ランニングパフォーマンスを上げる下半身の筋トレ|筋トレの効果・おすすめ種目を解説

マナブ
マナブ

「ランニングが速くなるには、やっぱり走り込むしかない?」

「筋トレをすると身体が重くなって、逆に走れなくならない?」

 ランナーの中には、このような疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。

 ランニングパフォーマンスを高めるうえで基本となるのは、もちろんランニングトレーニングです。

 しかし近年では、普段のランニングに筋力トレーニングを組み合わせることで、ランニングエコノミーや実際のランニングパフォーマンスが改善する可能性が、多くの研究から示されています。

特に注目されているのが、

  • 高負荷筋力トレーニング
  • プライオメトリクストレーニング
  • 両者を組み合わせたトレーニング

です。

 この記事では、ランナーが下半身の筋トレを行う効果と、おすすめのトレーニング種目、負荷・回数・頻度について科学的根拠をもとに解説します。

ランナーにも下半身の筋トレは必要?

 結論からいうと、ランニングパフォーマンス向上を目指すのであれば、ランニングに筋力トレーニングを追加することは有効な選択肢のひとつです。

 2024年に発表された中・長距離ランナーを対象としたシステマティックレビュー・メタ解析では、38研究・894人を対象として筋力トレーニングの効果が検討されました。

その結果、

  • 高負荷筋力トレーニング
  • 複数の筋力トレーニング方法を組み合わせたトレーニング

によって、タイムトライアルや運動継続時間などのランニングパフォーマンスが改善する可能性が示されています。

一方で、VO₂maxやvVO₂maxについては明確な改善が認められませんでした。

つまり、筋トレ → 心肺機能が大きく向上 → 速くなるという単純な仕組みではありません。

走(かける)
走(かける)

ランニングとは異なる刺激を筋肉や神経系に加えることで、より効率的に力を発揮できるようになり、結果としてランニングパフォーマンスが改善すると考えた方が適切です。

 

下半身の筋トレにはどんな効果がある?

ランニングエコノミーの改善

 筋力トレーニングによる効果として、特に研究されているのがランニングエコノミーです。

ランニングエコノミー

一定の速度で走るために、どの程度の酸素・エネルギーを必要とするか

 同じ速度で走っていても、必要な酸素量が少ないランナーほど、一般的には効率よく走れていることになります。

 2024年のメタ解析では、652人の中・長距離ランナーを対象として筋力トレーニングとランニングエコノミーの関係が検討されています。

その結果、

  • 高負荷筋力トレーニング
  • 複数の筋力トレーニングを組み合わせる方法

によって、ランニングエコノミーが改善する可能性が示されました。

 一方、すべての筋力トレーニングで同じ効果が得られるわけではありません。中〜低負荷の筋トレについては、高負荷筋トレほど一貫した結果が得られていません。

 

走(かける)
走(かける)

そのため、ランニングパフォーマンス向上を目的とする場合は、「軽い重量を何十回も行う」だけではなく、ある程度高い負荷で筋力そのものを高めるという考え方も重要になります。

最大筋力を高められる

 高負荷筋力トレーニングを行う大きな目的のひとつが、最大筋力の向上です。

 ランニングでは一歩ごとに地面へ力を加え、その反力を利用しながら身体を前へ進めています。

 最大筋力が高くなることで、ランニング中に必要となる力が、自分の最大能力に対して相対的に小さくなる可能性があります。

代表的なのがStørenらの2008年の研究です。

トレーニングされた長距離ランナーに、

  • ハーフスクワット
  • 4RM×4セット
  • 週3回
  • 8週間

を通常の持久系トレーニングに追加しました。

その結果、

  • 1RM:約33%向上
  • Rate of Force Development:約26%向上
  • ランニングエコノミー:約5%改善
  • 最大有酸素速度での運動継続時間:約21%向上

が認められました。

 一方、VO₂maxと体重には有意な変化がありませんでした。

 「筋トレで筋肉がついて身体が重くなるのでは?」と心配しているランナーにとっても興味深い結果です。

※ただし、この数値がすべてのランナーにそのまま当てはまるわけではありません。

素早く力を発揮する能力を高める

 ランニングでは、筋力が強いだけではなく、短い接地時間の中で力を発揮する能力も重要です。

 Størenらの研究でも、最大筋力だけでなくRate of Force Development(RFD)の改善が確認されています。

 また、Paavolainenらの研究では、ジャンプやスプリントなどの爆発的筋力トレーニングを持久系トレーニングに組み合わせることで、

  • 5kmランニングタイム
  • ランニングエコノミー
  • スプリント能力
  • ジャンプ能力

などが改善しました。

 一方でVO₂maxには大きな変化がありませんでした。

 

走(かける)
走(かける)

この結果からも、ランニングパフォーマンス=心肺機能だけで決まるわけではないことが分かります。

筋トレをするとVO₂maxも上がる?

