走っている時に「吐きそうになる」・「気持ち悪くなる」ーーー多くのランナーが一度は経験したことがあるのではないでしょうか?
走っている時の吐き気・気持ち悪さは単なるトレーニング不足や高負荷に身体が付いていかないことだけではありません。吐き気や気持ち悪さがある時の身体の状態を知っておくことは、マラソン本番の対策にも繋がります。
トレーニングを積んでいざ本番という時に、気持ち悪くなってリタイア…ということにならないように原因と対策を知っておくは必然です。
本記事ではマラソン中の「吐き気」・「気持ち悪くなる」原因と応急処置・対策についてお伝えしていきます。普段のランニングでも活用出来る内容となっていますので、走って気持ち悪くなった経験のある人は参考にしてみて下さい。
マラソン中に吐き気・気持ち悪くなる原因
暑さによって内臓の血流が不足しやすくなる

暑い環境では、体温を下げるために発汗します。そのために皮膚への血流が増えるため、相対的に胃腸への血流が不足しやすくなります。胃腸への血流が低下すると機能が低下し吐き気などの症状が出ることがあります。
実際に暑い環境で走ってしまい体温が上がりすぎると、「吐き気」だけでなく、「頭痛」や「めまい」・「強いだるさ」・「判断力の低下」などが現れることがあります。

吐き気が熱中症のサインになっている可能性もあるため、「少し気持ち悪いだけ」と考えて無理に走り続けないことが大切です。
脱水症状

発汗によって体内の水分が減ると、血液量も低下します。血液量が低下すると、当然ながら胃腸への血流がさらに減ってしまいます。その結果、飲んだ水分や補給食が胃に残りやすくなり、気持ち悪くなってしまいます。
脱水が進むと、”吐き気”の他に次のような症状が現れることがあります。
「口の渇き」・「頭痛」・「めまい」・「ペースの急激な低下」など…
ただし、吐き気があり脱水が思い当たる節だからといって一度に大量の水を飲むのは避けた方が安全です。
水分を飲みすぎている

脱水とは反対に、水分の飲みすぎでも吐き気が起こることがあります。短時間に大量の水分を飲むと、胃が膨らんで揺れやすくなり、「胃もたれ」や「吐き気」につながります。
また、大量の水だけを飲み続けて塩分を摂取しないと、血液中のナトリウム濃度が低下する「低ナトリウム血症」が起こることがあります。低ナトリウム血症では、吐き気のほかに「頭痛」・「手足のむくみ」、ひどい時は「混乱」・「意識障害」などが現れる場合があります。

「水分を飲めるだけ飲む」のではなく、「気温」や「発汗量」・「喉の渇き」に合わせて給水し、時には塩分タブレットなどを補給することが重要です。
補給食を一度に取りすぎている

ジェルやスポーツドリンク、エナジーバーなどを短時間にまとめて取ると、胃腸で処理しきれず、吐き気が起こることがあります。マラソン中は胃腸への血流が低下しているため一時的に機能が落ちています。そこに大量の飲食物を入れると気持ち悪くなることは想像しやすいと思います。
特に羊羹などの糖質濃度が高い補給食を、水分をほとんど取らずに摂取すると、胃に残りやすくなります。
「エネルギー切れが怖いから」と大量に補給するほど、必ずしも走りやすくなるわけではありません。少量ずつ、計画的に補給する補給戦略が大切です。
補給食や飲み物が体に合っていない

普段使っていない”ジェル”や”スポーツドリンク”を本番で初めて使うと、胃腸が受け付けないことがあります。糖質の種類や甘さ、酸味、カフェインの量などによっても、胃腸への影響は異なります。
「評判が良い商品」=「自分に合う商品」ということではありません。マラソン本番で使用する補給食は、ロング走などで事前に試しておく必要があります。
食事が胃に残っている

走る直前に食べすぎたり、脂質や食物繊維の多いものを取ったりすると、消化に時間がかかります。胃に食べ物が残った状態で走ると、上下動によって胃が揺れ「吐き気」や「腹痛」が起こりやすくなります。
【特に走る前に摂取を避けたい食品:例】
揚げ物
脂身の多い肉
生野菜
豆類
きのこ類
食物繊維の多い穀類
刺激の強い食品

