ランニングの服装で速さは変わる?ウェアの種類・気温・着圧がパフォーマンスに与える影響

マナブ
マナブ

「ランニングでは、どんな服装を選ぶと速く走れるの?」

「半袖とタンクトップではパフォーマンスに差がある?」

「コンプレッションウェアを着用すると、疲れにくくなる?」

 ランニングの服装を選ぶとき、デザインや着心地を重視する人は多いと思います。しかし、ウェアの種類によってランニングパフォーマンスが変わるのか、気になったことはないでしょうか。

 実際に、ランニングウェアの着圧や衣服による体温調節が、運動能力や疲労に与える影響を調べた研究があります。

 この記事では、研究結果をもとに、ランニングウェアの違いが走行タイム、ランニングエコノミー、体温、疲労にどのような影響を与えるのかを解説します。

目次

ランニングの服装によってパフォーマンスは変わる?

 結論からいうと、服装によって身体への負担が変わる可能性はありますが、どのウェアでも明確に走行タイムが改善するわけではありません。

 ランニングウェアがパフォーマンスに関係する主な要素は、次の5つです。

要素パフォーマンスとの関係
通気性・熱放散深部体温の上昇や暑さによる負担に関係
保温性寒冷環境での体温維持に関係
着圧筋肉の振動、疲労感、回復などに関係
重量身体に加わる負荷に関係する可能性
フィット感動きやすさ、摩擦、空気抵抗などに関係

 ただし、これらの要素が変化したとしても、必ずしもランニングタイムが改善するとは限りません。

 例えば、コンプレッションウェアによって運動後の筋肉痛が軽減されても、レースのタイムが速くなるとは限らないということです。

 また、気温が高い環境と低い環境では、適切な服装が異なります。

隼人(はやと)
隼人(はやと)

そのため、ランニングの服装は「最も高性能なウェア」を選ぶのではなく、運動する環境や目的に適したものを選ぶことが重要です。

研究①|コンプレッションウェアを着ると速く走れる?

 ランニングウェアに関する研究で、特に多く検討されているのがコンプレッションウェアです。

 コンプレッションウェアとは、身体に一定の圧力を加えるように設計された衣服のことです。

 代表的なものには、コンプレッションタイツ、着圧ソックス、カーフスリーブなどがあります。

Engelら(2016年)の研究

 論文名: Is There Evidence that Runners can Benefit from Wearing Compression Clothing?

 掲載誌: Sports Medicine

 この研究は、ランナーにおけるコンプレッションウェアの効果を調べたシステマティックレビューです。

PICO内容
P(対象)ランナーを対象とした研究
I(介入)コンプレッションウェアの着用
C(比較)通常のウェア、非着用など
O(結果)走行パフォーマンス、ランニングエコノミー、疲労、回復など

研究結果

 コンプレッションウェアの着用によって、ランニングタイムなどのパフォーマンスが一貫して改善するという明確な証拠は得られていません。

 一方で、筋肉痛、疲労感、運動後の回復などに対しては、好ましい効果が示された研究もあります。

 ここで重要なのは、パフォーマンスへの効果と回復への効果を分けて考えることです。 

 例えば、運動後の疲労感が軽くなったとしても、そのウェアを着用することで5kmや10kmの走行タイムが改善するとは限りません。

 また、ウェアの着圧、着用部位、対象者、運動強度などによっても結果が変わる可能性があります。

ランナーへの活かし方

 コンプレッションウェアは、着用するだけで速く走れるアイテムとして考えるよりも、着心地やサポート感、回復面などを含めて選ぶことが適切です。

 着圧が強ければ強いほど効果が高くなるという十分な根拠もありません。

研究②|コンプレッションウェアは疲労や回復に効果がある?

 続いて、コンプレッションウェアのパフォーマンスと回復への影響をまとめた研究を紹介します。

Bornら(2013年)の研究

 論文名: Bringing Light Into the Dark: Effects of Compression Clothing on Performance and Recovery.

 掲載誌: International Journal of Sports Physiology and Performance, 8(1), 4–18.

