
「マラソンで自己ベストを更新したいなら、甘いものは控えるべき?」
「砂糖や生クリームは太りやすいから、ランナーにはよくない?」
「お菓子を食べる習慣があると、持久力が落ちる?」
マラソンの記録を追求していると、トレーニングだけでなく、普段の食事にも気を配るようになります。
その中でも、砂糖や生クリームを使ったケーキ、菓子パン、アイスクリームなどは、避けた方がよいのか気になる食品ではないでしょうか。
確かに、砂糖の過剰摂取や脂質の多い食品への偏りは、体重管理や栄養バランスに影響する可能性があります。
しかし、砂糖やクリームを食べること自体が、マラソンのパフォーマンスを低下させるとは限りません。
むしろ、糖質を必要以上に制限すると、トレーニングの質や回復に悪影響を及ぼす可能性があります。
この記事では、砂糖・クリームがランニングに与える影響を整理し、記録向上を目指す市民ランナーがどのように付き合えばよいのかを解説します。
マラソンの記録を狙うなら砂糖・クリームは避けるべき?

結論からいうと、砂糖やクリームを完全に避ける必要はありません。
重要なのは、食べるか食べないかではなく、摂取量・タイミング・食事全体のバランスです。
| 食品 | 主な特徴 | ランナーが意識したいこと |
|---|---|---|
| 砂糖 | 吸収されやすい糖質源 | 摂り過ぎと摂取タイミング |
| 生クリーム | 脂質が多くエネルギー密度が高い | 総エネルギー量と胃腸への負担 |
| ケーキ | 糖質と脂質を多く含む場合がある | 頻度・量・食べる時間帯 |
| 菓子パン | 糖質・脂質が多く、タンパク質が少ない製品もある | 食事の代わりにし過ぎない |
| スポーツドリンク・ジェル | 運動中の糖質補給に利用できる | 練習時間と運動強度に合わせる |
砂糖とクリームは、栄養学的には別のものとして考える必要があります。
砂糖は主に糖質を供給しますが、生クリームの主成分は脂質です。
そのため、それぞれの影響を分けて理解することが重要です。
砂糖はマラソンのパフォーマンスを低下させる?

砂糖は身体を動かすエネルギー源になる
砂糖(ショ糖)は、ブドウ糖と果糖から構成される二糖類です。
摂取した砂糖は消化・吸収され、身体のエネルギー代謝に利用されます。
特にランニングでは、糖質が重要な役割を担っています。
運動時の主なエネルギー源は糖質と脂質であり、一般的に運動強度が高くなるほど糖質への依存度が高くなります。
例えば、マラソンで以下のような場面では糖質の利用が重要になります。
- レースペースでの持続走
- インターバル走や閾値走
- 長時間のランニング
- レース後半のペース維持
筋肉や肝臓にはグリコーゲンという形で糖質が蓄えられています。
長時間の運動でグリコーゲンが減少すると、運動強度を維持しにくくなることがあります。

そのため、記録を狙うランナーにとって、糖質は避けるものではなく、適切に確保すべき栄養素です。
ただし、糖質が必要だからといって、砂糖を多く摂るほど速く走れるという意味ではありません。
砂糖を摂り過ぎると何が問題になる?
砂糖の過剰摂取が問題になるのは、主に次のような状況です。
砂糖を多く含む飲料や菓子類を日常的に摂取すると、総エネルギー摂取量が増えやすくなります。

長期的に消費エネルギーを上回る状態が続けば、体脂肪が増加する可能性があります。
甘い菓子類や飲料で満腹になり、主食・タンパク質源・野菜・果物などが不足することがあります。

持久系アスリートには、糖質だけでなくタンパク質、鉄、カルシウムなども重要です。
砂糖が多い食品を頻繁に摂ること自体よりも、食生活全体が偏ることが問題になる場合があります。
なお、砂糖の摂取が直接的にVO₂maxやランニングエコノミーを低下させると断定できるわけではありません。
生クリームはマラソンの記録に悪影響?

