します。
精神的疲労に関する実験研究では、疲労している条件で持久運動中のRPEが高くなることが報告されています。
つまり、同じ運動負荷でも、
- 精神的に元気な日:比較的楽に感じる
- 精神的に疲れている日:普段よりきつく感じる
という違いが生じる可能性があります。
長距離走では、一定の強度を長時間維持する必要があります。
そのため、運動をきつく感じやすくなることは、ペースの維持や運動継続に影響する可能性があります。
ただし、すべての研究で一貫してパフォーマンス低下が確認されているわけではありません。
② 睡眠の質が低下して疲労が蓄積する
ストレスが強い状態では、睡眠に悪影響が生じることがあります。
例えば、仕事のことが気になって寝つけなかったり、夜中に何度も目が覚めたりするケースです。
睡眠不足が続くと、日中の眠気や集中力の低下、疲労感の増加などが起こりやすくなります。
ランニングにおいても、睡眠はトレーニング後の回復を支える重要な要素です。

特に長時間の持久運動や高強度トレーニングでは、睡眠不足がパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。
ただし、ストレスを感じている人が必ず睡眠不足になるわけではなく、睡眠への影響には個人差があります。
③ 自律神経の働きや心拍数が変化する
精神的なストレスは、自律神経活動にも影響します。
自律神経は、大きく交感神経と副交感神経に分けられ、心拍数や循環機能などの調節に関わっています。
心理的な負担が強いと、交感神経活動が高まり、心拍数が増加することがあります。
ただし、ストレスによる心拍数の変化は、状況や個人によって異なります。
また、ランニング中の心拍数には、次のような要因も影響します。
- 気温や湿度
- 脱水
- 睡眠不足
- カフェインの摂取
- トレーニングによる疲労
- 体調不良
そのため、いつもより心拍数が高いからといって、精神的なストレスが原因だと判断することはできません。
④ トレーニング後の回復に影響する
精神的なストレスは、トレーニング後の回復にも関係する可能性があります。
運動によって身体に負荷を与えると、一時的に疲労が生じます。
その後、十分な休養や栄養補給を行うことで、身体は回復し、トレーニングへの適応が進みます。
しかし、心理的なストレスが強い状態では、この回復過程に影響が生じる可能性が指摘されています。
研究では、心理的ストレスの強さと筋力回復の遅さに関連が認められた例があります。
ただし、筋力回復に関する研究結果から、ランニングの有酸素能力やトレーニング適応まで同じように低下すると断定することはできません。
⑤ 集中力やモチベーションが低下する
ストレスが溜まっていると、ランニングに対する意欲が低下することがあります。
例
普段は楽しみにしている練習でも、仕事で疲れている日は走り出すまでに時間がかかるかもしれません。
また、レース中にも心理的な負担が影響する可能性があります。
長距離走では、ペース配分や補給、周囲の状況などを考えながら走る必要があります。
精神的に疲れていると、こうした判断や集中が難しくなる場合があります。

ただし、適度な運動によって気分が改善することもあるため、ストレスを感じたときに必ずランニングを中止する必要はありません。
研究①|精神的疲労によって持久運動の継続時間が短くなった

Marcoraら(2009)
論文名:Mental fatigue impairs physical performance in humans.
掲載誌:Journal of Applied Physiology
この研究は、精神的疲労と持久運動パフォーマンスの関係を調べた代表的な研究です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| P(対象) | 健康な成人16名 |
| I(介入) | 90分間の認知課題による精神的疲労 |
| C(比較) | 90分間の対照条件 |
| O(結果) | 一定負荷での自転車運動継続時間、RPEなど |
参加者は、精神的疲労を生じさせる認知課題、または対照条件を90分間実施しました。
その後、自転車エルゴメーターを使用して、最大パワー出力の80%に相当する一定負荷で運動を継続しました。
この実験では、精神的に疲れている状態とそうでない状態で、どれくらい運動を続けられるかが比較されました。
・自転車運動の継続時間
・0分4分8分12分16分対照条件精神的疲労条件
・Marcoraら(2009)。原著の秒数を分に換算した平均値。
精神的疲労のある条件では、対照条件より運動継続時間が約15%短くなりました。
精神的疲労のある条件では、運動中のRPEが高いことが確認されました。
一方で、心拍数などの測定された生理学的反応には、条件間で明確な差が認められませんでした。

この結果は、精神的疲労によって運動がきつく感じられることが、持久運動の継続時間を短くする要因になり得ることを示唆しています。
この研究は、自転車を使用した実験です。
そのため、精神的疲労によってマラソンのタイムが15%遅くなると解釈してはいけません。
また、対象者は16名と少なく、長期間の心理的ストレスを調べた研究でもありません。
それでも、日常生活で強い精神的疲労を感じている日に、いつものペースがきつく感じられる現象を考えるうえで参考になります。
研究②|精神的疲労は持久力以外のパフォーマンスにも影響する?