 2024年のメタ解析や2025年のUmbrella Reviewでは、筋力トレーニングによってランニングエコノミーや持久系パフォーマンスが改善する可能性が示されている一方、VO₂maxについては明確な改善が確認されていません

そのため、「筋トレで心肺機能が高くなるから速くなる」とは言えません。

筋力トレーニングは、

  • 最大筋力
  • 素早い力発揮
  • 神経筋機能
  • ランニングエコノミー

など、ランニングトレーニングとは異なる部分に刺激を与えるトレーニングと考えましょう。

 

走(かける)
走(かける)

VO₂maxや乳酸閾値などを高めるには、ランニングそのもののトレーニングも重要です。

筋トレをすると筋肉が大きくなって走れなくなる?

 ランナーでは、「筋トレをすると筋肉が大きくなって体重が増える」というイメージを持っている人も少なくありません。しかし、筋力の向上=必ず大幅な筋肥大や体重増加が起こるわけではありません。

 先ほど紹介したStørenらの研究では、8週間で最大筋力が大幅に向上した一方、体重には有意な変化がありませんでした。

 長期間の筋力トレーニングをランニングに追加した研究でも、ランニングエコノミーや筋力が改善しながら、体重や除脂肪量に大きな変化が認められなかった報告があります。

 筋力の向上には筋肥大だけでなく、神経系の適応なども関係します。

 そのため、適切な方法で行えば、「筋トレをすると身体が重くなるからランナーには必要ない」とは言えません。

ランナーにおすすめの下半身筋トレ

 ここからは、研究で使用されている種目も参考にしながら、ランナーが取り入れやすい下半身トレーニングを紹介します。

ハーフスクワット

 