生クリームは脂質を多く含む食品です。
脂質は1gあたり約9kcalのエネルギーを持ち、糖質やタンパク質よりエネルギー密度が高いという特徴があります。
生クリームを食べると体脂肪が増える?
生クリームを食べたからといって、必ず体脂肪が増えるわけではありません。
体脂肪の変化には、長期的なエネルギー収支が大きく関わっています。
例えば、同じエネルギー量を摂取していても、食事全体の構成や運動量によって体重の変化は異なります。

生クリームを含む食品も、総摂取エネルギーが適切な範囲に収まっていれば、必ずしも体脂肪の増加につながるものではありません。
ただし、生クリームを多く使ったケーキや菓子類は、少量でも高エネルギーになりやすいため注意が必要です。
脂質の多い食品はランニング前に不向き?
ランニング前の食事では、脂質の摂取量に注意した方がよい場合があります。
脂質の多い食事は胃からの排出を遅らせることがあり、運動中の胃もたれや不快感につながる可能性があるためです。

特に、レース直前や高強度トレーニングの前には、脂質が多い食品よりも消化しやすい糖質中心の食事が一般的に選ばれます。
一方、ランニングから十分な時間が空いている場合には、生クリームを含む食品を必ず避けなければならない理由はありません。
研究では糖質や脂質と持久力の関係はどう評価されている?

砂糖や生クリームそのものとマラソン記録を直接比較した研究は、ここで確認できていません。
そこで、関連性の高い糖質摂取・糖質利用能・身体組成に関する研究を紹介します。

Jeukendrup(2014)
- A Step Towards Personalized Sports Nutrition: Carbohydrate Intake During Exercise.
- Sports Medicine. 44(Suppl 1):25–33.
- DOI: 10.1007/s40279-014-0148-z
この論文は、運動中の糖質摂取と持久系運動に関する研究を整理したレビューです。
| PICO | 内容 |
|---|---|
| P(対象) | 主に持久系運動を行う人 |
| I(介入) | 運動中の糖質摂取 |
| C(比較) | 糖質摂取量や糖質の種類の違い、非摂取条件など |
| O(結果) | 持久系運動のパフォーマンスや糖質酸化能力 |
※単一の比較試験ではないため、PICOはレビューの対象範囲を要約したものです。
論文では、長時間の持久系運動において糖質補給がパフォーマンスを支えることが説明されています。
また、ブドウ糖と果糖など、吸収経路が異なる糖質を組み合わせることで、高い糖質酸化速度を得られる場合があることも紹介されています。
特に2.5時間を超えるような長時間運動では、十分に練習された競技者において最大90g/時程度の糖質摂取が選択肢になります。
ただし、これはすべてのランナーに90g/時を推奨するものではありません。
砂糖を含む糖質を一律に避ける考え方は、持久系スポーツの栄養戦略とは一致しません。

糖質はタイミングと量によって、運動を支える重要な栄養素になります。

Burkeら(2017)
- Low Carbohydrate, High Fat Diet Impairs Exercise Economy and Negates the Performance Benefit from Intensified Training in Elite Race Walkers.
- The Journal of Physiology. 595(9):2785–2807.
- DOI: 10.1113/JP273230
| PICO | 内容 |
|---|---|
| P(対象) | エリート競歩選手21名 |
| I(介入) | 低糖質・高脂質食 |
| C(比較) | 高糖質食、糖質摂取をトレーニングに合わせる食事 |
| O(結果) | 脂質酸化、運動効率、競歩パフォーマンス |
この研究では、約3週間の集中的なトレーニング期間中に、異なる食事戦略の影響を比較しました。
低糖質・高脂質食のグループでは脂質酸化量が大幅に増加しましたが、運動中の酸素コストが増加し、運動効率が悪化しました。
また、高糖質食などのグループでは10km競歩のパフォーマンスが改善した一方、低糖質・高脂質食では同様の改善が認められませんでした。
脂質を多く使える身体になることと、速く走れるようになることは同じではありません。
高い運動強度を維持する競技では、糖質の利用可能性が重要になる可能性があります。
ただし、対象はエリート競歩選手であり、一般のマラソンランナーや砂糖・クリームの摂取を直接調べた研究ではありません。

Saundersら(2004)
- Factors Affecting Running Economy in Trained Distance Runners.
- Sports Medicine. 34(7):465–485.
- DOI: 10.2165/00007256-200434070-00005
| PICOに準じた整理 | 内容 |
|---|---|
| P(対象) | トレーニングを積んだ長距離ランナーに関する研究 |
| I/E(要因) | 身体特性、バイオメカニクス、トレーニングなど |
| C(比較) | 各要因の違い |
| O(結果) | ランニングエコノミー |
※レビュー論文であり、体重減少の効果だけを検証した介入試験ではありません。
ランニングエコノミーは、一定速度で走る際の酸素消費量などから評価される指標です。
この論文では、身体特性やトレーニング、走動作など、さまざまな要因との関係が整理されています。

体重や身体組成も長距離走を考えるうえで重要ですが、体重を減らすことだけでランニングエコノミーや記録が必ず改善するとはいえません。
過度な食事制限は、トレーニングの質や回復、健康を損なう可能性があるためです。
体重管理は重要な要素の一つですが、「軽ければ軽いほど速い」という単純な考え方は適切ではありません。
砂糖やクリームを控えて体重を落とすと速くなる?

