マラソンのロング走とは?距離・時間・ペースの目安と30km走のやり方

 フルマラソンへ向けた練習では、「ロング走は何km走ればよい?」「30km走は必ず必要?」「ペースは速い方が効果的?」と迷う人も多いでしょう。

 ロング走は、普段より長い時間を走り、フルマラソン後半まで動き続けるための持久力を養う練習です。ただし、毎回30kmを目標ペースで走ればよいわけではありません。

 走力や週間走行量に対して距離が長すぎたり、ペースが速すぎたりすると、強い疲労が残り、その後の練習を崩す可能性があります。

 この記事では、市民ランナー向けにロング走の効果、距離・時間・ペースの目安、30km走の必要性、補給方法、週間メニューへの組み込み方を研究に基づいて解説します。

目次

ロング走とは?

 ロング走とは、普段のジョギングより長い距離または時間を走る持久系トレーニングです。「何km以上」という統一された定義はなく、同じ20kmでも、普段5kmを走る人にはロング走になり、普段から20kmを走る人には通常練習になる場合があります。

 そのため、ロング走は絶対的な距離だけではなく、次の3点から考えます。

  • 普段の1回あたりの走行距離より長い
  • 週間走行量の中で最も長い練習になる
  • 長時間動き続けることが主な目的になる

 市民ランナーのフルマラソン練習では、一般に90分以上、または20〜30km程度のランニングがロング走として扱われます。ただし、初心者が最初からこの距離を走る必要はありません。

ロング走・LSD・距離走・ペース走の違い

 これらの用語は重なって使われることもありますが、主な目的が異なります。

練習主な目的強度の目安
ロング走長時間走る持久力を養うイージー〜マラソンペース
LSDゆっくり長く動き続ける会話できる楽な強度
距離走決めた距離を走り切る目的により変わる
ペース走一定の速さを維持するマラソンペースや閾値付近など

 ロング走は距離や時間を表す広い言葉です。ゆっくり行えばLSDに近くなり、一部をマラソンペースで走ればペース走の要素も加わります。

ロング走に期待できる効果

長時間走り続けるための有酸素能力を養う

 持久系トレーニングでは、筋肉のミトコンドリアや毛細血管など、酸素を利用してエネルギーを作る仕組みに適応が起こります。

研究1

 2024年のシステマティックレビューでは、低〜中強度の持続的な持久系トレーニング、強度の高いトレーニングのいずれでもミトコンドリア量が増加し、毛細血管の発達には持続的な持久系トレーニングが特に有効である可能性が示されました。

 

走(かける)
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ただし、この研究は「1回のロング走だけ」の効果を調べたものではありません。ロング走を含む継続的なトレーニング全体によって、有酸素性の適応が積み重なると考えるのが適切です。

フルマラソン後半の疲労へ備える

 フルマラソンでは、時間の経過とともに筋疲労、エネルギー不足、フォームの変化などが重なります。ロング走では、疲労した状態でもペースやフォームを保つ経験を積めます。

 また、長時間の接地を経験することで、筋肉や腱などへ段階的に負荷を与えられます。ただし、組織が強くなるには回復期間も必要です。「強い疲労を残すほど効果が高い」とは限りません。

ペース配分を確認できる

 短い練習では楽に感じるペースでも、20〜30km続けると後半に維持できないことがあります。ロング走は、次のようなレースペースの確認に役立ちます。

  • 前半に力みすぎていないか
  • 後半に心拍数や主観的運動強度が大きく上がらないか
  • 疲労時にフォームが崩れないか
  • 給水や補給をしながら走れるか

 

走(かける)
走(かける)

毎回レースペースで走る必要はありません。普段は余裕のあるペースで時間を確保し、ときどき後半の一部だけをマラソンペースにする方法があります。

補給・ウェア・シューズを試せる

 ロング走は「走る練習」であると同時に、本番の予行演習です。ジェルを取るタイミング、飲める水分量、シューズのフィット感、ウェアの擦れなどは、短いランニングでは問題が表れないことがあります。

研究2

 消化管は食事や補給方法へ適応する可能性があり、持久系競技では本番と同じ条件で補給を練習することが推奨されています。

 新しいジェルやシューズをレース当日に初めて使うのは避けましょう。

長距離への心理的な不安を減らす

 長時間走り切った経験は、「この距離までなら余裕を保てる」「この補給なら胃腸に問題が起こりにくい」といった具体的な判断材料になります。

 ただし、自信を得るために42.195kmを練習で走る必要はありません。回復に時間がかかり、以後の練習へ影響しやすいためです。

ロング走の距離・時間の目安

 フルマラソン向けのロング走は、走力と練習段階に合わせて距離を伸ばします。

段階距離の目安時間の目安主な目的
導入期12〜18km75〜120分長く走る習慣を作る
基礎期18〜24km100〜150分持久力と補給習慣を作る
マラソン準備期24〜30km120〜180分前後後半の疲労、装備、補給を確認する
ピーク期28〜32km程度個人差が大きいレースに近い条件を確認する

