ランニングウォッチで表示されるHRVーーーこれは何を示しているかご存じでしょうか?
HRVはトレーニング負荷と回復のバランスを調整するための非常に重要な指標の1つであり、トレーニングを考えていく上で欠かせないものです。
HRVを一つの指標にトレーニングを組んでいくことでより戦略的にトレーニングを積むことが出来るようになります。
本記事では「HRVとはなんなのか?」ということから「HRVの見方」までイラスト付きで解説していきます。ぜひ、参考にしてみて下さい。
HRVとは?

HRV(Heart Rate Variability:心拍変動):心拍と心拍の間隔がどれくらい変動しているかを示す指標
実は!!—心臓は「毎分60回」など一定のリズムで打っているように見えますが、実際には心拍の間隔は微妙に毎回異なります。これは、不整脈というほど毎回ずれているわけではありませんが、人間の触知では分からないくらいの微妙な変化があるということです。
【例】
心拍数60回/分 → 平均1秒ごとに拍動
実際の間隔
0.95秒
1.03秒
0.98秒
1.05秒
HRVはトレーニング負荷と回復のバランスの指標

HRVは主に「交感神経(活動・緊張モード)」・「副交感神経(休息・回復モード)」のバランスを反映しています。
副交感神経が優位なほど、心拍間隔の変動が大きくなり、HRVは高くなる傾向があります。反対に交感神経が優位なほど心拍間隔の変動が小さくなり心身共に緊張状態であることを示しています。
トレーニングは負荷と回復のバランスが大切です。
負荷が強く休息が不十分だと心身共に緊張状態が続き、いずれ故障してしまうリスクがあります。反対に負荷が足りず休息が多いとパフォーマンスはいずれ落ちてしまいます。

HRVはそんなトレーニングの負荷と負荷に対する休息のバランスがつりあっているのかをみる指標になります。
HRVが高い時・低い時

1.自律神経のバランスが良い
2.ストレスへの適応力が高い
3.回復状態が良い
4.睡眠の質が良い傾向

特にスポーツ選手は、トレーニングの負荷管理にHRVを活用しています。
1.疲労の蓄積
2.睡眠不足
3.精神的ストレス
4.病気や体調不良
5.過度なトレーニング

HRVが普段よりも著しく低い時は休息のサインです。
HRVの測定方法
HRVはスマートウォッチ・スポーツウォッチを装着することで測定できます。
例
Apple Watch
Garmin
Fitbit
Oura Ring
多くの場合、睡眠中や安静時のデータからHRVを算出しています。
HRVの計算は様々あるようですが、最もよく使われるのは RMSSD という指標です。この値が大きいほど、一般的には副交感神経活動が高く、回復状態が良いと解釈されます。
ここまでくると専門性が高過ぎるとため、そうなんだーくらいで大丈夫です。
HRVの見方・活かし方

HRVは全身のストレス・回復状態の指標
HRVが主に示すのは、自律神経系を介した全身のストレス・回復状態です。
HRVは心身の疲労と回復のバランスをみていますが、疲労にも種類があり、全ての疲労をみているわけではありません。
【疲労の種類 HRVとの関係】
1.自律神経系の疲労は比較的反映しやすい
2.中枢神経・神経筋疲労を間接的に反映(直接測定ではない)
3.エネルギー不足・グリコーゲン枯渇は間接的に影響する可能性
4.筋・腱などの組織損傷は基本的に直接は示さない
5.炎症・体調不良は自律神経反応を通じて影響し得る
HRVは全身のストレス・回復状態の指標
HRVが主に示すのは、自律神経系を介した全身のストレス・回復状態です。
HRVは心身の疲労と回復のバランスをみていますが、疲労にも種類があり、全ての疲労をみているわけではありません。
【疲労の種類 HRVとの関係】
1.自律神経系の疲労は比較的反映しやすい
2.中枢神経・神経筋疲労を間接的に反映(直接測定ではない)
3.エネルギー不足・グリコーゲン枯渇は間接的に影響する可能性
4.筋・腱などの組織損傷は基本的に直接は示さない
5.炎症・体調不良は自律神経反応を通じて影響し得る
①最も近いのは「自律神経系の疲労」
HRV、特にRMSSDは主に副交感神経による心拍調節を反映します。
高強度トレーニング、睡眠不足、心理的ストレス、発熱などで身体のストレスが増えると、交感神経優位・副交感神経活動低下の結果、 HRVが低下という変化が起こることがあります。
ただし「神経系の疲労」といっても、HRVが主に捉えるのは心臓の自律神経調節です。筋力発揮に関係する中枢神経疲労や末梢神経疲労を直接測っているわけではありません。
HRVは心臓の拍動間隔に現れる自律神経活動の指標です
②エネルギー不足は間接的に影響する
HRVは”筋グリコーゲンが少ないこと”によるエネルギー不足自体を直接測定することはできません。
ただし、「摂取エネルギー不足」・「糖質不足」・「脱水」などにより身体にストレスを与えれば、自律神経や内分泌反応を介してHRVが変化する可能性があります。
つまり、「HRV低下=グリコーゲン不足」ではありませんが、エネルギー不足による全身ストレスがHRVに現れることはあり得ます。
③組織損傷はほとんど直接示さない
疲労は全身状態・エネルギー不足だけでなく、ランニングによって生じた組織損傷も疲労も1つです。
しかし!!筋肉痛・腱の微細損傷・関節への負荷などは、HRVだけでは評価できません。
強い筋損傷や炎症が起きた結果、身体全体のストレス反応が大きくなればHRVに影響することはあります。
しかし、「HRVは正常なのに筋肉痛が強い」・「HRVは低いのに筋肉痛はない」ということは普通に起こります。
組織疲労を見るには、局所の痛み、圧痛、腫脹、可動域、筋力、跳躍能力、走行時の違和感などを別に確認する必要があります。