Van Cutsemら(2017)
論文名:The Effects of Mental Fatigue on Physical Performance: A Systematic Review.
掲載誌:Sports Medicine
この研究は、精神的疲労と身体パフォーマンスに関する研究をまとめたシステマティックレビューです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| P(対象) | 既存研究に参加した成人など |
| I(介入) | 認知課題などによって生じる精神的疲労 |
| C(比較) | 精神的疲労の少ない対照条件 |
| O(結果) | 持久力、筋力、無酸素性パフォーマンスなど |
※システマティックレビューのため、対象者や課題の内容は研究ごとに異なります。
このレビューでは、精神的疲労が持久系パフォーマンスを低下させる可能性が示されました。
一方で、最大筋力や短時間の無酸素性パフォーマンスについては、持久系運動ほど一貫した悪影響が確認されていません。
つまり、精神的疲労による影響は、運動の種類によって異なる可能性があります。
ただし、その後の研究も含めると結果にはばらつきがあり、精神的疲労がすべての持久運動を必ず低下させるとまではいえません。
マラソンや長距離走は、比較的長い時間にわたって運動を継続する競技です。
そのため、精神的疲労によって運動をきつく感じやすくなることは、パフォーマンスを考えるうえで重要な要素になります。
一方、100m走のような短時間の運動では、精神的疲労がパフォーマンスに与える影響が異なる可能性があります。
研究③|心理的ストレスが強いと運動後の回復が遅くなる?

Stults-Kolehmainenら(2014)
論文名:Stress and exercise training: Individual differences in recovery from eccentric exercise.
この研究では、心理的ストレスの程度と、伸張性運動後の筋機能回復との関係が検討されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| P(対象) | 健康な成人 |
| I(評価) | 心理的ストレスが高い状態 |
| C(比較) | 心理的ストレスが低い状態 |
| O(結果) | 伸張性運動後の筋力回復など |
※これは心理的ストレスの程度と回復の関連を調べた研究であり、ストレスの強さを無作為に割り付けた介入試験ではありません。
心理的ストレスの高い参加者ほど、運動後の筋力回復が遅い傾向が報告されました。
この結果は、心理的な負担が運動後の回復状態と関連する可能性を示しています。
ただし、注意したいのは因果関係です。
心理的ストレスが高かったから回復が遅れたのか、それ以外の生活習慣や身体的要因が関係していたのかを、この研究だけで断定することはできません。
また、ランニングのパフォーマンスやVO₂maxの向上を直接調べた研究でもありません。
ランニングでは、トレーニングの負荷と回復のバランスが重要です。
特に、インターバル走やロング走などの負荷が大きい練習を行う場合には、走行距離やペースだけでなく、日常生活のストレスにも目を向けることが役立つかもしれません。
ストレスが溜まると心拍数やHRVはどう変化する?

最近では、ランニングウォッチを使用して心拍数やHRVを確認しているランナーも多いのではないでしょうか。
こうした指標は、身体の状態を把握する参考になります。
安静時心拍数
精神的なストレスによって交感神経活動が高まると、心拍数が上昇することがあります。
しかし、安静時心拍数が高くなる原因はストレスだけではありません。
例えば、脱水や感染症、睡眠不足などでも心拍数は変化します。

そのため、普段より安静時心拍数が高い場合でも、ほかの要因を含めて判断する必要があります。
HRV(心拍変動)
HRVとは、心拍と心拍の間隔の変動を表す指標です。
一般的に、HRVは自律神経による心臓の調節状態を反映する指標の一つとされています。
心理的ストレスが高い状態では、特定のHRV指標が低下することがあります。
ただし、HRVは呼吸、姿勢、測定時刻、睡眠、トレーニング負荷などにも影響されます。
また、HRVが高ければ必ず回復できている、低ければ必ず疲労しているという関係ではありません。

HRVは単独の数値よりも、同じ条件で測定した普段からの変化を確認することが重要です。
心拍数・HRV・RPEを組み合わせて考える
例えば、次のような状態が数日間続いているとします。
- 安静時心拍数が普段より高い
- HRVが普段より低い
- 睡眠時間が短い
- イージーランでもRPEが高い
- 練習に対する意欲が低下している
このような場合には、ストレスや回復不足などの影響が生じている可能性を考えるきっかけになります。
ただし、これらの組み合わせだけで原因を特定することはできません。

発熱や体調不良、栄養不足などの可能性にも注意が必要です。
ストレスが溜まっているときはランニングを休むべき?