普段は健康的な食品でも、走る前には胃腸の負担になることがあります。走る前に食べるものは気を付けなければいけません。
カフェインを取りすぎている

カフェインには脂肪をエネルギーに変換しやすくなる効果があり、持久系競技者では戦略的に本番前に摂取することがあります。
しかしその一方で、カフェインを取りすぎると、「胃の不快感」や「動悸」・「焦り」・「吐き気」などを引き起こす場合があります。
コーヒー・エナジードリンク・カフェイン入りジェルを重ねて取ると、本人が考えている以上に摂取量が増えることがあります。普段カフェインを取らない人は、身体がカフェインに反応しやすいため特に注意が必要です。
緊張や不安で胃腸の動きが乱れている

「レース前の緊張」や「失敗したくない」という不安は、自律神経が過度に興奮し胃腸の不調が起こることがあります。スタート前から胃がムカムカする場合や、トイレが近くなる場合は、精神的な緊張が関係している可能性があります。

ただし、緊張だけが原因と決めつけず、暑さや脱水などの身体的な原因も確認する必要があります。
痛み止めなどの薬が影響している

一部の鎮痛薬は、胃の粘膜や腎臓に負担をかけることがあります。特に脱水状態や長時間の運動と重なると、胃痛や吐き気などの問題が起こりやすくなる可能性があります。

痛みを抑えて走る目的で、自己判断で鎮痛薬を服用するのは避けた方が安全です。
マラソン中に吐き気・気持ち悪くなった時に応急処置
まずペースを落とす
吐き気を感じたら、まずは走るペースを落とします。それでも改善しない場合は、歩く、立ち止まるなどして運動強度を下げます。
無理にペースを維持すると、胃腸への血流不足や体温上昇が続き、症状が悪化する可能性があります。

目標タイムよりも、安全を優先しましょう。健康な身体を保持すれば次もまたチャンスがあります。失敗を経験にして次回に繋げましょう。
涼しい場所へ移動して体を冷やす
暑さが原因として考えられる場合は、日陰や救護所など、できるだけ涼しい場所へ移動します。
冷たい水や氷があれば、太い動脈がある”首”・”わきの下”・”鼠径部”などに冷たい水や氷を当てて冷やします。衣服を緩め、風通しを良くすることも有効です。
気温が高く、症状として吐き気に加えて、「頭痛」・「めまい」・「ふらつき」・「反応の鈍さ」などがある場合は、熱中症を疑い勇気を持ってレースを中断してください。

熱中症でなくなる方や後遺症が残る方もいらっしゃいます。健康な身体でいれば次もチャンスがあるので、熱中症の疑いがある時は絶対無理しないでください。
水分は少量ずつ取る
水分を取る場合は、一度に大量に飲まず少量ずつ口に含みます。胃が張っている場合や、飲むたびに吐き気が強くなる場合は、無理に飲み続けないことも重要です。
吐き気の原因が、”脱水なのか”・”飲みすぎなのか”を本人が正確に判断するのは難しいため、症状が強い場合は救護スタッフに相談してください。
ジェルや固形物の補給をいったん中止する
胃がムカムカしているときに、さらにジェルや固形物を押し込むと、症状が悪化することがあります。いったん補給を止め、ペースを落として胃腸が落ち着くか確認します。
症状が改善してから補給を再開する場合も、一度にまとめて取らず少量から試していきましょう。
深くゆっくり呼吸する
オーバーペースや緊張によって呼吸が浅く速くなっている場合は、歩きながらゆっくり呼吸を整えます。息を強く吸おうとするよりも、まず息をゆっくり吐くことを意識すると、呼吸を落ち着かせやすくなります。
ただし、呼吸を整えても「吐き気」や「めまい」が改善しない場合は、マラソンを中止する判断が必要です。
吐き気の他に強い症状が併用する場合は救護所を利用する
吐き気に加えて以下のような症状がある時は走り続けず、スタッフや救護所に助けを求めます。
意識がぼんやりする
まっすぐ歩けない
強い頭痛がある
何度も嘔吐する
水分を飲めない
胸痛や強い息苦しさがある
体が異常に熱い
手足や顔がむくんでいる
吐いたものに血が混じる
強い腹痛が続く