 

走(かける)
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これは全員が達成すべきノルマではありません。特に走速度が遅いランナーでは、30kmに3時間半〜4時間以上かかることがあります。距離だけを優先すると負担が大きくなるため、まずは時間で区切る方法も有効です。

距離と時間のどちらを優先する?

 距離を基準にするとレースとの比較がしやすく、時間を基準にすると走力差に応じて負担を調整しやすくなります。

  • 30kmを3時間以内で走れる人:距離を基準にしやすい
  • 30kmに3時間半以上かかる人:2時間半〜3時間程度で区切ることも検討する
  • 初心者や故障歴がある人:時間を先に延ばし、距離は結果として増やす

 「3時間を超えてはいけない」という明確な科学的境界があるわけではありません。ただし、長くなるほど筋骨格系の負担、脱水、エネルギー不足、回復時間が増えます。1回の最長距離より、無理なく継続できる週間走行量を優先しましょう。

週間走行量とのバランスを確認する

 普段の週間走行量が30kmの人にとって、1回30kmのロング走は負荷が集中します。反対に、週80kmを継続している人の30km走は、同じ距離でも相対的な負担が異なります。

 「ロング走は週間走行量の何%まで」という確立した上限はありませんが、1回だけ極端に長くするのは避けます。

研究3

 2025年に5,205人を対象としたコホート研究では、直近30日間の最長距離を10%超上回る1回のランニングから、オーバーユース障害の発生率が高くなりました。

 これは「週間走行量を毎週10%以内で増やせば安全」という意味ではなく、1回の距離を急に伸ばすことへの注意を示す結果です。

ロング走のペースの目安

 基本のロング走は、息を切らさず会話できるイージーペースで行います。

 目安は次のとおりです。

  • 主観的運動強度:10段階で3〜4程度
  • 会話:短い文章ではなく、数文を続けて話せる
  • マラソンペースとの比較:1kmあたり30〜90秒程度遅い範囲から調整
  • 心拍数:最大心拍数の約65〜80%が一例。ただし暑さ、疲労、個人差の影響を受ける

 「マラソンペースより必ず何秒遅く」という共通の正解はありません。目標タイムが速い人と完走を目標にする人では、適切な差が変わります。

走(かける)
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ペース表示より、呼吸、会話、後半の余裕を優先してください。

目的別のペース設定

方法内容向いている場面
イージーロング走全体を会話できる強度で走る基礎作り、距離を伸ばす時期
プログレッション走前半はゆっくり、後半を徐々に上げるペース配分の練習
マラソンペース入り24〜30kmのうち5〜15kmを目標ペースで走るレースペースの確認
分割ロング走途中で短い休憩や補給を挟む初心者、暑い日、距離に慣れる段階

 

走(かける)
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距離と速度を同時に大きく上げないことが重要です。初めて28〜30kmへ延ばす日はイージーペースにし、マラソンペース区間を入れる日は総距離を短くするなど、負荷を分散します。

30km走はフルマラソンに必要?

 結論として、30km走は有効な選択肢ですが、完走のための絶対条件ではありません。

研究4

 2020年の研究では、ハーフマラソン参加者556人、フルマラソン参加者441人を調べ、週間走行量、最長ロング走、レース結果、ランニング障害の関係を分析しました。フルマラソンでは、長いロング走や多い週間走行量が速い記録、レース後半のペース低下の小ささと関連していました。

 一方、最長距離が35kmを超えても、30〜35kmと比べて追加の記録向上は確認されませんでした。

 この研究は観察研究であり、「30km走を行えば速くなる」という因果関係を証明したものではありません。もともと走力が高い人ほど、長い距離を走れていた可能性もあります。それでも、30〜35kmは実践上の上限を考える参考になります。

30km走を取り入れやすい人

  • 週40〜50km以上を安定して走れている
  • 24〜26km走の翌日までに強い痛みが残らない
  • フルマラソンの記録更新を目指している
  • 補給や装備を本番に近い条件で確認したい
  • 30kmをおおむね3時間前後までに終えられる

30kmにこだわらなくてよい人

  • 初フルで完走が主な目標
  • 週間走行量が少なく、30kmが週全体の大部分を占める
  • 30kmに3時間半〜4時間以上かかる
  • 故障から復帰したばかり
  • 24〜26km走で数日間強い疲労や痛みが続く

 この場合は、24〜28kmまたは2時間半前後までのロング走を複数回継続し、別日にイージーランを追加して週間走行量を確保する方法があります。

走(かける)
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1回だけ長く走るより、数週間にわたり安定して練習することが重要です。

30km走は何回行う?

