走っていると口が乾いて、ガムを噛みたくなることがあります。「気分転換になる」「集中できそう」という声もあるでしょう。一方、走りながら噛むと呼吸の邪魔にならないか、誤ってのどに詰まらせないかも気になります。
結論から言うと、ゆっくりしたランニング中にガムを噛むことは、本人が安全に噛めるなら選択肢の一つです。ただし、普通のガムを噛むだけで走力が上がるという根拠は乏しく、給水やエネルギー補給の代わりにはなりません。
記録向上を示した研究で使われているのは、主にカフェイン入りガムです。この違いを押さえておきましょう。
ランニング中にガムを噛むと期待できること

口の乾きが一時的に和らぐ可能性
ガムを噛むと唾液の分泌が促されます。口の中が乾いて気になる人は、噛んでいる間に楽に感じるかもしれません。
米国歯科医師会も、シュガーレスガムが唾液の流れを増やすことを説明しています。
ただし、口が潤った感覚と、体内の水分が補われたことは別です。暑い日や長時間のランニングでは、気象条件や発汗量に合わせて飲み物を準備しましょう

ガムを噛んで「のどの渇きが消えた」ように感じても、給水の予定を忘れないことが大切です。
気分転換になることはある
味や噛む動作が気分転換になる人もいます。ただし、ランニング中の普通のガムについて「集中力が高まる」「疲労感が減る」「タイムが縮まる」と言えるほどの直接的な根拠は確認できません。
使うとしても、まずは本人の走りやすさを基準にしましょう。
ガムを噛むとランニングの記録はよくなる?

普通のガムとカフェイン入りガムは分けて考える必要があります。
カフェイン入りガムには、カフェイン自体による運動パフォーマンスへの作用が期待されます。
2024年に発表された研究では、市民ランナーが5kmのパークラン前にカフェイン300mg入りガム、またはカフェインを含まない対照ガムを5分間噛みました。
介入を終えた14人の比較では、カフェイン入りガムを使ったときの5kmタイムが平均約17秒短く、主観的なきつさも低くなりました。
ただし、この研究は少人数で、参加者は主に男性、対象は5km走です。ガムを走行中ずっと噛んだ研究ではありません。 300mgという量をすべての人に勧める結果でもなく、ハーフやフルマラソンにそのまま当てはめることもできません。
カフェイン入りガムに関する32研究をまとめたレビューでも、競技・摂取量・タイミングによって結果にばらつきがありました。
ランニング中にガムを噛むデメリット・注意点

1.むせたり、噛むことが負担になったりする
ペースアップ、坂道、インターバル走などで呼吸が激しくなると、ガムが邪魔になる人もいます。咳き込む、息苦しい、飲み込む動作がうまくいかないと感じたら、安全な場所で立ち止まってガムを出しましょう。
転倒や接触が起こりやすい混雑したレース、トレイルでも慎重に判断してください。

走りながら噛むこと自体の窒息事故リスクを数量で示せる研究は確認できません。そのため「必ず危険」とも「安全」とも断定せず、走る状況と本人の噛みやすさで決めるのが現実的です。
2.水分・糖質補給の代わりにはならない
一般的なシュガーレスガムは、ランニングに必要な水分を補えません。含まれるエネルギーも補給食として頼れる量ではありません。
長時間走る場合は、飲み物と、必要に応じた糖質補給を別に計画しましょう。甘い味のするガムとエネルギー補給は同じではありません。
3.お腹が張る人がいる
シュガーレスガムに使われる糖アルコール(ソルビトールなど)は、摂取量や体質によって腹部膨満感や便通の変化につながります。
運動中にお腹が不調になりやすい人は、原材料表示を見て、まず普段の短いジョグで試してください。
4.顎が疲れることがある
長く噛み続けて顎に違和感が出るなら、無理に続ける必要はありません。もともと顎関節の痛みがある人は特に控えめにしましょう。
ランニング用のガムの選び方