 ランニングパフォーマンスとの直接的な研究が比較的多い種目です。

主に、

  • 大腿四頭筋
  • 大殿筋
  • 内転筋群

など、股関節・膝関節を伸ばす筋肉をまとめて鍛えられます。

 Størenらの研究では4RMという非常に高い負荷のハーフスクワットが使用され、ランニングエコノミーと運動継続能力の改善が認められました。

※ただし、筋トレ初心者が最初から4RMの高重量を扱う必要はありません。まずは正しいフォームで動作できる重量から始め、徐々に負荷を高めましょう。

スクワット

 通常のスクワットも、ランナーを対象とした多くの筋力トレーニング研究で採用されています。

 下肢全体に負荷をかけやすいため、ランナーの基本的な筋力トレーニングとして取り入れやすい種目です。

ただし、「スクワットをすれば必ず走るのが速くなる」という意味ではありません。

 あくまでランニングトレーニングと組み合わせて、下肢筋力を高めるための方法のひとつです。

デッドリフト・ルーマニアンデッドリフト

デッドリフト系の種目では、

  • 大殿筋
  • ハムストリングス
  • 脊柱起立筋群

など、身体の後面を中心に鍛えることができます。

 ランナーを対象とした研究でも、スクワットやレッグプレスなどと組み合わせてデッドリフトやルーマニアンデッドリフトが使用されています。

 ただし、現時点では、デッドリフト単独でランニングパフォーマンスが改善するという直接的なエビデンスはスクワットほど明確ではありません。

そのため、下肢後面を鍛える補助的な種目として考えるのがよいでしょう。

カーフレイズ

カーフレイズでは主に、

  • 腓腹筋
  • ヒラメ筋

などの”ふくらはぎ”にある下腿三頭筋を鍛えます。

 ランニングでは足関節底屈筋群が重要な役割を担っており、特に速いランニングや上り坂などでは大きな力を発揮します。

 ランナーを対象とした筋力トレーニング研究でも、カーフレイズがプログラムの一部として使用されています。

 一方、カーフレイズを行うだけでランニングエコノミーが改善すると断定できるだけの根拠はありません。

 スクワットなどと組み合わせて利用するとよいでしょう。

ブルガリアンスクワット

 ブルガリアンスクワットは片脚を中心に負荷をかけることができ、

  • 大腿四頭筋
  • 大殿筋
  • 内転筋群

などを鍛えられます。

 ランニングも左右の片脚支持を繰り返す運動であるため、補助種目として取り入れやすいトレーニングです。

 ただし、「ランニングが片脚運動だから、両脚スクワットより片脚スクワットの方が必ず効果的」とは言えません。

 ブルガリアンスクワット単独によるランニングパフォーマンス改善の直接的な研究は限られているため、実践的な補助種目という位置づけが適切です。

ステップアップ

台の上へ片脚で上がるステップアップも、

  • 大殿筋
  • 大腿四頭筋
  • ハムストリングス

などを鍛えることができます。

 片脚で身体を支えながら股関節・膝関節を伸ばすため、ランナーにも取り入れやすい種目です。

 こちらも複数種目を組み合わせた筋力トレーニング研究では使用されていますが、ステップアップ単独の効果を示した研究は限られています。

プライオメトリクストレーニングも効果がある?

 ランニングパフォーマンス向上を考える場合、通常の筋力トレーニングだけでなく、プライオメトリクストレーニングも選択肢になります。

 プライオメトリクスとは、筋肉や腱が素早く伸ばされ、その直後に短縮するstretch-shortening cycleを利用したトレーニングです。

代表的な種目には、

  • ポゴジャンプ
  • ホッピング
  • バウンディング
  • ジャンプスクワット

などがあります。

 ランナーを対象とした研究では、プライオメトリクストレーニングによってランニングエコノミーが改善した報告があります。

 Saundersらの研究では、trained distance runnersが9週間のプライオメトリクストレーニングを行い、高速走行時のランニングエコノミーが改善しました。

 一方で、2022年のメタ解析では、ランニングエコノミーに対する効果は平均すると高負荷筋力トレーニングの方がプライオメトリクスより大きいという結果も示されています。

 したがって、高負荷筋力トレーニングを基本にしながら、必要に応じてプライオメトリクスを加えるという方法も考えられます。

高負荷筋トレとプライオメトリクスはどちらがいい?

 どちらか一方だけを選ばなければならないわけではありません。

 2024年のメタ解析では、高負荷筋力トレーニングだけでなく、複数の方法を組み合わせたトレーニングでもランニングエコノミーやパフォーマンス改善が確認されています。

 両者は刺激が異なります。

高負荷筋トレ
→ 最大筋力を高める

プライオメトリクス
→ 素早い力発揮やstretch-shortening cycleを利用する能力を鍛える

という特徴があります。

走(かける)
走(かける)

筋トレ経験が少ないランナーは、まずスクワットなどの基本的な筋力トレーニングから始め、十分な筋力と動作能力が身についてからジャンプ系トレーニングを追加すると安全に取り入れやすくなります。

 

レース後半の走力にも筋トレは役立つ?

 最近では、疲労した状態でのランニングエコノミーにも注目が集まっています。

 2025年にwell-trained male runnersを対象として行われた研究では、最大筋力トレーニングとプライオメトリクスを週2回、10週間実施しました。

 その結果、90分間のランニング後半におけるランニングエコノミーの低下が抑えられ、その後の高強度ランニングの運動継続時間も改善しました。

 このように、疲れていない状態で効率よく走れるかだけではなく、長時間走った後にも走りの効率を維持できるかという「durability」の観点でも、筋力トレーニングが役立つ可能性があります。

※ただし、この分野はまだ研究数が多くありません。現段階では「長距離レース後半の失速を必ず防げる」とまでは言えないため、今後の研究が必要です。

筋トレは何回・何セット行えばいい?

 ランニングパフォーマンス向上を目的とした研究では、比較的高い負荷が使用されています。

 2024年のメタ解析では、80%1RM以上、または7RM以下を高負荷筋力トレーニングとして分類しています。

 実践例としては、3〜6回程度×3〜5セットのような方法が考えられます。

※ただし、これは筋トレ経験者を含む研究結果をもとにした目安です。初心者がいきなり90%1RMや4RMの重量を扱う必要はありません。

最初は、

  • 正しいフォームを覚える
  • 軽〜中程度の負荷から始める
  • 徐々に重量を増やす

ことを優先してください。

 フォームが安定してから、ランニングパフォーマンス向上を目的として段階的に高負荷へ移行します。

筋トレは週何回行えばいい?