マラソンでは、自分の体重を長距離にわたって移動させる必要があります。
そのため、身体組成が走行効率に関係することは十分に考えられます。
ただし、体重減少にはメリットとデメリットの両方があります。
| 適切な身体組成の管理 | 過度な食事制限 |
|---|---|
| 不要な体脂肪を減らせる可能性 | 筋肉量が減少する可能性 |
| 体重管理につながる | グリコーゲン不足になりやすい |
| 食習慣の改善につながる | トレーニングの質が低下する可能性 |
| 長期的な健康管理に役立つ | 回復遅延や低エネルギー利用可能性のリスク |
特に注意したいのが、REDs(スポーツにおける相対的エネルギー不足)です。
エネルギー摂取量が運動による消費に対して不足する状態が続くと、内分泌機能、骨の健康、免疫、運動パフォーマンスなどに影響する可能性があります。

マラソンの記録向上を目指すのであれば、砂糖やクリームを制限して体重だけを減らすのではなく、十分なエネルギーを確保しながら、必要に応じて身体組成を調整することが重要です。
ランナーは1日にどれくらい糖質を摂ればよい?

糖質の必要量は、走行距離や運動時間、運動強度によって大きく変わります。
スポーツ栄養学では、トレーニング負荷に応じた糖質摂取量の目安が示されています。
| トレーニング負荷の目安 | 1日あたりの糖質摂取量 |
|---|---|
| 軽い運動 | 体重1kgあたり3〜5g |
| 中程度の運動(約1時間/日) | 5〜7g |
| 高い負荷(約1〜3時間/日) | 6〜10g |
| 非常に高い負荷(約4〜5時間/日) | 8〜12g |
出典:Thomas DT, Erdman KA, Burke LM. Nutrition and Athletic Performance. 2016.
例えば、体重60kgで1日1時間程度のトレーニングを行うランナーなら、目安は300〜420g/日です。
ただし、これらは競技者向けの一般的な指標です。
週に数回の軽いランニングしか行わない人が、必ずこの量を摂取しなければならないわけではありません。
また、糖質の大部分を砂糖から摂ることを推奨しているわけでもありません。

普段は米、パン、麺類、芋類、果物などを中心に糖質を確保し、運動中や運動直後にはスポーツドリンクや補給食を利用するなど、場面に応じて使い分けることが重要です。
砂糖は1日にどれくらいまでにすべき?

WHOは、遊離糖類(free sugars)の摂取量を総エネルギー摂取量の10%未満に減らすことを推奨しています。
さらに、5%未満に抑えることで追加的な健康上の利益が期待できるとしています。
遊離糖類には、食品や飲料に添加された糖類だけでなく、蜂蜜・シロップ・果汁などに含まれる糖類も含まれます。一方、果物そのものや牛乳に自然に含まれる糖類は、この定義には含まれません。
例えば、1日の摂取エネルギーが2,500kcalの場合は以下のようになります。
| 基準 | 遊離糖類の量 |
|---|---|
| 総エネルギーの10%未満 | 62.5g未満 |
| 総エネルギーの5%未満 | 31.25g未満 |
ただし、この基準は主に一般的な健康維持や虫歯予防などを目的としたものです。
スポーツ中の糖質補給にそのまま機械的に当てはめるべきではありません。
例えば、2〜3時間のロング走で補給する糖質と、運動をしない日に習慣的に飲む砂糖入り飲料では、摂取目的が異なります。

一方で、運動中の糖質もエネルギー摂取に含まれるため、必要量を超えて無制限に摂ればよいわけではありません。
ケーキやアイスクリームはいつ食べるのがよい?