ストレスが溜まっているときでも、必ずランニングを休む必要はありません。
適度なランニングによって気分が改善したり、ストレスを感じにくくなったりすることもあります。
重要なのは、その日の心身の状態に合わせて運動強度を調整することです。
ストレスは感じていても、睡眠が十分に取れており、身体の疲労も強くない場合は、通常のトレーニングを行えることがあります。

ただし、ウォームアップで普段よりきつく感じる場合には、予定を変更してもよいでしょう。
精神的な疲労が強い場合には、イージーランなどの軽い運動を選択する方法があります。
例えば、予定していた60分間のランニングを30分間に短縮したり、いつもよりペースを落としたりする方法です。
ペースではなく、RPEを目安にすることも選択肢になります。

ただし、RPEだけで安全性を判断せず、身体症状や体調も確認しましょう。
睡眠不足や疲労感が続いている場合には、高強度トレーニングを延期することも考えられます。
特に、インターバル走や長時間のロング走などは、身体的な負荷が大きい練習です。

練習計画を守ることよりも、十分な回復を優先した方がよい場合もあります。
ストレスの程度に応じたトレーニング調整例

以下は、研究から導かれた厳密な基準ではなく、日常のトレーニングに活用するための実践例です。
| 心身の状態 | トレーニング例 |
|---|---|
| ストレスは軽く体調も良好 | 通常の練習 |
| 精神的疲労を感じる | イージーラン、練習時間の短縮 |
| ストレスが強く睡眠も不足 | ポイント練習の延期、休養 |
| 疲労やパフォーマンス低下が長期間続く | 練習量の見直し、必要に応じて専門家に相談 |
同じストレスでも、ランニングへの影響には個人差があります。

普段の体調や過去の経験と比較しながら、無理のない練習を選択することが大切です。
ストレスを溜めないためにランナーが意識したい5つのこと

① 睡眠時間を確保する
ストレスが溜まっているときは、睡眠時間や睡眠の質に注意しましょう。
成人の睡眠時間は個人差がありますが、一般的には7〜9時間程度が一つの目安になります。
ただし、必要な睡眠時間には個人差があり、すべての人に同じ時間が適しているわけではありません。

仕事や生活環境によって十分な睡眠時間を確保できない場合には、トレーニング量を調整することも考えましょう。
② イージーランを活用する
精神的なストレスが強い日には、高強度トレーニングよりもイージーランを選択する方法があります。
イージーランは、会話ができる程度の比較的低い強度で走るトレーニングです。
運動強度を抑えることで、身体への負荷を調整しながらランニングを楽しむことができます。
ただし、低強度運動でも長時間続ければ身体への負荷は大きくなります。

精神的に疲れている日は、ペースだけでなく運動時間にも注意しましょう。
③ 仕事や生活の負担も練習計画に反映する
トレーニング計画を考える際には、走行距離や練習強度だけでなく、仕事や家庭などの負担も考慮するとよいでしょう。
例えば、残業が続く週には高強度トレーニングの回数を減らすなどの調整が考えられます。
反対に、仕事が落ち着いて十分な休養を確保できる時期には、通常の練習計画を進めやすくなるかもしれません。

重要なのは、日常生活を含めた全体の負担を考えることです。
④ 練習記録にストレスや気分も残す
ランニングの記録には、走行距離やペース、心拍数だけでなく、心理的な状態を記録する方法もあります。
例えば、ストレスの程度を次のように記録します。
| 評価 | ストレスの程度 |
|---|---|
| 1 | ほとんど感じない |
| 2 | 少し感じる |
| 3 | 中程度 |
| 4 | 強い |
| 5 | 非常に強い |
このような簡単な記録でも、ストレスの強い時期とランニングの調子を振り返るきっかけになります。
ただし、この5段階評価は簡易的な自己記録の例であり、医学的な診断に使用できるものではありません。
⑤ ランニング以外にもストレス対処法を用意する
ランニングには気分を改善する効果が期待できますが、ストレスを解消する方法をランニングだけに限定する必要はありません。
例えば、散歩や趣味、友人との会話、リラックスする時間なども選択肢になります。
ランニングが義務になってしまうと、かえって心理的な負担につながる場合もあります。