 多くの市民ランナーでは、本番の6〜3週間前までに1〜3回が現実的です。ただし、これは研究で確立された必須回数ではありません。

  • 初心者・完走目的:0〜1回。24〜28kmでもよい
  • 中級者・記録更新目的:1〜3回
  • 回復が遅い人:回数を減らし、間隔を3週間程度空ける
研究5

 最後の長いロング走は本番の2〜3週間前までに終えるのが一般的です。持久系競技のテーパリング研究では、レース前に練習量を減らしながら強度や頻度をある程度保つ方法が、パフォーマンス改善に有効とされています。

ロング走を週間メニューへ組み込む方法

 基本は週1回です。ただし毎週30km走をするのではなく、距離の長い週と短い週を作ります。

週4回走る人の例

曜日練習内容
月休養またはウォーキング
火イージーラン40〜60分
水休養または筋力トレーニング
木テンポ走・インターバル走など
金休養
土イージーラン30〜50分
日ロング走

 高強度練習とロング走を連日にすると、疲労が重なりやすくなります。可能であれば間にイージーランまたは休養日を入れます。

8週間のロング走の進め方

レースまでロング走の例
8週20〜22km・イージー
7週24km・イージー
6週18〜20km・短縮週
5週26〜28km・イージー
4週22〜24km・後半にマラソンペース5〜8km
3週28〜30km・イージーまたは一部マラソンペース
2週16〜20km・余裕を残す
1週8〜12km程度。疲労を抜く

 距離は一例です。痛み、睡眠不足、暑熱、仕事の疲労がある場合は短縮します。予定表を守ることより、次の1週間も練習を続けられる状態で終えることを優先してください。

ロング走の補給方法

走る前の食事

 開始1〜4時間前に、消化しやすい糖質中心の食事を取ります。量は時間と胃腸の強さに応じて調整し、脂質や食物繊維が多い食品は直前に取りすぎないようにします。

 例として、おにぎり、パン、うどん、バナナ、カステラなどがあります。早朝で十分な時間がない場合は、少量のバナナ、エネルギーゼリー、スポーツドリンクなどから試します。

走行中の糖質

研究6・7

 1時間を超える持久系運動では、一般に1時間あたり30〜60gの糖質が推奨されます。2時間半〜3時間を超える運動では、耐えられる人は複数の糖質源を用いて最大90g/時まで増やす選択肢があります。

 ただし、普段ほとんど補給しない人が急に90g/時を取ると、腹痛や吐き気を起こす可能性があります。まず30g/時程度から始め、ロング走で段階的に試します。

ロング走の時間糖質摂取の目安
60〜90分必須ではない場合もある。必要なら少量
90分〜2時間半30〜60g/時
2時間半以上60〜90g/時を個人の耐容性に合わせる

 エネルギージェル1個の糖質量は商品により異なります。個数ではなく栄養成分表示の糖質量を確認してください。

水分と電解質

 必要な水分量は、気温、湿度、体格、発汗量、ペースによって大きく変わります。固定量を全員へ当てはめず、体重変化から自分の発汗量を確認します。

1時間あたりの発汗量(L/時)=(走る前の体重-走った後の体重+摂取した水分量-尿量)÷走行時間

 体重は汗を拭き、できるだけ同じ服装条件で測ります。運動中の体重増加は飲みすぎの可能性があるため、失った量を超えて無理に飲まないでください。

研究8

 長時間運動で水だけを過剰に飲むと、運動関連低ナトリウム血症の危険があります。発汗量が多い日や長時間走では、食事とスポーツドリンクなどからナトリウムも補います。

ロング走に必要な装備

装備確認したいこと
ランニングシューズ長時間履いても爪、足裏、甲に痛みが出ないか
ソックスずれ、まめ、蒸れが起こらないか
ウェア脇、股、胸などに擦れが起こらないか
キャップ・サングラス日差しや汗を防げるか
ランニングポーチ・ベスト揺れずに補給とスマートフォンを携帯できるか
ボトル必要量を持てるか、途中で給水できるか
GPSウォッチペースを確認しすぎず、後から振り返れるか
反射材・ライト暗い時間帯に周囲から見えるか

 

走(かける)
走(かける)

