
「ランニングを始めたら脚が細くなった気がする」

「長距離を走ると筋肉が落ちるって聞いた」
ランナーの中には、このような不安を感じたことがある人も多いのではないでしょうか。
実際、ランニングではエネルギーを大量に消費するため、条件によっては身体が筋肉を分解してエネルギー源として利用することがあります。特に、長時間の運動・食事不足・タンパク質不足・回復不足が重なると、筋肉量やコンディションに影響する可能性があります。
一方で、ここで誤解したくないのは、ランニングそのものが筋肉を減らすわけではないということ。むしろ、適切な食事・トレーニング・回復ができていれば、筋肉を維持しながら走力を伸ばすことは十分可能です。
大切なのは、「走る量を減らすこと」ではなく、筋分解が起こる仕組みを理解して、適切に対策することです。
【本記事内容】
1.ランニングで筋肉が減ると言われる理由
2.筋分解が起こるメカニズム
3.筋肉を守るための具体的な対策
4.ランナーに必要なタンパク質量と摂取タイミング
「走ると筋肉が落ちるのが怖い」・「速くなりたいけど身体づくりも大切にしたい」そんなランナーの方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
そもそもランニングで筋肉は減るのか?

結論:筋分解は条件次第で起こる
【筋肉量が維持・増加しやすいケース】
初心者ランナー
適切な食事摂取
筋トレ併用
短距離〜中距離中心

筋肉量を温存しやすいのは走行距離が長くない初心者ランナー、食事や筋トレを意識しているランナーです。逆にランニングに慣れてきて走行距離が長くなってくると筋肉量が減少しないように知識や工夫が必要になってきます。
【筋肉量が低下しやすいケース】
長時間ラン(90分超が増える)
減量中
タンパク質不足
回復不足
高走行距離

走行距離が長くなってきた中堅・ベテランランナー、食事や筋肉量を保つための知識や工夫が足りないランナーは要注意です。ただただ、走行距離にこだわって走り続けていると筋肉量が減っていってしまうリスクがあります。
なぜランニングで筋分解が起こる?メカニズムを科学的に解説

持久力適応が優先される
「筋肉を付けること」「持久力を付けること」、両者はある意味トレードオフと言えます。
筋トレはmTORC1と呼ばれる酵素が活性化します。このmTORC1が活性化することでタンパク質合成を促進し、筋肉が発達していきます。タンパク質を十分に摂取することで筋肉が徐々に付いてくるようになります。
しかし一方で、持久力トレーニングによってAMPKと呼ばれるものが活性化します。このAMPKはMTORC1の働くを抑制する作用があり、筋肉の合成を阻害してしまいます。
持久力トレーニングによって活性化するAMPKmTORC1(筋肉の合成を促進)を抑制

月間300km以上の走行距離であるランナーは筋肥大が難しい…という話もあります
エネルギー不足になりやすい
ランニングは消費カロリーの多い運動です。ランナーはエネルギー不足になりやすく、筋肉の合成よりも「エネルギーを確保」することを優先してしまいます。筋合成にはタンパク質だけでなく糖質エネルギーなども必要ですが、ランナーは特に糖質エネルギーが不足しやすいです。
”ランニングは消費カロリーが多い”・”記録を狙うランナーほどポイント練習で糖質消費量が多い”ということから筋肥大が難しくなっていきます。
ランニング=筋肥大できないというわけではありませんが、ランニング前後の栄養摂取を疎かにしているとエネルギー不足で筋肥大は難しく、筋肉量は減少してしまうリスクがあります。
コルチゾール増加

ランニングに慣れてきて走行距離が伸びてくるのは良いことです。しかし、必要以上に走行距離を伸ばしたり、睡眠や回復を疎かにしているとコルチゾールと呼ばれるストレスホルモンが増加します。
コルチゾールは必要なホルモンですが、増え過ぎると筋分解を促進したり、筋合成を抑制する作用が強くなり、筋肉量が減少してしまうリスクがあります。

オーバーワークを防ぐために、睡眠・回復にはこだわって負荷と回復のバランスを保つようにしましょう。
ランナーでも筋肉を減らさないための5つの対策

① タンパク質を十分摂る
筋肉などの身体を構成する材料はタンパク質。
タンパク質が不足すると筋肉を構成する材料がないため、筋肥大は難しいです。筋分解を抑制する・筋肥大を促すためにもタンパク質の摂取は意識しましょう。
良質なタンパク質の代表は、肉・魚・乳製品・大豆製品です。”動物性タンパク質”と”植物性タンパク質”をバランスよく摂取しましょう。
② 糖質を抜きすぎない
糖質の過剰摂取はたしかに太ってしまいます。しかし、ランナーは糖質の消費量が多いため、走行距離が伸びてきたランナーほど糖質はしっかり摂取しましょう。
糖質は走っている時のエネルギー源。糖質エネルギーが不足すると身体は走るためのエネルギーを筋肉を分解して得ようとします。筋肉を守るために、走る為の糖質エネルギーを摂取しておくことが大切であることが分かります。
必要なら走っている間にエネルギーを補給することも検討しましょう。
③ 筋トレを組み合わせる
筋肉量を守るためには筋トレで筋肉に刺激を与えることは非常に大切。ランニングでも筋肉に刺激は入りますが、筋線維に大きな負荷をかける筋トレも筋肉量を守るために欠かせません。
特に筋肉量を守りたいのであれば、筋線維に負荷をかけなければいけません。筋線維に負荷をかけることが出来るのはランニングよりも筋トレであり、ゆっくりじわじわ行う筋トレがポイントです。(※速い筋トレは筋線維よりも神経に負荷がかかってしまいます)
また、筋トレのような高負荷の運動は成長ホルモンの分泌を促してくれます。成長ホルモンは身体を構成するために大切なホルモンです。成長ホルモンは高負荷の運動であるほど、分泌を促すことが分かっています。
「イージーラン+筋トレ」という組み合わせは基礎体力をつけつつ、筋肉を守るためのトレーニングとしてオススメです。
④ 長時間走を増やしすぎない
走行距離が伸びてくるとエネルギー消費量が多くなり、筋肥大が難しくなってきます。
「イージーランなのに距離が長すぎる」・「中途半端にペースが速い」とオーバーワークになるだけでなく、糖質エネルギーの消費量も多く筋分解が促進されてしまいます。