 この研究は、複数の研究を統合したメタ解析です。

PICO内容
P(対象)運動を行う成人など、各研究の参加者
I(介入)コンプレッションウェアの着用
C(比較)通常のウェア、非着用など
O(結果)運動パフォーマンス、筋肉痛、疲労、回復指標など

研究結果

 コンプレッションウェアによるパフォーマンス改善は、運動の種類や評価項目によって異なりました。

 一方、回復に関係する一部の指標では好ましい効果が認められています。

 ただし、この研究はランニングだけを対象にしたものではありません。

 そのため、研究全体の結果をそのままフルマラソンやハーフマラソンのパフォーマンスに当てはめることはできません。

ランナーへの活かし方

 コンプレッションウェアを着用する目的は、次の2つに分けて考えるとよいでしょう。

  • レース中のパフォーマンス向上を狙う
  • 練習後の疲労感や回復への効果を期待する

 現時点では、前者について一貫した有効性が確立されているとはいえません。

 後者については一定の可能性がありますが、効果の大きさには個人差や研究条件による違いがあります。

研究③|着圧ソックスはランニング中の身体に影響する?

Aliら(2007年)の研究

論文名: Graduated Compression Stockings: Physiological and Perceptual Responses During and After Exercise.

掲載誌: Journal of Sports Sciences.

この研究では、段階的に圧力が変化する着圧ソックスが運動中や運動後の反応に与える影響を検討しています。

PICO内容
P(対象)運動を行う参加者
I(介入)段階的着圧ソックスの着用
C(比較)着圧ソックス非着用
O(結果)生理的反応、主観的な負担、筋肉痛など

研究結果

 この研究では、着圧ソックスの着用によって、生理的反応や主観的な負担がどのように変化するかが調べられました。

 しかし、着圧ソックスを履くだけでランニング能力が明確に向上するとは結論づけられていません。

 なお、この研究は走行タイムの優劣だけを検証したものではなく、身体の反応や運動後の状態を含めた研究です。

ランナーへの活かし方

 着圧ソックスを選ぶときは、パフォーマンス向上だけを期待するのではなく、装着感や圧迫による不快感がないかも確認しましょう。

 足のしびれ、痛み、強い圧迫感が出る場合は、着用を続けないことが大切です。

半袖・タンクトップ・長袖でランニングパフォーマンスは変わる?

 ランナーにとって身近な疑問が、袖の長さによって走行タイムに差が出るのかということです。

 一般的に、タンクトップは腕や肩の露出が多く、半袖や長袖とは皮膚の露出面積や衣服に覆われる範囲が異なります。

 衣服に覆われる面積が変わることで、対流、放射、汗の蒸発などによる熱交換が変化する可能性があります。

 ただし、タンクトップ・半袖・長袖の3種類を直接比較して、どれが最も速く走れるかを結論づける十分な研究結果は、今回紹介した文献からは得られません。

 また、単純に肌の露出が多ければよいわけでもありません。

 強い日差しの下では、衣服が日射を遮る役割を果たす場合もあるためです。

服装主な特徴注意点
タンクトップ腕や肩の露出が多い日射、日焼け、肌との摩擦
半袖露出と保護のバランスを取りやすい素材やフィット感によって快適性が異なる
長袖皮膚を覆い、日射や寒さから保護できる気温や素材によっては熱がこもる

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

そのため、袖の長さだけではなく、素材、衣服の厚さ、フィット感、気温、湿度、日射条件などを合わせて考える必要があります。

暑い日のランニングでは服装が重要になる?

 暑熱環境では、衣服の選び方が特に重要になります。

 ランニング中は、筋肉がエネルギーを消費する過程で熱が生じます。

 身体は、皮膚の血流を増やしたり、汗を蒸発させたりすることで、体内に蓄積した熱を外へ逃がそうとします。

 しかし、衣服が汗の蒸発や熱放散を妨げると、身体の熱負担が大きくなる可能性があります。

Gavin(2003年)の研究

論文名: Clothing and Thermoregulation During Exercise.

掲載誌: Sports Medicine, 33(13), 941–947.

 この論文では、運動時の衣服と体温調節の関係が整理されています。

 衣服の素材や構造、通気性、断熱性などは、身体と外部環境との熱交換に影響します。

 ただし、この論文はレビューであり、特定のランニングウェアによるタイム短縮効果を直接示した実験ではありません。

暑い日に意識したいポイント

 暑い環境では、以下の特徴を持つウェアが選択肢になります。

  • 熱がこもりにくい構造
  • 汗が蒸発しやすい素材
  • 過度に厚くない生地
  • 動作を妨げないフィット感
  • 日射条件に応じた皮膚の保護

 ただし、「吸汗速乾」と表示されたウェアでも、実際の冷却効果は気温や湿度、風などによって異なります。

 特に湿度が高い環境では汗が蒸発しにくくなるため、ウェアだけで暑さによる負担を解決できるわけではありません。

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

暑い日のランニングでは、服装に加えてペース調整、水分補給、日陰の利用なども重要になります。

黒いウェアと白いウェアでは速さが変わる?