30km走では本番用のシューズを試す価値がありますが、カーボンシューズを毎回使う必要はありません。まずはフィット感、まめ、黒爪、ふくらはぎの張りなどが起こらないかを確認します。

ロング走後の疲労回復

終了直後から糖質とたんぱく質を取る

 ロング走後は筋グリコーゲンが減り、筋肉にも負荷がかかっています。次の練習までの時間が短い場合は、終了後早めに糖質を補います。

研究9

 スポーツ栄養の推奨では、速やかな回復が必要な場合、最初の4時間に1時間あたり体重1kgあたり1.0〜1.2gの糖質が目安です。

 毎回厳密に計算する必要はありません。おにぎりやパンなどの糖質に、牛乳、ヨーグルト、卵、魚、肉、大豆製品などのたんぱく質を組み合わせます。

水分と塩分を補う

 走行前後の体重差が大きい場合は、水分とナトリウムを少しずつ補います。一度に大量の水を飲むのではなく、食事とともに数時間かけて戻します。

翌日は回復状態を確認する

 翌日に軽い筋肉痛があること自体は珍しくありません。ただし、次のような状態では休養または練習の短縮を検討します。

  • 歩行や階段で痛みがある
  • 痛みをかばってフォームが変わる
  • 安静時にも痛む
  • 朝の心拍数が普段より高く、強い倦怠感がある
  • 睡眠や食欲が大きく乱れている

 

走(かける)
走(かける)

軽いジョギングを行う場合も、痛みや重さが増すなら中止します。完全休養、ウォーキング、軽いサイクリングなどへ変更しても構いません。

ロング走でケガを防ぐための注意点

距離とペースを同時に増やさない

 距離を延ばす週はペースを抑え、ペースを上げる週は距離を短くします。前回の最長距離から大幅に増やすより、数週間かけて20km、24km、26kmのように段階を踏みます。

疲労してフォームが崩れたら短縮する

 腰が落ちる、片脚をかばう、接地音が急に大きくなる、ペースを保つために全力に近づく場合は、予定距離より早く終了して構いません。目的は「設定距離をどんな状態でも消化すること」ではなく、適切な刺激を受けて回復することです。

暑い日は距離とペースを下げる

 暑熱環境では同じペースでも心拍数と体温が上がり、発汗量も増えます。涼しい時間帯へ変更する、周回コースで給水する、距離ではなく時間で区切るなどの対策を取ります。

鎮痛薬で痛みを隠して走らない

 痛みを抑えて距離を完遂しても、負荷に耐えられているとは限りません。痛みが続く場合は距離を減らし、必要に応じて医療機関や理学療法士などへ相談してください。

ロング走に関するよくある質問

ロング走は毎週行うべき?

基本は週1回ですが、毎週同じ長さにする必要はありません。疲労が強い人は10〜14日に1回でも構いません。長い週と短い週を作り、継続できる頻度へ調整します。

途中で歩いたり休憩したりしても効果はある?

あります。完走目的の初心者、暑い日、補給練習では短い歩行や給水休憩を入れて構いません。レースで走り続けたい場合は、慣れてきた段階で連続走行時間を少しずつ延ばします。

ロング走は空腹で行うと効果が高い?

空腹状態では運動中の脂質利用が増える場合がありますが、長期的な競技力向上や体脂肪減少で常に優れるとは限りません。長時間走で糖質が不足すると、練習の質低下や回復の遅れにつながります。フルマラソン対策では、本番で使う補給方法を練習する日も必要です。

30kmをマラソンペースで走るべき?

多くの市民ランナーには負荷が高すぎます。まず全体をイージーペースで行い、走力と回復状態が安定してから、後半5〜15kmだけをマラソンペースにする方法が現実的です。

最長ロング走はいつ行う?

本番の3週間前前後が一つの目安です。回復が遅い人は4週間前に行い、その後は距離を減らします。直前に不安を感じても、1〜2週間前に30km走を追加するのは避けましょう。

まとめ

 ロング走は、フルマラソン後半まで走り続ける持久力を養い、ペース配分、補給、シューズやウェアを確認する重要な練習です。

 一方で、30kmは全員に必須の距離ではありません。研究では30〜35kmまでの最長ロング走と記録の関連が示されていますが、35kmを超える追加効果は確認されていません。初心者や走行時間が長い人は、24〜28kmまたは2時間半〜3時間程度でも十分に実践的な練習になります。

 

走(かける)
走(かける)

ロング走では、距離だけでなくペース、週間走行量、補給、翌日以降の回復までを一つのセットとして考えます。「1回の30km走を成功させること」より、「数週間にわたり無理なく練習を継続すること」を優先しましょう。

参考文献

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