| 目的 | 選び方の目安 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 口の乾きへの対処・気分転換 | 小さめで噛み慣れたシュガーレスガム | 味の強さ、顎や胃腸との相性 |
| レース前のカフェイン摂取 | カフェイン量が1個あたり明記された製品 | その日の飲料・ジェルを含む合計量 |
| 長時間走でのエネルギー補給 | ガムとは別に飲料やジェルなどを用意 | 糖質量、給水場所、胃腸との相性 |
シュガーレスガムは歯科の観点では選びやすい一方、糖アルコールがお腹に合わない人もいます。
「シュガーレスなら誰にでも最適」とは考えず、自分が普段使って問題のないものを選びましょう。
カフェイン入りガムを試す場合の手順

- 1個あたりのカフェイン量を確認する。 コーヒー、エナジードリンク、カフェイン入りジェルとの合計も記録します。
- まず練習日に試す。 普段カフェインを摂らない人や、動悸・不安感・胃腸症状が出やすい人は、競技会当日に初めて使わないでください。
- 製品の表示に従って、走る前に使う。 5kmの研究ではスタート約30分前から5分間噛んでいます[4]。ガムを噛みながら走ることを推奨した試験ではありません。
- 効果だけでなく睡眠や体調も確認する。 走りやすく感じても、眠れなくなるなら次回の使用時間や量を見直します。
スポーツ栄養学会の見解では、カフェインは体重1kgあたり3~6mgでパフォーマンス改善が比較的よく示される一方、少ない量でも効く可能性があり、個人差もあります。高用量には副作用が増えます。

この数値を「初回から目標にすべき量」と受け取らず、体調や普段の摂取状況を優先してください。妊娠中、服薬中、心疾患がある場合などは自己判断での使用を避け、医療者へ相談しましょう。
こんなときはガムを噛まない方がよい

- 呼吸が荒くなるスピード練習やレース終盤
- 咳が出る、むせやすい、飲み込みに不安があるとき
- 足元の悪い道や混雑したコースを走るとき
- 噛むと顎が痛む、ガムで胃腸が不調になるとき
- 水分不足や空腹を、ガムだけでしのごうとしているとき

こうした場面では、まずペースを落とすか止まり、ガムを口から出してください。水分やエネルギーが必要なら、それぞれに合った方法で補いましょう。
よくある質問

口が潤って楽に感じる人はいるかもしれませんが、ガムが肺機能を高めたり、酸素を多く取り込めるようにしたりする根拠は確認できません。息苦しさが出るなら噛むのをやめ、必要に応じて運動を中断しましょう。
ガムを噛みながら走ることで体脂肪がより減るとは言えません。食欲や間食への影響と、運動中の脂肪利用や長期的な体脂肪減少は別の話です。
その必要はありません。紹介した5km研究では走る前に噛んでいます[4]。レース中に噛むことが邪魔になるなら、使用方法や別の補給手段を検討してください。
まとめ
ランニング中の普通のガムは、口の乾きや気分転換への対処として、本人に合えば利用できます。ただし、記録向上、水分補給、エネルギー補給を期待しすぎないことが大切です。
カフェイン入りガムには5km走での好結果がありますが、それはカフェインを使った研究であり、走りながら普通のガムを噛む効果とは区別しましょう。

まずは安全な短いジョグで相性を確認し、呼吸や胃腸の負担になるなら使わない。長い距離では、ガムと別に給水・補給を準備してください。
参考文献
- American Dental Association. Chewing Gum.
- Sawka MN, et al. American College of Sports Medicine position stand: Exercise and fluid replacement. Med Sci Sports Exerc. 2007;39:377–390.
- Guest NS, et al. International society of sports nutrition position stand: caffeine and exercise performance. J Int Soc Sports Nutr. 2021;18:1.
- Lynn A, et al. Caffeine gum improves 5 km running performance in recreational runners completing parkrun events. Eur J Nutr. 2024;63:1283–1291.
- Yang CC, et al. Effects of Caffeinated Chewing Gum on Exercise Performance and Physiological Responses: A Systematic Review. Nutrients. 2024.
- Monash University. What are Polyols?.
風を切るランニング 