 夏のランニングでは、ウェアの色を気にする人も多いのではないでしょうか。

 黒い衣服は、一般的に日射を吸収しやすい一方、白い衣服は日射を反射しやすいという特徴があります。

 ただし、衣服の色による温度変化と、ランニングパフォーマンスは同じものではありません。

 実際に身体が受ける熱負担は、衣服の色だけでなく、素材、厚さ、衣服と皮膚の間の空気層、風、日射などにも左右されます。

 また、衣服表面の温度が高いからといって、そのまま深部体温が高くなるとも限りません。

 黒と白のランニングウェアを比較して、走行タイムがどの程度変わるのかについては、今回取り上げた研究から明確な結論は出せません。

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

夏のレースでは色も検討材料になりますが、それだけで優劣を判断するのは避けましょう。

ピッタリしたウェアとゆったりしたウェアはどちらがよい?

 ランニングウェアのフィット感も、パフォーマンスに関係する可能性があります。

 身体に密着するウェアとゆったりしたウェアでは、衣服の動きや空気抵抗、熱の逃がしやすさなどが異なります。

空気抵抗への影響

 ランナーは前方から空気抵抗を受けながら走ります。

 速度が高くなるほど空気抵抗による影響は大きくなるため、ウェアの形状が空気の流れに関係する可能性があります。

 ただし、密着したウェアを着用することで市民ランナーの走行タイムがどの程度改善するのかについては、今回紹介した文献だけでは判断できません。

隼人(はやと)
隼人(はやと)

また、身体に密着すれば必ず空気抵抗が小さくなるわけではなく、生地表面の性質や姿勢なども関係します。

動きやすさへの影響

 ゆったりしたウェアは、締め付けによる不快感が少ない場合があります。

 一方、衣服が大きく揺れたり、身体に擦れたりする可能性もあります。

 密着したウェアは衣服の動きを抑えやすい反面、サイズが合わないと動作を妨げる場合があります。

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

そのため、レースで着用するウェアは、実際に走って着心地を確認しておくことが大切です。

軽いランニングウェアほど速く走れる?

 ランニングシューズでは重量とランニングエコノミーの関係が研究されていますが、ウェアについても重量が身体への負荷に関係する可能性があります。

 ただし、シューズの重量に関する研究結果を、そのまま衣服の重量に当てはめることはできません。

 シューズは脚の末端に装着され、走行中に繰り返し加速・減速するため、身体の中心部に近い衣服とは条件が異なるからです。

 また、ウェアの重量差は製品によって異なり、素材の軽さだけでなく、汗や雨を吸ったときの重量変化も考慮する必要があります。

 軽量ウェアを選ぶこと自体は合理的な選択肢ですが、数十g軽いウェアにすることでマラソンタイムが何秒改善するかについては、十分な根拠を示せません。

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

重量だけでなく、通気性や快適性、耐久性なども含めて選びましょう。

冬のランニングでは、暖かい服装の方がパフォーマンスは高くなる?

 冬は、夏とは異なる視点で服装を考える必要があります。

 寒い環境では、身体から熱が奪われやすくなります。

 特に風が強い日や雨で衣服が濡れている状況では、熱の損失が大きくなる可能性があります。

 一方で、ランニングを開始すると筋肉による熱産生が増えるため、厚着をしすぎると暑く感じることもあります。

冬の服装で意識したいこと

 重要なのは、走り始める前の寒さだけで服装を決めないことです。

 ランニングの強度や時間によって、必要な保温性は変わります。

 例えば、同じ気温でも、ゆっくりしたジョギングと高強度のテンポ走では、運動中の熱産生が異なります。

 また、長時間のランニングでは、途中でペースを落としたときや、運動後に身体が冷えることも考えておく必要があります。

隼人(はやと)
隼人(はやと)

冬は、気温、風、降水、走行時間などに応じて、重ね着で調節する方法が有効です。

レースと普段の練習では服装を変えた方がよい?