これらは、「重い熱中症」・「低ナトリウム血症」・「循環器系の異常」などの可能性があります。絶対に無理をせず、スタッフや救護所に助けを求めましょう。
マラソン中に吐き気・気持ち悪くならないようにする対策
前半を抑えてイーブンペースで走る
吐き気を防ぐうえで重要なのは、胃腸に過度な負担をかけるほどのオーバーペースを避けることです。特にマラソンの場合、スタート直後は周囲のランナーにつられてペースが上がりやすくなります。
前半を余裕のあるペースで入り、後半まで大きくペースを乱さないことが、胃腸トラブルの予防にもつながります。
暑い日は目標ペースを下げる
気温や湿度が高い日は、同じペースでも体への負担が大きく、発汗するために内蔵への血流も減少しやすくなります。予定していた目標タイムに固執せず、気象条件に合わせてペースを下げることも必要です。
水分補給を事前に練習する
適切な水分量には個人差があります。”汗をかく量”・”気温”・”走る速さ”・”体格”などによって必要量が変わるため、万人に共通する補給量を決めることはできません。
ロング走の前後で体重を測ると、自分がどの程度汗をかいているかを把握しやすくなります。
ただし、体重減少を完全に防ごうとして水分を飲みすぎると、胃腸トラブルや低ナトリウム血症のリスクが高まります。喉の渇きや気象条件も参考にしながら調整しましょう。
補給食を少量ずつ取る
補給食は、一度に大量に取るのではなく、少量ずつ計画的に取ります。ジェルを使う場合は、商品に記載された使用方法を確認し、必要に応じて水と一緒に取ります。
ジェルと濃いスポーツドリンクを同時に大量に取ると、糖質濃度が高くなり、胃腸への負担が増えることがあります。
ロング走で胃腸もトレーニングする
レース中の補給は、足や心肺と同じように練習が必要です。ロング走で実際にジェルやドリンクを取り、次の点を確認しておきます。
【補給練習の確認事項】
どの商品なら気持ち悪くならないか
どのタイミングなら取りやすいか
どの程度の水分が必要か
カフェイン入りでも問題ないか
走るペースによって症状が変わるか

本番で初めて使う補給食は避けるのが基本です。マラソン本番では身体に合って慣れている補給食を使いましょう。
走る前は消化しやすい食事を選ぶ
走る前の食事は食べ慣れていて消化しやすい食品を中心にします。食事の量やタイミングにも個人差がありますが、出来るだけ脂質や食物繊維を大量に取るのは避けた方がよいでしょう。
また、マラソンに備えて「エネルギーを蓄えなければ」と食べすぎると、当日の胃腸不調につながることがあります。
カーボローディングは、一度に大量の炭水化物を詰め込む方法ではありません。数日前から計画的に糖質量を調整することが大切です。
カフェインの量を事前に確認する
カフェインを使用する場合は、練習で体の反応を確認します。コーヒー、エナジードリンク、ジェル、サプリメントなど、複数の商品にカフェインが含まれていないか確認してください。
「効かせたいから」と本番だけ摂取量を増やすのは避けましょう。
痛み止めを予防的に飲まない
痛みが出ることを心配して、マラソン本番前に鎮痛薬を飲むランナーもいます。しかし、鎮痛薬は長時間運動や脱水と重なることで、胃や腎臓への負担が増える可能性があります。
薬を使用する必要がある場合は、自己判断ではなく、医師や薬剤師に相談してください。
まとめ
マラソン中の吐き気はオーバーペースだけでなく、「暑さ」・「脱水」・「水分の飲みすぎ」・「補給食の取りすぎ・合わない」など、複数の原因によって起こります。
吐き気を感じたときは、まずペースを落とし必要に応じて歩く・止まる・体を冷やすなどの対応を取ります。水分や補給食を無理に詰め込むことは避けましょう。
マラソン本番中の吐き気の予防には、次の3点が特に重要です。
前半から飛ばしすぎない
水分と補給食を少量ずつ取る
本番と同じ補給方法をロング走で試す
しっかり対策してマラソン中に吐きそうになる・気持ち悪くなるということが無いようにしましょう。
しかし、いくら対策をしても気候など対策が難しいことが原因で吐き気・気持ち悪くなることはあります。吐き気に加えて意識の変化、強い頭痛、ふらつき、繰り返す嘔吐などがある場合は、無理に完走を目指さず、すぐに救護スタッフへ相談してください。

今日が一番若い日です。今日から出来る対策をしっかりとってランニング・マラソン中の吐き気・気持ち悪さをしっかり予防して走りましょう。
風を切るランニング 