トレーニングはメリハリが大切であり、イージーランと決めた日は軽く走り、疲労が蓄積しない距離で済ませるようにしましょう。
⑤ 睡眠・回復を軽視しない
身体が強化されるのはトレーニング中ではなく、トレーニング後の回復のタイミング。特に睡眠中は成長ホルモンを分泌するため、身体の筋修復を促してくれます。
睡眠の中でも特に深い睡眠であるノンレム睡眠で成長ホルモンの分泌が促されます。睡眠の始めにノンレム睡眠は集中しており、睡眠の質が身体の筋修復に大きく関わってきます。

寝る前はスマフォを使用しない、寝る2~3時間前にはランニング・入浴を済ませておくなど睡眠の質が下がらないように工夫しましょう。
ランナーに必要なタンパク質量はどれくらい?

ランナーは筋肉量を守りパフォーマンスを上げるには一般成人よりも多いタンパク質の摂取が必要です。
一般成人が健康的に過ごすには約0.8 ~1.0g/kg/日、つまり体重60kgなら48~60gのタンパク質が必要です。
ランナーのような持久系アスリートは約1.2〜1.6 g/kg/日のタンパク質が望ましいと言われています。さらに、高負荷のポイント練習の日や減量中・筋トレを併用した日は約1.6〜2.0 g/kg/日のタンパク質摂取が望まれています。
体重60kgの人なら96~120gのタンパク質摂取が必要です。

ランナーは意識してタンパク質を摂取しないと必要なタンパク質量に達することが難しいです。
筋肉を守るためにタンパク質の摂取は意識しましょう。
タンパク質はいつ摂る?タイミングの考え方

タンパク質は一日を通して分散して摂ることが望ましいと言われています。これはタンパク質を1回で吸収できる量にはそれぞれ限界があるため、一度にたくさんのタンパク質を摂取しても吸収しきれないことが理由として挙げられます。
朝食でタンパク質を80g摂取したから、今日はタンパク質を意識しなくてもいい!!ーーーというわけにはいかないのです…
そのため、タンパク質の摂取は毎食、ランナーであれば間食にも摂取することが大切になってきます。1回の食事で約20~30gを目安にタンパク質を摂取するようにしましょう。
特に運動後はタンパク質の吸収が良いゴールデンタイム。吸収が速いプロテインで必要なタンパク質を身体に届けましょう。
【良質なタンパク質:例】
鶏むね肉・魚・卵・納豆・豆腐・牛乳・ヨーグルト・プロテイン
プロテインは飲んだ方がいい?
プロテインは飲まなくてもOKです。
プロテインは豊富なタンパク質に、タンパク質の吸収に必要なビタミンを含んでいる栄養補助食品です。あくまで栄養を補助するためのものであるため、食事で十分なタンパク質を摂取出来ているのであれば必要ありません。
【プロテインの摂取が向いている人】
・食事でタンパク質が不足してしまう人
・朝ラン後など、運動後すぐに栄養補給したい人
・忙しくタンパク質を意識した食事が難しい人
プロテインを選ぶ際は含まれている”タンパク質量”と”糖質”・”ビタミン”に注目してみましょう。自身が不足しがちな栄養が含まれているものを選ぶことがポイント。そのためには知識が必要ですが、栄養の勉強は大変オススメです。
「健康的に過ごす」・「ランナーとしてのレベルを上げる」ために栄養について勉強もしてみましょう。
まとめ
本記事では「ランニングで筋肉が減ると言われる理由」から「筋分解の原因と対策」・「ランナーに必要なタンパク質量」について解説してきました。
ランニングで筋肉が減ると言われる理由は、ランニングは消費カロリーが多いためエネルギー不足になりやすく、身体は筋肥大よりも持久系適応が優先されることが理由でした。
エネルギー不足状態で筋肥大よりも持久系が優先されてしまえば、たしかに筋肉量は減ってしまうかもしれません。しかし、「走行距離が長くない初心者ランナーさん」や「トレーニング内容・食事や睡眠・回復を意識しているランナーさん」であれば大きな心配はありません。
反対に走行距離が多く、食事・睡眠・回復を疎かにしているランナーさんは筋肉量が減ってしまうリスクがあるため要注意です。必要以上に筋肉量が減ってしまうとパフォーマンスが下がってしまうおそれがあるため、知識を身に付けて対策をしましょう。
ランナーは一般成人よりも多くのタンパク質摂取が必要です。タンパク質摂取も一度に多く摂るのではなく、一日を通して分散して摂るようにしましょう。必要ならプロテインの摂取も検討しましょう。不足しがちな栄養摂取を補ってくれます。

今日が一番若い日です。知識を身に付けるだけでは足りません。知識を身に付け実際に行動するまでがセットです。
今日から出来ることに取り組んで筋分解を抑えながらよりよいランニングライフを楽しみましょう。
風を切るランニング 