経験上、特にイージーランの走行距離を伸ばした・スプリント走を取り入れた時にHRVは正常なのに身体が重くペースが上がらないということはよくあります。
まとめ
整理するとーーーHRVは疲労の中でも主に、身体が全体としてストレス状態にあるか、回復側にあるかを示す指標。
一方で、以下は直接分かりません。
1.筋グリコーゲンが何%残っているか
2.筋肉や腱がどれだけ損傷しているか
3.中枢神経がどれだけ疲れているか
4.どの部位が疲労しているか
したがって、HRVは「疲労の原因を特定する検査」ではなく、自律神経を通して全身の回復状態を見るセンサーと捉えるのが適切です。
実践では、HRVに加えて、「安静時心拍数」・「睡眠」・「主観的疲労」・「筋肉痛」・「食事量」・「走行ペースと心拍数」を組み合わせると、疲労の種類を判断しやすくなります。
HRVのベースラインは持久系パフォーマンスの指標になる?
HRVのベースラインは持久系パフォーマンスの指標になるという意見も一部あります。
たしかに、HRVのベースラインが高いということは心身共に副交感神経も優位に活動しているということであり、全身の回復状態としては良い傾向にあるということ。
しかし、先ほどお伝えした通りHRVは全身の回復状態を示す指標にはなりますが、中枢神経の疲労や部分的な筋損傷は直接反映するわけではないためHRVのベースラインが向上傾向=パフォーマンス向上というわけではありません。
HRVの数値には個人差がある
HRVは個人差が大きいため、他人との比較よりも自分の普段の値との比較が重要です。これは普段の生活リズムや、生活の中で受けているストレスの具合等、HRVに与える影響は少なくないためです。
そのため、他人と比較して自分のHRVが高い・低いの判断をすることはできません。これまでの自分と相対的に比較して数値がどうなのか、で評価することがポイントです。
閾値走を増やしたらHRVのベースラインが徐々に向上した話

閾値走とHRVが関係しているとは言い切れませんが、全く無関係とも言えないと言われています。
閾値走を継続すると、持久力や心拍調節への適応が進み、安静時の副交感神経活動が高まることが期待できます。
その結果、数週間〜数か月単位でHRVの基準値が上昇することがあります。特に、「同じペースで心拍数が下がる」・「閾値ペースが上がる」・「安静時心拍数が下がる」といった変化も同時に起きているなら、トレーニング適応の可能性は高まります。
実際にこの時は閾値走30分を同じペースで走っていても、回数を重ねるごとに閾値走中の心拍数が下がっている傾向がありました。(1回目:170bpm➝2回目:169bpm➝3回目168bpm)
一方で、閾値走は負荷が強いため、当日〜翌日にHRVが一時的に低下することも一般的。その後しっかり回復して、長期平均が上がっているなら、次のような流れは十分考えられます。
閾値走の刺激
↓
一時的な疲労
↓
回復・適応
↓
安静時HRVの上昇
ただし、HRVはトレーニングだけでなく様々な影響を受けます。
【HRVに影響を与える要因:例】
睡眠時間や睡眠の質
飲酒
精神的ストレス
気温や季節
測定時刻・姿勢
スマートウォッチの測定条件
総走行距離やイージーラン量
そのため、適応しているのか判断するときはHRV単独ではなく、「7〜14日平均」・「安静時心拍数」・「睡眠」・「主観的疲労」・「閾値走のペースと心拍数」を一緒に見るのがよいです。
つまり、閾値走を取り入れてからHRVのベースラインが徐々に上昇し、走力も上がり、疲労感や安静時心拍数が悪化していないなら、良い適応を反映している可能性があると言えます。逆に、HRVだけが高く、走れない・眠れない場合は、「高いほど良い」とは限りません。
まとめ
本記事ではランニングウォッチで表示されるHRVについて解説してきました。
HRVは交感神経と副交感神経のバランスを示しており、トレーニング負荷と回復のバランスを調整するために役立ちます。ただし、あくまでも主に捉えるのは心臓の自律神経調節です。
「中枢神経疲労や末梢神経疲労」・「エネルギー不足」・「筋損傷」などによる疲労を直接測っているわけではないため、要注意です。HRVだけを指標とするのではなく、安静時心拍数や筋肉痛・主観的疲労などと組み合わせてトレーニング負荷と回復のバランスを調整しましょう。

今日が一番若い日です。今日がパフォーマンスを最大限向上させることが出来る日です。
HRVをトレーニングと回復のバランスの1つの指標として、よりよいトレーニングメニューを組んでパフォーマンスを上げていきましょう!
風を切るランニング 