記録向上を目指すランナーでも、ケーキやアイスクリームを楽しむことはできます。
ただし、トレーニングの内容によって向き不向きがあります。
脂質の多いケーキや生クリームは、大量に食べると胃もたれにつながる可能性があります。
特にインターバル走やレース前は、消化しやすい糖質中心の食事を選ぶ方が無難です。
長時間のランニング後には、糖質やタンパク質の補給が重要になります。
甘い食品から糖質を補給することもできますが、ケーキやアイスクリームだけではタンパク質や必要な糖質量が十分でない場合があります。
例えば、通常の食事で糖質とタンパク質を確保したうえで、デザートとして楽しむ方が栄養バランスを整えやすくなります。
休養日だからといって、甘いものを禁止する必要はありません。
ただし、運動量が少ない日はエネルギー消費量も少なくなることがあるため、食事全体の量に気を配りましょう。
一方で、休養日も筋肉やグリコーゲンの回復が進む大切な時間です。

運動しないからと極端に食事量を減らす必要もありません。
マラソンの記録を狙う人が優先したい食習慣5つ

練習量に応じて米・パン・麺類などから糖質を摂取し、ポイント練習の質を落とさないようにします。
筋肉の維持・回復を支えるため、肉・魚・卵・乳製品・大豆製品などを取り入れます。
ロング走やレースでは、ジェルやスポーツドリンクなどを利用し、必要な糖質を補給します。
好きな食品を完全に排除するのではなく、食事全体のバランスを整えながら楽しみましょう。
体重の減少だけを追わず、練習ペース、疲労感、睡眠、体調なども確認します。
マラソンのための食事管理でよくある失敗

砂糖の摂取をゼロにすること自体に、明確な競技上のメリットがあるとはいえません。

極端な制限よりも、日常的な菓子や清涼飲料水の摂取量を調整し、運動時には必要に応じて糖質を補給する方が合理的です。
糖質制限によって体重が短期的に減少しても、その一部はグリコーゲンや水分の減少である場合があります。

体重が落ちたからといって、必ずしもマラソンの記録向上につながるわけではありません。
食べたものを帳消しにするために、必要以上のランニングを行うことはおすすめできません。

無計画にトレーニング量を増やすと、疲労の蓄積やランニング障害につながる可能性があります。
菓子類を減らした結果、食事全体のエネルギーまで不足するケースには注意が必要です。

体重減少が続く、疲労が抜けない、練習ペースが維持できない、体調を崩しやすい場合は、エネルギー不足も考慮する必要があります。
よくある質問
マラソンでサブ3を狙うなら、ケーキは控えるべき?
砂糖を食べると血糖値が上がり、ランニングに悪影響が出る?
生クリームを食べると持久力が低下する?
甘いものを食べるならランニング後が一番よい?
砂糖を控えると体脂肪が減って速くなる?
まとめ|記録を狙うなら砂糖・クリームの禁止より食事全体を整えよう
マラソンで自己ベストを狙うからといって、砂糖やクリームを完全に避ける必要はありません。
砂糖は糖質源であり、運動中や運動後には役立つ場面があります。
一方、生クリームは脂質が多くエネルギー密度が高いため、摂取量やランニング前のタイミングには注意したい食品です。
記録向上のために特に大切なのは、次の5つです。
- トレーニング量に合わせて糖質を確保する
- 総エネルギー摂取量と栄養バランスを整える
- ポイント練習やレース前の胃腸の負担を考慮する
- 過度な体重減少やエネルギー不足を避ける
- 甘いものを完全に禁止せず、継続可能な食生活を目指す

マラソンの記録を左右するのは、特定の食品を食べたかどうかではなく、日々のトレーニングを支えられる食事ができているかどうかです。
砂糖やクリームを必要以上に悪者にせず、練習の質と回復を重視した食生活を心がけましょう。
参考文献
- Jeukendrup AE. A step towards personalized sports nutrition: carbohydrate intake during exercise. Sports Med. 2014;44(Suppl 1):25–33.
- Burke LM, et al. Low carbohydrate, high fat diet impairs exercise economy and negates the performance benefit from intensified training in elite race walkers. J Physiol. 2017;595(9):2785–2807.
- Saunders PU, et al. Factors affecting running economy in trained distance runners. Sports Med. 2004;34(7):465–485.
- Thomas DT, Erdman KA, Burke LM. Position of the Academy of Nutrition and Dietetics, Dietitians of Canada, and the American College of Sports Medicine: Nutrition and Athletic Performance. J Acad Nutr Diet. 2016;116(3):501–528.
- Mountjoy M, et al. 2023 International Olympic Committee’s (IOC) consensus statement on Relative Energy Deficiency in Sport (REDs). Br J Sports Med. 2023;57:1073–1097.
- World Health Organization. Guideline: Sugars Intake for Adults and Children. 2015.
※本文は既知の文献に基づいて作成しています。今回、外部検索による原著論文の再確認は行えていません。また、紹介した研究の多くは糖質・脂質の摂取戦略を扱ったもので、砂糖や生クリームの摂取そのものとフルマラソン記録との因果関係を直接示すものではありません。
風を切るランニング 