特に、練習を休むことに強い罪悪感がある場合には、運動との付き合い方を見直してみてもよいでしょう。
ストレスが溜まっているときによくある失敗

普段よりきつく感じる日でも、予定していたペースを守ろうとするランナーは少なくありません。
しかし、ランニングの調子には日々の変動があります。

心理的なストレスが影響している可能性もあるため、必要に応じてペースや距離を調整しましょう。
強度の高い運動によって気分が改善する人もいます。
しかし、ストレスが強いからといって、毎回インターバル走やペース走を行う必要はありません。

高強度トレーニングは身体的な負荷も大きいため、疲労が蓄積している場合には注意が必要です。
HRVが低いから必ず休む、高いから必ず高強度トレーニングを行うという判断は適切とは限りません。
HRVはさまざまな要因によって変動します。

睡眠や疲労感、安静時心拍数、ウォームアップ時の感覚なども含めて判断しましょう。
ランニングの調子が悪い原因は、心理的なストレスだけではありません。
栄養不足や貧血、脱水、感染症、トレーニング負荷の増加などもパフォーマンスに影響する可能性があります。

調子が悪い状態が長期間続く場合には、原因を一つに決めつけないことが重要です。
ストレスとランニングでよくある質問

ストレスが溜まるとランニングのタイムは遅くなる?
ただし、精神的ストレスによって5kmやハーフマラソン、フルマラソンのタイムが具体的に何%低下するかについては、十分に分かっていません。
ストレスの強さや持続期間、個人差によって影響は異なると考えられます。
ストレスが溜まると心拍数は高くなる?
ただし、運動中の心拍数は気温や脱水、疲労などの影響も受けます。
心拍数が高いことだけで、ストレスが原因だと判断することはできません。
ストレスが溜まっているときはランニングを休んだ方がよい?
体調が良好であれば、軽いランニングが気分転換になることもあります。
ただし、睡眠不足や強い疲労感が続いている場合には、運動強度を下げたり休養を優先したりすることも考えましょう。
ランニングをするとストレスは解消される?
ただし、ランニングだけですべてのストレスが解消するわけではありません。
精神的な不調が長期間続く場合には、運動だけで対処しようとせず、専門家への相談も検討しましょう。
精神的に疲れているときはインターバル走を避けるべき?
ただし、睡眠不足や強い疲労感を伴う場合には、練習の質が低下する可能性があります。
ウォームアップでの感覚や普段の回復状態を確認し、必要に応じて練習内容を変更しましょう。
ストレスによってVO₂maxは低下する?
精神的疲労により持久運動の継続時間が短くなったとしても、それだけで最大酸素摂取量が低下したとは判断できません。
また、ランニングウォッチが推定するVO₂maxの変動も、実際の最大酸素摂取量の変化を直接示すものではありません。
まとめ|ランニングの調子が悪いときは精神的なストレスにも目を向けよう
精神的なストレスや疲労は、ランニングパフォーマンスに影響する可能性があります。
特に、精神的疲労を与えた条件で持久運動の継続時間が短くなり、RPEが高くなった研究結果は注目に値します。
また、心理的なストレスは睡眠や回復状態にも関係する可能性があります。
今回のポイントをまとめると、以下の通りです。
- 精神的疲労によって持久運動のパフォーマンスが低下する場合がある
- 同じ運動強度でもRPEが高くなる可能性がある
- ストレスは睡眠や自律神経活動に影響することがある
- 心理的ストレスと運動後の回復の遅さに関連が認められた研究がある
- ストレスを感じていても、必ずランニングを休む必要はない
- ペースや距離だけでなく、心身の回復状態に合わせたトレーニングが重要
ランニングの調子が悪いと、練習不足や体力の低下を疑ってしまうことがあります。
しかし、身体的な疲労だけでなく、仕事や人間関係などによる心理的なストレスが影響している可能性もあります。

ランニングパフォーマンスを高めるためには、トレーニングで身体に負荷を与えるだけでなく、日常生活を含めた心身の回復にも目を向けることが大切です。
参考文献
- Marcora SM, Staiano W, Manning V. Mental fatigue impairs physical performance in humans. Journal of Applied Physiology. 2009;106(3):857–864.
- Van Cutsem J, Marcora S, De Pauw K, et al. The Effects of Mental Fatigue on Physical Performance: A Systematic Review. Sports Medicine. 2017;47:1569–1588.
- Stults-Kolehmainen MA, Bartholomew JB, Sinha R. Stress and exercise training: Individual differences in recovery from eccentric exercise. Journal of Strength and Conditioning Research. 2014;28(4):1162–1171.
※研究結果の解釈では、実験的に誘発された精神的疲労と、日常生活における慢性的な心理的ストレスを区別する必要があります。また、実験室での運動継続時間と実際のマラソン記録は同じ指標ではありません。
風を切るランニング 