 レースと普段の練習では、服装に求める条件が異なる場合があります。

 普段の練習では、快適性や天候への対応、長時間の使用などを重視することが多いでしょう。

 一方、レースでは、動きやすさ、熱放散、摩擦の少なさなどが重要になります。

 

隼人(はやと)
隼人(はやと)

ただし、レース当日に初めて着用するウェアは、想定外の擦れや締め付けなどが発生する可能性があります。

目的別|ランニングウェアの選び方

場面重視したいポイント
夏のジョギング熱放散、通気性、日射対策
夏のレース暑さへの対応、摩擦の少なさ
冬のジョギング保温性、風への対応、温度調節
冬のレース走行中の熱産生を考えた服装
ロング走長時間の快適性、擦れの予防
高強度トレーニング動きやすさ、熱の逃がしやすさ
雨天のランニング濡れたときの冷え、衣服の重量変化

隼人(はやと)
隼人(はやと)

重要なのは、練習とレースで必ず服装を変えることではありません。

自分が走る環境に適したウェアを選び、実際の練習で問題がないかを確認することです。

ランニングウェア選びでよくある失敗

① 高価なウェアほど速く走れると思う

価格が高いウェアには、素材や設計に工夫が施されている場合があります。

しかし、価格と走行タイムの改善が比例するわけではありません。

② コンプレッションウェアは着圧が強いほどよいと思う

強い着圧が必ずしも運動能力の改善につながるとは限りません。

過度な圧迫による不快感などにも注意が必要です。

③ 暑い日は肌の露出を増やせばよいと思う

肌の露出が増えると熱放散に有利になる条件もありますが、強い日射を受けやすくなる側面もあります。

気温だけでなく、日射や風なども考慮しましょう。

④ 冬は厚着をすればよいと思う

走り始めは寒くても、運動による熱産生によって身体は温まります。

厚着をしすぎると運動中に暑くなり、快適性が低下する可能性があります。

⑤ レース当日に新しいウェアを着る

サイズ感や摩擦などの問題は、実際に走るまで分からないことがあります。

特にハーフマラソンやフルマラソンでは、事前にロング走などで着用感を確認しておくと安心です。

ランニングの服装とパフォーマンスでよくある質問

タンクトップと半袖では、どちらが速く走れますか?

現時点で紹介した研究から、どちらが速いと断言することはできません。
暑さへの対応や着心地が異なるため、気象条件や個人の好みを考慮して選ぶのがよいでしょう。

コンプレッションタイツを履くとランニングエコノミーが改善しますか?

研究によって結果が異なり、一貫した改善が確認されているわけではありません。
運動後の疲労や回復への効果と、ランニングエコノミーへの効果は分けて考える必要があります。

夏は白いウェアの方がよいですか?

白い衣服は一般的に日射を反射しやすい特徴があります。
ただし、実際の熱負担は素材や衣服の構造などにも左右されるため、色だけでランニングパフォーマンスの優劣は判断できません。

冬のレースでは長袖と半袖のどちらがよいですか?

気温や風、雨、運動強度などによって異なります。
走行中の体温変化を考慮し、練習で着慣れた服装を基本にするとよいでしょう。

高価なランニングウェアほどパフォーマンスは向上しますか?

価格が高いほど速く走れるという十分な根拠はありません。
価格よりも、運動環境への適合性、サイズ、着心地などを確認することが重要です。

まとめ|ランニングウェアは「速さ」だけでなく環境への適合性で選ぼう

 ランニングの服装は、身体の熱放散や快適性、疲労感などに影響する可能性があります。

 特に暑い環境や寒い環境では、衣服による体温調節が重要になります。

 一方、コンプレッションウェアや軽量ウェアなどを着用するだけで走行タイムが必ず改善するとは限りません。

 今回の研究から整理できるポイントは次のとおりです。

  • コンプレッションウェアによる走行パフォーマンスの改善は一貫していない
  • コンプレッションウェアには回復面への効果が期待できる可能性がある
  • 衣服の素材や構造は運動中の熱放散や体温調節に関係する
  • 袖の長さ、色、重量だけでランニングタイムの優劣は決められない
  • レースでは気象条件に適した、着慣れたウェアを選ぶことが大切

隼人(はやと)
隼人(はやと)

ランニングウェアを選ぶ際は、「どのウェアが最も速く走れるのか」という視点だけではなく、自分が走る環境で、余計な身体的負担を増やさず快適に走れるかという視点も大切にしましょう。

参考文献

  1. Engel FA, Holmberg HC, Sperlich B. Is There Evidence that Runners can Benefit from Wearing Compression Clothing? Sports Medicine. 2016;46:1939–1952.
  2. Born DP, Sperlich B, Holmberg HC. Bringing Light Into the Dark: Effects of Compression Clothing on Performance and Recovery. International Journal of Sports Physiology and Performance. 2013;8(1):4–18.
  3. Ali A, Caine MP, Snow BG. Graduated Compression Stockings: Physiological and Perceptual Responses During and After Exercise. Journal of Sports Sciences. 2007;25(4):413–419.