 研究では週1〜4回程度までさまざまですが、実際のランナーでは週2回前後から検討しやすいでしょう。

 重要なのは、筋トレだけを考えないことです。

ランナーの場合は、

  • 週間走行距離
  • インターバル走
  • 閾値走
  • ロングラン
  • レース予定
  • 筋トレ経験
  • 疲労状態

などを含めて全体の負荷を考える必要があります。

 

走(かける)
走(かける)

筋トレによる筋肉痛や疲労で、重要なランニングトレーニングの質が大きく低下してしまっては本末転倒です。

トレーニング負荷とのバランスを考えましょう!

ランニングと筋トレは同じ日に行っていい?

 ランニングと筋トレを同じ日に行うこと自体が禁止されているわけではありません。

 大切なのは、「その日のトレーニングで何を最も重視するのか」です。

例えば、

 ランニングの質を最優先する日であれば、重要なランニングトレーニングを先に行う方法があります。

 一方、最大筋力向上を最優先するトレーニング期間では、筋トレを疲労の少ない状態で行うことも考えられます。

 また、高強度の日をまとめて、その翌日に回復日を作る方法もあります。筆者はこの方法を採用しています。

 すべてのランナーに共通する「絶対にこの順番」という方法はありません。自分の目的やトレーニング計画に合わせて調整しましょう。

ランナー向け下半身筋トレメニュー例

 筋トレ初心者であれば、まずは基本的な種目から始めます。

筋トレ初心者

  • スクワット
  • ステップアップ
  • カーフレイズ

 最初は重量よりも、正しいフォームを覚えることを優先します。

筋トレに慣れてきたランナー

  • スクワットまたはハーフスクワット
  • デッドリフトまたはルーマニアンデッドリフト
  • ブルガリアンスクワット
  • カーフレイズ

 徐々に重量を高め、高負荷筋力トレーニングへ移行します。

パフォーマンス向上をより重視するランナー

  • 高負荷スクワットまたはハーフスクワット
  • デッドリフト系
  • カーフレイズ
  • ポゴジャンプ
  • ホッピングなどのプライオメトリクス

 すべてを一度に行う必要はありません。

 ランニング練習とのバランスを考え、必要な種目を選択します。

ランナーが筋トレするときの注意点

筋肉痛を残しすぎない

 筋トレ後に強い筋肉痛が残ると、ランニングフォームやトレーニング強度に影響する可能性があります。

 特にインターバル走やロングランなど重要な練習前には注意しましょう。

いきなり高重量を扱わない

 研究で高負荷筋トレの効果が示されているからといって、初心者がいきなり高重量を扱う必要はありません。

 トレーニング経験に合わせて段階的に負荷を増やします。

筋トレだけで速くなろうとしない

 筋トレはランニングパフォーマンス向上をサポートする手段です。

マラソンや長距離走では、

  • VO₂max
  • 乳酸閾値
  • ランニングエコノミー
  • 長時間走り続ける能力
  • レースペースへの適応

など、さまざまな要素が関係します。

 これらを高める基本となるのは、やはりランニングトレーニングです。

まとめ|ランニング+筋トレでパフォーマンス向上を目指そう

 ランニングパフォーマンスを高めるためには、まず実際に走るトレーニングが基本です。

 そのうえで下半身の筋力トレーニングを組み合わせることで、

  • 最大筋力の向上
  • 素早く力を発揮する能力の向上
  • ランニングエコノミーの改善
  • ランニングパフォーマンスの改善

につながる可能性があります。

 特に現在の研究では、高負荷筋力トレーニングの有効性を支持する報告が比較的多くあります。

 また、プライオメトリクストレーニングや複数のトレーニング方法を組み合わせる方法も有効な選択肢です。

 ただし、「この筋肉を鍛えれば速くなる」・「この種目だけやればタイムが縮まる」と単純に考えることはできません。

おすすめしたい考え方は、

ランニングトレーニング

高負荷筋力トレーニング

必要に応じてプライオメトリクス

です。

 ランニングの量や強度とのバランスを取りながら、自分のトレーニング経験に合わせて段階的に取り入れていきましょう。

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